2011年07月26日

【ハーバードの世界を動かす授業】リチャード・ヴィートー




第1章 国が発展するための8つの軌道
第2章 アジアの高度成長
第3章 狭まって身動きがとれない国々
第4章 資源に依存する国々
第5章 欧州連合という試み
第6章 巨大債務に悩む富裕国
第7章 国の競争力とは何か
第8章 私たちのミッション

最近はアメリカの大学の授業を本にしたものが増えているようだ。
それが「流れに乗る」事なのか、「二番煎じ」なのかは微妙であるが、それはすべて「内容次第」なのだろう。
そういう意味で、この本は「流れに乗っている」と言える。

サブタイトルに「ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み説き方」とある通り、この本の基となっているのは、ハーバード・ビジネス・スクールのAMP(Advanced Management Program)と言われる講座で、受講生は世界の一流企業から選ばれた経営者および経営者候補のほんの一部だという。
「トップエグゼクティブが学ぶ世界最高峰の授業」という触れ込みである。

その内容は世界経済の読み説き方。
日米を中心に、中国、シンガポール、インド、メキシコ、南アフリカ共和国、サウジアラビア/イスラム、ロシア、EUと丁寧に扱っていく。
現状の姿から問題点、課題などが浮き彫りにされていく。

個人的には、日米についてはそれなりに知識もあるつもりだが、例えばシンガポールなどとなるとそうではない。
リー・クアンユーの戦略、それを実行した機関、汚職防止局を中心としたクリーンな国作りなどは、まったく知らないシンガポールの意外な面を垣間見る事ができる。
同様な事はメキシコにも言える事である。

メキシコは第3章「狭まって身動きのとれない国々」で紹介される。
「狭まって身動きのとれない国々」とは、「先進国より成長率は高いものの、中国やインドほどの成長はできず、中国やインドよりも所得は高いが、先進国ほどの高付加価値商品で競争できるスキルは持っていない」という国々の事を言う。
そうした視点から、そういう国々を捕えた解説は、他にはあまり目にしないので新鮮だ。

日本自身についても、戦後の経済成長から減速、そして変化の過程も実に詳しい説明がある。
現代の日本の課題も、
・巨額の財政赤字
・高齢者の健康保険の資金をどうするか
・官僚から権力を奪えるか
と具体的に上げられているが、問題のない国などないわけで、各国によって異なる事情がそれぞれわかりやすく解説されている。

最後にビジネス・リーダーへの提言がまとめられている。
財産権の確保、マクロ経済政策、強力な中央銀行、経済の自由化、労働市場の柔軟性、資源マネジメント、汚職防止、公正な所得配分・・・
ハーバード・ビジネス・スクールにいまさら通う事などできはしないが、そのエッセンスを本という形で得られるとしたら、それだけでもこの本の価値はあると思うのである。


    
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2011年07月12日

【白い仮説黒い仮説】竹内薫



プロローグ 現代日本は「黒い仮説」が跋扈する時代
第1章 健康か不健康か、それが問題だ
第2章 数字に惑わされるな!
第3章 生命と進化からだまされない考え方を学ぶ
第4章 地球と宇宙は白い仮説、黒い仮説の宝庫
エピローグ 「黒い仮説」時代をどう生きる 

著者は「科学作家」なのだと言う。
いろいろと著書もあるようなのであるが、はっきり言って読んだ事もないのでわからないし、「科学作家」なるものがどんな作品を書くのかも漠然としている。
まあ科学に関するあれこれを書くのだろうと、なんとなく想像する。

仮説に白と黒と言われてもわかったようなわからないような気もするが、ここではその仮説が事実に近いか否かを、白と黒とその中間のグレーとで表現している。
すなわち、事実に近い仮説を「白い仮説」、事実とはことなる仮説を「黒い仮説」と呼んでいるのである。

中味に入れば、どちらかというと雑学事典と言ってもよさそうな内容。
第1章では健康に関する様々な事。
例えば「マイナスイオンは体によいか」とか、「ミネラルウォーターの正体」「酒豪と下戸についての常識」「匂いと記憶」「血液型分析」「カロリー表示」などの項目が続く。

マイナスイオンはあちこちで謳われている。
我が家で使っているドライヤーもマイナスイオンが発生するタイプだ。
だが、実際はマイナスイオンと言っても、実は正体不明で効果も定かではないのだとか。
それでメーカーは「体に良い」とは書かずに、「体に良いと言われています」と記載しているのだとか。

「ふ〜ん、なるほど」と思うが、だからどうだと言う事もない。
我が家ももともとマイナスイオンが出るからそのドライヤーを選んだわけでもない。
確かに話としては面白いし、酒の肴にはなるだろう。
ちょっと雑学が増えた気がする。
そうした話がずっと続く。

事に触れて「白い仮説」「黒い仮説」と強調してはいるものの、その正体は雑学事典だ。
それが悪いというつもりもないし、「ふ〜ん、なるほど」と思う事は多いので、それなりに読んだ甲斐はある。
無理に白だ黒だと拘る事もない気がする。

厳密に言えば白か黒かはっきりしないから「仮説」なのじゃないかとも思う。
白に近いグレーか黒に近いグレーか、ここに書いてある事はそんなに拘ってもしかたがない。
まあ読者を惹きつけるタイトルということなのだろう。
惹きつけられた者の体験談である・・・

      
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2011年07月10日

【極秘資金】長岡哲生


     
いつか読もうと思って溜めている読書リスト。
だいぶ前にメモしたものをふとしたきっかけで手に取った本である。

主人公は元大手電機会社のマーケティング部長の宮本。
事実上のコースアウトである関連会社への出向を命じられ、失意のうちに退職。
縁あってアセット・コンソーシアム社の平岡社長に見出され、関連会社の社長として迎えられる。

ある日、平岡から未公開株への投資を勧誘する書類を渡され、その調査を頼まれる。
社長とはいえ、宮本は事実上のオーナーである平岡の意向には逆らえない。
さっそく調査を開始する宮本。
さらに加えて「基幹産業特別資金」なる融資話が舞い込んでくる。

その「基幹産業特別資金」とは、資本金500億円以上の上場企業に対し、資本金の10倍までの資金が付与されるという制度だという。
その昔はやったM資金詐欺のような話だと始めは疑う宮本であるが、初めに証拠金を取られるM資金に対し、この「基幹産業特別資金」はそうした負担がない。

いやならいつでもノーリスクでやめられるとあって、宮本は半信半疑のまま元上司にこの話を紹介する。
未公開株と「基幹産業特別資金」。
このふたつの話を巡ってストーリーは進んでいく。

早くに妻を亡くし、小学生の一人息子と二人で暮らす宮本。
付き合っている女性もいるが、将来的な話は煮え切らない。
私生活のサイドストーリーも並行して、それなりに先が気になる展開が続く。
そしてついに「基幹産業特別資金」の内容が明らかになるのだが、これがちょっと今一の出来。

「ちょっとその理屈付けに無理はないかい」と一人突っ込みを入れてしまう。
「そうきたらこう返せば良いではないか」と思えてしまう。
「正体見たり枯れ尾花」といった感じの種明しにちょっと白々としてしまう。
少なくとも筋書きを考えた時に、弁護士さんにでも意見を聞いたら良かったのではないかと思ってしまう。

「終わりよければ」ではないが、最後の詰めがこうだと途中が良くてもトーンダウンしてしまう。
ちょっと残念、という感じだったかな・・・


      
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2011年07月08日

【やめないよ】三浦和良


          
T 勝ちたい力
U 不惑の力
V 続ける力
W 戦い抜く力
X 明日を生きる力

キング・カズことプロサッカーの世界では第一人者である三浦和良のコラムを一冊にまとめた本である。
もともとは日経新聞に連載されていたものであり、その為内容に日付がついて、いかにもコラムの集大成という形になっている。

三浦和良は1967年生まれの44歳。
にもかかわらず、現役のJリーガーというのが凄い。
40歳過ぎのプロ選手というと、野球では工藤をはじめとして珍しい存在ではないものの、野球とは違って走り回る競技のサッカーだ。
ちょっと凄さが違う。

そんなカズが肩の力を抜いて気楽に語る。
たぶんそれは年齢的なものもあるだろう。
すでにピークは過ぎ、日本代表からも遠ざかっている。
それは年齢的にも仕方のない事。
ただし、それでも若い人たちに負けず現役でいられる。
そんな自負もあって、肩の力が抜けているのだろう。

ファッションにこだわりがあるというカズ。
ファッションもサッカーも常に新しい発見があるという。
基本が出来ている事が第一。
基本を抑えた上で自分の色を出して楽しむという。
話題はサッカーに始り、サッカーに終わらない。

高校を中退してサッカーをするためにブラジルへ渡った青年時代。
かの地のサッカーの話も興味深い。
そんな話題を楽しめるのもカズならでは。
サッカーに限らず、スポーツにも、人生にも当てはまるような話が入っている。

「人生に偶然はない」と最後に締めくくる。
実に共感できる。
素晴らしき90分間を思い、ずっとやっていたいと子供のように語る。
サッカーファンではないが、カズにはずっと現役を続けてほしいと素直に思える一冊である。


    
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2011年07月03日

【涙の数だけ大きくなれる】木下晴弘



第1章 仕事がイヤになったら・・・
第2章 仕事がつまらなくなったら・・・
第3章 人間関係に悩んだら・・・
第4章 あなたにできることは何か?
第5章 あなたが大きくなるために・・・

著者は関西では有名な大手進学塾で、長年高い進学実績と生徒からの支持を得て人気講師として活躍した人物。
今はそのノウハウを活かし、モチベーションアップのセミナーなどを手掛ける会社の代表者として活躍している。

灘高校などの難関校へ合格に導くには、単なる受験テクニックだけではダメで、生徒一人一人がやる気にならないといけない。
生徒の心に火をつけるためには、感動を呼び起こさないといけないわけで、そうした時に使ったのであろうか、思わず涙を呼ぶようなちょっといい話がこの本では紹介されている。

アフガニスタンの子供たちが望んだこと
あるレジ打ちの女性の話
ある生徒の高校受験とその結末
たった一つの社訓を掲げた百貨店
甲子園で優勝を果たした佐賀北高校野球部の秘密
ある会社の就職試験
あるパチンコ店の話
サッカーワールドカップに出場した一人のブラジル人
腐らないリンゴを作り上げた男

どれもこれも何かのヒントになりそうないい話である。
さすがにモチベーションアップの専門家の本。
明日からの仕事のヒントになりそうである。




                  
posted by HH at 22:03| Comment(1) | TrackBack(0) | 良い話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月02日

【グレートカンパニーの作り方】五十棲剛史



第1章 バランスのとれた「健全な会社」がどんどんダメになっている
第2章 熱狂的リピーターを持つグレートカンパニー−OKUTA
第3章 衰退産業なのにお客さまが殺到する「そろばん塾」−イシド
第4章 日本で最も「ありがとう」が飛び交う会社−中央タクシー
第5章 女性の力を最大限に引き出して急成長−三日月百子
第6章 誰もがワクワクする仕組みで売上12倍−買取王国
第7章 お客さまの声が不朽の製品を生む−ハードロック工業
第8章 今日から始めるグレートカンパニーの作り方

著者は船井総研の取締役常務執行役員で、トップコンサルタント。
船井総研では毎年素晴らしい企業に対して、「グレートカンパニーアワード」という賞を設けて表彰している。
その受賞企業を事例として、どのようにしてグレートカンパニーに至ったのかを解説したのが本書である。

第1章ではいわゆる「健全な会社」と言われてイメージするような事をやっていても、今はダメであると逆説的な話から始る。
一点突き抜けた会社がむしろ良いのだと。
「いい会社」の定義を変えなければならないとまで言う。

そもそも会社は潰れるようにできているものであり、潰れない会社というのは、「財務力」「独自性」「共感性」の3要素があると言う。
「財務力」とは財務そのもの。
「独自性」とは他社にないオリジナリティ、「共感性」とは「なくなったら困る」と思われているか。
そうした要素を備えた企業こそが生き残れるのである。

事例でまず取り上げられるのは、著者が自らコンサルティングを引き受けたためであろうか、あちこちで紹介しているOKUTAである。
OKUTAは自然素材、高品質、エコロジーに徹底してこだわるリフォーム企業。
もともとは普通のリフォーム会社であったが、エコロジーを意識した現会長が路線変更を決断。
以来、次第にファンを増やし、今では大手リフォーム会社を向こうに回し、圧倒的な顧客支持を得ている。

そろばん塾で快進撃を続けているイシドの事例は新鮮だ。
そろばん塾などいまさらという感じがするが、単なる計算道具という観点を捨て、「能力開発」「記憶力」「集中力アップ」を謳い文句に成長を続けているという。
創意工夫とやりようが大事だとあらためて実感させられる。

その他取り上げられている4つの企業の事例は、さすがに感心させられる内容だ。
すべての企業に共通しているのが、「ミッション経営」だという。
「ミッション経営」とは、共感者(顧客、人材、お金)が自然と集まるミッションを掲げ、それに基づいてすべての経営資源に一糸乱れることなく一貫性を持たせた経営だという。
簡単に言えば、みんなが共感する目標を掲げた企業は、みんなの共感を集めて成功していくというところだろうか。

OKUTAは唯一我が町大泉学園にも支店があるが、残念なのはその他は身近にはないというところだろう。
こういう優れた企業が身近にあれば、と思わずにはいられない。
こうした企業ばかりになったら、この国ももっと幸せが溢れるのだろうか。
ちょっとそんな想像をさせられた・・・

       
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2011年07月01日

【Story Seller】伊坂幸太郎他


             
首折り男の周辺:伊坂幸太郎
プロトンの中の孤独:近藤史恵
ストーリー・セラー:有川浩
玉野五十鈴の誉れ:米澤穂信
333のテッペン:佐藤友哉
光の箱:道尾秀介
ここじゃない場所:本田孝好

7人の作家が織りなす短編集である。
テーマは別にないようである。

冒頭は伊坂幸太郎。
首をへし折って殺すという殺し屋とその殺し屋に良く似た男。
学校でいじめられている少年と、殺し屋が隣に住んでいると信じる夫婦が登場。
荒唐無稽な設定が得意の伊坂幸太郎であるが、ここではちょっと抑え気味。
最後のオチがさらりと効いている。

『プロトンの中の孤独』は自転車競技にかける男の話。
個人競技の感があるも、実はチームスポーツでもある自転車ロードレース。
ピークから力の衰えた主人公と才能ある孤独な走り屋の同僚の物語。
コンパクトにまとまっていて面白い。

タイトルでもある『ストーリーセラー』は 「フリーター家を買う」の有川浩。
才能ある作家とその夫。
夫婦愛が胸に沁み入る物語。

『玉野五十鈴の誉れ』はちょっと変わっている。
いつの時代の話なのかちょっとよくわからないが、地元の名家小栗家に君臨するお祖母さま。
男子が生まれず、失意の中で育てられた純香にあてがわれた専属女中玉野五十鈴。
奇妙な旧家の中での物語。
ちょっと背筋が寒くなるオチが何とも言えない。

『333のテッペン』は東京タワーを舞台にした物語。
でもなんだかよくわからない。
まあ短編だし、こういう話もあっていいのかもしれない。

『光の箱』は7つの話の中で、個人的には一番気に入った。
高校生の頃の淡い思い出。
久しぶりに開かれた同窓会。
別れたままの彼女に会えるだろうかと淡い期待を胸に、童話作家が故郷を訪れる。
ちょっとほのぼのとして良い感じだ。

『ここじゃない場所』は同級生がテレポートしたと信じた主人公リナの冒険談。
ちょっとどうかなと思える部分もあるが、コンパクトにまとまっている。
各人のPRとしてはこういう作家盛りだくさんの本もいいかもしれない。
この本をきっかけに道尾秀介の作品を他にも読んでみたくなった・・・


      
posted by HH at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 有川浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする