
一度読んだら絶対に忘れない物理の教科書 - 池末 翔太どうやらこれはシリーズもののようで、個人的には『一度読んだら絶対に忘れない生物の教科書』(読書日記1615)に続く2冊目。今度は高校時代に私にとって2番目に苦手な科目であった物理である。
冒頭、物理には一つのストーリーがあり、公式を丸暗記しても絶対にダメだとされる。公式を暗記した記憶はないが、それが良かったのか、それすらしなかったのかは微妙である。著者としては、公式が生まれた背景を理解しないとダメというのはその通りなのだろう。そして高校物理は実は古典物理学と言われるもので、大学物理は量子論となっているとする。高校物理は現代物理学を学ぶ前に知っておきたい物理の歴史なのだという。文系学生だった私は量子論には辿り着けなかったということである。
まず取り上げられるのは力学。その目的は、物体がいつどこにいるかを知ること。物理学の目的は、自然現象すべてを何かしらのルールのある振る舞いと考え、それを記述することとする。その単位の一つは加速度で、m/s2で表す。ただ、これが「メートルまいびょうまいびょう」と読むのだという説明には、悲しいことに「そうだったっけ?」と思わざるを得ない。その数式によって表される面積は移動距離に等しいという説明には既視感がある。
力の発生には「作用・反作用の法則」があり、力の釣り合いとは加速度ゼロの状態。仕事とエネルギーの説明はついていけていた分野である。力学的エネルギー=運動エネルギー+位置エネルギーであり、投げたボールが地面に設置せず地球をぐるりと一周する速度を第1宇宙速度と言い、大気圏から飛び出す速度を第2宇宙速度と言う。ケプラーの法則は、宇宙小僧だった自分には馴染みのある法則である。
続いて熱力学。これは熱現象を力学の言葉で語ろうという試みであるとする。ニュートン力学と確率統計論を融合した分野だとする。熱力学の第一法則はエネルギー収支のこと。気体の圧力を粒子の運動として捉えるが、よくそういう発想に至ったものだと思わざるを得ない。物理をなんとなく難しいと思う理由がこのあたりにある。さらに波動に至るとそれは増す。波の現象を細かい粒子の動きとして力学的に捉えるというところがなかなか理解し難い。
波とは媒質の振動が空間を伝播していく現象。波動現象は力学的波動と電磁波(光)とに分けられる。よく知られたドップラー効果もここに分類される。電磁気学もまた粒子の運動として捉えられる。電気的な力と天体同士の引き合う力(万有引力の法則)が同じ式で書けるというのは驚きのようであるが、物理音痴にはピンとこない。マクスウェル方程式、ガウスの法則、オームの法則となんとなく聞き覚えのある法則もその意味は難しい。
最後は原子物理学。古典力学から現代物理学への転換期にあたるもの。前期量子論、光電効果と説明される。光の性質は波か粒子かという議論には聞き覚えがある。そしてアインシュタインが光は波であり粒子であると答えたことも。そして有名な「E=mc2」の公式。質量とエネルギーは同じだということを表している。原子核をバラバラにすると重さが変わるのだとか。質量保存の法則に反すると言われても、原子物理学の世界は理解が難しい。
原子核の崩壊によって放出される「放射線」、確率的に生じる原子核の崩壊と説明は続く。しかし、原子の世界はアインシュタインすら迷走した世界であり、一般人には難しい。「神様はサイコロを振らない」という言葉も有名である。タイトルでは「一度読んだら絶対に忘れない」となっているが、文系脳には難しい。それどころか3回読んでも理解できるだろうかと思ってしまう。しかし、面白い世界であることは間違いない。
長く物理学から離れていた文系人間には難しくもあるが、それでもわかりやすくもある。もう一度学び直してみたいと思う者には、ちょうどいいと思える一冊である・・・
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