2013年08月30日

【シェール革命後の世界勢力図】中原圭介



第1章 ひとり勝ちするアメリカ経済
第2章 これからの産業はがらりと変わる
第3章 復活のカギはデフレにある
第4章 デフレと不況はまったく関係ない
第5章 シェール革命で苦境に立つ資源国
第6章 世界経済はシェール革命で二極化する
第7章 日本はデフレでも景気回復できる

その主張するところは、ちょっと普通の経済学者なんかと違っていて、それでいて論旨がはっきりしていてわかりやすい。
いつのまか、私のウォッチしている一人になった中原圭介氏。
また新しい一冊を手にした。

現在、アメリカで進んでいるシェール革命。
これでアメリカは、住宅バブル崩壊後10年はかかると見られていた経済の復活が、早ければ2014年にも達成できると言う。
そんなシェール革命の影響を描いた一冊。

日本ではアベノミクスがもてはやされているが、日銀の史上空前の量的緩和は間違いなく失敗すると、氏は断言する。
「量的緩和→金利低下→設備投資増加」を狙った金融緩和だが、「経営者は需要が見込めるときに設備投資をするのであって、低金利だから設備投資をするわけではない」とバッサリ。
銀行員としての皮膚感覚からすると、氏の主張の方が説得力がある。
これが氏の魅力である。

シェール革命によって完全復活が見込まれるアメリカ経済。
製造業の国内回帰が進み、中国は世界の工場の地位を失う。
安いエネルギーが世界中の企業をアメリカに引きつける。
特に天然ガスは原子力よりも安くなるという主張は要注目だ。
無理なく脱原発ができるではないか。
そしてエネルギー価格の下落は、食料価格に連鎖し、「良いデフレ経済」がもたらされる。

日本では、「デフレは悪」とされているが、氏は「デフレは不況の原因ではない!」と断言。
「所得よりも物価の下落率が大きい良いデフレ」が人々の生活を向上させると言う。
確かに物価を2%上げると頑張っている政府と日銀だが、我々の皮膚感覚からすると、給料もそれに合わせて上がるかと言われたら、まず否定的だ。
「悪いインフレ」になる危険性は高いと、素人でも感じられる。
そんな素人の感覚を力強く裏付けてくれるところが、頼もしい。

シェール革命の進展によって世の中にどんな変化が起こるのか。
日本は、アメリカは、中国は、ヨーロッパやロシアはどんな風になるのか。
決して難しくない平易な語り口で教えてくれる。
一読すれば、誰でも経済通になった気分になれるし、実際になれると思う。
「新聞に書いてあるから、何となくそうなんだろうか」と多くの国民が騙されている。
こういう本を読んで勉強すれば、簡単に騙されなくなる。
やっぱり、これからも氏の著作からは目が離せないと思うのである・・・

    
  
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2013年08月27日

【虚像の道化師】東野圭吾



第1章 幻惑す まどわす
第2章 心聴く きこえる
第3章 偽装う よそおう
第4章 演技る えんじる

最近映画化された 「真夏の方程式」も記憶に新しい東野圭吾のガリレオシリーズ第7弾である。

今回の第7弾は短編集。
短編集だと気軽に読めるという長所がある。
長編だとどうしても期待先行で、途中で読みやめるのが苦痛に感じられるからである。
そんな短編は全部で4作。

第1章は、ある宗教法人が舞台。
取材に訪れた里山奈美の目の前で、教祖から罪を指摘された信者が飛び降り自殺する。
その教祖から念を送られた奈美は、自ら不思議な体験をした事ですっかり教祖の力を信じてしまう。
捜査にあたるのが、草薙と内海のコンビ。
そしてガリレオ湯川が登場する。

第2章は、職場で耳鳴りに悩む女性が登場。
そして職場の上司が自殺し、営業部の同僚が病院で草薙を刺すという事件が起きる。
ここでは草薙の同期でもある所轄の北原刑事が登場。
内海とともに湯川の下を訪れる。
湯川と北原刑事のやり取りが、ちょっとぐっとくるものがある。

第3章は、同級生の結婚式に呼ばれて故郷に戻った草薙と湯川の物語。
途中で車がパンクし、雨の中タイヤ交換をする草薙と湯川に赤いアウディに乗った女性が傘を貸す。
ホテルに着いた二人だが、やがて殺人事件の報が入る。

第4章は、ある殺人事件。
殺されたのは劇団の主宰者。
以前その主宰者と付き合っていた同じ劇団の女性が、ある思いを秘めて行動に出る・・・

どれも短いものの、物理学者湯川がその才能を如何なく発揮して事件解決に当たる。
第4章以外は、いずれもスマートな事件解決が心地良い。
長編はもちろん一番面白いが、間にジャブが入った方が必殺のストレートも生きてくるというもの。
そういう意味で、短編も欠かせない魅力だと思う。

次の第8弾も楽しみにしたいところである・・・
   
   
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2013年08月25日

【夢をかなえるゾウ2】水野敬也


       
前作『夢をかなえるゾウ』を読んで、その内容に感銘を受けており、続編が出たとあってさっそく手に取る。

主人公の西野勤太郎は34歳。
サラリーマンを辞めて、夢を追ってお笑い芸人を目指している。
しかしさっぱり売れず、年下の先輩芸人にもバカにされる有り様。
このままお笑いを続けていていいのだろうかと煩悶している時、妙な関西弁をしゃべるおじさんが現れる。

このおじさんの正体が、何を隠そう「夢をかなえるゾウ」=ガネーシャである。
このガネーシャと勤太郎の掛け合いで物語は進んでいく。
前作と同じパターンであるが、今回はさらに貧乏神の金無幸子さんが加わる。
ガネーシャと仲の良い釈迦がいて、死神もいたりと賑やかであるが、そんな神々の中で、勤太郎は大事な事を学んでいく。

物語の合間合間に出てくる言葉がまた良い。
「頑張れば夢がかなうっていうのは、夢をかなえることができた人の言葉じゃないですか。夢がかなえられなかった人の言葉は歴史に残りません」
「赤ちゃんはな、最初はなにもでけへんからこそ、どんな存在にもなれるし、どこまででも成長していくことができる」
なるほど、と頷いていく。
言葉だけでなく、「自分、チャップリンくんて知ってる?」という感じで有名人の逸話を披露してくれるのもお馴染みだ。

貧乏神の幸子さんも面白い。
貧乏になる人の特徴を教えてくれたりする。
ドリーム貧乏−大きな夢を持っているものの、その夢に捕らわれるあまりお客さんのことが見えていない人たち
ガネーシャ貧乏−目の前にある誘惑を我慢できない人たち
お駄賃貧乏−何かをしてお駄賃をもらい、それが性となって、お金は嫌な事をする対価としか考えられなくなる人たち
お駄賃貧乏など、我が身を振り返ってみないといけないところだ。

またクレームをつけている人を指して、人を責めたり批判したりする人は他人が不幸になることを望んでいるから、貧乏神は近づいていきたくなると言う。
また、「お金を払っているんだから、喜ばせてもらって当然」と考える「お客さん」思考の人も貧乏神に好まれると言う。
そして貧乏神から嫌われるのは、自分が困っている時に困っている人を助ける人だとか。

西野は知らず知らずのうちに多くを学んでいく。
不安になった時、逃げようとすればするほど不安は大きくなっていく
やりたいことをやる
店員を喜ばせる
日常生活の中に楽しみを見つける

そしてガネーシャたちと別れの時がやってくる。
ナンセンス的であるが、しっかりとした教えも盛り込んでおり、ストーリー仕立てゆえに嫌みなく教えがしみ込んでくる。
続編もまたすばらしい内容だと思う。
個人的には貧乏神の幸子さんの教えが結構気に入った。
一読の価値ある一冊である・・・
   
   

   
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2013年08月24日

【借入は減らすな】松波竜太



第1章 間違いだらけの「お金」の考え
第2章 銀行交渉その前に
第3章 まずはとにかく手持ち資金を増やそう
第4章 銀行を理解して賢く交渉しよう
第5章 財務体質改善策で評価アップを狙おう

なんとなくタイトルに惹かれて手に取った一冊。
やはり銀行マンとしては、気になるタイトルである。
著者は現役の税理士さん。
単に税務申告代行だけでなく、いろいろとコンサルティングなどもやっている方のようである。
ご自身の長年の経験を一冊の本にまとめたというところのようである。

冒頭、「企業が倒産するのは借金が多いからではなく、現預金がないから」と説く。
「企業が倒産するのは借金が多いから」が日頃の持論の私とは真っ向から異なる主張が興味深い。
まあどちらも間違ってはいないが、根底が異なると後の主張も違ってくるというもの。

「企業が潰れるのは現預金がないから」
「無借金経営ほど危険なものはない」
との主張に、いやいや、「企業が潰れるのは借金があるから」、「無借金経営ほど安全なものはない」と反論してしまう。
現実的に無借金なのに現預金がないという状態はあまり想定しにくいし、例え現預金がなくても、無借金であれば簡単に資金は借入できるから、いざとなってもすぐに潰れる事はない。

「銀行には頭を下げない、泣きつかない」
「お金がないところには貸さず、お金があるところに貸したがる」
「借りたいと言ってくる企業を疑い、もうよいと言っている企業に貸したがる」
銀行員の習性はよくとらえていると思うが、どうも本質的な理解に欠けている。
実際は、
「(業績が良くて)貸したいと思うところにはお金があり、(業績が悪くて)貸したくないと思うところにはお金がない」
「(業績が悪くて)借りたいと言ってくる企業を疑い、(業績が良くて)もうよいと言っている企業に貸したがる」
なのである。

著者が銀行をよく観察している点、残念ながら勘違いしている点、それぞれある。
・「いざという時はメイン銀行が助けてくれる」と思っていると、・・・大変な事になる。
・「どうして今取引している銀行から借りないのですか?」と尋ねられた場合は、「リスク分散のために取引銀行を増やしなさいと会計事務所に言われた」
・銀行を意識した決算書を作ることが税務調査対策に通じ、有利になる
などはよく観察している点だ。

また、
・銀行担当者は味方になってくれる
・交渉には会計事務所を同席させる
・(銀行の)飛び込み営業を「忙しいから」と無下に断ったりしない
・帝国データバンクに(決算書を提出して)評点をつけてもらうこと自体が銀行対策になる
といった部分も知っておけば有利になるところだろう。

銀行を知らない人には、参考になる部分が多い本である事は事実。
すべて鵜呑みにするのは間違っているが、全体としては読んでおいて損のない本と言える。
銀行対策を考える中小企業経営者・財務経理担当者なら、目を通しても損はないだろう。

ただ、タイトルだけは鵜呑みにするべきではない。
そこは「素人の直感」でも判断できるところであると思う・・・

    
posted by HH at 21:43| Comment(2) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月22日

【秘太刀馬の骨】藤沢周平




藤沢周平の本も随分と読んだのであるが、ふと再び手に取った一冊。
藤沢周平の描く江戸の世の物語の中でも、やはり剣戟モノが面白いと思うところである。

主人公は近習頭取浅沼半十郎。
ある日、派閥のボスでもある家老の小出帯刀に呼び出しを受ける。
要件は、6年前に家老望月が暗殺された際、使われたと言われている「馬の骨」と呼ばれるまぼろしの剣法を探せというもの。
捜索は甥の石橋銀次郎が行うゆえ、半十郎にはその案内が命じられたのである。

こうして始った幻の剣探し。
まずは、その昔「馬の骨」の使い手であった矢野仁八郎の道場を訪ねる。
ところが、子息の藤蔵は、秘太刀の伝授を受けていないという。
さればと立ち会った銀次郎だが、藤蔵との立ち会いでその言葉に嘘はないとわかる。

そしてそれを皮切りに、技の伝授を受けていそうな高弟5人を訪ね歩く。
あの手この手で試合をしては、後継者を探すのであるが見つからない。
平行して描かれる半十郎の家庭不和。
長男を亡くして以来、妻杉江は心の病を患っている。

秘太刀の捜索と、江戸の世の人間模様。
相変わらず藤沢周平の世界は心地良い。
果たして秘太刀の後継者は誰なのか。
ラストでの謎かけ。
解説者が意外な後継者名を挙げているが、それはそれで疑問も残る。

どうなんだろう?
久々に他のものも読んでみたくなった・・・

    
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2013年08月20日

【謎解きはディナーのあとで3】東川篤哉



第1章 犯人に毒を与えないでください
第2章 この川で溺れないでください
第3章 怪盗からの挑戦状でございます
第4章 殺人には自転車をご利用ください
第5章 彼女は何を奪われたのでございますか
第6章 さよならはディナーのあとで

シリーズ第3弾である。
いつものように主人公は、東京は国立市に居を構える宝生グループの令嬢宝生麗子と彼女に使える執事影山。
次から次へと起こる難事件を、執事の影山が推理して解決していく。
お馴染み風祭警部もいつもの調子で登場する。

第一話の舞台は恋ヶ窪。
個人的に国立周辺には馴染み深く、それだけでもこの物語は興味深い。
ある立派なお屋敷で一人の老人の死体が発見される。
事件か自殺か。
風祭警部と麗子のお約束のやり取り。
そして家に帰った麗子から話を聞いた影山が謎解きをしてみせる。

第三話はちょっと趣向が変わる。
宝生家の宝「金の豚」を盗むと怪盗レジェンドから挑戦状が舞い込む。
さすがに宝生家が舞台となると、風祭警部を呼ぶわけにもいかず、新たに宝生家のかかりつけの私立探偵御神本光一が呼ばれる。
さすが風祭警部の代役だけあって、その役割を見事果たす。

最終話はこれまた国立市西三丁目というローカルな場所が舞台。
宝生家ほどではないそこそこ立派な屋敷で主が殺害される。
いつものように推理を働かせる影山。
「失礼ですがお嬢様は無駄にディナーをお召し上がりなっています」
麗子を小馬鹿にする影山のモノ言いもお約束である。
気になるのはこの最終話のタイトル。
もうこれでおしまいというわけであろうか。

何が面白いと言われてもうまく説明はできない。
東野圭吾のガリレオのような唸らせられる推理が出てくるわけでもない。
抱腹絶倒のコメディというわけでもない。
だが、どこがと説明できぬ面白さが、この本にはある。
これで終わりとなると、ちょっと寂しいものがある。

テレビドラマの方はまったく観ていないが、本はこれからも読んでいきたい。
リラックスして読めるこのシリーズは、東野圭吾とはまた違った面白さがある。
できればまだまだ続けてほしいシリーズである・・・

    
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2013年08月18日

【自分を愛する力】乙武洋匡



第1章 息子として
第2章 教師として
第3章 父親として
自分を愛せない人への処方箋

著者は、『五体不満足』の乙武洋匡。
衝撃的なタイトルであったから強く印象に残っているが、正直言ってあまり手にとって読みたいとは思わず、今日まで読んでいない。
それでも本書を手に取ったのは、何か感じるところあってのものである。

著者の外側はまだしも、内側の性格的なものはまったく知らなかった。
しかし、『五体不満足』のあと教師になり、結婚して今は子供までいると知って、かなり驚いた。
このあたりは自分にも偏見があるのだと思う。

著者の障害は、この本で自ら語っているように、「一種一級」という最も重い障害。
されど本人は実に明るいし、前向き。
随所に気性の激しさが伺えるが、ここがひょっとしたらネックになる人がいるかもしれないが、暗さが感じられない。
そして一貫して貫かれるのが、「自己肯定感」、つまり「自分を愛する力」である。

そんな自己肯定感が養われた原因は何といっても両親の存在。
その存在がなければ、著者は間違いなく重い障害に苦しむ不幸な人生を歩んでいただろうと思う。
もちろん、教師になる事もなかっただろう。
本人はともかく、ご両親の偉さに脱帽である。
自分にそういう親になれるだろうかと問い掛けてみると、返事は心もとない。

その母親のエピソード。
子育て期間にミルクをあまり飲まず、お母さんは心配になる。
だがあれこれ悩んだあと、「今さら他の子と比べたって仕方ない」と吹っ切れたという。
我が身を振り返ってみると、いつのまにか「よその子と比べて」いる事が少なくない。
よその子は、運動は何をやっている、勉強はこのくらいできる、背はこのくらい・・・
「個性」を求めつつも、「平均」「標準」という言葉に縛られている。
大いに気付かされたところである。

また、ゲームにのめりこんだ著者に母親はルールを制定する。
「一日の中で、ゲームをした時間、テレビを観た時間、勉強・読書をした時間は同じでなければならない」
これでゲームをしたい著者は、必死で勉強をしたらしい。
ただ禁止にするのではなく、賢く、そして我が子にあった方法で導く事。
このお母さんは凄いと思う。

みんな違ってそれで良い。
よく言われるが、実際のほどは怪しい。
障害があるから不幸だという先入観で人を見てはいないか。
言われれば我々は確かにそういう先入観に浸っていると思う。

個性とは。
そしてその個性を生みだしている自分とは。
様々なメッセージが合間合間に感じられる。
いつの間にかもう少し自分を好きになってみようと考えていた。
そんな風に思えるようになる一冊。
一人の普通の人の言葉として、耳を傾けてみたい一冊である・・・

    
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2013年08月12日

【しまった!】ジョゼフ・T・ハリナン



原題:Why We Make Mistakes
はじめに なぜ私たちは「まちがう」のか?それは・・・
第1章 見ていても見えているとはかぎらない
第2章 人はみな「意味」を探す
第3章 点と点を結びつける
第4章 楽観的に見過ぎる
第5章 タスク飽和
第6章 フレーミング
第7章 スキム
第8章 きれい好き
第9章 男は先に撃つ
第10章 みんな自分は人並み以上だと思う
第11章 頭より先に手が動く
第12章 人は自制しない
第13章 「思ったほど」隣の芝生は青くない

人間はみな間違いを犯す。
「なぜ我々は間違いを犯すのか」
本のタイトルからは連想しにくいが、原題にある通り、それを解説したのが本書である。

第1章は「見えていても見えているとはかぎらない」。
冒頭の章だからか、間違いを犯す一つの例として説明されているが、本のイントロとして理解しやすい。
男性と女性では気づくものが違うとして、ひったくりを例に挙げている。
男が女の財布をひったくるのを目撃した時、女性は被害者の女性の容姿や行動に目が行き、男性は犯人の風体を詳しく覚えているという。
同じ場面を見ていても、意識のあるところが違うという例である。

第2章では、記憶における意味について。
人はある人が「ベイカー(Baker:パン屋)」である事は、名前が「ベイカー」である事より覚えやすいという。
意味を持たない名前は覚え難いという。
よく知り合いに会って名前を思い出せないが、何かのクラブに入っていた事は覚えていたりする事が多々あるが、もともと人にはその傾向があるようだ。

中には意外な知られざる傾向もある。
・トップレスダンサーの収入が月経サイクルに左右されている
・男性用香水を店内にまいた実験で、女性用香水をまいた場合より男性の消費額が大きかった
・黒は攻撃的なイメージを持つため、黒いユニフォームのチームはペナルティを取られる可能性が高くなる
こうした傾向も間違いにつながったりする。

運転中の携帯電話は禁止されているが、それは人は注意が散漫になると見落とすのが信じられないようなものを見落とす事から来ている。(第5章)
いろいろな機能を搭載し、便利になる車であるが、その操作のための2秒の脇見によって事故の危険性は2倍になる。

モノによっては商売に役立てられるものもある。
ドイツの曲を流した店内ではドイツワインがよく売れ、フランスの曲を流した時にはフランスのワインがよく売れたそうである。(第6章)
どこの国の曲か知らない場合でも当てはまるのだろうかと、ふと思う。

幸せな記憶は幸せな時にこそ鮮明に蘇る
無意識につくり変えた話が、二度三度と繰り返すうちにいつしか記憶そのものになる(第8章)
一般的に男は自分を持ち上げるために、女は他人を持ちあげるために嘘をつくことが多い(第9章)
スポーツジムの会員は、自分が期待していた回数の半分程度しか通っていない(第10章)
まったく不慣れな作業に対しても、人間は考えるより先に行動したがる(第11章)

確かに人間は間違いを犯す。
そういうものだと思っていたが、なぜそうなのかとは深く考えた事がない。
あえて言えば「それが人間だ」という程度である。
でもここまで様々な要因を分析されると、なるほどと思う所は多い。
それで次からミスを防げるかどうかはわからないが、間違える傾向が高いと理解できれば何かの役に立つかもしれない。

雑学としても、何かのためにも、暇つぶしでも、読んでおいて損はないと思う一冊である。

     
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2013年08月02日

【日本一勝ち続けた男の勝利哲学】加藤廣志



第1章 夢中になることの大切さ
第2章 組織作りは人作り
第3章 ピンチを絶好のチャンスに
第4章 勝つためにすべきこと
第5章 自らの引き際と後継者育成の極意

著者は高校バスケットボールの名門能代工業高校の元監督。
高校野球では甲子園が全国大会の象徴であるが、バスケットは国体、インターハイ、選抜大会と三大大会があるらしい。
その全国大会を述べ50回以上にわたって制覇しているというから、それは凄い。
その基礎を監督として作っていったのが著者。

まず目につくのが「情熱」という言葉。
「指導者は燃えるような熱い情熱がなければだめだ」という言葉には、文字通りの熱い信念が伝わってくる。
何事もそうであるが、やはり何かを為す時には、この「情熱」という言葉はキーになると思う。

秋田という田舎で、素質に恵まれない生徒たちを前に、著者はどうしたら勝てるかと考える。
強豪校へ電話をかけて教えを請う。
電話一本かける勇気が必要だと説く。
またそうして学んだ事でも、自分達に合わないと判断すると捨てるのを厭わない。

これはバスケットに限らずであるが、やはり全国制覇するチームには礼儀という部分でもしっかりしているようである。
指導者としてそういう部分にも著者は目を配っていたようである。
強豪校を作り上げる手法というものに興味はあったのであるが、そういう部分はあまり目につかなかった。
具体的な練習方法は書いても仕方ないと判断したのか、それはあまり重要でないのか。

ただある程度の緊張感というのは意識していたようで、監督が病気療養明けに出てきた時のエピソードは印象的である。
またチーム作りを「○年構想」とする指導者がいる事に反発する。
生徒は毎年変わる。
今いる生徒を重視しない考え方には同調できないという考え方には頷けるものがある。

「ひとりを大切にするチーム」
「留守部隊も勝利を喜べる組織」
そんな言葉が並ぶが、強いチーム作りには、技術以外のものが大きな意味を持つのかもしれない。

バスケットに限らず、いろいろなチーム作りに参考になるかもしれない一冊である・・・
    
  
posted by HH at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/人生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする