2012年11月25日

【50円のコスト削減と100円の値上げはどちらが儲かるか】林總



Prologue ファミレス戦争勃発!?
Part 1 ヒカリのクラークシップはじまる
Part 2 決算書はトップシークレット
Part 3 女性はなぜ、高価なトリュフを買うのか?
Part 4 アクションプランはノウハウの固まりだった
Part 5 決算書だけでは、真実はわからない
Part 6 お客様の声は天の声
Part 7 キッチンには宝が埋まっている
Part 8 50円のコスト削減と100円の値上げでは、どちらが儲かるか?
Part 9 逆転の発想がロミーズを救う
Part 10 千の端店に奇跡が起きた!
Epilogue 最後のレクチャー

会計の話を物語風にして展開させるストーリーは、もはやかなりのものがある。
この本もタイトルすばり、そのものである。
著者の本は過去にも『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』や、『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?―できるビジネスパーソンになるための管理会計入門!』などを読んでおり、どちらも面白かった事もあって、この本も迷わず手に取った次第である。

物語の舞台はあるファミレスチェーン。
主人公の菅平ヒカリは経営大学3年。
安曇ゼミを専攻しており、そのゼミで名物の「クラークシップ」と呼ばれる研修で、ファミレスのロミーズに派遣される。

そして千の端店に配属されるが、そこは赤字店舗。
アルバイトのウェイトレスとして働きはじめるヒカリだが、始めはどうしても馴染めない。
安曇教授との定期的な面談でも不満をこぼす。
しかし、赤字の立て直しに苦戦している店長から、経営改善のリーダーに任命された事から見方が変わってくる。

売上と費用と利益。
決算書の数字には表れない顧客の気持ち。
すぐ近隣にライバル店の出店計画が発表され、千の端店も閉店の崖っぷちに追いつめられる。

赤字の仕組みと原因を探りながら、黒字化していく過程が面白おかしく描かれていて、ついつい引き込まれていく。
経営改善ストーリーという点では、 「V字回復の経営」も同じなのであるが、面白さという点では格段の差がある。
それは上から目線的な見方と、下から這い上がって行く見方の違いなのかもしれない。

単なる物語としても、会計的な見方でもともに面白い。
この著者のこの手のシリーズは、読んで損はないだろうと改めて思わせられる一冊である・・・

    
posted by HH at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/会計・財務 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月24日

【運命の人@ABC】山崎豊子





読もう読もうと思いつつ、随分日が経ってしまったが、山崎豊子の本を久しぶりに手に取った。
前回は『沈まぬ太陽』を読んだが、これはそれ以来である。
『沈まぬ太陽』もそうであったが、この本も実在の事件をベースにしている。
山崎豊子の本は、そういう実在の事件をベースにしたところが面白いと個人的には思うところである。

その事件とは、「外務省機密漏洩事件」。
戦後独立が認められた日本であるが、沖縄は尚も米軍統治下に置かれていた。
時の佐藤栄作首相(本の中では佐橋首相)の下で、着々と沖縄の本土復帰交渉が進む。
しかし、補償費用を巡っては日米で思惑が交錯。
補償費を払ってもらいたいという日本の表の顔。
議会に対しても払えないという立場を崩せないアメリカ。
打開策として、費用は日本側が負担し、アメリカ側が何食わぬ顔でそれを日本に払うという案が採用される。

毎朝新聞の弓成亮太は、政治家にもパイプを持つ敏腕記者であるが、ある時外務省審議官付事務官三木昭子から、日米の密約を記した書類を受け取る。
世紀の特ダネを手にしながら、ニュースソースを守るため記事にできないという葛藤を抱える弓成。
しかし、政府の欺瞞に我慢ができず、野党の政治家にそれを渡した事から書類の存在が公けのものとなり、やがて機密漏洩事件として大きな問題となっていく。

前半はこの機密漏洩事件の顛末が描かれ、後半は傷心の弓成が移り住む沖縄を舞台に、米軍基地との共存に苦しむ沖縄の姿が描かれる。
戦争中は米軍の上陸で大勢の人間が犠牲となり、今なお騒音問題や米兵による暴行事件などに苦しむ沖縄。
前半と後半と、内容的にはまったく異なる物語を、弓成亮太という主人公を中心にうまく結び付けている。

前半は外務省機密漏洩事件が、描かれる。
敏腕記者弓成は、事務官三木昭子とは不倫関係にあり、それが事件に変化球となって左右する。
記者としての「知る権利」と国家の機密が対立した時に、どこまで国家の機密が優先されるのか。
そもそも国家の機密とは何なのか。

外務省の官僚にはエリート意識があって、当然何でも秘密にしたがるだろう。
「自分達しか知らない」という意識は、特権意識にもつながるのは人間の性と言える。
本当に秘密にするべき事と、公けにすることによって国民のコントロールが効く事もある。
新聞記者の知る権利と言っても、今のマスコミのひどさを目の当たりにすれば、要求できる資格などありはしないだろうとも思える。
ストーリーとは離れたところで、いろいろと思うところが出てくる。

後半の沖縄はがらりと変わる。
一つの物語の中で、関連付けを行ってはいるものの、明らかに内容が異なる。
戸惑いを覚えるところではあるものの、沖縄の抱える問題がよくわかる。
米兵による暴行事件、ヘリの墜落事件など、昨今の鳩山元首相の招いた混乱からオスプレイ騒動まで、この本で描かれている事が今もリアルタイムで紙面を飾っているのがわかる。

純粋にストーリーを楽しむ小説でもあり、現代の問題を考えるきっかけになる小説でもあり、まあその両方を楽しめるものであると言えるのだろう。
読み応えは十分あるし、じっくりと読んでみるのもいい本だと思う・・・
  
     
posted by HH at 21:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 長編ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月23日

【ハーバードの人生を変える授業】タル・ベン・シャハー



アメリカの有名大学の授業を書籍化した本は、けっこうたくさん出ている。
何となく漠然とした憧れを抱いていたせいであろうか、この手の本を見かけると、ついつい手にとってしまう。
本物の授業を受ける事は遠く叶わないが、せめてそのエッセンスだけでも楽しみたいと思うのである。

この本の元となったのは、ハーバード大学で2006年に受講希望者がナンバーワンとなった、著者が「リフラクション(反映させて行動する)」と名付けたポジティブ心理学の授業である。
教えてもらった事を実際の行動に移す事で、理論を自分のものとして吸収する事ができるという「リフラクション」。
これを取り入れたこの授業は、多くの学生の人生を変えたと言われている。

構成は52のワークから成り立っている。
例えば最初の第1講は「感謝する」。
ある実験結果を基に、感謝する人はよく眠れるようになり、より多く運動をするようになり、身体的な不調も減ると言う。
そこから、「あなたが感謝できることは何ですか。自分の人生でありがたいと思うことは何ですか」という問い掛けがなされる。

具体的にはさらに感謝ノートを作り、毎日感謝することを5つ書きとめるようにする。
おざなりにするのではなく、しっかりと意識をもって行う事が大事だという。
「両親」と書いたなら、両親の姿をきちんとイメージするようにする。
その結果がどうなるか、は各人しだいというところだ。

ワークは続けて、「習慣化する」「運動をする」「仕事への考え方を変える」と続く。
「自分に優しくする」というところでは、ハッと気づくところがある。
困難な経験に対処するためには、自分に対して思いやりの気持ちを持つ事が効果的だと言う。
“I love You”と言うには、“I”を最初に言わなければならないという言葉が引用されているが、これは個人的には“刺さる”ワークだった。

さらには似たようなところで、「受け入れる」があり、こちらでは「自分を受け入れる」というワークが展開される。
「可能性を信じる」というワークでは、持って生まれた知能よりも努力をほめる言葉をかけたグループの方が、同じ課題をうまくこなし、より幸せを感じるという実験が紹介されている。

一読して感じた事は、これは実践の本であるがゆえに、読んだだけでは何も感じないという事だ。
読んだだけでは、期待したようなものは得られない。
ハーバード一の人気授業になったという事だから、たぶんそれなりの内容なのだろうと思うのだが、やはり授業に出席して、実際にその場でみんなと一緒にワークに取り組む事によって、人生が変わる経験が得られたのだろうと思う。
そういう意味で、書籍化にはあまり向かない授業だったのだろう。

考えてみれば日本の大学は面白味に欠ける。
アメリカの大学の授業が次々と書籍化されているのに比べて、日本の大学のものがないのも頷ける。
そんな授業を一つでも受けてみたいものだと思う。
たぶん、この手の本はまた読むだろうと思うところである・・・


     
posted by HH at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/人生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月19日

【職業としてのAV女優】中村淳彦



序章  新人AV女優の誕生 年間6,000人
第1章 AV女優の労働条件 日当3万円〜
第2章 AV女優の労働市場と志望理由 倍率25倍
第3章 AV労働環境の変遷 96年のカオス
第4章 労使トラブル 損害賠償1,000万円
第5章 AV女優の退職 引退後の付加価値は2倍

男なら誰でも一度は見た事があるであろうアダルトビデオ。
次から次へと新人女優が誕生している事はなんとなく伺い知る事ができる。
それも「何でこんな娘が!」と驚くような可愛い女の子も多かったりする。
ネットに溢れかえる無料動画を含めたら、今やその広がりは計り知れないような気がする。
一体その実情はどうなっているのだろうか。
そんな疑問に応えてくれるのがこの本である。

著者は、長年女優へのインタヴューを重ね、似たような著作が多数あるフリーライター。
どんな経緯かは知らないが、AV業界にかなりネットワークを持っているようである。
AV女優は今や完全に供給過多なのだという。
出演希望者はルックスやスタイルや性格を吟味され、一定水準に達していないと門前払いだというから驚きだ。
一昔前は「本番をする」と言えば、その他の条件は一切問われなかったのではないだろうか。

AV業界において、女優は「単体」「企画単体」「企画」と3つのカテゴリーに分類されるという。
「単体」は名前で売れるアイドル。
「企画単体」はそれに次ぐ存在で、どこのメーカーにも出演できる存在。
そして「企画」は名前も不要で、プレイは過激、ギャラは安く最低ランクに位置する。
そこそこ観ていれば、「ああ、あれが『単体』であれが『企画』か」といった違い程度は理解できるだろう。

気になるギャラは、「単体」だと100万円以上、「企画単体」で30〜80万円、「企画」で15〜25万円だという。
しかし、もとアイドルなどは億単位もあり得、下は日当1万円などというケースもあるようだから、ピンキリのようだ。
こんな興味深い情報が次から次へと出てくる。

デヴューの経緯や、デヴューしてから、そして引退したり、引退どころか自然消滅したりとその実態が明かされる。
出演の動機もさまざまで、以前は町でスカウトされ、半ば騙されて出演したりしているパターンが多かったらしいが、今や募集サイトに次々に応募してくるのだというから驚きだ。

ただ、良い面ばかりではなく、危険な面やその後の人生への悪影響なども紹介されている。
事実、自殺したり負傷・死亡などいうニュースも出回ったりしている。
一般化してきていると言っても、アンダーグラウンドの世界である事は間違いなく、足を踏み入れないのが一番である事には変わりないようだ。
著者も「娘を持つ親に読んで欲しい」とあとがきに書いているが、その通りだと思う。
こういう世界は、距離を置いて外から眺めているに限るのである。

知らない世界を知りたいという人間の欲求を満たしてくれるし、知っておいて損のない情報だし、娘を持つ父親として、読んで良かったと思う一冊である。

posted by HH at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月16日

【共食い】田中慎弥



「共喰い」
「第三紀層の魚」

第146回芥川賞受賞作品という看板に惹かれて手に取った一冊。
中味は2編の小説からなっている。
芥川賞を受賞したのは、そのうちの「共喰い」。
芥川賞は主に純文学の新人に対して送られるらしいが、その基準なるものは正直言ってわからない。
たぶん、ストーリーよりも文章がその対象になるような気がする。

「共喰い」は昭和63年の九州のどこかが舞台。
九州のどこかとは言うものの、場所の明示はなく、ただ登場人物たちの会話が、たぶん九州の方言だと思われる事からの想像である。
「ほやけどそれ、親父とおんなじっちゅうことやろ」
そんな言葉が飛び交っているのである。

主人公は17歳の篠垣遠馬。
女癖の悪い父親を持ち、父と後妻との3人暮らし。
近所には実母が魚屋を開いているという環境。
そして会田千種と付き合っている。

17歳は若く、“やりたい”盛り。
千種という彼女ができたおかげで、遠馬は頻繁に千種とSEXをする。
実の父親も性欲旺盛。
およそ都会の洗練されたという言葉とは対極的な社会。
そんな村で、祭りの日に事件は起きる・・・

「第三紀層の魚」も関門海峡が出てくる。
舞台はひょっとしたら著者の故郷山口なのかもしれない。
主人公は小学校4年生の久我山信道。
父は亡くなり、母と二人暮らし。
近所に祖母が暮らしているが、その祖母は義理の父、つまり信道の曾祖父と二人暮らし。
曾祖父は寝たきり介護状態である。

そんな環境下、信道は友人の勝と釣りに行き、曾祖父を見舞う日々。
父亡き後、女手一つで勝を育てる母。
曾祖父と祖母と母。
いずれも義理の関係というのが面白い。

やがて母は仕事振りが認められ、東京に出す支店の店長を任される事になる。
死期が迫る曾祖父や祖母や母との交流。
素朴な方言の会話は「共喰い」と同じだ。
そうした方言が、確実に物語に深みを与えているのは確かである。

なるほど、芥川賞をとった「共喰い」と取らなかった「第三紀層の魚」の違いは何かはわからないが、両作品とも深い味わいがある事は確かである。
おそらくその味わいこそが、読む人が読めば選考対象となるのだろう。
まあ素人としては、そんなところはわからなくとも、味わいだけわかれば十分な気がする。
こういう文学も、それなりに良いと思うのである・・・

     
posted by HH at 23:50| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月08日

【口紅は男に売り込め!】高倉豊



第1章 ライバルは見ない−過多な情報を捨てると、本質が見えてくる
第2章 現場は見ない−「今」の延長ではない道に、未来のビジョンがある
第3章 ロジカルに考えない−「何かいいな」の先に答えがある

サブタイトルに「有名ブランド再生人の非常識な3原則」とあるが、著者はジバンシイやウブロ、タグホイヤー等のブランドの日本法人トップを歴任。
現在はブランド再生アドバイザーとなっている方である。
そんな著者が20年間実践してきた「解決策の見つけ方」を、3つの原則に基づいて説明したのが本書である。

タイトルは著者がジバンシイのトップだった時、当時知名度の低かった口紅をどうやって売るかに頭を悩ませ、ネームを入れギフト用にして男性に売るというアイディアを思いつき、ヒットさせた事に由来する。
ないないづくしの中、「何もかも揃っていたら、お前には頼まない」という本社役員の一言に発奮してやり遂げた仕事だという。
恐らく著者の再生人としての原点なのだろう。

著者の説く3原則とは、「ライバルを見ない」「現場は見ない」「ロジカルに考えない」というおよそセオリーに反する考え方。
考えてみれば普通に考えていたら、画期的なアイディアなど浮かぶものではない。
十分理にかなっている原則かもしれないと思う。

「常にゼロベースで考える」
「成功は努力してでも忘れる」
「過度な愛着は捨てる」
「定説は信じない」
すべて根底に流れるものは同じだと思うが、新しい発想を得るためには、言われてみればなるほどと言うものだ。

「現場は見ない」というのもちょっと不安になるような考え方だが、「俯瞰して本質から考えた方が、大胆かつポジティブな意見が出てくる」という意見には頷かされる。
確かに、現場にどっぷりと浸かっていると、「できない理由」というものが極めて明快に、絶対的にわかってしまう事はよくありがちである。

「ロジカルに考えない」事はひらめきを大事にする事を意味している。
「まったく別の物を組み合わせる発想がユニークな視点を生む」というのは、なるほどその通りであり、誰もが経験ありそうな事ではないかと思う。
総じて理屈通りにやっていては、再生などできるものではなく、新たな視点、新たな気付き・発想が重要。
こうしたトレーニングに欠かせないエッセンスが、この本には書かれている。

自らの発想を磨くトレーニングをするには、参考にできるかもしれない一冊である・・・


    
posted by HH at 23:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月06日

【V字回復の経営】三枝匡



著者は現ミスミグループの代表取締役・CEO。
企業再建の経験もあり、ターンアラウンドスペシャリストとしても活躍している。
そんな方の書いた「実話をもとにした企業変革ドラマ」という事で、興味深々で手に取った一冊。

「事実は小説よりも奇なり」と言われるが、実話の持つ重みは大きい。
そんな期待を持っていたが、やはり守秘義務もあってか実名は出せない。
著者いわく、著者が実際に関与した5社の話をミックスして書いたらしい。
そのうち80%は1社の出来事だと言う。
それはそれで興味深いのだが、どうも読んでみると印象が違う。

物語の舞台は東証一部上場の太陽産業。
業績不振から社内改革に手をつけたが、結果は芳しくない。
そして社長は、赤字に転落したアスター事業部を立て直すために、子会社の社長を務めていた黒岩莞太を呼び戻す。
「2年で黒字化できなければアスター事業部を廃止する」とし、一切の再建を委ねる。
ここから、黒岩の改革が始る。

右腕に信頼できる経営コンサルタント五十嵐直樹を据え、片っ端から面談をし、これといった見込みのありそうな者を引き抜いて改革チームを結成する。
徹底的に現状分析をし、赤字の原因を探り出し、改革シナリオを練る。
時には合宿をし、議論が続いていく。

著者は改革プロセスを次のように説明する。
@成り行きのシナリオを描く→A切迫感を抱く→B原因を分析する→C改革のシナリオを作る→D戦略の意思決定をする→E現場へ落とし込む→F改革を実行する→G成果を認知する
物語はこのプロセスに沿って進む。

ただ、読んでいてどうも作り物の感が拭えない。
あらかじめ決められた路線を、決められた通りに進んでいるイメージが拭えない。
すべてが予定調和なのである。
当たり前と言えば当たり前なのであるが、物語としての面白味に欠けるのは事実である。
かえって回想録的な体験談だった方が、良かったかもしれないと思う。

期待していたリアリティには乏しいが、ただやはり実例の持つ強みだろうか、企業再建の手順としては参考にはなるのかもしれない。
特に登場してくる社員の様子などはいかにも、という感じがするし、反発する社員の姿なども、そんな感じなのだろうと思わせられる。
違和感があったのはストーリー仕立てという部分だけで、教科書としてみた場合は、大いに参考になるのかもしれない。

これは結局、教科書的な見方をすべき本なのであろう。
企業再建の興味のある方には良いと思う一冊である。

      
posted by HH at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネスストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月03日

【セーラが町にやってきた】清野由美



第1章 春一番、町に台風娘(セーラ)がやってきた!
第2章 葛飾北斎を、町起こしのシンボルに
第3章 蛇の目傘、そしてアン王女と英国選手団
第4章 ただ一人、社長に「ノー!」と言ってから
第5章 アメリカ娘に、日本酒の開発ができるのか!?
第6章 台風娘、ハンマーを手に大暴れ!
第7章 ダメ社員?それともカルロス・ゴーン?
第8章 「吉本」好きのフロンティア精神
第9章 「古き良き日本」を、守りたい、残したい!

長野県の小布施と言えば、行った事はないものの、町起こしの成功事例としてあちこちでよく語られている。
その小布施の町おこしで中心的な役割を果たした立役者と言われているのが、なんと金髪のアメリカ人。
その人、セーラ・マリ・カミングスの活躍を描いたのが本書である。

ペンシルベニア州で生まれ育ったセーラ。
長野オリンピックで何かしたいと日本にやってくる。
しかし、年功序列と女はアシスタントという日本的な壁の前に挫折。
縁あって小布施にやってくる。
そして小布施堂に入社する。

小布施堂では経営企画室に配属される。
任された仕事は文化事業の開拓。
そしてセーラの孤軍奮闘が始る。
日本的なものとの遭遇・摩擦。
しかし怯む事なく進むセーラ。

パーティを企画する事から始め、やがて小布施に国際北斎会議を呼ぶ事を思いつく。
小布施は葛飾北斎が晩年よく訪れていた縁ある地。
なのに北斎会議はそれまで海外ででしか開催されていない。
ベニス・ボストン・東京と足を運び関係者を説得し、ついに誘致に成功する。
おそらく、セーラ以外の何者もなしえなかった事だろう。

さらに長野オリンピック英国代表団の激励会を誘致し、五輪の蛇の目傘を作ってしまう。
和食レストランのコンセプトを作り、香港の建築家を口説いて設計を依頼。
すでに廃れた桶を使った新酒を作ってしまう。
専門家を自ら訪ね歩き、説得し、自分の世界に取りこんでしまう。
台風娘と表現されているが、そのエネルギーは半端ではない。
そして出来あがったものは、日本的な文化の香りに彩られているようである。

何かを成し遂げるために必要なのは、やはりパッション。
読んでいてセーラの行動からそんな事を感じる。
自分もそんなパッションを持って何かをしているだろうかと、考えると恥ずかしい限りである。
痛快な物語であり、そしてそれ以上に小布施に行ってみたくなる一冊である。

      
posted by HH at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする