2017年05月17日

【レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い? 特許・知財の最新常識】新井信昭



はじめに 「知財」は本当に、あなたに関係ないものですか?
第1章 特許出願は「アイデアを盗んでください」と、全世界に宣言すること
第2章 アイデアは、「見せない、出さない、話さない」
第3章 知財の法廷に、大岡越前はいない
第4章 アイデアの「現場」に魔の手が迫る
第5章 「知財コミュニケーション力」と言う武器
第6章 アイデアの「絶対領域」で勝利をつかめ!

 著者は知財コミュニケーション研究所の代表を務め、自ら「知財コミュニケーター」と称する知財の専門家。そんな著者が、意外に知られていない特許の現実と特許との付き合い方を伝授した一冊である。普段、なんとなくのイメージで捉えている特許であるが、実情を知っておくのも何かの役に立つと思って手にした一冊である。

 まず「知的財産とは」という解説から入る。それは、「お金を儲けるために人間が考えたアイデア」とする。そして特許は、それを保護する手法であるが、そこに大いなる誤解があると言うのがその主張。タイトルには、サントリーの伊右衛門とコカ・コーラという二つのブランド飲料が採り上げられているが、これはその特許戦略の違いの代表例としてである。すなわち、伊右衛門は特許を取得していて、コカ・コーラは特許を取得していないのである。

 特許とは、「知財に着せた透明な防護服」と著者は言う。それはすなわち、特許を申請すれば、特許公報に掲載されその内容は全世界に公表されることを表 している。「アイデアに国境はないが、特許には国境がある」と言う言葉は衝撃的である。「技術は外から手に入れてくる」が国際ルールで、事実、ハイアールなどは日米欧の特許公報を調べ上げ、それが自国で特許申請されていないことを良いことに、自社技術として取り入れているのだと言う。

 自国内で特許を取ったとしても、中国ではそれが自由に使えると言うことで、それで自社の金型技術が流出し、注文もすべて中国に持っていかれたメーカーの事例が採り上げられている。特許は、申請するのに30〜50万円の費用がかかり、さらに維持するのに5〜10万円の費用がかかるというのも、知られざる事実。その上、世界中で申請しておかないと本当の意味で、知財防衛にはならないと言うのは、ショッキングな事実である。

 コカ・コーラはそれゆえに特許を取らず、厳格に秘密保持をしているとのことである。
では、特許は取らない方が良いのか?
それについて、著者は出願を見極めるポイントを挙げる。
1. その特許が現在または将来の自分のビジネスに役立つかどうか
2. 自分のアイデアをもとに作られた製品を見ただけで他者がそのアイデアを真似できるかどうか
3. 自分のアイデアをパクった者が現れた時、裁判で戦う覚悟と勇気と費用があるかどうか

 さらに最も大事なことは、「特許を取りたい理由」だと言う。そうなのだろうと思う。著者は、アイデアを守るための原則は、「見せない、出さない、話さない」ことだとする。言われてみればごもっとも。そして、技術を有する会社の社長なら自ら、あるいは社員に知財検定3級の取得を勧める。特許を取れば良いと盲目的に考えるのではなく、公開してでも特許を取るか、特許を取らずに秘匿するかの「オープンクローズ戦略」の重要性を説く。

 具体的な事例も取り上げられていて、実にわかりやすい。残念ながら私の勤める中小企業は技術とは無関係。特許など無縁の世界ではあるが、こうした事実を知っておくのも何かの肥やしだと思う。知っておいて損はないところである。世の中、こうした事例は他にもあるかもしれない。盲目的にイメージで捉えるのではなく、関係あるものならしっかりと認識したいと思う。雑学にしておくのは、ちょっと勿体無い。技術系の仕事の人なら、一読しておくべき一冊である・・・




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2017年05月16日

【海と毒薬】遠藤周作



 この本は、その昔映画化されたものを観ている。モノクロ画面の映画で、手術室のシーンが印象に残っている映画である。もうほとんど筋は忘れてしまっているが、「いつか原作を読んでみたいと思っていたもの。ちょうど『侍』を読んだ時にチェックしていたものである。

 物語は戦後しばらくした夏の日から始まる。1人の男が妻とともに越してきて、持病の相談に行く医者を探す。そうして紹介されたのが、勝呂(すぐろ)という個人医院。愛想はないものの、腕はいい。気胸の手当の見事な腕前から、男はこの勝呂という医者に興味を抱く。そして義妹の結婚式に訪れた北九州で、偶然勝呂医師の過去にまつわる話を聞く。それは終戦間際、勝呂らがアメリカ人捕虜に人体実験を行ったというものであった・・・

 そして物語は、終戦直後の北九州へと時を戻し、今度は若き日の勝呂の視点から日常が語られる。『侍』もそうであったが、遠藤周作の作品は、この視点変換がよく行われる。冒頭の男、主人公ともいうべき勝呂、勝呂の同僚の戸田、そして同じ病院の看護婦(当時はまだ看護「婦」である)の上田。それぞれの視点で語られる時は、当然その人物の視点になるのだが、視点が変わればその人物は周りにいる人の1人になる。意識してのものかわからないが、最近の作家にないスタイルのような気がする。

 物語の中心は、あくまで米兵捕虜になされる人体実験。冒頭の男の視点も、勝呂という医師を登場させるイントロであるし、その勝呂の視点を通して人体実験の様子が描かれて行く。ただし、勝呂はまだこの時点で研修医でしかなく、そして人体実験を主導するのは勝呂の上司ともいうべき医師たち。視点を変えるといっても、肝心の人体実験は勝呂の視点から描かれる。実験を行った医師の視点からだったらどんな様子だっただろうと、ふと思う。なぜそうならなかったのかは知る由もないが、研修医だったからこそどこか客観的になったのかもしれない。

 考えてみれば、勝呂の同僚の研修医戸田は、少年時代からどこか冷めていて冷酷なところがある。それは小学生の頃に、先生の貴重な蝶の標本を盗んで友達が濡れ衣を着せられるのを眺めていたり、自分で孕ませてしまったお手伝いを自ら堕胎するところなどからも察せられる。実験を執刀した医師たちも、もしかしたらそうした冷酷な人たちだったのかもしれないと思わされる。それゆえに戸田の視点を登場させたのかもしれない。

 もっとも肝心な人体実験よりも、大学病院内での権力争いや、そのために手術される患者の様子などが個人的に不気味だったと思う。印象に残っている映画の手術シーンも、人体実験ではなくこの手術のシーンであり、それはやっぱり映画も本も感じるところは同じということなのかもしれない。もっとも、映画の方はちょっと患者の手術の描き方が違っていたのは確かであるが・・・

過去に読んだ本にも通じる独特の暗い雰囲気が、この本でも流れている。これが遠藤周作の世界なのかもしれない。次については、今のところ考えているのはないが、少しアマゾンでも眺めてみて、良さそうなのがあればとも思う。昭和の雰囲気をよく感じられる一冊である・・・


海と毒薬.jpg



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2017年05月15日

【東大が考える100歳までの人生設計−ヘルシーエイジング−】東京大学高齢社会総合研究機構監修



基礎理論編 ヘルシーエイジングのための基本原則
戦略編 
第1章 健康編 食事・運動・休養
第2章 生活環境編 住まいと身の回りの環境を整える
第3章 生きがい編 あそび・たのしみ・しごと・居場所
第4章 制度活用編 いざという時に備える

 なんとなくあまり深く考えずにいたことであるが、最近、『自分の時間を取り戻そう−ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方−』とか『LIFE SHIFT−100年時代の人生戦略−』など「人生100年時代」を主張する本を読んでみると、必然的にそれに対する備えにも目を向けたくなるというもの。この本はそんなタイミングで目にした一冊である。

 著者は個人名ではなく、東京大学の高齢社会総合研究機構と称するところ。どうやらそこでの研究成果をまとめたのが本書ということらしい。そして最初に出て来るのが、「ヘルシーエイジング」という言葉。これは「ほどほどに健やかな歳のとり方を目指す考え方」ということらしい。「要するに要介護にならないよう自分の生活をデザインすること」と言い換えられてもいるが、確かに重要な概念だと思う。

 寝たきりにならない老後のために必要なことはなんであろうか。定年後には「きょうよう」と「きょういく」、すなわち「今日する用事があること」と「今日行くところがあること」が大切だという。なるほど、わかりやすくていい。多少心身が弱ってきても、できるだけ自立的に生活できるような生活環境を整えることが大事だという主張もその通りである。

 要介護になる3大要因は、「運動機能障害」「脳血管障害」「認知症」だという。気になるのは、やはり認知症だろう。その認知症を防ぐには、脳の血行を良くすることが必要で、運動しながら頭を使うことが良いとする。それは例えば歩きながら頭の中で引き算をすることだというが、老いた我が母にやれと想像してみると、3歩も歩かぬうちに転びそうな気がする。

 基本原則は、食う・寝る・遊ぶ/働くだとか。減量するならタンパク質を十分に摂り運動をする。食べたい時に食べたい良質なものを適量食べる。栄養バランスは30品目より一汁一菜。カロリーよりも脂質の量とタイプに注意。野菜は火を通す食べ方を工夫。歯は命。認知症予防にも効果的。高齢になってもできる筋力回復運動は以下のとおり。
1. ストレッチ
2. 筋トレ
3. バランス運動(開眼片脚起立運動)
4. 有酸素運動(ウォーキング)
なるほど、どれも当たり前と言えば当たり前かもしれないが、一度整理するには役に立つ。

 話は老眼鏡から補聴器(補聴器は自分の症状にあったものを病院を通じて補聴器メーカーにオーダーメイドで作ってもらう)、そして住環境(夫婦の寝室は別にするのが良いという意見は意外)へと広がる。男も家事をすべきだし、ショッピングはウォーキング。電動アシスト自転車もあり、新しい友人を作るには「人の話を聞くのが良い」。離婚で男は10年寿命が縮まるという話は穏やかではない。異性と付き合い、トキメク時を持つというのも面白い。

 言われてみれば、なるほどである。まだまだ実感はないものの、自分もいずれは年老いて体の自由も効かなくなる。その時に備えて考え方やら何やらを整理しておくのもいいだろう。さしづめ自分の年老いた親に適用できるものは教えてあげたいと思う。大いに参考にしたい一冊である・・・



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2017年05月09日

【西武信用金庫はお客さまを絶対的に支援する】碓氷悟史



第1章 西武信用金庫のお客様のすごさ
第2章 プロ経営者としての落合寛司誕生の原点
第3章 「年齢による定年制度の廃止」がもつ意味を考える
第4章 人事考課の快
第5章 西武信用金庫お客様支援センター(総合コンサルバンク)への道
第6章 落合寛司の経営哲学

 不動産業界に身を置いていると、そして特に「資金調達」という課題を抱えていると、西武信金の名前は少なからず耳にするはずである。最近、不動産融資を伸ばしていると評判だからである。そんな評判にプラスして、「定年制度を廃止した」「100人の求人に20,000人が殺到」など聞くと、嫌が上にも興味を持つというもの。そんな時に目にしたのがこの本である。

 著者は公認会計士、亜細亜大学教授という肩書きのあるコンサルタントで、西武信金の落合理事長とは亜細亜大学繋がりから執筆に至ったのだと思う。この手の本は、ともすれば「太鼓持ち」的になりがちであるが、そこのところは割り引いて読みたいものである。

 最初に西武信金の営業成績が掲載されているが、確かに現理事長になってからの成長は著しい。落合理事長就任前後の各指数は以下の通り。
1. 当期純利益5年合計:(就任前) 207億円 ⇨ (就任後) 274億円
2. 貸倒関係損失5年合計:(就任前) 7,269億円 ⇨ (就任後) 738億円
3. 貸出金:(就任前) 443億円 ⇨ (就任後) 2,104億円
4. 預金残増加額:(就任前) 778億円 ⇨ (就任後) 2,143億円
数字は嘘をつかないので、これは素晴らしいと思う。

 注目の定年制度廃止だが、これは正確に言えば廃止ではなく下記の選択制。
1. 定年のない現役コース
2. 嘱託で再雇用される嘱託コース
3. 60歳退職コース
 
 それぞれの事情に応じて選べるようなことが書いてあるが、よく読めば肝心の現役コースは条件がついている。それは「西武信金から選抜され、本人が同意すれば」というもので、「主として支店長などを対象」となっている。つまり、「できる人だけ」のようである。当たり前と言えば当たり前だが、全員が3コースの中から好きに選べるような書き方をしているのが気になる。

 そして、働くことや定年に対する考え方など、著者が絶賛する中村天風の引用がやたら多いのが気になる。西武信金に関係のない記述がダラダラと多い。薄い本なのにそれでページを稼いでいるので、西武信金についての記述は意外に薄い。年間一人当たり人件費が平均912万円から836万円に下がったと褒め称えるが、よくよく考えれば給料を下げたという意味であり、立場によっては不満を招くところである。

 ただ、人件費にしても20代で1,000万円とか、32歳で1,300万円という解説もあり、実力主義が徹底されているのかもしれない。下がったとは言え、836万円は高いと思うので、他と比べれば待遇は良いのかもしれない。本当はこういうところをもっと深く切り込んで欲しかったが、著者には無理だったのかもしれない。上っ面の記述に終始している。

 とは言え、西武信金に対する興味が薄れるというものではない。一読して疑問に思うところが多いも、それは著者の力量に問題があるのであって、西武信金自体に問題があるというわけではない。もう少しよく知りたいと思うところである。落合理事長の講演は一度聞いたことがあるが、今度はご本人の著述をそのうち読んでみたいと思うのである・・・



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2017年05月08日

【住友銀行秘史】國重惇史



プロローグ 前史
第1章 問題のスタート
第2章 なすすべもなく
第3章 行内の暗闘
第4章 共犯あるいは運命共同体
第5章 焦燥
第6章 攻勢
第7章 惨憺
第8章 兆し
第9章 9合目
第10章 停滞
第11章 磯田退任
第12章 追求か救済か
第13章 苛立ち
第14章 Zデー
第15章 解任!
第16章 虚脱
第17章 幕切れ
エピローグ あれから四半世紀が過ぎて

 「イトマン事件」と聞けば、その昔のバブル時代を象徴するかのような事件としての印象が残っている。当時駆け出しの銀行員であった私だが、実はあまり詳しいことは知らないできた。それを元住友銀行取締役の著者が当時を振り返って記したのがこの本。著者のことは、楽天の副会長になったニュースを記憶していたので、事件の当事者だったのかと改めて意外に思った次第である。

 まず初めに語られるのが、著者の簡単な略歴。なんとMOF担だったという。MOF担というのは今はほとんど死語であるが、銀行の「大蔵省担当者」のこと。当時の銀行にとって、主官庁の大蔵省は重要な存在。そこから様々な情報を取るべく、専門の担当者を置いていたのである。当時この仕事につくことは、「エリート街道に乗った」とも言われたものである。そして著者もその通りのエリート街道を歩んだようである。

 特に最初の支店長時代のエピソードは興味深い。なかなかのアイデアマンだったようである。その中で、当時の優秀な営業マンの仕事振りが紹介されているが、家に帰って奥さんに仕事を手伝ってもらっていたりして、その猛烈振りがすごい。でもよく考えてみると、当時はこんなことがあちこちで語られていたものである。著者のエピソードからしても、仕事のできる人だったことは間違いない。

 そして唐突に事件は始まる。この本は、当時著者が克明につけていたメモを元にしているという。そのせいか要所要所にメモ形式の記述が入る。時に1990年3月。商社であったイトマンの社長は住銀から行った河村氏。この人が伊藤寿永光なる人物を重用し、不動産投資にのめり込んで行く。そして許永中なる人物も絡み、美術品など住銀から出たお金がイトマンを通じて闇社会に消えて行く。このあたり著者の記述だけではどうも良くわからない。

 著者の主観で書かれているのはいいのだが、逆に客観性がないというか、事件の全体像がどうも分かりにくい。住銀の役員も多数出てくるが、人物関係がどうもしっくりしないまま読み進むことになり(いちいち確認するのも億劫)、ストレスが生じる。当時の住銀会長は、天皇と呼ばれた磯田一郎氏。私も名前くらいは聞いたことがある。そうした役員達と身近にいた著者による記述は、一般人にはうかがい知ることのないトップの様子であって、それはそれで興味深い。

 著者は、イトマンの深刻さを早くから掴み、愛行精神から行動する。されど保身や思惑にまみれた役員達の動きにイライラさせられる。日経新聞の記者に情報を流し、「従業員一同」の名前で大蔵省の銀行局長宛に内部告発文書を出す。これはこの本で著者が初めて暴露する事実だったようである。

 当時、住友銀行には大勢の行員が働いていただろう。その大半がこんな事実を知らないでいたわけで、トップに近いごく一部の人たちの世界のやり取りが実に興味深い。「メガバンクは守りの組織、徹底した減点主義で一回でもバツがついたらもうおしまい」と著者は語るが、自分は早々にバツがついた1人として、なるほどと思う。事件と合わせてそんな銀行の裏事情も興味深い。

 事件の全体像がイマイチ分かりにくいという難点はあるものの、銀行トップのリアルなやり取りは面白く、元銀行員として興味深く読めた。元銀行員でなくても面白いのではないかと思う。改めてバブルの時代は、異常な時代だったと思わされる一冊である・・・


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2017年05月02日

【ハードワーク−勝つためのマインド・セッティング−】エディー・ジョーンズ



第1章 日本人独自のやり方で勝つ
第2章 どう戦略を立てるか
第3章 何が勝敗を分けるか
第4章 成功は準備がすべて

 著者は、2015年のラグビーW杯で日本代表ヘッドコーチを務めた人物。すでにW杯前に出版された本(『コーチングとは「信じること」−ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話−』)を読んでいるが、この本は著者自らがW杯後に執筆した一冊。

 「自分はどうせダメだ」というマイナス思考が成功を阻んでいるといきなり著者は語る。著者が日本代表監督に就任した時点での代表選手のスタンスだったそうである。「それを取り除きさえすれば、誰でも成功を手に入れることができる」と続く。そしてメッセージはシンプルにが鉄則。今本当に伝えたいことを一つに絞るのだという。これらは、ビジネスの世界でも通じる考え方である。

・課題を一つ一つ明確にする
・言葉をたくさん使い、口うるさく指導するより潜在意識に働きかける
・全ての選手や部下は公平に扱わなければならない
・コミュニケーションは一対一で弱いマインドセットを変えるには褒めることが一番
・同じメッセージを繰り返すと人はそれに即した行動をとるようになる
・教わる立場で教える:自分が部下だった時にどう教えて欲しかったか、
 どう扱って欲しかったかを思い出す
・口うるさく指摘したり命令したりするのではなく、自身を変える機会を与えてあげる
さすがコーチらしい言葉は、ビジネスの現場でも部下に対する態度として参考にすべきものと思える。

 一方、自分自身が実践するのに良い言葉もある。
・向上心のない努力は無意味
・正しい想定と十分な準備
・与えられたものをこなすだけでは本当の力は生まれない。
 自分で考えたり決断したりすることから大きな力が生まれる
・ミスは必ず起きる。ミスをしないのではなくどうカバーするか
・すべてを考え尽くして勝負に臨め
・感情で人を評価するな
・勇気とは慣れ親しんだ自分を捨てること
・成功は十分な準備がもたらす自分が呼び込む
・言い訳が成功を阻む
・何かを良くしようと思えば、まず自分を客観的に見つめることが大事
・心配ほど無意味なものはない。心配が何かを変えることはない

 一つ一つメモをしていると、気がつけばそれが膨れ上がっていく。日本代表が南アフリカに勝利したのは、決してフロッグではないと改めて思う。と同時に、これだけの人物をイングランドに取られてしまったのは、日本にとって大いなる損失ではないかとも思う。ラグビー好きにはもちろんのこと、ビジネスでも広く応用できる考え方に満ち溢れている。
 部下を持つ人ならば、是非とも一読すべき一冊だと思うのである・・・


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2017年04月28日

【ヤバい心理学−眠れなくなるほど面白い−】神岡真司



第1章 まずは“敵(相手)”を知る!
第2章 さらに“敵”を知る!
第3章 敵の心の“ツボ”を突く!
第4章 敵の心の“ツボ”をさらに突く!

 本のタイトルには、一種の「ブーム」みたいなものがあって、この本のタイトルにある「ヤバい」もその一つ。過去には、『超ヤバい経済学』なんて本を読んだこともあるし、アマゾンで検索すれば山のように出てくる。それはそれとして、この本を手に取ったのはタイトルに惹かれたからではなく、単に「心理学」に興味があったからに他ならない。だが、残念ながらちょっと期待はずれな本であった。

 冒頭、この本の目的として、「数多ある心理学のツールの中から『これだけは知っておきたい』という重要度A級の『ヤバい』コンテンツだけをこっそりあなただけにお届けするもの」と書かれている。考えてみたが、これを読んだだけでやめておけばよかったと今にして思う。といっても、この本が駄作と言いたいわけではなく、心理学に興味がある自分としては、過去にあちらこちらで読んだことのある内容で新鮮味がなかったという一言に尽きる。この本が悪いわけではない。

 とは言え、「相手の瞳孔がパッと大きく開いたら、その話題が相手にとって気になるもの」なんて解説には、「当たり前じゃねぇか」と思ってしまう。心理学など知らなくてもそのくらいわかるだろう。「目が動く方向で思考の内容がわかる」「口元に手をやりがちな人は精神的に他人に依存したがる」「耳や頰を触る癖のある人はサービス精神旺盛」「目に手をやる人は心にやましさがある」なんて行動面からの分析には、「なぜ」を説明してくれるともっとよかったかもしれないと思う。

・「絶対」という言葉を使う人は自信のなさの裏返し
・「いちおう」という言葉を多用するのは慎重でプライドが高く固定観念の強い、どちらかというと変更を嫌う頭の硬いタイプ
・「え〜と」を使いがちな人は依存心の強いタイプ
みんな自分に当てはまる気もするが、当てはまるところがないと(自分では)思う。

 できない人の2大口癖は、「大変だった」「時間がない」。これも心理学ならずとも肌で感じるところである。よくありがちな問いに答えると性格がわかるというものも合間に挟まれる。「絡まった釣り糸をどうするか」と聞かれ、瞬間的に「ぶった切る」と答えていたが、案の定、そのタイプは「プライドが高く、相手との縁をすぐに切ってしまうタイプ」と分析される。これも予想内の回答であったが、これは自分に当てはまっている気がする。

 ショルダーバッグを愛用する人は、「ビジネスとプライベートのバランスをうまく取りながら新鮮な気持ちで生活している自由人」とされているが、これも自分に当てはまっている気がする。「相手が激怒している時には、落ち着いたトーンの声で対応する」「相手が大切な取引先であるときは上司に乗り出してもらう」なんて部分は、心理学というよりも基本的なビジネススキルだろうと思ってしまう。

 わざわざ心理学とされなくてもいいような内容というのが大まかな感想。まぁそれでも「自分が相手に好意を持っているということを伝えるポイントは褒めることと相手の話をよく聞くこと」というところなんかは参考になった。すべてを否定するつもりはない。
副題にある「眠れなくなるほど面白い」というのは、個人的にはいかがかと思うが、初心者には面白いのかもしれない。そういう解釈をするのが良い一冊である・・・



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2017年04月27日

【はじめに言葉ありき おわりに言葉ありき】島地勝彦



 著者は、元「週刊プレイボーイ」の編集長。現在は引退してコラムニストとして生計を立てているようである。そんな方が、本領発揮し、様々なテーマについて語ったものがこの本となっている。著者のことを知ったのは、日経BPのウェブサイトである。「乗り移り人生相談」というコーナーの記事を何度か目にしたことがあり、その語り口が実に爽快だったことから興味を持っていた。だがこの本を手に取るまで、同じ著者によるものと気が付かなかったのは事実である。

 この本も、日経BPのサイトと同様、実に豪快・爽快である。いきなり不倫について肯定的な発言が出てくるし、自らも経験ありと語ってしまう。「オッパイの大きい女は決してバカではない」なんて堂々と語るし、「大きな乳を揉んだり乳首をくわえながら女の胸に顔を埋めて寝ることに無上のしあわせを感じる」などということも堂々と書いている。いや実にその通りなのだが、それをそう公言するには、自分はあまりにもシャイ過ぎるから羨ましい気もする。

 ご本人はもう70歳を超えているようなので、そうしたものから達観しているのかもしれない。そう言う立場からずばりと裏表なく本音で語る雰囲気が実にいい。もっとも、「おっぱいネタ」ばかりではない。
・社長の最大の仕事は、その次の社長を選ぶことである
・本は速く読むとすぐ忘れてしまい、ゆっくり読むとなかなか忘れない
・人を待たせるより、待ったほうがいい
・悔しいときは、奥歯を噛みしめて笑え
・コンプレックスを武器にした瞬間、人はコンプレックスから解放されて、ひとかどの人になる
・こつこつ積み重ねた努力が一瞬にして崩壊するときがある
などと言う至極真面目な言葉も普通に出てくる。これはやはり深い人生経験のなせる技なのであろう。

 一方、やっぱり元「週刊プレイボーイ」編集長のなせるワザなのか、男と女に関する話がやっぱり面白い。
・本番の恋愛を経験するには、スポーツと同じように数々のウォーミングアップが必要
・一つの深い恋情は、沢山の浅い情事にまさる
・男と女の愛にはタイムラグがある
・プレイボーイには巨根がいない
・女の臭いがしないと、男は女にモテないものである
・プレイボーイの秘訣は恋の二番手になることである
どれもこれも明るいところでは言いにくいようなことをさらりと語ってのけるところが実に良い。女の目を気にして綺麗事で飾るよりも、ズバリ思っていることを何の気兼ねなく語れるところは、真似てみたいと思わされる。

 さらに男としての生き方においても、至言が溢れる。
・ダンディズムとはやせ我慢である
・人生で大切なことは、一に健康、二に話し相手、三に身の丈の金
・今日の異端は明日の正統
・人は独りのときどう過ごすかで将来が決まる
・失敗を笑いに変えることができる人は、人生のワザ師である
・人生でいちばん楽しくて飽きないものは勉強である

 シングルモルトとシガーを愛し、思う通りに生きる人生は愉快に違いない。器の違いもあるから、真似すると言っても限度がある。されど一つの生き方の見本として、大いに参考にさせていただきたいと思う。自分がチマチマとして小さいと感じているなら、この方の生き方、考え方に触れてみると人生観が変わるかもしれない。自分もいずれこんな風に達観した境地にたどり着きたいと思う。気持ちの良さに溢れる一冊である・・・



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2017年04月25日

【侍】遠藤周作



 最近映画が公開されて話題になった遠藤周作の『沈黙』を読んだのは、結構前のことである。以来、他のも読んでみようと思いつつ月日を重ねて来たが、思い立って2冊目に手を出すことにした。それがこの本。

 『沈黙』もそうであったが、この本も江戸時代初期が舞台。そしてベースにあるのが「キリスト教」というのも同じ。時に徳川家康が幕府を開き、豊臣家はまだ残っていて、すなわち時は大坂夏の陣の前である。東北地方のある藩の下級武士である侍は、ある時上役から呼び出される。そして牢から出された宣教師らとともにノベスパニヤに向かい、交易を開始する交渉をしてこいと命じられる。召出衆という身分の低い立場の自分がなぜと訝しがりながらも、かつて領地替えとなった所領を取り戻すチャンスでもあると侍はこれを受ける。
ノベスパニヤと言われてもわからなかったが、それは現在のメキシコらしい。

 一方、使節一行の案内役となるのは宣教師のベラスコ。ベラスコは日本語を話す通辞でもあるが、時に幕府によるキリシタン禁制の動きが出ており、こうした日本における禁制の動きは、対立するペテロ会の失策であり、自分に任されれば時の権力者と協調し布教ができると考えている。この交易を実現させ、ローマ教会の承認を得て日本における布教を主導しようと目論んでいる。

 こうして、船が造られ、侍を含む4人の召出衆が使者となる。使者はそれぞれ4人の供の同行を許され、他にも同船する商人らとともに船に乗り込む。そして出港の日を迎える。実は、侍は現在の領地で良いと思っている。元の知行を望んでいるのは伯父であり、その手前調子を合わせているのである。寡黙な侍は、そんな心の内を叔父に話せない。そして内心では、故郷を遠く離れることになるこの役目を嫌がっている。

 途中まで侍の本名は伏せられたままで、タイトルにある通り「侍」と称されたまま進んでいく。しかし、その名は長谷倉六右衛門と明かされる。実は、これは伊達政宗によって派遣された慶長遣欧使節団の支倉常長(支倉六右衛門)をモデルとしているとのこと。史実はそうだが、実は細部のところはわかっておらず、それを著者が小説という形で補って描いたものの様である。

 それはともかくとして、一行は暴風雨にさらされたりして、苦難の航海を続けていく。使者の1人である松木は、自らの役目を「捨石」と見なしている。殿の書状を持参する使節としては、自分たちの身分が低すぎるのがその理由。しかし、侍はその意見を否定し、上司の思いやりのある言葉をその理由とする。このあたり、冷静に分析する松下と侍たち「信じる」派との心理描写が面白い。

 侍たちからすれば、お役目として受けた以上、それに従わないといけない。何かあれば腹を切らなければならない時代である。そして、キリスト教との関わり。侍も初めはキリスト教を理解できないでいる。その心情はよくわかる。しかし、やがてお役目のためにキリシタンに改宗することを迫られる。断ればお役目を果たせず、さりとて心から信奉できないキリスト教に改宗する意味はあるのか、故郷にある家族を裏切ることになるのか、その葛藤がよく伝わってくる。

 そして一行は長い苦難の旅の果てに、ローマ法王との謁見に臨む。お役目と自らの心中との葛藤。苦難以外の何物でもない旅。そして予想もしなかった国内の変化。ラストに待つ理不尽な結末に、なんとも言えない気分になる。果たして、自分が主人公の立場だったらどう行動するであろう。そして実在の支倉常長の旅は実際はどんなだったのであろうと、思いは馳せる。

 それにしても、この宗教というものは、実に重いと思う。神などいないと合理的に考える考え方も理解できるが、キリスト教がなぜ世界中に蔓延していったのかということも理解できる。エンターテイメントとしても十分楽しめるが、「宗教とは何なのか」という疑問に対し、ヒントを与えてくれる要素もある。三浦綾子の『氷点』は、キリスト教の原罪という概念を良く理解させてくれたが、この本もキリスト教に帰依する理由を良く理解させてくれる。ただの小説として捉えるだけでは不十分だろう。

 遠藤周作の著書については、まだまだ興味深いものがある。慌てずゆっくりと一つ一つ読んでいきたいと思わされる作家である・・・



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2017年04月24日

【運命をひらく】本田健



序 章 5分で理解する「松下幸之助」の生涯
第1章 人間関係の達人になれば、運命はひらける
第2章 衆知を集めて任せれば、運命はひらける
第3章 経営のコツを知れば、運命はひらける
第4章 素直な心で物事を見れば、運命はひらける
第5章 運と愛嬌があれば、運命はひらける
第6章 世界を愛し、与え続けた松下幸之助
終 章 感謝の心が、運命をひらく

 著者は、『ユダヤ人大富豪の教え』シリーズでおなじみの方。もともとお金の専門家として名が通っている方であるが、実は昔から松下幸之助のファンなのだそうである。そこからこの本の話があり、改めて資料を研究し記したという。何でも45巻に及ぶ『松下幸之助発言集』を3セット買い集め、自宅、オフィス、別荘に置いて聞いたそうである。ご本人の著作もいいが、こういう「研究本」も「知っているつもりで実はよく知らない」私の様な人間には良いと思う。

 著者は、基本的なスタンスとして、「松下幸之助が生きていたらどんな話を聞きたいだろうか」と考え、好きなエピソードを集めていったそうである。その松下幸之助であるが、没後間も無く30年だそうである。亡くなったのは、私の学生時代であるが、当時のニュースの記憶はあまりない。関心がなかった証拠で、ちょっと恥ずかしい気がする。

 松下幸之助が世界的な注目を集めた理由は、以下の通りだと著者は分析する。
1. ビジネスで成功し、億万長者となった
2. 思想家、哲学者としての顔も持ち、著作はベストセラーを連発
3. 雑誌、出版社(PHP研究所)のオーナー
4. 経営者だけでなく、一般の人からも広く尊敬されている
5. 学歴もなく貧乏だったところからスタートし大成功した
このあたりは、私の認識とも一致していてホッとするところである。

 松下幸之助は、1894年の生まれ。8人兄弟の末っ子だった。父は小地主であり資産家であったが、幸之助が4歳の時に米相場で失敗して破産。極貧生活となる中、父母兄弟姉妹と幸之助が26歳になるまでにみんな亡くなったという。「神も仏もない」と嘆いてもおかしくない状況である。そして本人は9歳で丁稚に出る。このため小学校しか出られずに終わる。朝5時から夜10時までの仕事。休みは年に2回。食事は一汁一菜、魚がつくのは月2回。今なら「ブラック」以外何者でもない。

 学歴もなく、さらに体も弱く病気がちで、貧乏の極みだった幸之助。それでも億万長者になった理由を著者は次の様に分析する。
1. 学歴がなかったから、誰からでも話を聞き学んだ
2. 病気がちだったので、自然と部下に仕事を任せるしかなかった
3. お金がなかったので、できる限りお金を使わずに物を作る工夫をした
すべてに恵まれているからといって、成功が約束されるわけではなく、何もないからダメだというわけでもないのである。

 丁稚時代に初めて自転車を売った時のエピソード、部下のお弁当を味の違いまで意識して手配したエピソード、出てくるエピソードはどれも唸らされるものである。トースターを開発して持って来た部下と取引先の社長が幸之助にそれを見せに来る。幸之助は重役会をキャンセルして話を聞く。その人柄に触れ、初めは松下電器に距離を置いていた取引先の社長がこれからは松下電器一筋になるとファンになる。「この人と一緒に仕事がしたいと相手に思わせる力は圧倒的」と著者は評価するが、その評価に寸分も異論はない。

 「上に立つ人が自分の部下は自分より偉いなと思うかアカンなと思うかによって商売の成否が分かれてくる」
「部下が動いてくれないと嘆くリーダーは、自分の人間的魅力がまだ足りないだけ」
リーダーの立場にある人は、心しないといけないだろうが、自分を含めこの様な考え方ができる人はほとんどいないのではないかと思わされる。

 「商売でモノを売る時、大事なものは一所懸命に売りたいという熱意から生まれるいろいろの姿」
「雨が降ったら傘をさすのと同じ様に当たり前のことをやる」
「生涯大事にしたいことは『素直になる』こと」
1つ1つの言葉が重い。

 人を採用する時に、「運がいいかどうか」を基準にしたというのは有名な話。それは運の良し悪しは、結局「事実をどう解釈するか」ということだという考え方かららしい。雨が降ったという事実も、解釈によって良し悪しは分かれる。どんな状況でも希望を捨てないこと、運が悪いと考えずに前向きに考えること、そういう人であれば確かに何事でもうまくいくだろう。実に深い基準だと改めて気付く。

 著者が、本を書きたいと思ったのも無理からぬ話であり、この本一冊ではまったく足りないであろうことは想像に難くない。一読して今度はご本人の著作も改めて読んでみたくなった。温故知新ではないが、今度は『道をひらく』を読んでみようと思う。改めて松下幸之助を知ることができる良い本である・・・


posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 人生・哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする