2011年03月26日

【大前研一の資本主義の論点】大前研一

   
「大前研一の」というタイトルがついているので、思わず手に取った一冊。
しかし、ページを括ってみると大前健一の文章は短い序文のみ。
これは大前研一が「ハーバード・ビジネス・レビュー」に掲載された論文の中からピックアップしたものをまとめて掲載している本なのである。

何だかなぁと初っ端からはぐらかされた気分で読み進める。
これも何かの縁だ。
全体は4部構成。
第1部 経済と金融
第2部 企業
第3部 グローバリゼーションと新興経済
第4部 技術と環境
そのそれぞれに短い論文が分類されている。

興味深かった論文は「GEのリバース・イノベーション戦略」と題する一文。
GEは医療分野において、携帯型心電計とコンパクト超音波診断装置を開発した。
主に大型の装置を導入できない新興国で、安価に導入して利用される事を想定して開発したものである。
実際に新興国で利用されているが、低価格かつコンパクトなこれらの製品は、先進国においても救命隊などでポータブルタイプとして利用が進んだという。

そこには、
@ 新興国は先進国と同じような過程を経て発展していく
A 新興国のニーズに対応した製品は競争力に乏しく、先進国では売れない
という思い込みがあったという。
こうした事例からの考察などは読んでいてフムフムと思わず唸ってしまう。
各文は短くまとまっているので読みやすい。
「大前研一」という部分では裏切られた格好だが、たまにはこういう文章をまとめて読むのも悪くはない。
そう思った一冊である・・・

大前研一の新しい資本主義の論点 [単行本] / 大前 研一 (著); DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部 (翻訳); ダイヤモンド社 (刊)
  

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2011年03月18日

【錨を上げよ】百田尚樹


すっかりファンになってしまった百田尚樹の最新刊である。
百田尚樹はこれまでにもいろいろなテーマで本を書いている。
主人公も太平洋戦争のパイロット、オオスズメバチ、アマチュア高校ボクサー、武士・・・
そして今回は破天荒な主人公を登場させ、これまでとはまた違った雰囲気の物語となっている。

「錨を上げよ」とタイトルにあるが、物語は主人公作田又三の生まれてから31歳までの人生を船旅に譬えて進んでいく。
又三が生まれたのは昭和30年。
つまりこの物語の時代背景は、昭和30年からバブルに突入する昭和61年までとなる。
なぜ現代ではなく、少し前のこの時代なのか。
もしかしたら、著者自身が自分の若き日の時代を追体験しているのかもしれないと思う。

又三というちょっと古風な名前のこの男は、ちっとも枠に当てはまらない。
小学生の頃からいわゆる悪たれで、教師や親の手を焼かせる存在。
本人は根っからの悪人というわけでもなく、ある意味無邪気なのであるが、枠にはめられようとすることに、本能的な抵抗感を示すところがある。
坊主頭が決まり事なのに、夏休み明けに面倒くさくて伸ばしたまま登校。
すぐに教師に怒鳴られるが、頭ごなしに言われると逆にカチンときて翌日もそのまま登校し、教師はおろかクラスの友人たちとも対立する、といった具合だ。

小学校からこんな調子だから、中学・高校もそんな調子。
勉強もせずに、かと言って道を誤ってヤクザの世界になんて事もない。
時折見せる魅力的な面が、ストーリーに幅を持たせる。
そして女性との関係も様々に織りなされる。
いったい、どこに向かっていくのか皆目見当もつかない又三の人生。
本人もわからないのだから当然と言える。

破天荒でとても真似のできない生き方。
いつか破滅しそうで、それでも要所で何かに導かれるようにまともに進んでいく。
上下巻で1200ページにも及ぶ長編であるが、そこに凝縮された又三の人生は読みごたえ十分。
なんとなく今までの本と違い、文学チックな雰囲気もある。
やっぱりある程度著者の人生と重なっているのかもしれない。

32歳から又三がどんな人生を歩んでいくのかは、それぞれが想像するしかない。
いつか続きを読んでみたいと思わせられる一冊である・・・


錨を上げよ(上) (100周年書き下ろし) [単行本] / 百田 尚樹 (著); 講談社 (刊)

錨を上げよ(下) (100周年書き下ろし) [単行本] / 百田 尚樹 (著); 講談社 (刊)
posted by HH at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 百田尚樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする