2009年11月28日

【反転 闇社会の守護神と呼ばれて】 田中森一

著者は元特捜検事であり弁護士であったが、現在は詐欺事件で起訴され上告中の身である。
そんな著者が半生を振り返った自伝がこの本。

もともとは長崎平戸の貧しい農家出身。
朝から晩まで身を粉にして働く両親の下に生まれる。
「勉強よりも家のことを手伝え」という父親に対し、影でそっと「勉強してここから抜け出せ」と言う母。
そんな環境下で苦労して高校・大学と卒業し司法試験を一発で突破した前半生は立志伝中というべきもの。

検事にはなったものの、東大法学部卒がエリートとして幅を利かせる検事社会では「現場叩き上げ」として活躍する。
被疑者を取り調べ、他の検事が匙をなげた被疑者から自供を引き出す。
そして大阪地検から東京地検特捜部へと出世して行く。
この時期は正義感に燃え、仕事に埋没していた時期であり、このままいけば有能な検事として終えられたのであろう。

ところが目に見えない力による壁にぶちあたるようになる。
政治家からの圧力だったり、上層部からの圧力だったり。
やはり新聞やテレビで見聞きしているものがあるようである。
また闇の部分の紹介も興味深い。
捜査予備費というものがあって、被疑者一人起訴して公判請求すれば5万円、略式起訴なら3万円、起訴猶予でも1万円が支払われ、それは検事のこずかいとなるというものである。
「選挙違反など100人単位で逮捕者が出る事件では検事正などはウハウハだった」という記述には、やっぱりなと思わせられるものがある。
官の世界には税金を懐に入れる様々な裏帳簿があるのである。

そうした圧力に嫌気がさして著者は検事を辞める。
バブル時期に弁護士を開業し、やがて「元検事」の肩書から裏社会とのつながりが出来ていく。
ヘリまで買った金満振りはバブル期ならではの凄さだ。
しかしやがて検察にマークされ詐欺で起訴される。

事件自体は「覚えがない事」として公判で争っているが、もう弁護士はやりたくないと語る。

有罪か無罪かはどうでもいいこと。
一人の男の波乱に飛んだ人生として面白い。
新聞をにぎわせた事件や人物の裏側も知ることができて興味深い。
一読の価値はある一冊である。



反転―闇社会の守護神と呼ばれて

反転―闇社会の守護神と呼ばれて

  • 作者: 田中 森一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 単行本



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2009年11月26日

【マスターの教え】 ジョン・マクドナルド


副題として「富と知恵と成功をもたらす秘訣」とあるが、典型的な自己啓発本である。
オリジナルは1929年の出版らしいが、当時の出版社はすでになく、著者の事も何もわかっていないと言う。
偶然発見され、再出版となったと聞くと何やら興味をそそられる。
期待してページをめくった。

短いページ数であっという間に読めてしまった。
しかしながらその秘訣というのも何やらよくわからない。
「内なる心」と「外なる心」に栄養となる言葉を投げかけて育て、するとやがて宇宙の法則によって成功へともたらされるといった内容が書かれている。
たぶん、書かれている通り何度も読み返し、反芻し、心に刻む事によって違うものが見えてくるのかもしれない。

だが、残念ながら凡人にはあまり響いてこない。
一心不乱に試してみれば効果はあるのかもしれないが、またの機会にしようと思った。
なかなか成功への道は遠そうである・・・


マスターの教え

マスターの教え

  • 作者: ジョン マクドナルド
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2001/06/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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2009年11月22日

【金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか】ローレンス・マクドナルド+パトリック・ロビンソン

2008年9月15日。
創業158年を誇るリーマン・ブラザーズが世界最大の負債を負って倒産する。
その衝撃波は、アメリカ国内はもとより世界中に伝播する。
今なお「リーマン・ショック」という言葉で語られ、その傷跡が各国に生々しく残っている事件である。

その世界最大の倒産劇を、元リーマン社員であった著者が語ったのが本書である。
何気なく手に取ったのだが、ぐいぐいと中に吸い寄せられるようにして読みきってしまった。
内容的にも興味深く、読み物としてもまた一級品に面白い。

前半は著者の出世物語。
金融界を志すものの、当時は大手有名大学出身でなければウォールストリートデビューなど夢のまた夢。
無名大学出身の著者マクドナルド氏は、入社希望の手紙を数十通送るがすべてだめ。
営業ができれば、とアドバイスを受けてポークチョップの営業マンからスタートする。
そして3流証券会社に足場を得て、会社を経営し、ついにリーマン・ブラザーズの一員となる。
その成功物語が前半の見所。
これはこれで面白い。

そしてやがてサブプライム・ローン問題として世界経済に大打撃を与える事になる出来事の成り立ちを解説してくれる。
クリントン政権下で、貧しい人々に住宅をという動きが起こる。
銀行と証券の垣根を作ってきたグラス・スティーガル法が廃止される。
そんな動きが後々大問題になるなどとは誰も想像できない。

そして、融資の常識を無視した住宅ローンが登場し、目先の利益のみを追う住宅ローン会社と営業マンが見境もなくそれを売って行く。
3年後には金利が跳ね上がるローン(400ドルの返済額が2,000ドル〜2,500ドルへと増額される)、30万ドルの家を購入する時に33万ドルのローンを組む(頭金なしで家を取得しさらに現金3万ドルがプレゼントされる)というローンタイプもあったというから無茶苦茶だ。
さらにそれを字の読めない(したがって契約書も読めない)人にも貸していったという。
そしてローン会社はその債権を証券化し、リーマンらの投資銀行がそれを買い取って世界中に販売して行く・・・

驚くべき事にリーマンの内部には早くからその危険性に気付いた人々がいて警鐘を鳴らしていた。
2006年の時点ですでにデルタ航空の破綻とGMの破綻を予測していた人々がちゃんといたのである。
GMについては、「あれは自動車メーカーじゃない、副業で車を作っている福利厚生施設だ」と断言しているのである。

だが、そうした理性的な声は経営陣に届かない。
幾度となく続いた警告はすべて無視され、有能な人々が次々と愛想をつかして去っていく。
そうした崩壊への道のりを著者は絶望的な眼差しで見つめていく。

そうした記述からわかる事は、リーマンの破綻はまさに経営陣によってミスリードされた人災であった事がわかる。
サブプライム問題の本質、世界最大の倒産劇のリアルストーリー。
起こるべくして起こってしまった問題をこれほど面白く読ませてくれるものはないかもしれない。
一読の価値は十分にある一冊である。


金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか

金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか

  • 作者: ローレンス・マクドナルド
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2009/09/17
  • メディア: 単行本



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2009年11月14日

【世界一の庭師の仕事術】 石原和幸

サブタイトルに「路上花屋から世界ナンバーワンへ」とあるように、筆者は地元長崎の路上で花を売るところからスタートし、そしてイギリスで開催されるチェルシー・フラワーショーというガーデンコンテストに出場し3年連続でゴールドメダル獲得という世界で唯一の快挙を成し遂げた人物である。
そんな人の立身出世の物語。

この人の人生はとにかく熱意に溢れていて面白い。
何のバックボーンがあったわけでもない。
文字通りゼロからのスタート。
店舗も市場で花を仕入れる権利もない。
せっかくの就職(自動車ディーラー)を辞めて、頼み込んでのアルバイトから始める。

そしてとにかく熱心。
お客さんの心を掴み、次々と花を売っていく。
儲けを度外視することもある。
お客さんを喜ばすためなら3,000円の花を160キロ離れた博多まで届ける。
関わった人すべてを喜ばせようと寝る間も惜しんで働き続ける。
そうしてとうとう宣言したとおり、長崎一の花屋になる。

前半の成長ストーリーは、こんな人もいたのかと思わせられるくらい面白い。
やがて成功者の仲間入りし、地位と金を手に入れるが自分を見失う。
高級車に乗り、セレブな人達と交際する。
気がつくと事業は行き詰まり、多額の借金が残る。
そこからの再出発。
そしてイギリスへ・・・

熱意があれば道は開けるという見本のような人物。
今は金よりも名誉よりも日本中を緑で溢れ返させるという夢を追う。
自分ははたしてこんなに何かに一生懸命になっているだろうか。
そんな反省心も生まれてくる。
自分も何かに打ち込んでみたい。
そんな気持ちにさせられる。
清々しい気分にさせられる一冊である。


世界一の庭師の仕事術 ‾路上花屋から世界ナンバーワンへ‾

世界一の庭師の仕事術 ‾路上花屋から世界ナンバーワンへ‾

  • 作者: 石原和幸
  • 出版社/メーカー: WAVE出版
  • 発売日: 2009/03/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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2009年11月13日

【できるだけ塾に通わずに受験に勝つ方法】松永揚史

子供が生まれると最初はその成長を素直に喜ぶものであるが、しかるべき年頃になってくると親は教育問題を考えるようになる。
「お受験」などという現象には呆れてモノも言えないが、そんな考えは過ちなのか、と思えるくらい熱心な人は多い。

そう考えているところに出会った本がこれ。
タイトルがいい。
「できるだけ塾に通わずに」である。
「できるだけ」とついているのは塾をまったく否定していないからだ。
「いいものはいい、だめなところはだめ」そんな冷静さが伺えるタイトルが気に入った。

さて内容の方はこれが十分期待に応えてくれる。
商魂逞しく親の不安に付け込んでくる学習塾の実態。
教育コンサルタントとしての豊富な経験からそれを余すところなく伝えてくれる。
そんな塾の戦略に引っ掛かると親はともかく、子供は可哀相である。
子供としての大事なものを吸収すべき時期に塾通い。
失うべきものは多い。
それはよくある批判そのままである。

でもだからと言って何もしなくてもよいのか。
それに対しての筆者なりの回答をちゃんと示してくれる。
小学生からの男女別の基礎学習方法、塾の選び方、家庭教師のメリット・・・
一方で、趣味を持つことの大事さ、本を読むこと、身の回りのことをきちんとやる事、一見勉強とは関係ない事もとても重要だと説く。
このあたりは傾聴に値する。

何よりも大事な事は親がきちんと考え、自らも子供の為に汗をかくことだと思わせられる。
塾に入れてすべて任せて安心という態度では良いはずがない。
一つ一つの事例はわかりやすく、示唆に富む。
参考書や問題集の例も参考になる。
やみくもにわけのわからぬままとにかく塾に通わせなければ、などと思う親はまずこの本を読んで自分が勉強すべきだろう。

子供がいる親なら一度読んでおきたいものである・・・


できるだけ塾に通わずに、受験に勝つ方法

できるだけ塾に通わずに、受験に勝つ方法

  • 作者: 松永 暢史
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 単行本



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2009年11月08日

【現代の経営戦略】大前研一

なんとこの本は30年前のものである。
しかし、驚くべき事に30年たってもその内容は陳腐化していない。
著者は大前研一率いるマッキンゼーの精鋭。
わずか35歳でこれだけのものを書くというのは驚異であるとしか言いようがない。

昭和53年に軽井沢で、経営者40名を集めて行われた「トップマネジメント・コンファレンス」をまとめたものである。
資料は当時の手書き資料がそのまま使用されている。
エクセルやワードのない時代を象徴している。

第1章PMS(製品・市場戦略)から始まり、第2章PPM(ポートフォリオ管理)、第3章PIP(収益性改善プログラム)、第4章OVA(間接費削減アプローチ)、第5章SFM(販売力管理)、第6章TPM(技術ポートフォリオ管理) と続く。
最終章は経営参謀の心得だ。

こうした理論はいろいろと学んだものであれば、どこかで目にした事があるものだ。
だが、それが30年前にすでにあったというのが驚きである。
30年間生き続けている理論というのはそれだけの意味があるものである。

理論は理論であるが、理解できたとしても実践で生かせるものだろうか。
それには日頃の問題意識と、理論を具体的なケースに当てはめられるイメージ力が大切かもしれない。
学者になるわけではないが、経営参謀にはなれるようにしっかりと理解したいところだ。

わずか35歳でこれを書いた大前研一率いるマッキンゼーの精鋭には頭が下がる思いがする・・・



マッキンゼー現代の経営戦略

マッキンゼー現代の経営戦略

  • 作者: 大前 研一
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2009/03/25
  • メディア: 単行本



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