2009年12月31日

【ストロベリー・フィールズ】 小池真理子


女性恋愛小説家小池真理子の最新作である。
「ストロベリー・フィールズ」と聞くと、すぐにビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を想像してしまうが、実はこのタイトルもそこから取られている。
ストロベリー・フィールズといってもビートルズのそれは、実在した孤児院の事らしい。
そこの庭と鎌倉にある主人公の住む家の裏寂れた庭をタイトルに重ね合わせている。

主人公は45歳の夏子。
小池真理子の小説では大概40〜50代の女性が主人公であるが、ここでもやはりそうである。
夫は小さな出版社の二代目社長で、前妻との間に娘がいる。
夏子は医者で自ら眼科兼内科のクリニックを開業している。
金銭的には何不自由しないが、年頃の継子との関係や夫との間にどこかしっくりとこないものを感じる。

夫が秘書と浮気している事を知り、娘ともしっくりといかない夏子のクリニックに、ある日娘の友達の兄旬が患者としてやってくる。
27歳の旬は夏子に対し、ストレートに思いをぶつけてくる・・・

45歳の女と27歳の男の恋愛というのも何やら現実離れした感じがする。
しかし恋愛といってもその形は様々。
セックスを伴う男女間の関係こそが恋愛ではない。
むしろ夏子と旬とはそういう恋愛関係には至らない。
そういう微妙な関係を巧みに描き出していくストーリー作りは誠に巧みである。

細かな描写が登場人物たちの心の動きを一つ一つ描き出していく。
映画を観ているようにそのシーンが目に浮かぶ、そんな文章表現は小池真理子ならではである。
45歳という年齢は微妙だ。
恋愛にまっしぐらに進むには年を取りすぎているが、かといって恋心を捨てるには若すぎる。
もう年だと思う反面、まだ若いと信じている。
年甲斐もなく恋に溺れるわけにはいかないと心にセーブをかける一方で、すべてを捨てて相手の下に走る自分を夢見る。
夢と現実の間の中で、微妙に心は揺れ動く。
そんな心の動きがしみじみと心に沁みてくる。

若い人にはちょっと面白みが伝わらないかもしれない。
500ページと読み応え十分の一冊である・・・


ストロベリー・フィールズ

ストロベリー・フィールズ

  • 作者: 小池 真理子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 単行本



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2009年12月30日

【ほんとうにわかる経営分析】 高田直芳

公認会計士である著者の一冊である。
すでに決定版 ほんとうにわかる管理会計&戦略会計
及び高田直芳の実践会計講座 戦略ファイナンス
を読んでおり、この方タダモノではないと思い興味を持って手に取った3冊目である。
出版は2002年と先に読んだ2冊より以前になっている。
帯に「基礎から体系的に学べ、実戦に活かせる入門書」とある通り、内容的には入門書である。

すでに財務諸表の分析には一通り慣れた身からすると目新しいものはない。
損益計算書から始まり、貸借対照表、資金繰表、資金運用表、キャッシュフロー分析表と丁寧にポイントを解説してくれる。
そしてそこから何が読み取れるのか。
実はそれこそが「経営分析」に一番重要なのであるが、きちんと説明されている。
入門書としては非常にわかりやすいと思う。

最後に粉飾決算についても触れられている。
ここは自身の経験から実例をもって説明されており、興味深い。
こんな方法もあったんだなぁと改めて気付いたところもある。
粉飾決算を見破るポイントだけでなく、こんな風にしたら粉飾できるという説明もある。
要は粉飾する立場からの解説が、なかなか興味深い。

「もう知っているよ」と思わずに謙虚に学べるところはないか、という目で読んでみるとそれなりに発見はあるものである。
これから学ぶ人達は是非とも手に取るべき一冊といえるだろう・・・



決定版 ほんとうにわかる経営分析

決定版 ほんとうにわかる経営分析

  • 作者: 高田 直芳
  • 出版社/メーカー: PHPエディターズグループ
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 単行本



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2009年12月14日

【天使と悪魔】 ダン・ブラウン

ダン・ブラウンと言えば、なんといっても世界的な大ベストセラーとなった『ダ・ヴィンチ・コード』である。
レオナルド・ダヴィンチの諸作品を手掛かりに、謎の修道士会や秘密結社が出てきて最後まで息をつかせぬ展開で、読む者を魅了した。

その大ヒットにあやかり、出てきた「第2弾」と思いきや、実はこれは『ダ・ヴィンチ・コード』の前に書かれた「第1弾」であった。
主人公は『ダ・ヴィンチ・コード』と同じハーバード大学教授のロバート・ラングドン。
ベストセラー作家の過去の作品を引っ張り出してきたのかとそんなに期待もしていなかったのだが、これが大間違い。
これは『ダ・ヴィンチ・コード』にもまったくひけを取らない作品である。
なぜ、こんなに面白い作品が埋もれていたのか、実に理解に苦しむところである。

ストーリーは科学と宗教の対立を軸に、『ダ・ヴィンチ・コード』と同様、奇怪な死体から始まる。
その死体に焼印として残された、すでに存在しないはずの秘密組織の紋章。
左右対称の絶妙の文字からなるその紋章もストーリーに深みを与えてくれる。
折りしもヴァチカン市国では教皇の崩御によって次期教皇を選出するコンクラーベ(選挙)が始まる。
教会への復讐を果たそうとする秘密組織が途方もない計画に着手する。
そしてロバート・ラングドンは専門家として謎解きを依頼される。

舞台はヴァチカンにローマ。
レオナルド・ダヴィンチやベルニーニの実在の作品が、実在の教会群とともに登場する。
そして何と言ってもラングドンが次々と説いていく謎の内容である。
途中で何度も「これはフィクションだよな」と確認せずにはいられない圧倒的なリアリティ。
本当に過去にレオナルド・ダヴィンチやベルニーニやミルトン、ラファエロまでもが秘密組織の一員だったのだろうか、と読み終えても真実はわからない。

これほど息つく間もなく読まされるのは、個人的にはフレデリック・フォーサイス以来かもしれない。
そして圧巻のクライマックスを経てようやくエンディングと思ったら、さらに衝撃的な結末が用意されている。
最後の一ページを終えた時、思わず溜め込んでいた息を吐き出してしまった。
これは読まないと損だろう。

『ダ・ヴィンチ・コード』とあわせて読んでおきたい一冊である。


天使と悪魔(上)

天使と悪魔(上)

  • 作者: ダン ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/10/31
  • メディア: 単行本




天使と悪魔(下)

天使と悪魔(下)

  • 作者: ダン ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/10/31
  • メディア: 単行本



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2009年12月13日

【終末のフール】 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の作品を初めて読んだのはオーデュボンの祈り (新潮文庫)であった。
東北のどこかに浮かぶ島を舞台に言葉を話す案山子が出てくるというちょっと現実離れした作品だ。
その現実離れ感が伊坂作品の特徴でもある。
ゴールデンスランバー (新潮文庫)もそんな現実離れしたストーリーだったが、今回の「終末のフール」もまたそうである。

この地球に小惑星が衝突し、3年後に人類が絶滅するとなった世界。
そんな世界の中、仙台にあるマンションの住人たちを綴ったのが本作品である。
中のタイトルを見ていくと、
終末のフール
太陽のシール
篭城のビール
冬眠のガール
鋼鉄のウール
天体のヨール
演劇のオール
深海のポール
とすべて韻を踏んでいる。
それぞれに主人公が違い、でも同じマンションなので、それぞれの章で微妙にストーリーは交叉する。

終末を迎えた世界でいったい人々は何を考え、どんな行動をとるのか。
あくまでも現実離れした想像の世界なのであるが、登場人物たちには共感できる部分も多く、これまでの作品とはちょっと違って心動かされるものもある。
自分だったらどうするだろうと考えてしまう。

登場人物たちは努めて冷静に「日常生活」を送る。
8年前に滅亡が発表され、5年間の混乱を経て、冷静ではいられない人々がおそらくは淘汰されてしまったであろうという事が背景にあるのかもしれない。
突拍子もない前提ながらもその前提条件にしたがって起こるであろう事を踏まえているところに、架空の中のリアリティを感じさせる。

死を意識した時、人はどういう行動を取るのか、自分はどうするのか。
そんな事を自然と考えさせられる。
味わい深い小説である・・・


終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/06/26
  • メディア: 文庫



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2009年12月12日

【サブプライム後の新資産運用】 中原圭介

「株の勝ち方はすべて外国人投資家が教えてくれる」と同じ著者の著書である。
上記では株式投資について特化して語ってくれたが、本作はそれを含む運用全体についてである。

長く続く低金利。
銀行の定期預金利息は微々たるもの。
何かもっと利回りの高いものを、と思うのは人情であるが、そこについて回るのはリスクという厄介物。
多少覚悟を決めて元本保証のない商品に手を出したところあっさり元本割れ・・・
そんな嘆きが聞えてきそうなご時勢。
自ら学ぼうとする人には指針となる一冊である。

始めに世間の常識から否定してかかる。
「国債分散投資」、「長期資産運用」という比較的安全と言われている運用方法について実例を挙げて警告してくれる。
そして意外な事に、金融工学に長けた運用のプロも素人も実は運用成績にそんなに差はないと言う。

日本がおかれている現状、そしてそれに対する世界の状況。
そんな状況からすると著者は外貨預金・国内株式運用の併用がよいとする。
外貨預金も手数料の安いネット銀行系を勧めるなど実用的だ。
すべて他人任せでは所詮高い利回りなど期待はできない。
こういう本を手にとってまずは勉強してみるのもいいのではないだろうか・・・



サブプライム後の新資産運用―10年後に幸せになる新金融リテラシーの実践

サブプライム後の新資産運用―10年後に幸せになる新金融リテラシーの実践

  • 作者: 中原 圭介
  • 出版社/メーカー: フォレスト出版
  • 発売日: 2008/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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2009年12月08日

【株の勝ち方はすべて外国人投資家が教えてくれる】 中原圭介

著者は現在フィナンシャルプランナーとして活躍している人物。
株式投資のブログでその存在を知り、するどい意見を知って興味を持ち、著書を読んでみる事にした。
内容はタイトルそのままなのであるが、広く株式市場の特徴を語り、比較的わかりやすく投資について解説してくれる。

「上げ相場でも下げ相場でも儲け続ける私の運用スタイル」で基本を語り、それぞれの相場での狙い目は、
上昇相場では「優良株」
ボックス圏相場では「仕手株」
下降相場では「材料株」
といった具合に明確にしてくれる。

そして日本市場の鍵を握っているのが外国人投資家。
彼らが買えば相場は上がり、彼らが売れば相場は下がる。
その仕組みと動向。
外国人投資家と言っても北米投資家と欧州系投資家とに分かれ、それぞれの運用スタイルもある。
そうした知識はこれまでなかった人にはありがたい。

ただあくまでもこの本はベーシックだ。
これを読んだからと言ってすぐ儲かるわけではない。
ただ知らなければ成功も遠くなるかもしれない。
相場に手を出す前に読んでおきたい一冊である。



株の勝ち方はすべて外国人投資家が教えてくれる

株の勝ち方はすべて外国人投資家が教えてくれる

  • 作者: 中原 圭介
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2006/05/18
  • メディア: 単行本



posted by HH at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする