2010年02月28日

【BOX!】百田尚樹

「永遠の0」に心を打たれ、「風の中のマリア」で従来にない物語に驚かされた百田尚樹の、また別の作品。

今度は高校のアマチュアボクシング。
タイトルの「BOX」とは、英語でお馴染みの「箱」という意味以外に「ボクシングをする」という意味があるところからきている。
ボクシングの試合で、レフェリーが両選手に向って闘うように促す言葉(一般的には「ファイト!」と言う方が馴染みがある)でもあるという。

主人公は幼馴染である二人の高校生。
勉強は駄目だがボクシングに天才的な才能を発揮する鏑矢義平、そして勉強は抜群に出来るが、中学時代からいじめられっ子だった木樽優紀。
同級生の目の前で、中学時代のいじめっ子に殴られて面目を失う優紀。
かたやカブちゃんこと鏑矢は、電車の中で5人の不良に絡まれていた教師高津耀子を一瞬にして相手を叩きのめして助ける。
悔しさをばねにカブちゃんのあとを追ってボクシングを始める優紀。

天才ゆえにたいして練習をしなくても強いカブちゃん。
優紀は黙々とトレーニングを愚直なまでに重ね、いつしか次第に周囲が驚くような変身を遂げていく。
そして二人の前に立ち塞がる超高校級のボクサー稲村。

スポーツドラマにありがちな、「ライバル」「友情」「ハードトレーニング」「ヒロイン」といったキーワードをふんだんに交え、主人公の成長とともにストーリーは進む。
「風の中のマリア」でもそうだったが、素人ながらボクシング部の顧問になった高津耀子先生の目を通して、我々も読み進めていくうちにすっかり高校アマチュアボクシングに詳しくなって行く。
年の差もあってヒロイン高津と主人公二人の間にはロマンスは生じない。
しかし、恋人ともただの生徒との間とも違う微妙な関係が、ストーリーに彩りを添える。

まるで目の前で試合を観ているような錯覚に陥る文章。
思わず手に汗を握る試合展開。
彼らの一喜一憂が伝わってきて何度も胸が熱くなる。
そして勝敗の行方がまったく予想できない試合展開。

最後の大勝負が終わったあとに続くエピローグがまたいい。
物語の締めはちょっと切なくも清々しさが漂ってくるエンディング。
読み終えたあともずっと余韻が心に残る。
これほど面白いスポーツドラマにはそうお目にかかれるものではない。
この本に出会えてよかったと思わせられる一冊である・・・


ボックス!

ボックス!

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2008/06/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



posted by HH at 10:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 百田尚樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月27日

【MOMENT】 本多孝好

偶然見つけた「本多孝好」の名前に反応したのは、【Fine Days】や【Love or like】などの作品を読んでいたからだ。
なんとなくその延長で手に取ったのである。

「死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら・・・。病院でバイトをする大学生の「僕」。ある末期癌患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。」
本の裏のあらすじにあった紹介文である。
そして最後に「静かに胸を打つ物語」とある。
大いに期待してページをめくった。

ストーリーは紹介文の通りでうそ偽りはない。
病院の掃除のバイトをする「僕」は日常的に入院患者たちとの交流がある。
大学4年だが、就職活動に対して今一意欲がわかない「僕」。
何かを求めてさまよう彼に、人生の終末を迎えようとしている人達が次から次へと現れる。
そうしていくつかのエピソードが語られていく。

ただそうした交流が何か心に残るようなものかというと、何かが少し足りない。
戦争中の「出来事」が心にしこりのように残っているおじいさん、もうちょっとで大人になれるのに手が届きそうもない女子中学生、借金取りに追われる人・・・
みんなそれぞれに物語がある。
そうしたストーリーが最後に辿りつくのは何だか陳腐な結末。
もう少し神秘的な香りがあってもよかったような気がする。

まあ個人の趣味好みがあるので何とも言えない。
別な作品に乞うご期待といきたい・・・


MOMENT (集英社文庫)

MOMENT (集英社文庫)

  • 作者: 本多 孝好
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/09/16
  • メディア: 文庫



posted by HH at 00:32| Comment(0) | TrackBack(2) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月24日

【良い印象の言葉力】宮本隆治

著者は元NHKのアナウンサー。
「NHK歌謡コンサート」「NHKのど自慢」「紅白歌合戦」などの司会を務めたあと、定年退職してフリーとなっている方である。

タイトルからするとそんなアナウンサーが自らの体験を元に語る話術といった内容を想像していたのであるが、読んでみるとただの経験談そのものといったものである事がわかる。
普段は窺い知ることのない「のど自慢」の舞台裏話などは、どちらかと言えば「知らないものを教えてもらった興味深い話」といった趣で、タイトルの「言葉力」とはちょっとズレている。
よくタイトルは出版社がつけるらしいが、これはタイトルと内容がマッチしていないので、出版社の方がボケているのだろう。

そんな例は他にもあって、NHKと民放の違いだとか、森昌子に教わったプロの心得とか、過去の失敗談とか、話としては面白いのだが、タイトルとどう繋がるのかわからない。
落語から得た「間の取り方」と言われても、本では「間」は伝わらない。
ジョークが人を和ませる、欧米人などはジョークのうまい人が多い、そんな事はわかっているが、難しいのはどうしたらそんなジョークを使えるか、だ。

アナウンサーの経験談・体験談あれこれとすべき内容の本なのである。
もちろん、「タイトルと内容にギャップがある」という事を除けば、内容は面白い。
やはり一流の人には一流になった理由というものがあるわけで、現場現場で身につけていったノウハウはそれなりに参考になる。

こういう本を読むと、つい実物はどんな司会をしているのだろうと興味が湧く。
今度テレビを見る時は気をつけていよう・・・



「よい印象」の言葉力

「よい印象」の言葉力

  • 作者: 宮本 隆治
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2008/06/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



posted by HH at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月22日

【クルマは家電量販店で買え!】吉本佳生

著者は経済学者。
しかしながら小難しい理論を振り回すのではなく、素人でもわかりやすく噛み砕いて身の回りの現象を解説してくれる本を書いている人物である。
これはそんな前書『スタバではグランデを買え!』の続編である。

今回のタイトルも印象的である。
なんだか「プリウスはヤマダ電機で買え」っていう事なんだろうか、と思ってしまう。
しかし、サブタイトルに「価格と生活の経済学」とあるように、この本も身の回りの事象を経済学的にやさしく解説してくれる。
クルマもそんな例として語られる。

第1章ではそのクルマについてである。
「クルマとプリンターとPB商品、価格の決まり方はどうちがうのか?」
軽自動車は税金が安い、取引コストが価格差を生む、売れれば売れるほど安くなる工業製品、高く売れる客には高く、安くないと買わない客には安くの秘密・・・
読み進むほどにふむふむと思ってしまう。
自分ではよくわかっているつもりだが、では自分にこんな解説はできるだろうかと自問してみると難しい。

以下タイトルだけ追っていくと、
第2章「高級レストランの格安ランチが、十分に美味しいのはなぜか?」
第3章「パチンコや金取引で必ず儲ける方法は、ときに本当に存在する?」
第4章「ライバル企業が、互いに不幸になる競争を止められないのはなぜか?」
第5章「大学の授業料は、これからも上昇を続けるのだろうか?」
第6章「地球温暖化対策に、高すぎる価格がつけられようとしている?」
となるが、タイトルだけ読んでも十分面白そうに思えてくる。

経済というのは本当に不思議な気がする。
アダム・スミスの言った「神の見えざる手」は本当にあるようだ。
普段あまりこういう事を突き詰めて考えてみる事はないが、こんな事をあれこれ考えてみるのも楽しくて為になるだろう・・・



クルマは家電量販店で買え!―価格と生活の経済学

クルマは家電量販店で買え!―価格と生活の経済学

  • 作者: 吉本 佳生
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2008/11/08
  • メディア: 単行本



posted by HH at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/会計・財務 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月17日

【闇の系譜 ヤクザ資本主義の主役たち】有森隆+グループK

村上ファンドにホリエモン。
一時期日本の株式市場を賑わせた二人の巨人も、その後揃って塀の向こう側へと消えた。
彼らを台風の目として株式市場に吹き荒れた一連の事件を丹念に追ったのが、この一冊である。

取り上げられているのは、
@村上ファンド
Aライブドア
Bジャック・ホールディングス
Cダイナシティ
Dゼクー
Eメディアリンクス
Fプライムシステム
GJMネット
といずれも株式市場でマネーゲームの末崩壊したグループである。

株式市場というのは本来、各々の企業が「本業」に精を出し、その結果として利益を計上し、それを評価した株価が上がり、株を買った投資家も潤うというものである。
ところが、村上ファンドやライブドアはそんな株式市場を逆手に取って、マネーゲームに明け暮れる。
M&Aや株式分割という手法で株価を吊り上げ、何十億、何百億というお金を動かす。
そしてマスコミがもてはやせば株価は益々上昇する・・・

やがて株価も上がり切ったところで、急降下。
後に残ったのは、高い株を買わされて下がり続ける株価を茫然として見ているだけの個人投資家・・・
魑魅魍魎たちが、いかにしてこうした投資家を食い物にしていったか。
新聞のニュースだけではわからない事件の全体像をまとめてあって、興味深い。

個人投資家も被害者ではあるが、原因はと言えばやはり簡単に儲けようと飛びついた事にある。
今でも印象に残っているが、某著名経営コンサルタントはライブドアが全盛期の時、その収益構造は、「本業での儲けが少なくて危うい」と看破していた。
きちんと本業で儲けている企業に投資するという冷静さがあれば、泣きをみる事もなかったのかもしれない。

この本は、そんな教訓を思い起こさせてくれる。
もって他山の石としたいところである・・・


闇の系譜 - ヤクザ資本主義の主役たち (講談社+α文庫)

闇の系譜 - ヤクザ資本主義の主役たち (講談社+α文庫)

  • 作者: 有森 隆+グループK
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/08/19
  • メディア: 文庫



posted by HH at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月12日

【風の中のマリア】百田尚樹

「永遠の0」に感動して手に取った著者の一冊。
驚く事に主人公はオオスズメバチ。
昆虫が主人公の小説というのも珍しい。
映画では「バズ」、「アンツ」などといったアニメーションものがあるから、考えてみれば不思議ではない。

オオスズメバチの社会は女王蜂を中心に働き蜂(ワーカー)と幼虫から成る。
女王蜂が最初に巣造りをし、最初のワーカーを生み育て、ワーカーが育つと幼虫の世話はワーカーがするようになる。
各ワーカーの寿命は成虫になってから約1ヶ月。
初夏から秋にかけて世代交代を繰り返し、やがて次の女王蜂が巣立つまでが大まかなライフサイクルとなる。

主人公はそんなワーカーの一匹として生まれたマリア。
外の世界で獲物を捕らえ、妹たち(幼虫)に食べさせるのが仕事である。
そんなマリアの戦いと他の昆虫たちとの交流によって、メスとして生まれながら一生子供を生む事なく闘い続ける運命を知る様子が描かれていく。

相当調べたのであろう、内容はかなり専門的でもあり、物語を追ううちにすっかりとオオスズメバチの生態に詳しくなってしまう。
昆虫類ではほぼ無敵。
時として巣を守るために巨大な哺乳類でさえも集団で襲って殺してしまう。
獲物となる昆虫が少なくなる秋も深まる頃には、ミツバチや他の小型スズメバチの巣をも襲い、成虫を殺し、幼虫は奪って餌にして全滅させてしまう様は凄まじい。

本来は憎まれ役になりそうなものだが、マリアの視点を通して描かれる本書からはそんな残虐さはあまり感じられない。
オオスズメバチも無敵ではなく、自然の摂理の一環の中で生きている。
そんな様子がありありと伺われる。

読み終わるとちょっとしたオオスズメバチの専門家になっているようである。
ストーリーとしても面白い。
この作家、つくづく面白いと実感させられた・・・



風の中のマリア

風の中のマリア

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/03/04
  • メディア: 単行本



posted by HH at 23:54| Comment(1) | TrackBack(0) | 百田尚樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月11日

【オーケストラ指揮法】高木善之

著者は元オーケストラ指揮者。
オーケストラの指揮で発揮してきた他人とのコミュニケーション方法を伝える一冊。
人の悩みの大半は人間関係であると言われている。
そしてそれを解決するためのヒントが筆者の伝えるコミュニケーション方法にあり、それはオーケストラの指揮に留まらず、家庭でも仕事場でも応用の効く方法である事から、それを公開したのが本書である。

前半は筆者の指揮者人生が語られる。
もともとは企業に勤めながら社内の合唱団の指揮者であったらしい。
素人にはわからないのだが、普通、合唱団の指揮とオーケストラの指揮はまったく異なり、合唱団の指揮者からはそれよりもはるかに難しいオーケストラの指揮者への転向はできないらしい。
ところが筆者は執念でオーディションを通過して指揮者になってしまう。

企業ではコンクールで万年2位に甘んじていたが、交通事故で瀕死の重傷を負い、ベッドの上で自問自答を取り返し、そうして最後にある境地に辿りつく。
それまでとはまったく異なる音楽への取組み。
それを始めた途端、コンクールで優勝する。

職場でも部下の心を掴むリーダーシップを発揮し、家庭ではそうして育てた子供は友達にからかわれても明るくやり過ごせるように育ち、先生を驚愕させる。
こうやって人と関わっていけば、誰もが幸せになれそうな気がする。
今現在は音楽をやめ、地球環境のために働く筆者。
それはベッドの上での気付きから必然的に導かれた境地なのかもしれない。

より良く生きるヒントになりそうな一冊である。



新版 オーケストラ指揮法 すべての心をひとつにするために

新版 オーケストラ指揮法 すべての心をひとつにするために

  • 作者: 高木 善之
  • 出版社/メーカー: 総合法令出版
  • 発売日: 2007/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



posted by HH at 10:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月03日

【コーヒーとサンドイッチの法則】竹内正浩


筆者は経営コンサルタント。
分析してきた企業は1,000社以上で、「企業研究オタク」と言われるほどである筆者が、その中からエッセンスを汲み取り、まとめたのが本書。
サブタイトルに「利益を獲得するための6つの戦略」とある通り、6種類に分類して語ってくれる

第1章 顧客収益戦略「忙しいのに儲からないのはなぜか?」
第2章 顧客維持戦略「仕事をしなくても、儲ける人がいるのはなぜか?」
第3章 製品ライン戦略「同じ車なのに、グレードが複数あるのはなぜか?」
第4章 範囲の経済戦略「喫茶店でサンドイッチを売っているのはなぜか?」
第5章 キャッシュフロー戦略「保険引受で赤字の保険会社が利益を出すのはなぜか?」
第6章 戦略的提携「なぜ、多くの会社が、よく提携をするのか?」

どれもが読んでみれば「ああなるほど」と膝を打ちたくなるようなものだ。
経営やら戦略やら難しい事は苦手という人にもわかりやすい寓話が挿入されていて、その語り口はユーモラスである。

タイトルになっているものは第4章である。
喫茶店という空間。
お馴染みのスタバでは、コーヒーの売り上げが全体の売上に占める割合は7割だという。コーヒーだけを売っているわけではないのである。
そこには喫茶店という閉じた空間(範囲)で、関連しあう複数の製品を売る事により、相乗的に売上を上げているのである。
しかもコストは仕入原価だけである。

こうした分析が各々になされており、しかも素人向けに書かれているから軽い読み物としてちょうどよい。
複雑なものをシンプルにする事は難しい。
企業を分析し、その結果をこうしたわかりやすい説明にまとめる手法はさすが。
ちょっといい勉強になった・・・


コーヒーとサンドイッチの法則

コーヒーとサンドイッチの法則

  • 作者: 竹内正浩
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2008/12/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



posted by HH at 22:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする