2010年04月28日

【太平洋戦争は無謀な戦争だったのか】ジェームズ・B・ウッド

歴史に「もし」はない。
だがそれでもやっぱり「もし〜だったら」と考えてしまうのが人間というもの。
戦争などというものはその恰好のターゲットになったりする。
著者はアメリカ人の大学教授。
アメリカ人の視点から太平洋戦争を検証し、「日本にとって太平洋戦争とは勝つ見込みのない、まったく無謀な戦争だったのか」を考察したのが本書である。

結論から言えば、「日本軍はもう少し戦い方を考えれば、もっと有利な条件で戦争を終えられただろう」というものである。
戦局が長引けば国民の厭戦気分、戦費の財政負担、連合国間の不協和音、共産主義の台頭といった事態が起こり、ある程度のところで停戦に持ち込めた可能性があるという主張である。

「こうしていたらワシントンに日章旗を翻せていた」、などとと言われると、SF的空想物語に思えてしまうが、戦い方の工夫で戦争を長引かせられたはず、という考え方には頷かされるものがある。
周知の通り真珠湾以降の半年間、日本軍は怒涛の快進撃でアジアはもちろん、南太平洋まで勢力圏を広げた。
そしてそれが悲劇の元であったという。

そもそも開戦前は、日本軍の基本戦略は「太平洋は防御」であったという。
アメリカの力を評価し、早々に防御を固めて守りに入ると謙虚に考えていた。
それが思わぬ快進撃で欲が出た、と。

著者は開戦のタイミングは絶好であったとする。
アジアにおける権力均衡と、当然生じうる軍事的リスクの正確な計算に基づいて決定され、それは快進撃という結果に如実に表れた、と。
しかし当初の基本線を逸脱し、不必要な過剰拡大戦略に移行したがために、アメリカの大反撃を許してしまったという。

その他商船の運用方法、潜水艦艦隊の利用方法、必要以上に大陸に温存されてしまい、太平洋戦線に十分に投入されなかった陸軍等の失敗を指摘。
それらが当初の基本線に従って適切に運用されたのであれば、アメリカの反攻もフィリピン周辺を防衛ラインとした防衛線で押し返せたのではないか、そしてしかるべき時期に講和に持ち込めたであろうとする。

神風特攻隊の適切な投入などといった件は、著者がアメリカ人ゆえか正確な理解をしていない部分も目につく。
また、日本軍がそのような戦略を取っていれば、米軍もそれにあわせた戦略を取っていたであろうし、結果的にはどうなのかはやっぱりわからない。
ただ、日本軍の戦略および戦術がお粗末だった事は確かであり、だからこそこういう研究も出てくる。
そういう視点からみるとなかなか面白いと思う。

こんな本を読んでみるのも面白いものである・・・



「太平洋戦争」は無謀な戦争だったのか

「太平洋戦争」は無謀な戦争だったのか

  • 作者: ジェームズ・B. ウッド
  • 出版社/メーカー: ワック
  • 発売日: 2009/12
  • メディア: 単行本



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2010年04月17日

【日本で一番大切にしたい会社2】坂本光司

障害者の割合がなんと従業員の7割を越えるという企業「日本理化学工業」など、心ある経営をする企業を取り上げた日本でいちばん大切にしたい会社の続編である。
企業だから当然利益を上げなければいけない。
だが利益を上げるだけでいいのだろうか。

当然利益を上げてなおかつ従業員も満足して、さらに世の中の役に立てばこれ以上はない。
だが実際にはそんなきれいごと言ってられない。
現実は厳しいのである、という企業が大半なわけで、だからこそ理想的な経営をしている会社に称賛は集まる。
前作で紹介できなかった企業がまだある、ということでこの本である。

ここで取り上げられている企業は8社。
株式会社富士メガネ:世界の難民や中国残留孤児に「視力」を贈る感動のメガネ店
亀田総合病院:「もう一度入院したい」と患者が言う病院
株式会社埼玉種畜牧場「サイボクハム」:「農業のディズニーランド」を実現する
株式会社アールエフ:「小さな命をもっと救いたい」−世界が驚く内視鏡を開発
株式会社樹研工業:社員は先着順で採用、給料は「年齢序列」の不思議な会社
未来工業株式会社:「日本で一番休みの多い会社」
ネッツトヨタ南国株式会社:全盲の方と行く四国巡礼の旅で人の本当の優しさを学ぶ
株式会社沖縄教育出版:日本で一番長くて楽しい朝礼で月150通の感謝の手紙が届く

どの企業も社員が生き生きと働き、それが顧客に感動をもたらしている。
毎年売り上げがいくらでどれだけ利益が出たといったあくせくした様子がない。
もちろん、企業だからまったく無視しているのではないだろうが、十分な成果をあげられているのだろう。

こうした例をみていると、企業の経営者は何を目指して経営すべきなのかがわかるような気がする。
世の中の大半の企業が同じようになったらどうなるのだろうか。
世の中もっと住みやすくなるのか、それともそれが当たり前になるとそれだけではダメになるのか。

こんな企業で働いてみたいと読む者はきっと思うに違いない。
まだまだシリーズとして続くみたいであるが、他にも知られざる感動企業があるのかと思うと続きも楽しみである。
    
    
日本でいちばん大切にしたい会社2

日本でいちばん大切にしたい会社2

  • 作者: 坂本 光司
  • 出版社/メーカー: あさ出版
  • 発売日: 2010/01/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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2010年04月10日

【シンプルでうまくいくコミュニケーションの技術】天野雅晴

最近重視しているコミュニケーションを扱っているということで手に取った本である。
しかしながら読んでみるとどうもイメージと少し違う。
著者はアメリカで長年事業をしているコンサルタント。
コミュニケーションといってもそれは「日本人とアメリカ人」とのものであり、日本人が世界を相手にした時はこうしなさいという、いわば異文化コミュニケーションなのである。

書かれている5つの鉄則は以下の通り。
1 自己主張は関係構築のプロトコル
2 一番大切なのは相手をリスペクトする気持ち
3 単刀直入表現の意外な効果
4 ユーモアセンスはコミュニケーションの潤滑油
5 コミュニケーションとは相手に貢献すること

書かれている事に異論はない。
ただ、日本人同士だと必ずしも当てはまらない。
だから日本人同士という事が念頭にあるとこれは違う本となる。

とはいえ異文化コミュニケーションも大事である。
そういうものなのか、ということを頭に入れておく事も大事である。
それにアメリカ人の仕事スタイルというものが書かれているため、それはそれで面白いとも言える。
良いか悪いかではなく、そういう違いがあるのかということがわかるのである。

実際、読んでいて参考になったのはコミュニケーションに関するものというよりもアメリカのビジネス事情だ。
電話とメールの使い分け、ボイスメッセージシステムの利用、携帯端末の普及などの状況は興味深かった。
タイトルは編集者が考えるのだろうが、タイトルに拘ると不満が残る。
これはこれとして読めばいろいろと気づきはある。
そういう考えで読むといい本なのだと思う・・・
    

シンプルでうまくいくコミュニケーションの技術

シンプルでうまくいくコミュニケーションの技術

  • 作者: 天野 雅晴
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2009/12/11
  • メディア: 単行本



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2010年04月08日

【最後の授業】ランディ・バウシュ

    
著者は米カーネギーメロン大学教授。
よく知らなかったのであるが、アメリカの大学では「最後の授業」と称して、もしも人生最後の授業としたらどんな講義をするのかというテーマで授業が行われていたらしい。

著者のランディ・パウシュにもその話がきたが、実はこの講義の一ヶ月前に末期の膵臓がんと診断され、文字通りこれが「最後の授業」となった。
この本は、その講義を補足する形でまとめられたものである。

「最後の授業」は2007年9月に行われ、その様子はインターネットで配信され瞬く間に600万のアクセスを集めたという。
そんな触れ込みに非常に興味を持って手に取った一冊である。

ランディ・パウシュ教授は当時46歳。
5歳を筆頭に3人の子供と愛する妻がいる。
子供たちはまだあまりにも幼く、これから父親としていろいろ教えてあげたいが、それは叶わぬ夢。
子供たちに何を残すか。

教授は、「僕が画家だったら子供たちのために絵を描くだろう、ミュージシャンだったら曲を作る。でも僕は教師だ。だから講義をした」と語る。
そしてその講義こそが、子供たちに残した彼のメッセージとなる。

講義の内容は彼がこれまでいかにして夢を実現してきたかから始まる。
どんな子供時代を過ごし、どんな夢をもって、それに対してどんな風に取り組んできたか。
彼はとにかく明るい。
余命わずかとなってさえ、いやわずかだからこそ明るく楽しんでいるのかもしれない。
実際、彼が夢をかなえてきた過程は実に楽しげに語られる。

学生たちにかける言葉はどれも優しく、そして力強い。
そこには余命わずかとなった男の、幼い子供たちを残して死んでいく父親の悲壮感というものはまるでない。
「諦める事なんてない、こうやればいいんだよ」という感じの語り口はとても爽やかだ。
死を前にした男の涙涙の感動秘話を期待していると肩透かしにあうだろう。
しかしながら、明るく夢に向ってまっすぐ進んできた男の話は時折胸が熱くなるのも事実である。

「最後の授業」の様子はYoutubeで観る事ができる。
講義の間中、笑いが絶える事はない。
自分でも何かしてみたいな。
そんな思いにさせられる熱い一冊である・・・
    

最後の授業 ぼくの命があるうちに

最後の授業 ぼくの命があるうちに

  • 作者: ランディ パウシュ
  • 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
  • 発売日: 2008/06/19
  • メディア: ハードカバー




     
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2010年04月07日

【姫椿】浅田次郎

浅田次郎の短編小説集である。
短編というのは当然ながら短いストーリーの中に何か光るものが入っていてほしいものである。
浅田次郎は長編でも素晴らしいストーリーを紡ぎだすが、短編もなかなか味わい深いものがある。

冒頭の「獬」は伝説の動物「麒麟」が出てくるお話である。
首の長いキリンではなく、ビールのラベルに出ている奴である。
それはちょっと不思議なお話。
これはそんなちょっと不思議なお話を集めた短編集なのかな、と思わせられる出だしである。

続く「姫椿」とは山茶花(さざんか)の事。
ある決意を固めた男が新婚時代に妻と一緒に通っていた銭湯を偶然見つけ、そこに咲いていた山茶花を眺める。
これもちょっと不思議系なのかと思わなくもない。

そして「再会」となるとまた不思議系になる。
世の中に今の自分とはまったく違う人生を歩んでいる「自分」がいるとしたら・・・
ちょっと会ってみたい気がする不思議系である。

しかし4作目の「マダムの喉仏」から現実路線へと転換する。
ゲイやオカマたちから慕われていた「マダム」が亡くなった事から起こる顛末が面白おかしく描かれる。
「トラブル・メーカー」は飛行機で偶然隣り合わせた男の身の上話についつい聞き入ってしまう。
そしてぷっつりと途切れるラストからいろいろと男の身に起こった事を想像させてくれる。

残りも庶民のほっとするような話ばかりが続く。
短いストーリーに溢れんばかりの物語が語られていく。
さすが浅田次郎といえる短編集である・・・

      

姫椿 (文春文庫)

姫椿 (文春文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 文庫



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2010年04月03日

【時の風】廣岡洋子

サブタイトルに「母と娘の引揚体験記」とある通り、これは著者が幼い頃の満州からの引揚体験を綴ったものである。

当時著者は8歳。
体験記と言っても記憶が不確かな年齢だ。
しかしそこは実際に大人として経験した母親の手記で補うという形を取っている。
当時の様子を伺うには十分である。

父親は関東軍の兵士だったようである。
勤務地は当然満州。
階級ははっきりと書いてないが、様子からするとかなり高かったようである。

戦争末期の8月。
ソ連の突然の参戦で大混乱の満州。
父は覚悟を決め、4人の子供を妻に託し帰国するように手配する。
優先的に飛行機に乗れたのであるが、連れて乗れないお手伝いさんを気遣って列車を選ぶ。
平壌に着いたところで足止めをくらい、ソ連兵と北朝鮮兵に捕まり収容所へ入れられる。
このあたりは「人間の運命」の五木寛之と同じだ。

ここから逃亡できた五木寛之は親が父親だったが、著者の場合は母親。
そこが逃げられた者と最後まで逃げられなかった者との差であろう。
この収容所で著者は弟二人(一人は生まれてすぐ)を失う。
絶望的・劣悪な環境下での1年に及ぶ収容所生活。
人間とは他者に対しては残酷なものだとあらためて思う。

書かれている体験記は、しかし「一部分」という感じが強い。
正直に言って物足りない感じすらある。
そこは著者が当時8歳だったという限界と、時間の経過による忘却と、「書き表せない」という表現力の問題とがあるのかもしれない。
粗末な食事、泥水でさえ飲みたくなるほどの渇きなどは、想像力で補うのも限界があるという問題もあるだろう。

限度があるとは言え、不足する部分はやはり想像力で補うしかないが、8歳の長女を先頭に4人の子供を抱えた女性が、混乱の中大陸から引き揚げてくる苦労は並大抵の事ではなかったはず。
人間は残酷であると感じたが、一方で著者たちを助けてくれた人達もいた。
歩くのが辛くて泣き出した妹。
止まれば置いていかれるという中で、妹をおぶってくれた人。
著者の母親を働かせてくれ、食べ物もくれた朝鮮人夫婦。
読んでいて救われる部分である。

こんな経験をしなくて済むのは何よりであるが、こういう経験をした人達がいたと知ることもまた必要な事だとも思う。
今の自分たちがいかに幸運な時代に生きているか。
実感させてくれる本である。





時の風

時の風

  • 作者: 広岡 洋子
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2003/07/16
  • メディア: 単行本



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2010年04月02日

【1年で駅弁売上を5000万円アップさせたパート主婦が明かす奇跡のサービス】三浦由紀江

著者はJR東日本のグループ会社である鞄本レストランエンタープライズに勤める女性。
学生結婚したあと、3人の子育てを終え40歳を過ぎてからパートで駅弁売りを始めたという。
その後彼女はメキメキと実績を上げ、正社員に登用されたばかりか一気に部下を何人も抱える大宮営業所長に上り詰める。
そんな経歴を綴った一冊である。

始まりはただの駅弁売りなのであるが、やっぱり抜きん出る人というのはどんなにつまらない事をやっても一生懸命やっている。
社会に出た経験のないパートのおばさんといえば、社会では目立つ事もない。
だが、この人は一生懸命お弁当を売ったという。

それも熱が入っている。
自分でいろいろと食べてみて、実際においしかったものを一生懸命お客さんに勧めたそうである。
自分の食べた経験を自分の言葉で語りかける。
そうすると次第に固定客が集まってくる。
「時給なんぼのパート」だからと必要最小限度しかやらない他のパートさんを尻目に、自分で掃除から始め次々と仕事をみつけて体を動かす。

そんな情熱と社会で働いた事がないことからくる「主婦感覚」と「消費者感覚」が、売り手のご都合主義を破壊し、お客さんの心を掴んでいく。
そんなところは痛快でさえある。
お弁当を売るという単純な仕事なのに、それをこんなにも楽しく立派にやってしまうところがすごい。

今では所長という立場を生かして、地方の業者さんと独自のお弁当を開発したりと仕事も大分大きなものになっている。
それでも自分が失敗し、あるいは主婦として消費者としての経験・感覚を活かした取組みは健在で、タイトルにあるように売上も伸ばしているようである。

どんな仕事であれ、情熱を持って取り組めば成功への道は開けるという見本のような人である。
こんど大宮駅に行ったら弁当を買ってみたいと思わせられる一冊である。


1年で駅弁売上を5000万アップさせたパート主婦が明かす奇跡のサービス

1年で駅弁売上を5000万アップさせたパート主婦が明かす奇跡のサービス

  • 作者: 三浦 由紀江
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2009/11/20
  • メディア: 単行本



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