2009年09月26日

【心眼力】野口義則

    

著者の本はこれで3冊目である。
内容的には心豊かに人生を送るためのヒントが書かれたものである。
最初に読んだ「鏡の法則」は許しをテーマにした父と娘のショートストーリー。
涙腺が緩くなったこの頃思わず涙がこぼれてしまったが、物語形式でテーマを語るのは次の「3つの真実」でも受け継がれたパターンである。

そもそも世の中は思い通りになるものではない。
であるとすれば、自分自身がそれらをどのように捕らえるかによって人生の有り様は大きく変わってくる。
「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」のである。

心眼力とは
「心の目で真実を見る力」
「困難の中にも幸運の芽を見出す力」
「最も大切なものに意識をフォーカスする力」
とされている。

そしてその心眼力を磨くための方法が記されている。
「心の目で何を見ているか?」「意識を何にフォーカスしているか」という問い掛けは、簡単なようでいて難しい。
他人の行動が腹立たしかったり、イライラしたりするのは日常だ。
だがそれらをどう捉えるかによって心の有り様は劇的にかわってくる。
そんなヒントが実例とともに満載されている。

「夜空の月は満月の時もあれば三日月の時もある、だが本当の月はいつでもまん丸だ」という例えがよく真理を表している。
人生をよりよく生きるためにはどうしたらいいのか?
そんなに難しい事ではなく、まず「心の目で何をどう見るか」を変えてみればかなり楽になるのではないだろうか。
そんな思いに駆られるのである。

忙しい日常で心に余裕をなくしているような時には立ち止まって読んでみるのもいいかもしれない。
そういうゆとりだけは常に持っていたいと思うのである・・・


心眼力 -柔らかく燃えて生きる30の智恵- (CD付)

心眼力 -柔らかく燃えて生きる30の智恵- (CD付)

  • 作者: 野口 嘉則
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2008/11/13
  • メディア: 単行本




鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール

鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール

  • 作者: 野口 嘉則
  • 出版社/メーカー: 総合法令出版
  • 発売日: 2006/05/10
  • メディア: 単行本




3つの真実 人生を変える“愛と幸せと豊かさの秘密”

3つの真実 人生を変える“愛と幸せと豊かさの秘密”

  • 作者: 野口嘉則
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2008/05/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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2009年09月24日

【重力ピエロ】 伊坂幸太郎

「オーデュポンの祈り」「ゴールデンスランバー」と伊坂幸太郎の作品を読んだが、どれも変わったタイトルだなというのが第一印象だ。
タイトルはできればストーリーとマッチしているのがいいと個人的には思うのだが、関連性があるようでよくわからないというのが伊坂流なのかもしれない。

主人公は兄貴である泉水。
弟の春と二人の兄弟のこれは物語である。
兄弟といっても異父弟である。
すなわち、春は母親がレイプされてできた子供となっている。
レイプされてできた子供が歩む人生というのが一つのテーマとなっている。

というと三浦綾子の「氷点」を連想してしまう。
あれは「自分の子供を殺した殺人犯の娘」を育てるという話であった。
「汝の敵を愛せよ」というキリスト教の精神をテーマに、非クリスチャンには誠にわかりにくい「原罪」というものを見事に表した名作だ。
そんな重いテーマに挑むのかと思いきや、伊坂幸太郎の世界は非常にライトだ。
重力のない空間を漂うピエロのように・・・

そうした重荷を背負った兄弟が、仙台市内で連続して起こる放火事件に巻き込まれていく。
(そういえば「ゴールデンスランバー」も仙台市内の話であった)
昔からの兄弟のエピソード。
付きまとうレイプの影。
兄弟のそれぞれの仕事と父親。
無作為にばら撒かれたエピソードというピースが一つ一つ丹念に繋ぎあわされていく。
終わってみればフワフワとばら撒かれたピースが一つの見事な絵になっている。
どうだ!という力みもなく、気がついたらできていたという軽い感覚が最後まで続く。

最初と最後は同じ文章が綴られる。
謎のタイトルがストーリーと解け合う。
決して重くはなく、かといって浅くもない。
伊坂幸太郎の世界の一つの完成形といった感じがする作品である。



重力ピエロ

重力ピエロ

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: 単行本



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2009年09月19日

【ああ監督】 野村克也

     
東北楽天イーグルス野村監督の著作を続けて読んだ。
タイトルにもある通り、これは「監督とは」を中心とした野村監督の考えをまとめたものである。

監督は、現役生活27年、監督生活24年という球界でも驚異的な期間、その地位を維持している。
日本ではほとんど話題にならないが、メジャーリーグ関係者からは絶賛されたという。
(人気一辺倒の日本の球界にちょっと苦言を呈している−「これが長島だったら大変な騒ぎだっただろう」と・・・)
確かにそうだろう。

最近では野村監督といえば「ボヤキ」が人気であるが、あれもいろいろと考えての事らしい。
楽天イーグルスのホームページではそんな監督のボヤキをわざわざ専用ページを作って紹介している。
「東北楽天イーグルス」
過去に遡って読んでみてもおもしろい。

そんな野村監督が、過去の名監督を紹介し監督として必要な要件を論じていく。
そして今は本当に人材がいないと嘆く。
野村監督にかかればジャイアンツの原監督も西武の渡辺監督もまだまだだという。
(もっとも「期待するから苦言を呈する」という野村監督の流儀からすれば、名前も上がらない他の監督よりはいいのだろう)
そんな野村監督は中日落合監督からすると「唯一野球の話ができる相手」らしい。

そんな監督論を聞いていると、いつのまにか「監督」に限らず人を指導する立場のものであれば誰にでも当てはまるようである。
特に昨今は若者も精神的に脆くなっており、叱ればすぐにシュンとなってしまう事から「褒めて伸ばす」流儀が主流になっている。
原監督や渡辺監督がそうらしい。
しかし、叱る事も大切だと野村監督は説く。

例によって監督自身の長い経験からのエピソードを交えて紹介されるそれらのエッセンスは読み物としても面白い。
残念ながら楽天のフロントは野村監督を今期限りと考えているようである。
ただ現在3位でクライマックスシリーズの出場にあと一歩のところまで来ているだけに、このまま続けてもらいたいと思わずにはいられない。
チームが出来た時には12球団中の最弱チームがここまできたのだから、その手腕はやはり一流である。

監督の歩んできた人生。
数々のエピソードと珠玉のエッセンス。
こんな本を読んでしまうと楽天を応援したくなる。
勝ってそして来年以降も監督を続けてほしいと願うところである・・・

      
あぁ、監督    ――名将、奇将、珍将 (角川oneテーマ21)

あぁ、監督 ――名将、奇将、珍将 (角川oneテーマ21)

  • 作者: 野村 克也
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/02/10
  • メディア: 新書



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2009年09月18日

【野村主義】 野村克也

   
   
著者は東北楽天イーグルスの野村監督である。
実は野村監督の本はもう何冊も読んでいる。
野球人の本としてみると意外なほど(と言ったら失礼か)面白いからである。

それもそのはず、野村監督は現役引退後、9年間野球評論家として過ごしていた。
その間に多くの著書を読み、いかにして言葉で伝えるかを学んだという。
現役時代から「精神論」全盛のスポーツ界からの脱却を図り、「シンキングベースボール」の礎を作った人であるから尚更なのかも知れない。

「野球選手は引退してからの人生の方が遥かに長い。だから必要なのはまず人としての人間力だ」と主張する監督は、それゆえに単なる野球論だけに終始しない。
野球の経験から導き出されたエッセンスは、一般人にとっても大いに役立つものである。

監督がまだ現役だった頃の事を覚えている。
パリーグという地味なリーグの南海というこれも東京では地味な球団にて、一人三冠王になるなど気を吐いていた。
監督兼選手としても活躍していた。
しかし、その存在感は一言で言えば「暗い」。
本人も王、長島のONがひまわりだとすると自分は月見草だと評していたが、それも言いえて妙である。

ヤクルトの監督になって何回も優勝しても、そのイメージは変わらなかったし阪神の監督をやってずっと最下位だった時も、その暗いイメージから好きにはなれなかった。
しかし、シダックスそして楽天と、ずっと監督として迎えられてきたのには、外見からくるイメージとは違うそれなりの理由があったのである。
それが数々の著作を読めばわかるのである。

野球のエピソードものとしての面白さもあるし、にじみ出る人生のエッセンスもある。
あちこちの本で何度も出てくるエピソードもあり、数を読むと重複感はあるのだが、それでも読まずにはいられない。
「評価は他人が下したものこそ正しい」
何度も出てくるこの言葉は自分でもいつの間にか意識している良い言葉だと思う。



野村主義

野村主義

  • 作者: 野村 克也
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2009/05/27
  • メディア: 単行本



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2009年09月11日

【リーダー・パワー】 ジョセフ・S・ナイ

ハーバード大学ケネディスクールのジョセフ・S・ナイ教授によるリーダーシップ入門書である。
歴史上の人物からサル山のボス猿にまで各々のリーダーシップを類型化する。

またリーダーシップの力をハード・パワーとソフト・パワーとに分類。
ハード・パワーとは強制力によって相手を従わせるパワー、ソフト・パワーとは相手の心を引きつけるパワーとされる。
そしてリーダーばかりでなく、リーダーに従うフォロワーとの関係でもリーダーシップを捉える。

こうしたリーダーシップの定義をアイゼンハワー、ルーズベルト、ケネディらの米大統領、チャーチルにヒトラーなどの人物を具体的に当てはめて解説してくれる。
それゆえにイメージがわいて理解を助けてくれる。

「リーダーシップは主として本から学ぶものではない」と著者は言う。
「しかし、・・・歴史や心理学から教訓を学び、必要なスキルについて認識し、よりよい理解を得ることができる。」とも言う。
確かにそうだろう。
体系的にきちんとまとまっているから、「リーダーシップとは」と考えるときにはよい入門書である。

ただ、文章は硬い。
初めのうちは大学で講義を聞いているような気分になる。
そういった知的雰囲気が好きな人には苦にならないが・・・
たまにはこういう本を手にとってみるのも悪くはないと思う。



リーダー・パワー

リーダー・パワー

  • 作者: ジョセフ S ナイ
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2008/12/17
  • メディア: 単行本



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2009年09月10日

【世界は感情で動く】マッテオ・モッテルリーニ

タイトルに惹かれて手に取った本である。
「行動経済学からみる脳のトラップ」という副題にある通り、これは人間の行動心理学の本と言える。

「鈴木氏は車に乗って会社に向う途中渋滞に巻き込まれた。会社に着くまで20分ほどかかったが、最後の5分は渋滞から抜け出して快適に走った。一方山田氏も渋滞に巻き込まれ、最初の5分こそ快適に走れたものの、残り15分はのろのろ運転であった。
さて、会社に着いた時、どちらがよけいにイライラしていたか?」

理屈的には15分の渋滞と5分の快適走行ではどちらも同じなのだが、感想はまったく異なる。
こんな問い掛けが次々と出てくる。
人間の感じ方というのは実に興味深い。

『「まだ半分もある」と「もう半分しかない」』、「表が出たら私の勝ち、裏が出たらあなたの負け」、「占いはどうして当たるのか」など各章のタイトルだけを追っていっても興味がそそられる。
人間というのはつくづく非合理的なのだ、と感じざるを得ない。
自分は極めて合理的だと考えている人でも、この本に出てくるようなケースに遭遇したらきっと非合理な行動を取っているに違いない。

そういえばジャンボ宝くじが発売されると決まって有楽町の宝くじ売り場の1番窓口に長蛇の列ができる。
隣の2番、3番窓口は閑古鳥なのに、である。
論理的に考えれば、どこで買っても宝くじの当選確率は変わらないが、それを知ってか知らずかの行列。
アレなんかも「世界は感情で動く」いい例ではないか。

そんな心理学系がお好きな方には面白い本だと思う・・・


世界は感情で動く (行動経済学からみる脳のトラップ)

世界は感情で動く (行動経済学からみる脳のトラップ)

  • 作者: マッテオ・モッテルリーニ
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2009/01/21
  • メディア: 単行本


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2009年09月09日

【聖女の救済】東野圭吾

天才物理学者湯川学が難事件に挑むガリレオシリーズの最新作である。
ほぼ同時に出版された「ガリレオの苦悩」が短編集であるのに対し、こちらは長編。
例によってぐいぐいと引きつけられ、一気に読んでしまった。

その昔小学生の頃、「怪盗ルパン」に夢中になっていた事がある。
あれこれと推理を働かせて活躍するアルセーヌ・ルパンを夢中になって読んだものである。
推理モノにこれほど夢中になるのは、その時以来のような気がする。
このガリレオ・シリーズは本当に面白い。

今回はとある夫婦の話。
別れを切り出された妻綾音が夫を殺害するところから物語は始まる。
始めに事件ありき。
そして草薙・内海の刑事コンビが事件を担当する。
ところが、壁にぶつかり湯川のところを訪ねる・・・
パターンは「容疑者Xの献身」と同じである。
今回はそれにちょっと味付けがあるのだが・・・

「綾音夫人はどうやって夫を殺したか」
今回はこのトリック一点だけ。
何だか湯川の出る幕でもないように思われる。
しかし、このトリックが実に奥深い。
全貌がわかった時にはため息が出てしまった。
間宮係長が、「よくこんなトリックを見破ったな」と感心するが、感心するのは間宮係長だけではなく自分もそうである。
そしてそのトリックには「実証できない」という問題点があるのである・・・

ラストに一気に明らかになるトリックは本当に見事。
だが、物語の醍醐味は、実はそれだけではない。
女性刑事内海の推理もそうである。
なかなかどうして鋭いところをついてくるのである。
草薙や間宮係長も唸る推理力はドラマに味わいを持たせてくれる。
内海刑事の推理だけでも読み応えはありそうである。
そして出張ではipodで福山雅治を聞いたりする。
東野圭吾もちょっと遊び心を発揮している。

「容疑者Xの献身」もそうであったが、犯人には同情すべきところもある。
ただの犯罪者として描かないところが東野流だろう。
犯行の影に隠れた悲しい心。
ただの推理小説にはできない、深い味わいの人間ドラマである・・・


聖女の救済

聖女の救済

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/10/23
  • メディア: 単行本




ガリレオの苦悩

ガリレオの苦悩

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/10/23
  • メディア: 単行本



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2009年09月05日

【ゴールデンスランバー】 伊坂幸太郎

「ゴールデンスランバー」というタイトルを聞いた時、咄嗟にビートルズの曲が頭に浮かんだ。
しかしまさかビートルズの曲の事だとは思っていなかった。
何か他に意味するところがあると思っていたのだ。
けれどもそれはやっぱりビートルズの曲のタイトルから取ったものであった。
ビートルズ最後のアルバムである「アビー・ロード」のB面(昔のレコードは裏表があったのだ)に収録されているメドレーの一曲だ。
好きな曲の一つでもあるからちょっと内容には期待した。

しかしながらその期待は裏切られる。
折に触れて「ゴールデンスランバー」が取り上げられるが、過ぎ去りし時を懐かしむ象徴としての意味だけでストーリー自体には何の関わりあいもなかった。
といって不満というわけではない。
結論から言えばかなりハラハラドキドキのストーリーで面白かった。

舞台は仙台市内。
若き総理大臣がパレードの途中で何者かによって暗殺される。
そして一人の容疑者として青柳雅彦が浮上する。
しかし当人はまるでその事を知らない。
そればかりか周りはすべて彼が犯人であるという前提で動いていく。
それはあまりにも巨大な陰謀に思える・・・

伊坂幸太郎の作品としては「オーデュポンの祈り」を読んだ事があるが、一見ありえなさそうなストーリーがリアルに進んでいく様子は何となく似通っている。
ケネディ大統領暗殺犯として知られるオズワルド。
しかし、現在までにその暗殺事件については様々な事実が判明し、むしろオズワルドは犯人ではなかったという説が有力である。
だがオズワルドは逮捕直後に殺害され、真相は今もって大統領令で2039年まで封印されている。

主人公の青柳雅彦も「オズワルドにされる」という恐怖から自首もできない。
絶対絶命の状況下で一体どういう結末になるのか読む方も見当がつかない。
次々とありえない展開が連続し、最後まで一気に読ませてくれる。
自分が同じ立場だったらどう行動するだろうか。
しかも警察でさえ頼りにならないとしたら・・・
そんな想像をしながら読むと面白い。

納得の直木賞受賞作品である。


ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/11/29
  • メディア: ハードカバー



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2009年09月04日

【交渉術】 佐藤優

著者の佐藤優氏は元外務省国際情報局主任分析官。
主にロシアを担当し、在ロシア連邦日本国大使館に勤務していた人物である。
2002年に背任罪等で有罪判決を受け、現在上告中である。
そんな人物が書いた「交渉術」の本である。

しかしながら「交渉術」とはあるものの、これを読んで交渉のテクニックが上達するかというとそうではない。
これは著者が主として北方領土返還に向けて奮闘してきた、日本の外交史の影での交渉の記録なのである。
したがって「交渉術」を身につけようと思ってこの本を手に取った人はちょっと肩透かしを食らう事になる。

だが、この交渉記録はタダモノではない。
なにせ、エリツィン、プリマコフ、ブルブリスといったロシア政府高官や、橋本・小渕・森といった歴代首相、それに師事した鈴木宗男議員ら日本の政治家の面々とのやり取りが赤裸々に描かれているのである。
普段は窺い知る事のできない「交渉の裏側」を垣間見る事ができるのである。
そういう意味では読み物としては非常に面白い。

今でこそ鈴木宗男議員はバッシングを浴びて失脚し、著者も訴追を受けて拘留されるハメとなったが、実は北方領土返還はかなり現実的なところまで行っていたようなのである。
時の橋本政権の崩壊とエリツィンの体調悪化がなければ、今頃は北方領土に日の丸が翻っていたのかもしれない。

そんなスパイ小説顔向けのストーリーにぐいぐいと惹き付けられる。
著者はロシア人の性格と習慣を理解し、まさに相手の腹に飛び込んでいく。
そんな氏の交渉術は、酒に弱い自分にはちょっと真似できない。

田中真紀子元外相が、外務省を指して「伏魔殿」と称したが、その善し悪しは別としてその意味がわかったような気がした。
普段は窺い知れない歴史の裏側に興味のある方にはお勧めかもしれない・・・


交渉術

交渉術

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/01
  • メディア: 単行本



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