2011年04月29日

【ザ・ベロシティ】 ディー・ジェイコブ, スーザン・バーグランド, ジェフ・コックス

ザ・ベロシティ [単行本(ソフトカバー)] / ディー・ジェイコブ, スーザン・バーグランド, ジェフ・コックス (著); スーザン・バーグランド /ジェフ・コックス (その他); 三本木 亮 (翻訳); ダイヤモンド社 (刊)

「ザ・ゴール」で一躍有名になったエリヤフ・ゴールドラット。
そのゴールドラットが設立したTOCの発祥機関AGIゴールドラット・インスティテュートのパートナーたちが執筆したのがこの本である。
この本も「ザ・ゴール」からはじまる一連のTOC理論をベースとしたビジネス小説の流れを組んでいる。

製造業から出発したTOC理論であるが、それは様々に応用され、 「ザ・クリスタルボール」では小売業へも適用された。
この本では設計・研究開発部門と製造部門とを結びつけ、リーンシックスシグマとTOCの理論を組み合わせた「ベロシティ」という概念を登場させる。
「方向性を伴った速さ」という定義を聞いてもピンとこないが、実際のビジネスを例にとる事で理解を深められるようになっている。

主人公はハイTコンポジット社のマーケティング部長エイミー・キーオララ。
ウィナー社に買収されたハイT社で、暫定社長に任命される。
ウィナー社からリーンシックスシグマを導入し、効率を高めて業績を伸ばすようにと任務を与えられ、リーンシックスシグマのエキスパートであるウェイン・リースを紹介される。
そしてさっそく、オークトン工場でリーンシックスシグマの導入がスタートする。

工場では以前からTOCをベースとした運営が行われており、マーフィ・マグアイアが製造マネージャーとして現場を取り仕切っていた。
ゴジラというニックネームの巨大な加圧機が製造設備群の中でボトルネックとなっている。
これまでマーフィが、ゴジラをボトルネックとしてTOCに基づいた製造を行っていたが、納期には遅れ、顧客からは不満が続出していた。
新たにリースを中心とした体制でリーンシックスシグマがスタートするも、なかなか数字上の成果として表れない。
営業部隊は苦戦し、利益も上がらず、暫定社長のエイミーも首の皮一枚の状態となる。

こうしたストーリーが、実際のビジネスを見ているように展開される。
一方でエイミーの家族内で、子供たちが洗濯当番を割り当てられ、いかに効率的にこなすかという話が登場する。
エイミーたちが工場でやろうとしていることは、身近な例で例えられる。

やがてリーンシックスシグマとTOCが組み合わされ、ハイT社は目覚ましい改善を遂げる事となる。
単なるビジネス小説としても面白いが、製造などの仕組みに興味があればそういう面でも何かのヒントになるかもしれない。
「製造業 起死回生のシナリオ」とサブタイトルにあるのは、まさにその通りである。
このシリーズ、続くならトコトン付き合いたいと思う。


     
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2011年04月28日

【ハーバード白熱教室(上・下)】マイケル・サンデル

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上) [単行本(ソフトカバー)] / マイケル サンデル (著); Michael J. Sandel (原著); NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム, 小林 正弥, 杉田 晶子 (翻訳); 早川書房 (刊)ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下) [単行本(ソフトカバー)] / マイケル サンデル (著); Michael J. Sandel (原著); NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム, 小林 正弥, 杉田 晶子 (翻訳); 早川書房 (刊)

「これからの正義の話をしよう」のマイケル・サンデル教授の人気講座を紙上で再現したのが、この本。
実際のハーバード大学での講義の様子が伝わってくる。

講義は上下巻で全部で12回分、そして東京大学での講義がプラスされている。
第1回 殺人に正義はあるか
第2回 命に値段はつけられるのか
第3回 「富」は誰のもの?
第4回 この土地は誰のもの?
第5回 お金で買えるもの買えないもの
第6回 なぜ人を使ってはならないのか
第7回 嘘をつかない教訓
第8回 能力主義に正義はない?
第9回 入学資格を議論する
第10回 アリストテレスは死んでいない
第11回 愛国心と正義どちらが大切?
第12回 善き生を追及する

それぞれのテーマに沿って、サンデル教授と学生たちが議論する。
5人を助けるために1人を犠牲にする事は正義か。
学生たちの回答にサンデル教授は様々な角度から問い掛けていく。
そこから導き出されるのは、アリストテレス、ジョン・ロック、カント、ミルらの哲学者たちの思想。

哲学と聞くと難しいものと敬遠されがちだが、サンデル教授の講義ではそんな感じを受けない。
それは、哲学とは言っても結局のところ我々の生活のあらゆる場面で、我々が出会う問題を考える事に他ならないからだ。
おまけでついている東京大学での特別講座では戦争責任について議論される。
これなど我々日本人にとっては非常に身近でナーバスな問いだ。
そして一歩進んで、「オバマ大統領は原爆投下について謝罪すべきか」というテーマまで登場する。
そこには難しそうだと言って敬遠する哲学の姿は見えない。

講義の様子は実に生き生きと伝わってくる。
そして感心するのはやはりハーバードの学生のレベルの高さだ。
サンデル教授に指されて、ロックやカントの思想をさらりと説明したりする。
事前に予習をしているのだろうが、こうしたレベルの高い学生だからこそ、この講義も質の高いものになるのかもしれない。
こうした知的問答は最高の贅沢なのかもしれないと感じる。

ハーバードの学生になった気分で触れてみたいサンデル教授の授業を、ちょっと体験するには非常に良い本である。

     
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2011年04月22日

【春秋山伏記】藤沢周平

春秋山伏記 (新潮文庫) [文庫] / 藤沢 周平 (著); 新潮社 (刊)

時代劇の名手藤沢周平。
一口に時代劇と言ってもそこで展開されるドラマはさまざまだ。
武士や農民や町民など、身分や男女によって実に多くの物語ができる。
そして偏りなく、数々の物語を生み出しているのが藤沢周平とも言える。
この本での主人公は、タイトルにある通り「山伏」である。

例によって舞台は東北地方のある村。
はっきりと書いてはいないが、藤沢作品ではおなじみの海坂藩かもしれない。
そんな村にやって来た山伏。
大鷲坊と名乗るその山伏は、それまで村にいたモグリの山伏を追い出して、正式に着任する。

山伏は村々に派遣され、祈祷を上げたりして生計を立てていたのだろうか。
大鷲坊は病人が出れば行って祈祷を上げたりして、村の中で次第に地位を確立する。
そんな日々の中、村ではいろいろな事件が起こる。
貧しさに娘を売った男が、その金を飲んで使いはたしてしまい、困った挙句浮気をしていた男をゆすったり、かつて村人たちにひどい仕打ちを受けた家の息子が成長して戻ってきたり、嫁とりに苦労している男や、娘がさらわれた女房の話などが諸々綴られる。

特にドラマチックな盛り上がりがあるわけではない。
しかし大鷲坊を中心に描かれる村の人々の姿はしみじみと印象に残る。
これも藤沢作品ならではの味わいと言える。
全編にわたって庄内弁のセリフが続くのも特徴的だ。
田舎の村の様子が一段と雰囲気を増す。

山伏を主人公に添えたという点で、いままでとは毛色の違う作品となっているが、まあこういう作品も藤沢作品の幅の広さと言える一冊である。


     
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2011年04月19日

【民の見えざる手】大前研一

民の見えざる手 デフレ不況時代の新・国富論 [単行本] / 大前 研一 (著); 小学館 (刊)

プロローグ:経済学は、もう未来を語れない
第1章:“縮み志向”ニッポンと「心理経済学」
第2章:拡大する「単身世帯」需要を狙え
第3章:「新興国&途上国」市場に打って出る
第4章:真の埋蔵金=潜在需要はここにある
第5章:「人材力」と「地方分権」で国が変わる
エピローグ:そして個人は「グッドライフ」を求めよ

サブタイトルに「デフレ不況時代の新・国富論」と名打った、現在の諸問題に対する大前健一による解決策の提起である。
大前健一は数多くの著書を記しているが、大概が示唆に富むものであり、基本的に片っ端から読んでいる。
普通の個人が知る事もない、またメディアをチェックしていても身につかない知識やモノの見方を提供してくれるものであり、私にとっては貴重なツールである。
すべての意見に必ずしも賛成できるものではないが、モノの見方としては非常に勉強になるものである。

プロローグではこれからは「官の見える手」に代わり、「民の見えざる手」が重要との、この本のテーマが示される。
第1章では、日本の経営者が小粒になっているとの指摘がなされる。
経済大国とはいってみても、米紙ハーバード・ビジネス・レビューが選んだ「在任中に実績を上げた実行力のあるCEO」ベスト50に、日本の経営者は2人しか入っていない。
世界の事例から比較して、いかにも小粒な日本企業が例示される。

第2章では、これまでマジョリティとされてきた「夫婦+子供二人」という家庭モデルが、実は全世帯で27.9%で、これは単身世帯の31.2%よりも少ないのだという事実が示される。
単身世帯はただ安いだけが購買の動機とはなりえず、したがって安売りだけを目指す企業戦略は失敗すると説く。
事実に基づいた検証という点では、さすが経営コンサルタントであるが、こうした事実は言われて初めて納得する事である。

第3章ではアジアを中心とした新興国にスポットを当てる。
ここでは実にダイナミックな動きが見られ、対する日本の姿は年を取って動きの鈍くなった老人のように思えてくる。
第4章では、そんな日本でもまだまだやりようによっては大きな期待ができると、著者のアイディアが披露される。

第5章でスポットが当たるのが人材。
特に韓国の躍進が凄い。
例えばサムスン電子には、TOEIC900点未満の語学力では入社できないのだという。
楽天が社内公用語に英語を採用したと一時話題になったが、それが何だと言われるレベルだ。
それに就職氷河期が話題になっているが、アメリカの就職率は24.4%、中国が70%、イギリスは15%で、日本とは比べ物にならないくらい低い。
なのに日本では補助金まで出していると喝破する。
我々は実に視野の狭い世界に生きているのだとわかる。

そうした現状を打破するための提案が最後になされ、なおかつみんなグッドライフをめざせとまとめる。
いつもながら、こういう目の覚めるような意見を目にするのはいい刺激と言える。
ともすれば、毎日を楽に過ごせるサラリーマンの身としては、このままではいけないという思うきっかけとなる。
サラリーマンボケしないように、折に触れてこういう本に接していきたいものである・・・


    
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2011年04月14日

【インシテミル】米澤穂信

インシテミル (文春文庫) [文庫] / 米澤 穂信 (著); 文藝春秋 (刊)


つい最近映画化もされたこの本、何とも奇妙なタイトルだ。
その意味は途中で『淫してみる』だとわかる。
読み終わって考えてみれば、なるほどと思えないところもなくはない。
タイトルに表れている通り、中身もかなり奇妙なミステリーだ。

主人公は大学生の結城理久彦。
中古車を買うお金を貯めようとアルバイトを探している時、上品な女性須和名祥子と知り合う。
彼女が見つけた奇妙なアルバイトは、時給なんと112,000円。
7日間隔離されての「人文科学的な実験」とある。
112,000円×7×24=・・・のこのアルバイトに12人の人間が集められる。
そしてある郊外の屋敷の地下で、この奇妙な「実験」が始る・・・

小説や映画をみる時は、ついつい主人公に感情移入する。
自分だったらどうするだろうと、思わず考える。
「時給112,000円」
破格の条件だが、私だったら安易には飛びつかない。
仕事柄だろうか、これほどの時給を払ってもペイする仕事とはどういう事だろうと、金を払う立場から考えるからだ。
普通に考えたら絶対にペイしない。

いつだったか、何かの映画かドラマか忘れたが、ある男が美女に誘われて医学のモニターに応じるというストーリーがあった。
やはり隔離されて検査され、眠らされた上で臓器を取られて殺されてしまうという恐ろしい話だった。
ひょっとしたら、この手の類かもしれない。
初めから払うつもりなんてなければ、いくらだって良い条件はつけられる。

だが、主人公はまだ若気の至りの大学生だし、「君子危うきに近寄らず」で慎重な行動を取っていたら、このお話は成り立たない。
そもそも主人公にはなれない。
というわけで、結城理久彦は須和名祥子に会える楽しみも胸に抱きつつ、このバイトに出向くのである。

地下でまったく外界から隔離されて始った実験は奇怪なもの。
各人は24時間監視下で、奇妙なルールを解説される。
詳しく読むうちに、「やっぱりロクなバイトじゃない」と思う。
同時に自分だったら、どう行動するだろうとまた考える。
そしてついに事が起こる・・・

まったく想像上の空間=クローズド・サークルで行われるこの物語。
なかなか著者の想像力は逞しいものだと思わせられる。
こういうミステリーは、読者に想像させるものだが、おかげでどんな展開になるのかたっぷりと想像させてもらった。
意外な展開も面白かった。
映画化されるのもわかる気がする。
映画の方も面白いかもしれないな、と思う。
そのうち観て淫してみたいと思う・・・

   
   
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2011年04月12日

【20歳の時に知っておきたかったこと】ティナ・シーリグ

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義 [ハードカバー] / ティナ・シーリグ (著); Tina Seelig (原著); 高遠 裕子 (翻訳); 阪急コミュニケーションズ (刊)

「これからの正義の話をしよう」 「最後の授業」などアメリカの大学の講座を元にした本が最近流行っている。
これも「スタンフォード大学集中講座」と名打った本である。

著者はスタンフォード大学のエグゼクティブ・ディレクター。
同大学で起業家育成講座を担当し、高い評価を得ているらしい。
この本はタイトルにある通り、若者に対して未来に向き合う心構えを説いた本であるが、若者でなくてもそのエッセンスは十分役に立つ。

冒頭でいきなり問題が出る。
「今、手元に5ドルあります。2時間でできるだけ増やせと言われたら、みなさんはどうしますか?」
思わず読むのをやめてしばし考える。
しかし、その先を読んで学生たちの豊かな答えを読むと、自己嫌悪に陥る。

これは著者の講座の人気コーナーらしい。
学生たちはチームを組んでこの問題に取り組む。
そして多いチームは600ドル以上を稼ぎだしたという。
5ドルに囚われていては到底これほどは稼げない。
学生たちの数々の回答に唸るばかりである。

起業家育成講座だけに発想力のトレーニングが重要となる。
常識に囚われていてはとても新しい発想は出て来ない。
伝統的なサーカスの特徴は、「大きなテント」「動物による曲芸」「安いチケット」「一度にいくつもの芸」「ピエロ」「肉体自慢の男たち」・・・
そうした特徴をすべて否定するとシルク・ドゥ・ソレイユ風になる。
そんな具合だ。

「自分の殻を破ろう」
「ルールは破られるためにある」
「機が熟すことなどない」
「早く、何度も失敗せよ」
「幸運は自分で呼び込むもの」
「新しい目で世界を見つめてみよう」
各タイトルだけ読んでいっても元気になりそうである。

情熱をもってチャレンジをすれば道は開けてくる。
失敗かどうかは最後になってみないとわからない。
スティーブ・ジョブスの言葉がそんな勇気をくれる。
確かに、20歳の時にこの本を読みたかったとつくづく思う。



   
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2011年04月03日

【フリーター家を買う】有川浩

フリーター、家を買う。 [単行本] / 有川 浩 (著); 幻冬舎 (刊)

少し前にテレビドラマでやっているのを見かけ、原作があると聞いて読んでみようと思った本である。
著者の本を読むのはこれが初めてである。

主人公は二流私大を出て、就職したばかりの若者武誠治。
入った会社の宗教じみた研修に引いてしまい、あっさり退職。
簡単に考えていた再就職が実は困難で、やむなくアルバイトで食いつなぐ。
いいかげんな性格で行き当たりばったりの生き方は、父親とも激しく対立する。
ところがやがて母親が重度のうつ病を発症。
それまで知らなかった事実を姉に突きつけられ目が覚める・・・

主人公武誠司がタイトルにある通りフリーターとなり、そして母親のため家を買おうとしていく姿をストーリーは追う。
ストーリーは非常にシンプルだ。
波瀾万丈もなく、進んでいく。

目覚めたあとの誠司の頑張りは目を見張る。
ちょっとしたビジネスストーリーだ。
ありがちな恋愛もここでは主眼ではなく、さり気なく触れられる程度なのも好感が持てる。
何せ家を買う話なのだ。

若者が頑張る姿はそれだけで胸を打つものがある。
特にいいかげんだった頃の誠司は、どこにでもいそうなイマドキな若者なのだ。
と言う事は、いいかげんに見える今の若者たちも、きっかけさえあれば大変身するのだろう。

仕事での頑張り、対立していた父親との関係、姉や母親との関係、そうして成長していく誠司の姿が胸を打つ、ちょっとシンプルだが、満足できる物語である。


    
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2011年04月02日

【こんな言葉で叱られたい】清武英利

著者は読売巨人軍の球団代表。
以前、前著「巨人軍は非情か」という本を読んでおり、その内容に惹かれた事もあって手に取った。
野球が好きだという事もあり、野球選手の本はよく読んでいるが、球団代表といういわば制服組の語る野球というのもまた興味深いものである。

今回はタイトルにある通り、「叱る」という事がテーマになっている。
しかしながら、その本質は「叱る」というよりも「鼓舞する」という方に近い。
「こんな言葉で」とタイトルにはあるが、中味を見ていけば言葉そのものよりもその場その場でのやり取りに心が動かされる事が多い。
そういう意味では前後の文脈が分かっていなければ意味がないものが多い。

巨人軍の球団代表だけあって、登場するエピソードは巨人の選手たちが多い。
普段窺い知る事のない監督や選手たちのエピソードはそれだけでも興味深いが、そんな彼らが華やかな世界の裏側でしている苦労話はさらに興味深い。
名選手でも水面下では必死に足を掻く白鳥なのである。

イースタンリーグで1対25と大敗した日、二軍監督の岡崎は選手に語った。
「今日の負けにどう対処するか。方法は二つある。もう野球をやめてしまうか。練習して力をつけるか。」
野球に限らず使える真理だ。

守護神の豊田が3点リードで最終回に登板。
楽勝と思われていたゲームで逆転負けを喰らう。
翌日監督は豊田に言う。
「お前は投手としては完成形に入っている。セーブをあげるたびに一喜一憂するような投手ではないんだ。巨人軍がどうしてお前に来てもらったか、わかっているだろう。若手が豊田のような堂々とした投手になりたいと思うような姿を見せてもらいたいんだ。自分の姿をテレビで見てみろ。仲間が不安に思うようなマウンドさばきだぞ。世に残る闘いざまをみせてくれ」
ベテランでもこんな事を言われているのだ。

巨人ファンでなくても、一つ一つのエピソードは興味深く、また時折胸も熱くなる。
元新聞記者と言う事もあって、文章もわかりやすく読みやすい。
選手経験者とはまた違った角度から見る野球は、やっぱり奥が深い。
著者はいろいろと文章も書いているようだし、これからも著書は出版されるかもしれない。
その都度チェックしたい著者である・・・


こんな言葉で叱られたい (文春新書) [新書] / 清武 英利 (著); 文藝春秋 (刊)
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2011年04月01日

【ロスト・シンボル】ダン・ブラウン

映画化もされた大ベストセラー「ダヴィンチ・コード」と「天使と悪魔」の著者ダン・ブラウンが、両シリーズの主役ロバート・ラングドン教授を主人公とした第3弾として発表したのがこの作品。

「ダヴィンチ・コード」も「天使と悪魔」もともに歴史上の芸術と宗教とを絡ませた見事なストーリーであった。
「これは本当なのだろうか」と思わず読み返してしまう部分があちこちにあった。
レオナルド・ダヴィンチやニュートンなどの歴史上の人物が、本当にこんな事をしていたのだろうか、と圧倒されたものである。

そして今度は舞台がアメリカの首都ワシントン。
何かと陰謀説が取り上げられるフリーメイソン。
ワシントン記念塔にジェファーソン記念館にリンカーン記念館といった名だたる建物が、秘められた古の謎の舞台として登場する。
またしても「これは本当なのだろうか」と惑わされる世界に放りこまれる。
「作中に描かれた儀式、科学、芸術、記念建造物は、どれも実在する」という冒頭の言葉に否が応にも興味を湧きたてられる。

フリーメイソンのメンバーでもある恩師ピーター・ソロモンから頼まれて、ラングドンは講演のためワシントンにやってくる。
しかし講演会会場はものけの空で、突然上がった悲鳴に駆けつけると、そこには切断された人の手が置かれている。
その手の指輪を見たラングドンは、その手がピーター・ソロモンのものである事を知り愕然とする・・・

犯人からの連絡で、「生きてピーターを取り返したければ、古の謎を解き明かせ」と迫られるラングドン。
なぜかそこにCIA長官がやってきて、犯人に協力しろと迫る。
読む者もみなラングドンと同様、戸惑いながらストーリーに巻き込まれていく。

建国の父達が隠したという秘密とはいったい何なのか。
ワクワクしながら読みだすとなかなか止まらないのは前2作と同じパターン。
緻密な取材と物語の構成力は凄いと思わざるを得ない。
今までほとんど興味もなかったが、改めてワシントンを訪れて確かめてみたくなってしまった。
このシリーズはまだ続くのだろうか。
続くとしたら、次回作も必ず読みたいと思う・・・


ロスト・シンボル 上 [ハードカバー] / ダン・ブラウン (著); 越前 敏弥 (翻訳); 角川書店 (刊)ロスト・シンボル 下 [ハードカバー] / ダン・ブラウン (著); 越前 敏弥 (翻訳); 角川書店 (刊)
posted by HH at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | スリリングなストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする