2013年07月31日

【ビジョナリー・カンパニーC 〜自分の意志で偉大になる〜】ジム・コリンズ/モートン・ハンセン



第1章 不確実性の時代に飛躍する
第2章 10X型リーダー
第3章 20マイル行進
第4章 銃撃に続いて大砲発射
第5章 死線を避けるリーダーシップ
第6章 具体的で整然とした一貫レシピ
第7章 運の利益率
エピローグ 自分の意志で偉大になる

「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの第4弾である。
前作 「ビジョナリー・カンパニー3〜衰退の5段階」は、その名の通り「衰退」がテーマであったが、本作は再び本流に戻って業績の優れた企業がテーマである。

今回は、『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』に加えて、置かれた経営環境の厳しさも指標に加えて事例を厳選しているのが特徴である。
その勝者を著者は「10X型企業」と命名している。

この10X型企業がこの本のキーワード。
10X型企業に備わっている3点セットが、「狂信的規律」(徹底した行動の一貫性)、「実証的創造力」(実証的基盤を築き大胆で創造的に行動する)、「建設的パラノイア」(良い時でも悪い時でもガードを崩さない)。
南極探検隊アムンゼンとスコットとの比較を交え、わかりやすく解説されている。

10X型企業は、「20マイル行進」という特性を持つ。
「狂信的規律」に該当するもので、何かを一貫して継続的に同じペースで進めるのである。
代表例として挙げられるサウスウェスト航空も、30年続けて黒字を達成するなど、好不況に関わらず、着実に成果を出している。
アムンゼンはどんな天候であっても、工程表に従った移動を確実に行ったという例もわかりやすい。

「実証的創造力」としては、「銃撃に続いて大砲」という喩えで紹介される。
いきなり大砲(大型投資)をぶっ放せば、失敗した時のダメージが大きい。
リスクの低い銃撃を繰り返し、確実性が高まったところで、大砲発射となれば成功の確率は高まる。
大事な事は、十分な銃撃の後に確実に大砲を発射する事。
それなくしては、成果は得られない。

「建設的パラノイア」は、エベレスト登頂を同時に目指しながら、成功と悲劇とに終わったブリーシャーズ隊の例を挙げ、わかりやすく解説される。
この主要手法は、「十分な手元資金(余分な酸素ボンベ)」、「リスクを抑える」、「ズームアウト・ズームイン」とされる。
これによって死線を避けるリーダーシップが発揮される。

ここで対象とされる10X型企業は以下の通り。
アムジェン、バイオメット、インテル、マイクロソフト、プログレッシブ保険、サウスウエスト航空、ストライカー。
これらの企業はみな「具体的で整然とした一貫レシピ=SMaC(Specific Methodical and Consistent)レシピ」を持ち、20マイル行進を続けている。
膨大な調査対象企業の中から選ばれた10X型企業。
なかなか読み応えはあるが、頑張って読む価値は十分にある。
シリーズモノとして、ウォッチしていきたいシリーズである・・・

    
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2013年07月27日

【企業が『帝国化』する】松井博



第1章 アップルはどうやって帝国化したのか
第2章 帝国の仕組み
第3章 帝国で働く人々
第4章 食を司る帝国たち
第5章 個人情報は誰のものか?
第6章 政府を越える企業たち
第7章 石油依存
第8章 帝国の末端は本当に不幸なのか?
第9章 帝国と付き合う
第10章 ではどうすればいいのか?

筆者は元アップルのシニアマネージャー。
その体験から、もはや国家を越える規模のグローバル・カンパニーを取り上げたのが本書である。

初めはアップル出身らしく、アップルの特徴の説明がなされる。
得意分野への集中
本社で仕組みを創り、それを世界中に展開
小さな本社機能
徹底した外部委託
最適な土地で最適な業務を遂行
社内システムの徹底した合理化

そしてそこで働く人々は、当然ながら各国から集まっている。
仕事好きであること
高学歴
英語力
高い専門性
コミュニケーション能力
中は弱肉強食の競争世界である。

そしてアップルを離れ、他の企業へと移る。
その代表がマクドナルド。
アメリカで増え続ける肥満。
著者はその原因の一つにマクドナルドを上げる。
その浸透に威力を発揮したのが、何よりも低価格化の影響が大きい。

さらにその低価格化を支えるのが大量生産。
トウモロコシなどの穀物ならともかく、鳥や豚、牛までもが効率的に太らされていく。
O−157が引き起こされるメカニズムなどは恐ろしい限りである。
こうした生産に支えられ、ファーストフードや加工品の低価格化が実現し、収入の少ない家庭ほどますます依存していく。
その弊害として、小児肥満や女子の思春期の低年齢化がある。
食の安全を管理するはずの国家さえ、巨大な食品会社にコントロールされてしまう現実。

食に限らず、グーグルやフェイスブックなどのネット企業は知らない間に個人情報を入手していく。
また知らぬうちに閲覧履歴が集められ、広告戦略が取られる。
こうした個人情報は、商品かプライバシーかという問い掛けは、多くの人が普段考えてもみない事だろう。

こうした企業は、国境を越え税金も払わず、もはや国家の域を越えてしまう。
一部の経営層が莫大な収入を得る半面、多くの労働者が低賃金で働く。
まさに「帝国」という表現も頷ける。
そんな帝国を前に、我々は絶望的な気分に浸るだけなのか。
著者はスキルを身につける事が重要とその内容を説く。

帝国を前に生き残っていくには、やはり努力が必要なようである。
「天は自ら助くる者を助く」はまだまだ真実なようである。
こんな世界で生き抜く努力をしていくためにも、帝国の現実を知る事は重要であり、そのためにはこういう本は役に立つだろうと思うところである・・・

   
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2013年07月17日

【100円のコーラを1000円で売る方法】永井孝尚



Round1 アメリカの鉄道会社はなぜ衰退したのか?
Round2 「お客さんの言いなりの商品」は売れない?
Round3 顧客の願望に100%応えても0点
Round4 値引きの作法
Round5 キシリトールガムがヒットした理由
Round6 スキンケア商品を売り込まないエステサロン
Round7 商品を自社で売る必要はない
Round8 100円のコーラを1000円で売る方法
Round9 なぜ省エネルックは失敗してクールビズは成功したのか
Round10 新商品は必ず売れない?

著者は日本IBMのマーケティング・マネージャーとの事。
サブタイトルに「マーケティングがわかる10の物語」とあるように、物語仕立ててでマーケティングが学べる一冊である。

この手の本では、例えば三枝匡の 「V字回復の経営」などを読んだ事があるが、物語仕立てとなる事で、難しい理屈でもスムーズに頭に入ってくるという利点がある。
内容はどちらかと言えば初心者向けであるが、手軽に読めるし、マーケティングをかじった人でも復習としていいのではないかと感じた内容である。

舞台となるのは会計ソフトウェアを専業とする駒沢商会。
物語は、主人公となる宮前久美子が営業から商品企画部へ転勤してくるところから始る。
転勤早々、商品企画部の面々に向かって、「この会社の商品はガラクタ」と言い切ってしまうというかなり強烈なキャラクターである。

そしてその前に立ちはだかるのがベテランの与田。
鼻っ柱の強い久美子の安易な提案を、尽く論破していく。
その過程で、化粧品を例に「市場志向」と「顧客志向」、アメリカの鉄道会社がなぜ衰退したか、何でもお客さんの言う通りにしていればいいという事ではないという事が語られる。

その他、久美子の提案の穴をつく感じで、「マーケット・チャレンジャーとマーケット・リーダーの戦略」、「バリュープロポジションとブルー・オーシャン戦略」、「競争優位に立つためのポジショニング」「チャネル戦略とWin-Winの実現」などの理論がわかりやすく説明されていく。
どれも一冊の本になるくらいの理論だが、久美子の存在によって簡単に理解できてしまう。

本のタイトルは、リッツカールトンで出されるルームサービスのコーラから来ている。
同じコーラでも、自動販売機とリッツカールトンのルームサービスとで10倍もの価格差が生まれ、それが正当化される。
けっして屁理屈ではないマーケティングの重要性が理解できる。

いつのまにかシリーズ化されているこの本だが、初心者向けとバカにするのは適切ではないかもしれない。
与田になったつもりで、久美子を指導できるかどうか、そこまで理論が身についているかどうかと考えてみれば、基礎を学び直す意味でもさらりと読んでみるのも良いかもしれない。

続編も読んでみようかと思う一冊である・・・
   
   
posted by HH at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | マーケティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月13日

【とんび】重松清



少し前、放送していたテレビドラマの原作本。
家族が読みたいと言って買った一冊である。

物語の舞台は昭和37年の瀬戸内に面した備後市。
主人公は地元で生まれ育った男市川安男。
結婚3年目にして子供を授かり、それまでの生活振りから打って変わり、酒断ちして真面目に仕事に取り組んでいる。

ヤスさんと呼ばれるこの男、幼くして母と死別れ、父親の顔は知らない。
原爆で生涯孤独となった妻美佐子と二人、慎ましく暮らしている。
そしてようやく、長男アキラが生まれたのである。
「とんびが鷹を生んだ」とはよく言われるが、本のタイトルはここから来ている。
これは、一人のとんびの物語。

ヤスの周りには様々な人たちがいる。
近所の住職海雲和尚。
その跡取り息子であり、幼馴染みである照雲とその妻幸恵さん。
ヤスさんが足繁く通う飲み屋『夕なぎ』のママたえ子さん。

アキラが生まれて大喜びのヤスさん。
この時代は男は仕事、子育ては妻の全責任という時代。
だが、ヤスさんは実に子煩悩。
休みの日には家族3人ボンネットバスに揺られて海に行く。
知り合いの社長に有無を言わさず借りてきたカメラで、家族の写真を撮りまくる。
「ALWAYS三丁目の夕日」の時代である。

そんな幸せ絶頂のヤスさんに大きな試練が訪れる。
幼いアキラも少しずつ成長し、それにしたがっていろいろな問題も起こってくる。
時代も高度成長の時代。
世の中も移り変わる。
登場人物たちも年を取っていく。

諸行無常。
今この瞬間の幸せをずっと味わっていられたら、と思う事はしばしばであるが、それは叶わぬこと。
どうしたって世の中は変化していくものである。

今自分は子育て世代に属しているが、ヤスさんの物語を通して、自分の行く末なんかも考えてみる。
やがて子供たちも巣立って行く。
思い通りになんかならないだろうし、今は別れて暮らす事など考えられないが、いずれ袂を分かって行くのだろう。
今のこの瞬間を大事にしたいと思う。

不器用な生き様のとんび親父の物語。
しばしウルウルするところもあって、温かい気持ちになれる。
ドラマは観ていなかったが、小説でもじっくり味わえる。
子供や家族モノが得意な重松清らしい一冊である・・・

   
posted by HH at 19:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月11日

【天才数学者、株にハマる】ジョン・アレン・パウロス



原題:A Mathematician plays the stock market
第1章 何が市場で「正しい」のか?
第2章 投資家の行動は合理的か?
第3章 テクニカル分析は役に立つか?
第4章 市場はどこまで効率的か?
第5章 ファンダメンタル分析は役に立つか?
第6章 リスクといかにつき合うか?
第7章 分散投資は有効か?
第8章 株価変動はカオスか?
第9章 投資理論はパラドックス?

著者はアメリカのテンプル大学教授であり数学者。
2000年の初め、株価が勢いよく上昇していた頃、ワールドコム社の株式を購入。
はっきりとは言及されていないものの、かなりの資金をつぎ込んだようである。
一時は大きくもてはやされた同社であるが、その後見事に破綻。
著者は大損をこいたらしい。
そしてさすが、学者。
その苦い経験を基に書いたのが本書である。

投資に関するさまざまなトピックに対し、学者らしい解説を与えてくれているが、それがまた感心するとともに愉快。
例えば、投資家の心理的弱点として、「消極的に降りかかった損失は積極的に関与したために起こった損失ほどには後悔の念をもたらさない」というのがある。
昔からの投資対象に固執してそれが25%下がった人は、25%下がる直前に同じ投資対象を購入した人ほどには狼狽しない。
それがゆえに、著者も下がりゆくワールドコムの株を持ち続けたという事なのだろう。

「心の会計簿」という考え方も面白い。
コンサートに行く途中で100ドルのチケットをなくした人は、チケットを買いに行く途中で100ドルの現金をなくした人よりも、新しいチケットを買う可能性が小さいというもの。
つまり、金額はどちらも同じだが、コンサートという勘定科目から200ドル出すのは使いすぎだと考える傾向があるのだという。
頷ける話である。

株式ニューズレター詐欺という話も面白い。
もしも株式に関する手紙が毎週届き、10週連続であたっていたら、次のレターに沿った投資勧誘に応じるだろうか、というものだ。
これは実は可能な事で、例えば初めの週に6万4千の読者の半分に上昇、半分に下降という予測のレターを出す。
次の週はその予測が当たった半分に対し、また半分ずつ上昇と下降の予測を出す。
これを繰り返せば、数は減るものの、10週連続で当たる確率100%のレターを受け取る読者ができるのだという。
「市場はどこまで効率的か?」という章の中の話なのであるが、こうした興味深い話が登場する。

株式投資をやっていれば、どこかで学んだかもしれない「心理」や「テクニカル分析」「ファンダメンタル分析」といった話が、学者らしい解説で語られる。
あれこれ理屈をこねてみても、次の株式投資で勝てる保証はまったくない。
いくら学者でも、株式市場の前では素人だと、当たり前のように思う。

「他人の不幸は蜜の味」ではないが、自分の損でないから、安心して読み進む事ができる。
この本の印税で、著者はどのくらい失ったロスを回復できたのだろう。
そんな興味が湧いてくる。
フルにカバーできたかどうかは知らないが、多少の穴埋めは出来ただろうし、「転んでもただでは起きぬ」精神は素晴らしい。

この本を読んでも株式投資で勝てるようにはならないが、勉強にはなる。
ちょっと難しい部分もあるが、良い勉強にはなる本である・・・

     
posted by HH at 23:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする