2012年01月30日

【僕は君たちに武器を配りたい】瀧本哲史



第1章 勉強できてもコモディティ
第2章 「本物の資本主義」が日本にやってきた
第3章 学校では教えてくれない資本主義の現在
第4章 日本人で生き残る4つのタイプと、生き残れない2つのタイプ
第5章 企業の浮沈のカギを握る「マーケター」という働き方
第6章 イノベーター=起業家を目指せ
第7章 本当はクリイジーなリーダーたち
第8章 投資家として生きる本当の意味
第9章 ゲリラ戦のはじまり

著者はマッキンゼーでコンサルタントとしての経験を積んだ後、様々な活動をしている方のようである。
本書は若者向けに、これからの社会で生き残っていくための考え方を伝授するために書かれた本となっている。

失われた20年の中で苦戦する企業。
そして凍りつく就職戦線。
空前の勉強ブームは、そんな中で少しでも就職や社会に出てからの役に立てようという涙ぐましい努力。
英語・IT・会計が、サラリーマンとして生き残る3種の神器と言われているが(あの大前研一も檄奨している)、しかしそんな勉強をしてもコモディティ化が進む現在、それだけではダメだという。

コモディティ化とは日用品化の事で、例え勉強して資格をとっても、それだけで「個性のないもの」は価格競争にさらされるだけだという。
例え弁護士になったとしても、ノキ弁(事務所の軒先だけ貸してもらう弁護士)にしかなれない人もいる。
そうした現在の特徴を、明確に語っていく。

就職と言えば、就職ランキングが取り上げられるが、40年後には消滅している事もあるという事を、実例を挙げて解説する。
それは私自身同感で、それだけは大学を卒業する時に意識していたが、大半の人はイメージだけで惑わされている気がする。
「生産性の低い40代、50代社員が幸せそうにしてる会社には入るな」という提言には思わず苦笑してしまう。
自分の会社も当てはまりそうな気がする・・・

これからの社会で生き残れるのは、「マーケター」「イノベーター」「リーダー」「インベスター」のタイプであり、「トレーダー」と「エキスパート」タイプはダメだという。
それぞれのタイプの説明は以下の通り。

マーケター:商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売る事ができる人
イノベーター:まったく新しい仕組みをイノベーションできる人
リーダー:自分が起業家となり、みんなをマネージしてリーダーとして行動する人
インベスター:投資家として市場に参加している人
トレーダー:商品を遠くに運んで売る事ができる人
エキスパート:自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人

エキスパートが生き残れないのは、変化に乗り遅れる可能性が高いからだと言う。
自分の専門とする高い知識が、一瞬で陳腐化するかもしれないのが現代。
現状に胡坐をかいていると危ないと言う。
私などはどちらかと言えば「エキスパート」タイプだ。
まさに危ないタイプであり、ここは素直に助言に従っておきたい。

結局のところ、これからの生き残るカギはゲリラ戦にあるとの事。
特に投資家的な生き方がそれに当たる。
といっても不労所得を得るというものではなく、あくまでも考え方。
自分の時間と労力、そして才能を何につぎ込めば、そのリターンとしてマネタイズ=回収できるのかを真剣に考えよ、という事らしい。

答えは当然、一つではないだろう。
人によっても違うだろう。
それを自分なりに考えてみようという気になった。
若者向けではあるが、若者に限らず誰にとっても、生き方の一つのヒントになる本だと言えるだろう・・・

                       

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2012年01月26日

【どうする?日本企業】三品和広


    

第1章 本当に成長戦略ですか?
第2章 本当にイノベーションですか?
第3章 本当に品質ですか?
第4章 本当に滲み出しですか?
第5章 本当に新興国ですか?
第6章 本当に集団経営ですか?

著者は大学教授。
日本企業の窮状を憂い、その処方箋として示したのが本書という形になっている。
第1章は診断部分。
まずは病気の原因がわからないと対処できない。
「どうした?」と問うのがこの章。

続く第2章から第5章までが、ストレス・テスト。
「イノベーション」「品質」「多角化」「国際化」の4つの観点から模範解答が提示される。
そして最後の第6章が、筆者の処方箋。
「私ならこうしたい」という回答が示される。
なかなかわかりやすい構成となっている。

日本企業の病気の原因と著者が考えるのが、「もはや通用しない成長志向」。
戦後右肩上がりで推移してきた過去のやり方に縛られ、成熟社会となった今でもひたすら売上高を伸ばすべく、社員を数値目標で煽りたてる経営計画を奉じている。
利益なき成長に、多くの企業が苦しむ。

そうした状況に対する模範解答は、時計業界におけるセイコーとスウォッチのイノベーション、品質を追求したピアノのヤマハとファツィオリ社、多角化に出た新日鐵と長銀、我も我もと中国進出を図る企業など、具体的な例をあげて示される。
企業の成功と失敗事例は、それだけでもビジネスケーススタディとして面白い。

そして最後に著者の描く処方箋。
日本の企業とまともに戦って敗れたアメリカは、日本の企業に投資する事で、その果実をともに味わう事となる。
「体を入れ替える」という表現を著者は使う。

それに加えて「リ・インベンション」。
それは再発明とでも言うべきもので、歴史に残る発明を取り上げて一からやりなおそうというものである。
さらに、それに必要なのはGEのジャック・ウェルチ、アップルのスティーブ・ジョブズのような卓越した個人だという。

実際の企業の例などは、さすがに大学教授らしく面白い。
だが、何か参考になるかと言うと、それはまあ読む人次第と言えるかもしれない。
「ジャック・ウェルチのような人物がいればいい」と言われれば、そりゃあ確かにそうだわなと思うものだ。
それが処方箋だと言われると、そうですかとしか言えない。
まあ一つの意見としては面白い本かもしれない・・・


               
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2012年01月14日

【無花果の森】小池真理子



小池真理子の描く恋愛ものをまた一つ。
十人十色ではないが、恋愛の形もひとそれぞれ。
いろいろなパターンがあるものであるが、例によって優雅な文章で綴られていく物語を読むという喜びを感じられる。

主人公は映画監督新谷の妻泉。
派手な外面とは別に、新谷は妻に日常的に暴力を振るっている。
そしてその事実を掴み、泉に取材を申し入れてきた週刊誌の記者塚本鉄治。
やがて暴力に耐えられなくなった泉は家を飛び出す。
あてもなく向かい、辿りついたのは岐阜大崖の街。
偶然見つけた画家天坊八重子の住み込みの家政婦として、人目を憚っての生活が始る。

そんな時、偶然塚本鉄治と再会。
塚本鉄治もまた濡れ衣を着せられて逃亡生活を送っていた。
ともに逃走の身。
やがて二人は離れられない関係となる。

八重子の住まいの庭にある無花果。
それが様々な形で描かれる。
文字通り八重子の手により描かれ、梅雨空の下、時期が来て実を実らせ、物語の合間合間に無花果が描かれる。
いつもながら、うまいなぁと感心する。

ストーリーは別として、登場人物たちの心理描写も誠に巧み。
逃げてきた泉と塚本鉄治も自然な形で結ばれていく。
ささやかな日常に感じる泉の幸福感が伝わってくる。
月九のドラマになりそうな派手な展開はない。
その代わり、静かに染み入ってくる味わいがある。

ラストもドラマチックとは無縁。
「冬の伽藍」と同じような静かな再会のラスト。
また一つ、小池真理子を堪能した瞬間だった。

            
        
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2012年01月12日

【夫婦喧嘩でなぜ男は黙るのか】タラ・パーカー・ポープ



01章 結婚の現実を知ろう
02章 結びつきの科学
03章 愛の化学反応
04章 セックスの科学
05章 結婚と健康との関係
06章 あなたの結婚を科学する
07章 衝突の科学
08章 子育ての科学
09章 家事の科学
10章 結婚の経済学
11章 性別による役割と主導権争い
12章 結婚生活を長続きさせるには
13章 良い結婚の科学

面白そうなタイトルに惹かれて手に取ったのだが、タイトルと中味は大きく異なる。
原題は“For Better : The Science of a Good Marriage”とあるように、真面目に結婚について論じた本である。
確かに夫婦喧嘩でなぜ男は黙るのかについて、説明した部分はあるのだが、内容は原題にある通り、結婚の科学である。

世の中にはいろいろな研究をする人たちがいるものだと、つくづく思わせられる。
この本では、様々な結婚に関する研究結果が紹介されている。
研究の結果わかった事は、現代では結婚に成功する人の方が、失敗する人よりも遥かに多いという事らしい。
まあそれはそうなんだろうと、研究しなくてもわかるような気もする。

前半部分はさまざまなデータに基づいて、夫婦を分析する。
動物たちとの比較までしてしまう。
どんな夫婦の離婚率が高いとか、ホルモンの働きとか、年間のセックスの回数とか、「結婚している男性の平均寿命は結婚した事のない男性よりも7歳長く、女性では3歳短い」などというものもあって、なかなか話のネタにはなりそうである。

ちなみにタイトルになっている夫婦喧嘩で男はなぜ黙るのかについては、
「女の方が、言いたい事を黙っているストレスが男より大きい」
「喧嘩になると男の方が血圧の上昇などの生理的負担が大きい」
と真面目に分析されている。
あんまり面白くない。

子供についてはなかなか面白い。
多くの親たちが、子供たちと一緒に過ごす時間を増やさないとと思いがちだが、実際に子供たちに両親に対する願いを聞くと、「ストレスが減って疲れないように」という答えが多く帰ってきたそうである。
ちょっと救われる気がする。

夫婦喧嘩の科学はなかなか参考になる。
夫は家事を手伝うと、妻に対して恩着せがましくなる。
しかし、妻は「自分の家をきれいにする事は当然の事」と考える。
アメリカのように男女平等が進んでいる社会でも、依然として女性の方が家事労働の割合が高い。
しかし、それは女性にも責任があって、夫の家事のやり方について、「自分が望む通りにやる」事を要求するからだという。
自分のやり方でないと満足できず、結局自分でやる事になるという部分は大いに説得力がある。
支配権を手放さないと、夫の家事参入は進まないと女性には厳しい。

家事、子育て、セックスと夫婦間の対立の原因となるものを様々な角度から取り上げ分析しているが、いつの間にか引き込まれて読んでいた。
夫婦関係が少々危機感を覚えてきたカップルには参考になるかもしれない。
ただ、どちらか一方だけが読んでも、夫婦関係の改善は難しいかもしれない。
主としてアメリカ人夫婦についての分析だから、我々日本人には多少感覚の異なる部分もある。
だか、総じてとても参考になる、まさに結婚の科学本だと言える。

                    

                       
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2012年01月07日

【王国】中村文則



個人的に人に勧められた本は読むようにしている。
自分の趣味だけだと偏ってしまうし、書評だとハズレもある。
だれかが読んで、それなりに面白いと思ったものなら、ある程度の期待はできるからだ。
そうする事によって、今回も著者の中村文則という作家の存在を知る事になったのである。

主人公はユリカ。
孤児院で育ち、今は一人であまり褒められた事ではない事をしている。
娼婦に扮してターゲットに近づき、弱みを握るというものだ。
冒頭ではあるテレビ司会者に近づき、ホテルの一室に入り、隙をついて眠らせた上で裸になって一緒に写真に収まる。
それはあとで何かの脅迫に使われるのだろう。

依頼主である矢田から指示され、「仕事」をこなして金を受け取るユリカ。
やがて矢田と対立しているらしき木崎と名乗る謎の男が現れ、ユリカはその手中に落ちる。
殺されそうになるユリカは、必死に生き残ろうと矢田と木崎の間をさまよう・・・

なんとなく、 「1Q84」の青豆さんを連想してしまいそうなユリカ。
不思議な感覚でストーリーを読み進む。
しかしながら、矢田も木崎も正体不明。
どんな意図や背景があるのかも知らず、なぞの男たちに翻弄されるのはユリカと同じ。
正体を隠すという意図は、不気味さを演出する一方でわかりにくさにも繋がってしまう。

結局のところ、何がどうなったのか、あまりはっきりしないまま物語は終わる。
ストーリー以外に何か考えさせるようなものがあったのか。
あったのかもしれないし、なかったのかもしれない。
面白かったのか、面白くなかったのか、よくわからなかった物語である・・・

              
            
posted by HH at 11:52| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月04日

【心を整える】長谷部誠



第1章 心を整える
第2章 吸収する
第3章 絆を深める
第4章 信頼を得る
第5章 脳に刻む
第6章 時間を支配する
第7章 想像する
第8章 脱皮する
第9章 誠を意識する
最終章 激闘のアジアカップで学んだこと

著者は、サッカー日本代表でキャプテンを務めた長谷部選手。
とは言っても、サッカー嫌いの私としては、「サッカー選手の本」として手にしたわけではない。
そもそもサッカー選手と言えば、カズやゴンや中田といった超メジャーな選手以外知らない私にとって、「長谷部誠」と言われても、名前も顔も思い浮かばなかったほどである。

そんな私が、この本を読んでみようと読書予定リストに加えたのは、あざやかな青の表紙とそのタイトルに惹かれたからに他ならない。
心のあり方が何より重要と日頃考えいるせいか、こういうキーワードにはすぐに反応するのである。
そして「まえがき」の部分で、長谷部選手は「心=メンタル」が重要であると考えている事、そしてそれを「強くする」というよりも、「調整する」ということを意識していると書いている。
その先を期待させる「まえがき」である。

長谷部選手の人となりは良く知らないし、サッカーの経歴も知らないが、随所に表れる考え方にかなりストイックなものを感じる。
孤独を大事にし、たくさん本を読み、音楽を聞き、スポーツ選手は体が資本と睡眠を大事にし10時間眠る。
そんなところは、長谷部選手の人となりがわかって興味深い。

サッカー一筋にストイックに生きる一方で、大事なものは何かと考えて行動する柔軟性があるところがまた参考になる。
例えば翌日に練習や試合を控えている時には酒を飲まない一方、ドイツに移ってチームメイトとの親睦が必要だと考えれば、朝まで飲み明かすといった具合だ。

27歳というわりには、書いてある事は随分と深い言葉が目につく。
かなり読書をするらしいから、そうした影響なのかもしれないが、ついついメモをとりたくなるような文章が続く。
「恨み貯金はしない」
苦手な人は誰でもいるものだが、へんな感情を持ち続けるのは自分自身にとってよくなく、距離を置いて避けるというのは大いに共感するところだ。

「苦手な人もいいところを探して一度信用してみる」
あまり深く知らない人であれば、是非試してみたいところだ。
「コミュニケーションにおいてはどちらも対等」
上から目線でもなく、変にへりくだる事もなくあくまでも対等。
長谷部選手のように海外でプレーする経験からのものかもしれないが、これが基本だと思う。

「組織のために足りないものを補える選手であり、不可欠な人間でありたい」
俺が俺がと飛び出すプレーヤーではなく、チーム全体を見渡して「足りないところを補える選手」でいれば、必然的に試合に出る事ができると言う。
どこへ行ってもレギュラーになる自信があると語るが、こうした部分はサッカーに限らず何にでも通じそうだ。

「普段からやるべきことに取り組み、万全の準備をしていれば、運が巡って来た時に掴む事ができる」
「どんな指導者にもそれぞれの良さがある。それを引き出せるかどうかは、教えられる側の心構えにかかっている。」
「感謝は自分の成長につながる」
等々あらためて気付かされる事が並んでいる。
親しくなった人については、家族の事まで気にかけるという部分は見習いたいところだ。
ベストセラーになった理由もよくわかる。

サッカーは好きにはなれないものの、これから目にする機会があれば長谷部選手に注目してみたいと思わせられる一冊である・・・

    
     
posted by HH at 23:13| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする