2011年09月24日

【日本人はなぜ戦争をしたか】猪瀬直樹



サブタイトルに「昭和16年夏の敗戦」とあるが、これがもともとのタイトルのようである。
それを「猪瀬直樹著作集8」として、他のものとあわせて一冊とした本である。
元々のタイトルである「昭和16年夏の敗戦」とは、日米開戦のこの年設立された「総力戦研究所」に由来する。

各省庁、民間からエリートたちを選りすぐり集め、「総力戦研究所」が設立されたのは昭和16年の4月。
30代の若手エリートたちが抜擢され、模擬内閣を作る。
そうして各人が出身母体からデータを持ち寄り、机上演習を繰り広げる。
アメリカとの開戦回避という方針も、実際の事情から困難となっていき、やがて「日米開戦すれば」という前提条件の演習が求められる。

そして「開戦」の結果は、日本必敗。
時に昭和16年8月。
4年後、真珠湾攻撃と原爆投下以外は、ほぼ総力戦研究所の予想通りに戦況は終始し、日本は焦土と化す。
しかし、昭和16年8月の2日間にわたるその報告を、模擬内閣から聞いた東条英機首相は次のように答える。
「諸君の研究の労を多とするが、これはあくまでも机上の演習でありまして、実際の戦争というものは、君たちの考えているようなものではないのであります。日露戦争で我が大日本帝国は、勝てるとは思わなかった。しかし、勝ったのであります・・・」

無謀と言われる戦争になぜ進んでいったのか。
この本を読むと当時の状況が細かくリアルに伝わってくる。
東条英機一人が悪人となっている感もあるが、昭和16年に入るとすでに大きな流れは日米開戦に向かって動いている。
まるでタイタニック号が前方にそびえる氷山を避けられなかったように・・・

特に日本側の意思決定も興味深い。
アメリカには勝てないという冷静な意見も海軍を中心に随分とあった。
しかし、日本を取り巻く情勢の変化と、政府が軍部の行動を抑制できないという憲法上の問題、そして責任の所在が不明確でリーダーシップなき指導部がやがて開戦を正当化していく。
陸軍と海軍、統帥部と政府、それぞれの組織がそれぞれの組織目的を優先させ、統一的な運用のないまま、つぎはぎだらけの意思決定を行っていく・・・
その意思決定に利用される数字も、つじつま合わせのものだったりする・・・

読んでいくうちに、総力戦研究所が日本必敗の結論を出していたというよりも、日本的意思決定のあり方に呆れる気持ちが強くなる。
そして、じつはその意思決定システムは、現代日本においてもまだ健在だという事に背筋が寒くなる。
本質的な部分では、戦前の日本を過去のものと片付けることは出来ないのである。

これからの我が国の行く末を考えるためにも、A級戦犯にすべての責任を押し付けて片付けるのではなく、「なぜ戦争をしたのか」についてきちんと検証する必要がある。
この本は、その時に一読の価値ある一冊であると思う。

               
   
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2011年09月23日

【人生という名の手紙】ダニエル・ゴッドリーブ



著者は精神分析医。
ラジオ番組の司会や新聞のコラムニストも務めているようである。
交通事故の影響で四肢麻痺という障害を抱えながら仕事をこなしているという。

本書の原題は「Letters to Sam」。
サムとは著者の孫であり、自閉症を抱えている。
まだ幼い孫に向かって、自分の経験してきた事、考え、これからどう生きるべきか、を書き残す形にしたのが本書である。

精神分析医という立場よりも、四肢麻痺という障害者としての立場からの話が比較的多くの気づきを与えてくれる。
ディズニーワールドに行った際、初めの時は何に乗れるのかわくわくしてバスに乗る。
リフトを操作してもらい、時間をかけてバスに乗り込んだ。
ところが10年後に行くと、リフト操作してもらいその間他の乗客たちを待たせている事が気になって楽しめない。
2回ともまったく同じ経験なのに、心の持ち方によって受け止め方が180度変わってしまう事に気がつく。

素晴らしいある春の日に、玄関前の芝生で車椅子の車輪がリスの巣穴にはまって動かなくなる。
あたりには誰もいなくて、どうにもならなくなり、自分の無力さに泣きだす。
自閉症を抱えたサムも、きっとそんなどうにもならない状態になるかもしれない。
そうした観点からのサムに対する言葉は、障害を抱えた著者ならではなのだろう。

大きな苦痛を抱えた禅僧の話は心に沁み入るものだった。
若い修行僧に助けを求められた師匠は、コップに一杯の塩を入れて修行僧に飲ませる。
水は当然塩辛い。
次に湧き水に同じ一杯の塩を入れて飲ませる。
今度はそれほど塩味を感じない。
そして師匠は言う。
「問題は塩ではなく、入れ物だ。そなたが為すべき事は、入れ物を大きくする事だ」
なかなか深い。

もしも著者が、成功したバイタリティ溢れる起業家だったら、自閉症を抱えた孫にふさわしいアドバイスができるか、と言えば難しいかもしれない。
社会的な弱者である著者だからこそ、低い視線から世の中を見て、おそらくサムが見るであろう世界からアドバイスができるのだろうと思う。
そうした言葉の数々に何だか心が穏やかになる気がする。

工場の煙突を指さして、「あの雲を作る機械を見て」と母親に言ったというサムも、いつかこの祖父からの手紙をきちんと理解できるかもしれない。
読み終わると少し優しい気分になれる本である。
     
     
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2011年09月20日

【超訳 ニーチェの言葉】フリードリッヒ・ニーチェ/白鳥春彦



T 己について
U 喜について
V 生について
W 心についいて
X 友について
Y 世について
Z 人について
[ 愛について
\ 知について
] 美について

カントやヘーゲルと並ぶドイツの哲学者ニーチェ。
そのニーチェがさまざまな著作で残した言葉を文字通り集めて一冊の本にしたものである。
いわゆる名言集であるが、こうした「切りぬいた」言葉だけなのに重みのある言葉が並んでいる。

「最初に自分を尊敬することから始めよう」という初めの言葉にまず感銘を受ける。
続いて「人間というものは間違った評価をされるのがふつうのこと・・・自分が思うように、自分が望むように評価してくれることなんかほとんどない」という言葉が続く。
今となってみればその通りだなあと思えるが、もっと若い頃に巡り合っていたら、随分楽に生きられたかもしれないという言葉だ。

「人間は常に脱皮していく・・・自分を批判していくこと、人の批判を聞いていくことは、自分の脱皮をうながすことにもなる」
「おおかたの人間は自分に甘く、他人に厳しい。・・・自分を見るときにはあまりに近くの距離から自分を見ているからだ。そして、他人を見るときは、あまりにも遠くの距離から輪郭をぼんやりと見ているからだ」
「人から信じてもらいたければ・・・行動で示すしかない。」
『T己について』にはこんな言葉が並ぶ。

哲学者、それもニーチェなどと聞くと何やら難解な言葉が羅列されているようなイメージを持っていたが、登場する言葉はどれもが平易でわかりやすい。
そして思わず納得してしまう。
「わたしたちひとりひとりにも確かな歴史がある。それは日々の歴史だ。今この一日に、自分が何をどのように行うかがこの日々の歴史の一頁分になるのだ。」
そんな歴史を築くとなると毎日の生活も無駄にはできない。

「多くの人は、物そのものや状況そのものを見ていない。その物にまつわる自分の思いや執着やこだわり、その状況に対する自分の感情や勝手な想像を見ているのだ。」
「人との交わりにおいては、相手のなんらかの行為や考えの動機を見抜いていても知らぬふうでいるような、一種の偽りの鈍さが必要だ。また、言葉をできるだけ好意的に解釈することだ。」
実に深く心に沁み込んでくる言葉である。

気に入った言葉に付箋をつけていったら、あっという間に付箋だらけになってしまった。
人によって、経験によって心に残る言葉は違ってくるのだろう。
しばらくして読み返してみたら、また違うページに目が止まるかもしれない。
手元に置いておいて、時をおいて何度も読み返すのが、この本の読み方なのかもしれない。
学生時代に読んだ「ツァラトゥストラはかく語りき」も読み返してみたくなった・・・

                             
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2011年09月13日

【放課後】東野圭吾



東野圭吾の初期の作品であり、かつ第31回江戸川乱歩賞受賞作品。
タイトルにある通り、ある女子高を舞台にした連続殺人事件を描いたミステリーである。
ある意味、これも「学園もの」と言えるのだろうか。

主人公は舞台となる精華女子高等学校に勤務する教師前島。
あまり教育熱心とは言えない、それゆえか「マシン」とあだ名される数学の教師。
家に帰れば妻と二人の普通の家庭。
誰からも恨まれそうにもない平凡な教師だが、冒頭いきなり頭上から植木鉢が落ちてくる。
身の危険を感じたのはそれが3度目。
誰かに命を狙われているような気がしている。

そんな中、同僚の教師が誰もいない更衣室で死んでいるのが発見される。
しかもそこは中から心棒がしてあり、完全な密室となっていた。
犯人は内部の者らしい。
突然起こった殺人事件。

前島を二人きりの旅行に誘う高原陽子。
成績優秀な北条雅美。
アーチェリー部の主将杉田恵子。
アバンチュール好きという本性を隠している教師麻生恭子。
次々と登場する人物たち。
この中に犯人はいるのかもしれないし、いないのかもしれない。

あちこちに仕込みのタネを巡らせて物語は進む。
やがて起こる第2の殺人事件。
次第に事件の核心に迫っていく前島。
学園ものらしいストーリー展開にミステリーの要素が加わって、いよいよ事件の全貌が明らかになる。
そして虚を突かれるラスト。
これがなかなか。

やっぱり後々大成する作家らしい作品と言えば言える。
一見なんの変哲もなさそうなさり気ない描写が、あとからきちんとストーリー展開に活かされてくる。
作家がすべて操っているのだから、当然と言えば当然なのだが、やっぱりうまいなぁと感じさせられる。
初期の作品と言われれば、なるほどそんな感じの印象も受ける。
まだまだ読んでいない作品は多いし、暇をみて他のもいろいろ読んでみたいものである・・・


                        
              
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2011年09月12日

【卒業】東野圭吾



             

東野圭吾のミステリーである。
東野圭吾の作品の中でもガリレオと並んでよく登場するのが加賀恭一郎刑事。
あまり初期の作品を読んでいなかったから知らなかったのだが、この本は学生時代の加賀恭一郎が登場する。
いずれ 「新参者」に登場するような、「地味だけども優秀な刑事」になる前の、加賀恭一郎の姿は実に興味深い。

高校時代から仲の良い7人の学生たち。
クラブ活動は終わりの時が近づき、就職活動をし、卒論に追われる。
そんな4年生の7人だったが、その中の一人祥子がある日自室で死んでいるのが発見される。
発見したのは沙都子と波香。
自殺だと思われたが、誰かが祥子の部屋にいた事がわかる・・・

そしてその後、高校時代の恩師の家に集まったメンバーが茶会を開く。
雪月花之式というお茶の作法の途中で、突然波香が倒れる。
死因は薬物中毒。
飲んだお茶の中に毒物が入っていたのである。
偶然に左右されるお茶の作法で、犯人はどうやって波香に毒を飲ませたのか。
加賀恭一郎はその方法について考えを巡らせる。

二つの殺人事件に関連性はあるのか。
密室殺人に雪月花之式というお茶の作法を利用した殺人。
一見不可解な謎解きの世界に引き込まれていく。
ミステリー作家というものは、本当にいろいろと考えて読む者を楽しませてくれるものである。

刑事の父の姿を見ていて、教師になろうとする加賀恭一郎。
沙都子への想い。
本筋以外のところでも楽しめる要素はある。
やがて優秀な刑事になっていく加賀恭一郎の原点。
加賀恭一郎ファンならば、これは読んでおかないといけない本だと思う。

     
    
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2011年09月11日

【四つ話のクローバー】水野敬也



深沢会長の話
ハッピーコロシアム
見えない学校
氷の親子

著者は「夢をかなえるゾウ」の作者である。
ベストセラーになり、確かドラマ化もされたが、ある日突然主人公の元にやって来たゾウからいろいろと人生の示唆に富んだ話を聞き、成功者になるという単純な物語。
だが、ストーリーこそ単純だが、その話の内容は深く、今もその時のメモを時折見直している。
そんな著者の作品だから迷わず手に取った。

内容はタイトルに「四つ話」とあるように、4つの短編から成り立っている。
そしてどれも突拍子もない話なのだが、深い含蓄がある話であるという共通点がある。
「深沢会長の話」は、大グループ企業の深沢会長に「私」がアドバイスをもらう話。
深沢会長は何と人間ではなく、馬。
そんな馬鹿なと言いたくなりそうなシチュエーションだが、内容は濃い。
成功の秘訣は『頑張る』事。
簡単なのだが、誰も出来そうで出来ない事でもあるという。
頑張るための方法は、『頑張らなければならない』を『頑張りたい』に変える事だという。
なるほど。
深沢会長の正体がまた面白い。

「ハッピー・コロシアム」は大金持ちと貧乏な男が「幸せ指数」で対決する話。
どちらがより幸せか。
そしてそれは、「幸せはお金で買えるか」というテーマでもある。
単純にお金ではないとするのではなく、結論は「お金と感謝の心」という内容がいい。

「見えない学校」は、駅のホームで幽体離脱した若者が、ホームに漂う地縛霊とともに天使のテストを受ける話。
これに受かれば地縛霊は成仏でき、若者は元の肉体に戻れる。
そのテストによって、読む我々にも気づきが与えられる。

「氷の親子」は遊園地での氷のクマの親子の話。
夏の間の出しものが終わり用なしとなった氷のクマ。
ポタポタと溶けながら、親熊は何とか小熊を助けようとする。
夜の遊園地でジェットコースターらの協力を得られるも、うまくいかない。
そんな親子の姿がちょっと胸を打つ。

4つの話はいずれも教訓めいた事を押し付けるわけではない。
読む者がそれぞれ何かを感じられる内容である。
手軽に読めてしまう厚さと内容。
「夢をかなえるゾウ」とその目指すところは同じだとも言える本である・・・


           
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2011年09月10日

【ユダヤ人大富豪の教え ふたたびアメリカへ篇】本田健



序章 これから自分はどう生きるのか
LESSON1 感情が人生のすべてを動かす
LESSON2 人間関係のマトリックス
LESSON3 自分の立ち位置を知る
LESSON4 過去の家族関係を癒す
LESSON5 運命を左右する引き寄せの法則
LESSON6 ライフワークを生きる
LESSON7 ビジネス、お金と健康的な関係をもつ
LESSON8 人生に平安をもたらすもの
終章 帰国の旅−新しい運命との出会い

以前ベストセラーになった「ユダヤ人大富豪の教え」の続編である。
もう一冊「スイス人銀行家の教え」というものもあり、富豪に学ぶシリーズとでも言えそうなシリーズである。
物語形式で、主人公とともに学びを体験するという形は前2作と同様。
それは中味の理解しやすさに繋がっている。

主人公のケンは若くして会社を立ち上げ、ビジネスは順風満帆。
ところがある日、最愛の妻礼子が実家に帰ってしまう。
理由もわからぬまま、「そのうち帰ってくるだろう」と楽観していたケンは、かねてから予定していたアメリカ視察旅行に出掛ける。
そして偶然の成り行きで、成功者であるハリー・ゴールドバーグのワークショップに参加する事になる。

そしてそこで登場するのが、「人間関係のマトリックス」。
ハリーが説明する人間関係の法則。
それはまず人間を「自立」「依存」「ポジティブ」「ネガティブ」の4つの組み合わせに分けるというもの。
つまり、【ポジティブ自立】、【ネガティブ自立】、【ポジティブ依存】、【ネガティブ依存】である。

【ポジティブ自立】の人の特徴は、自ら進んで問題解決に当たり弱音を吐かず、目標を設定するとすぐに行動する。人を巻き込んでいく力が強いが、人の心に添えない側面もある。
【ネガティブ自立】の人は完璧主義で物事を確実に進めようとするが、威圧的であったり、コントロールする事も厭わず、自分が有能だと思う面があり、時としていじめっ子のようになる。
【ネガティブ依存】の人は感受性が鋭く、問題を見つけるのが得意なカウンセラータイプ。ネガティブな側面を見がちなため、昔の事でくよくよ悩んだり文句を言い続ける傾向がある。
【ポジティブ依存】の人たちは穏やかで癒し系の人が多く、まわりをリラックスさせるが、【ネガティブ自立】の人と一緒になると、ミスをしがちでいつも怒られたりいじめられたりしする。いつもオドオドしがちである。

これらの4つのタイプは人が感情的にいきがちな場所を表している。
それは性格ではなく、人間関係の力学によってその面が引き出されているだけ。
そこから発して、世界で起きるすべての事はバランスの取れていないところにバランスをもたらそうとして起きている。
人間関係の力学も、そのバランスの上で起こる事なのである。

登場人物たちは、みなそのタイプを代表しているような人物たちで、4つのタイプそれぞれのイメージはしやすい。
そしてやがてケンは自分自身が知らず知らずのうちに社員や妻に与えていた影響に気付いて行く。
その過程を追ううちに、読む立場の人間にもそれが見えてくる。

人間関係を円滑にして行くには、それぞれのタイプをよく理解し、互いに歩み寄る(センターへ寄る事が大事だという。
何となく身の周りにはそれぞれのタイプに当てはまる人がいて、そしてどうしてそういう行動を取るのか、ここに当てはめてみるとわかる気がして、すっと腹落ちする。
この本で得られた収穫だ。

その他にも夢を叶えるための考え方や、生き方に繋がる考え方もあって、ハリーの教えには頷く事が多い。
自身の体験談をベースに書いているという事だから、こんな体験をした著者が成功者となったのも当然なのかもしれない。
いかにすればより良く生きられるのか。
そうした疑問に対する一つのヒントを与えてくれる。
これはそんな本である。


                                 
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2011年09月04日

【タッポーチョ太平洋の奇跡】ドン・ジョーンズ



先日、『太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−』という映画が公開されたが、これはその原作本。
著者は元米海軍海兵隊員。
自らサイパンでの作戦に従軍し、最後まで抵抗を続けた日本軍を讃え、その指揮官である大場元日本陸軍大尉を戦後訪ね、協力を得て本書を書きあげたという。

サイパン戦は1944年6月から7月にかけて行われたもので、米軍が圧倒的な火力でもって3週間ほどでサイパンを占領している。
この時生き残った日本兵と民間人が、タッポーチョ山に立てこもり、戦後まで抵抗を続けたという。

物語は、平穏に暮らす大場栄の元を日本語をしゃべるアメリカ人が訪ねてくるところから始る。
もはや忘れるべき過去と考えていた戦争体験を本にしたいというアメリカ人の申し出に大場は困惑する。
しかし、否定するのではなく、そこから学ぶ事もあるという熱意に負けて、大場は本に協力する事になる。
そしてサイパンでの日々が綴られていく。

敗走に次ぐ敗走を重ねる日本軍。
大場大尉ももうダメだと感じつつ、最後の死に場所を探すように行動する。
しかし、少しでも多くの米兵を倒して死のうという意識が、結果として生き残る事ができた理由になったように思える。
事実、大場大尉がわずかな残存兵と民間人たちのリーダーになった時、基本方針としたのは、連合艦隊がサイパン奪回に来た場合は島の内部からそれを援護する、そのために無駄な戦闘は避ける、というものであった。

幸いにしてある程度の食糧は確保し、やがてそれも底をついて米軍施設から盗み出さなければならなくなったようであるが、それでも全面的な衝突はできるだけ回避している。
そうした方針が良かったと言える。
決して勇ましい物語ではない。

なぜ著者がアメリカ人なのだろうと、最初に直感的に感じたのであるが、内容を読むとその理由は何となくわかってくる。
アメリカは圧倒的な火力でサイパンの日本軍守備隊を一掃し、空軍の基地を建設。
ここからB-29で本土爆撃を開始している。
アメリカはすでに次の段階に意識を置いており、サイパンの一部に残った日本兵に脅威は感じていなかった。

それに大場大尉の基本方針が加わって、米軍にとっては大して脅威ではなかったから放置されたのだとも言える。
大場大尉はそうした自分たちの劣勢をわかっていたから、「大々的に宣伝するようなものではない」と感じていたわけであり、それに対して現地にいた著者は、「敵ながら天晴」と大げさに讃えたというわけである。
アメリカ人と日本人の気質の違いも表れているのかもしれない。

いずれにせよ、困難な状況の中で、リーダーとして大勢を導いていくのは大変な事。
結果的に多くの民間人の命を救っており、戦闘での華々しい勝利がなかったとしても、それは変わらない。
映画はドラマチックな演出がされているのかもしれないが、この本ではそれが押さえられているためかよけいに真実味がある。
生きた歴史の教科書とも言えるこうした本は貴重な一冊だと思うのである・・・


     
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2011年09月03日

【反対尋問の手法に学ぶ嘘を見破る質問力】荘司雅彦



第1章 華麗なる技術、反対尋問
第2章 人間の記憶は実にいいかげん!
第3章 悪意で嘘をついている相手に対して
第4章 女性は男性よりはるかに嘘が上手
第5章 専門家に太刀打ちするためには
第6章 法律家の論理
第7章 嘘の事例とその対処法

著者は弁護士。
「日本弁護士白書」に公表されている平均的弁護士の約10倍という膨大な弁護士経験を積んで来ているという。
一度銀行に就職し、一念発起してゼロから司法試験の勉強を始め、約2年後に当時として最速のペースで合格という経歴が最初に目につく。
そんな著者ならではの内容に期待して手に取った一冊。

内容はタイトルにある通り、数々の経験を通して嘘をつく人物を観察し、その結果著者なりに会得した嘘を見破るテクニックを披露しようというもの。
「はじめに」ではそんなスキルゆえに悪用は慎むようにと謳っている。
こういう「悪用厳禁」は過去にも苫米地英人の本などでもお目にかかったが、こういう文言があるとついつい「またか」と思ってしまう。
大概、そういう言葉に対しては「心配無用」と言いたくなる。
それほど大した内容ではないからである。
この本も、はたしてその通りであった。

著者もいろいろと経験を積んでいるのだろうし、実際にそれで自信を持っているスキルなのだろうし、それを否定するつもりはない。
ただはっきり言って「本では伝わらない」事だけは確かである。
なるほど理屈はそれなりに理解できるものの、普通の人がこの本を読んだだけで身につくというものではない。

それでも随所にある実例は面白いし、「女性は男性よりもはるかに嘘が上手」という部分の説明はなるほどと膝を叩いてしまう。
思い違いという「悪意のない嘘」の話も然り。
そういうケースは身の回りに多々あるかもしれないと思う。

まあ軽い読み物としては面白いし、「嘘を見破る質問力」が身につくか否かなどに囚われずに読めばいいのではないだろうか・・・

       
                
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