2013年11月26日

【稼ぐ力】大前研一



第1章 日本企業は今、何に苦しんでいるのか
第2章 これからの日本企業に必要な人材とは
第3章 世代別「稼ぐ力」をどう鍛えるか
第4章 産業“突然死”に備えるケース・スタディ
第5章 求む!日本と日本企業を強くする新世代人

久々に手にした“大前研一本”である。
サブタイトルに「仕事がなくなる時代の新しい働き方」とあるところが目についた。
さすがに元日本一のコンサルタントなだけに、その主張するところは今でも鋭い。
ただすべて同意できるかというとそうでもない。
冒頭に述べられている「毎年、数十万人規模の頭脳労働者の移民を受け入れるべきだ」という主張は、移民大反対論者の私としては、同意しかねるところがある。
ただ考え方は理解できる。

ユニクロが「世界同一賃金」を導入して話題となっていたが、個人的には疑問に思っていた。
国家によって物価水準だって違うからだ。
そんな漠然とした疑問に対し、もっと高いところから問題点を指摘してくれていて、こういうところはさすがだ。

“大企業のリストラはなぜうまくいかないのか”
“「人の数」だけ仕事が増える”
“本社部門がやるべき仕事を定義しなおせ”
今日本の企業が抱えている問題的を、実にわかりやすく解説してくれる。

“安倍政権「育休3年」はなぜ間違っているか”
→なるほど、言われてみればその通り。
“人にできないことをやるのが「仕事」”
“「仕事がなくなる」なら自分で創ればいい”
“多くの経営者はいくらでも採用したがっている”
→仰る通りでひと言の反論も出てこない。

“仕事の定義ができていないから、意味のない書類作りなど不要な仕事が山ほどある”
“これからのホワイトカラーは、時間ではなく、仕事で縛る”
“欧米の企業は、「社内でやる必要のない仕事は、一刻も早く外に出す」という発想”
“やりがいは誰かに与えてもらうものではない、自分でやりがいのある仕事に変えていくもの”
→「世代別稼ぐ力を鍛える」章には、はっと気付かされる事が並ぶ。

しかしそれにしても、この本にはページをめくるごとに発見がある。
世の中の最新の動きがよく網羅されている。
「東大の秋入学の無意味」と言ったちょっと前に話題になった事を一刀両断にするかと思えば、「TED TALKS」と言ったプレゼンHPや学生SNS「すごい時間割」などの話題など、知らなかった事を知らされる事が並ぶ。

「稼ぐ力」とあるものの、その前にまず「学ぶ力」がつきそうである。
会社ではベテランの域に達し、仕事でもそれほど苦労しなくなってきた。
だが、それではいけないと気付かされる。
いつ何時、“船が沈没する”かもしれない。
その時になって慌てぬ様、自らを磨き続けないといけない。

そんな身が引き締まる気にさせてくれる。
やっぱりこの人は凄いし、この人の本は折に触れて読んで、血肉にしようと改めて思う。
  
    
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2013年11月24日

【できる大人のモノの言い方大全】話題の達人倶楽部



1 できる大人は「社交辞令」が堂々と言える!
2 かけひき上手は「聞き方」「頼み方」のツボを知っている!
3 カシコい大人はこの「断り方」「謝り方」でピンチを抜け出す!
4 「気遣い」できる人は決め手のひと言が言える!
5 「もてなし」上手は、こんなモノの言い方ができる!
6 好感度の高い人は「ほめ方」のツボを知っている!
7 「常識力」のある人は、さり気ないひと言で一目おかれる!
8 世渡り上手は角をたてずに「自己主張」できる!
9 人の気持ちがわかる人は、いい言葉で「いい人間関係」をつくる!
10 結果を出す人は「会議」と「電話」をソツなくこなす!

およそ世の中は人間関係。
その良し悪しで、世の中の住み心地も変わってくるというモノ。
ただそうは言っても、厄介なのも人間関係。
何気ない一言が、災いをもたらすなんて事も珍しくない。

そんな中で、「モノの言い方」一つでそれが良くなるのであれば、そんな「モノの言い方」を身につけたいものだと、日頃から感じていた。
そんな時に見つけたこのタイトル。
読まないわけにはいくまい。

この本の企画は、実に良いと思う。
著者は、「話題の達人倶楽部」となっている。
特定の人というわけではなく、そうした事を研究しているグループのようである。
私のように、「モノの言い方一つ」の世の中を考えている人たちは、多いという事なのかもしれない。

内容は、テーマにあわせて丁寧に分類されている。
≪相手の自慢話に効くあいづち≫
≪話を引き出すのに効果的なあいづち≫
自分も苦手としているところ。
「よかったですね」
こんな簡単なひと言でいいのである。

≪スマートに断りたいときのうまい言い方≫
「せっかくですが」
「今度は、是非誘って下さい」
「あいにく先約がありまして」
何となく普段から使いこなせている。

言い換えというのも意外な視点。
これもまた、地味に参考になる。
×優柔不断→○思慮深い
×頑固→○意志が固い
×気が小さい→○謙虚
×気弱で頼りない→○やさしい、温厚
×うまく立ちまわる人→○周囲がよく見えている人
×細かい事を気にする→○几帳面である
なるほど、モノは言い様である。

また、それを言っちゃあという言葉も紹介されている。
「そんなこと言った覚えはない」
「まあ黙って聞いてよ」
「ほかにすることがあるだろう」
「恥ずかしいと思わないの?」
「だから言ったじゃないか」
「○○してやったじゃないか」
言う方はそれほどと思っていなくて、何気なく使ってしまったりはしないだろうか。

モノの言い方だけではなく、各章の最後には、『プロが教える会話の鉄則』というのが掲載されている。
・5つのあいさつ(おはようございます、いってらっしゃい、お帰りなさい、おやすみなさい、ありがとう)を欠かさない
・いきなり用件を切り出さない
・否定的なあいづちは使わない
などとなっていて、これもまた地味に参考になる。

≪話をはずませる方法≫
最初は相手が答えやすい質問をする
会話をひとりじめしない
≪ほめ方の作法≫
ほめるには、「が」よりも「も」:「キミは目もきれいだね」
人をほめるときは、具体的な事実をほめる

読んでいて、特段改めて知ったというものが少なければ、それだけ身につけているという事になるのだろう。
この機会にそういうものに気づくのもいいかもしれない。
確認の意味でも勉強の意味でも、言葉の正しい使い方を知る意味で、読んでおいて損のない本であろう・・・

    
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2013年11月21日

【拉致と決断】蓮池薫


  
著者は、北朝鮮による拉致被害者の一人である蓮池薫氏。
ニュースですっかり有名である。
小泉首相の訪朝、そして帰国と世間を賑わせたあのニュースからもう10年を越えている。
時間の経つのは早いものだと思いつつ、目にした著書を手に取った。

やっぱり、拉致の様子だとか、北朝鮮で過ごした日々の事とか、どうしても興味をそそられてしまう。
そんな期待を胸に抱いていたが、肝心の拉致の様子の話はさらっと触れられただけであった。
もう既に何冊か著書があるようだから、ひょっとしたら既にそのあたりは触れられていたのかもしれないが、そのあたりに興味を持っていたとしたら、ちょっと残念なことになる。

それでも北朝鮮国内の様子は興味深い。
それについては、冒頭で著者は、「彼ら(北朝鮮の人々)は私たちの敵でもなく、憎悪の対象でもない。問題は拉致を指令し、それを実行した人たちにある。それをしっかりと区別することは、今後の拉致問題解決や日朝関係にも必要なことと考える」と述べている。
確かにそうなのだろうと改めて思う。

著者が暮らしていたのは、「招待所」と呼ばれる隔離されたところだったそうである。
拉致されて以来、ひたすら脱出の機会を伺っていたのかというようなイメージを勝手に抱いていたが、蓮池さんはかなり早い時期から諦めていたようである。
それはそうかもしれない。
脱出と言っても、常に監視されていたようだし、慣れない地理に言葉もわからないとなれば、不可能だろう。
結婚して子供が生まれると、それは尚更である。

招待所の自由度は、「奪われた自由よりも与えられていた自由を説明した方が早い」との事。
わずかな自由しかなかったようである。
90年代初頭には、北朝鮮とアメリカが対立。
国内は緊迫し、戦争も覚悟したという。

食糧は配給制。
さすがに招待所で食うに事欠くという事はなかったようであるが、現地の人たちの様子はしだいに悪化。
飢饉による餓死の話も聞こえてきたという。

娯楽も限られており、暇にまかせて工夫してゴルフ用具を作りそれで遊んだという。
同じように麻雀パイも作って奥さんとやったとか。
徹底した思想教育。
金一族をトップに抱くピラミッド社会の様子。
人ごとだから、安心して読んでいられる。

それにしても、ある日突然意思に反して見知らぬ国に拉致され、いつ終わるともわからない不自由な生活を送らされる心労は大変なものだと思う。
北朝鮮社会で子供たちが差別されずに生きていけるようにと、敢えて自分達を「日本帰りの朝鮮人」と称し、子供に日本語を教えなかったという。
そういう苦痛は、耐えがたいものである。

まだ拉致されたままの人たちが、朝鮮国内にいるのだろうか。
この本ではそこまではわからないが、解決が急がれる問題である事は間違いない。
いろいろ考える上で、読んでおくといいかもしれない一冊である・・・

     
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2013年11月17日

【55歳からのハローライフ】村上龍



結婚相談所
空を飛ぶ夢をもう一度
キャンピングカー
ペットロス
トラベルヘルパー

村上龍と言えば、昔『限りなく透明に近いブルー』という著書を知って、本は読んでいないのに、そのタイトルに限りなく惹かれたのを覚えている。
今は、毎週欠かさず観ている「カンブリア宮殿」の司会としてお馴染みだ。
唯一購入したのが、『新 13歳のハローワーク』
中学生になった娘のために買い与えたのだが、何となくこれは自分用かと思って手に取ったのがこの本であった。
中味を見ると、“再就職本”ではなく、普通の小説だった。
実に、村上龍の小説を読むのは、これが初めてである。

中味は、5編の中篇小説。
「55歳の・・・」とあるように、主人公はみなこの世代。
「結婚相談所」は熟年離婚をした主人公の中米志津子が、寂しさと経済的な理由から結婚相談所に通う話。
そこで紹介された男性と会い、別れた夫からメールをもらい、迷いながらも最後に決断をするに至る心の動きを追った話。

「空を飛ぶ夢をもう一度」は、54歳でリストラされた因藤茂雄が主人公。
まだまだ家族を養わないといけない因藤は、再就職を試みるが、なかなか就職できない。
アルバイトの誘導員をしていた時、ホームレスとなっていた旧友と再会する。
困窮していた友との最後の旅。
友を救いながら、友に救われる・・・

「キャンピングカー」は、会社の早期退職に応じて退職した富裕太郎が主人公。
夢に描いた定年後。
【キャンピングカーを買って妻と二人で全国を旅行する】
しかし、妻には妻の考えがあり、思いもかけず富裕の夢は壁に当たる。
再就職もままならず、厳しい現実がつきつけられる。
そして、ゆっくりと自分の生活を始めてみようという心境になる・・・

「ペットロス」は、子供の独立で寂しくなった53歳の高巻淑子が、犬を飼い始める話。
犬の散歩を通じて知り合った人々。
中でも、ヨシダという男性と親しくなる。
しかしやがて愛犬のボビーが死の病に倒れる。
それを機に、夫との関係性が変わっていく・・・
ちょっと目頭が熱くなるラストである。

最後の「トラベルヘルパー」は、主人公がトラック運転手の下総源一。
幼い頃は祖母に育てられ、トラック運転手として働いてきたが、家庭は長続きする事なく崩壊し、還暦を過ぎた今はボロアパートに一人暮らしをしている。
ひょんな事から知り合った女性と仲良くなり、ファミレスでデートを重ねる。
だが、淡い恋心を抱く頃、別れを告げられる。
失意の下総が、最後に一つの道を見出す・・・

年齢的にも主人公たちに近いせいか、身に迫るものもあり、ちょっと胸に来るものもある。
派手なストーリー展開というものではないが、熟練の技を見せられているような気もしてくる中篇集である。
これから主人公たちの年齢に近づいていく身からすると、行く末に対するアドバイスのようにも思えてくる。
だから、「ハローワーク」なのかもしれない。

いつか、『限りなく透明に近いブルー』を読んでみたい気もするが、もう年齢的に感じるものも少ないような気もする。
それはそれとして、年代の近い人は、読む事をお勧めしたい一冊である・・・



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2013年11月09日

【戦わずして中国に勝つ方法】矢板明夫



序章 なぜ戦わずして中国に勝てるのか
第1章 反日、反米の歪みが暴走する
第2章 アジアの異質者は敵に包囲されている
第3章 ペンと剣による支配が緩んできた
第4章 「人民から富を搾取する集団」の暗闘
第5章 “権貴”国家は民衆の怒りに火をつけた

尖閣諸島を巡って対立状態にある中国。
自然と関心も高まるというもの。
そんな時に見つけたこの本。
思わず手に取ってしまった。

興味深い“中国に勝つ方法”であるが、いきなり冒頭の序章に出てくる。
なんでも米国のヒラリー国務長官が訪中時に中国の高官に語ったとされている事で、どうやらネットユーザーの作り話らしいが、これが何とも言えない内容。
アメリカが中国を負かすために考えている対策とは、
@ 中国の政府高官が所有する海外の銀行口座の残高を発表し、凍結
A 米国のパスポートを持つ中国人官僚の名簿を公表
B 米国に住んでいる中国人高官の家族の名簿を公表
C ロサンゼルスのある「妾村」を一掃
D 米国在住の中国人高官の家族をグアンタナモ刑務所に収容
E 中国国内の失業者など不満分子に武器を提供
というもの。
今の中国の隠れた問題点を指摘したするどい対策。
これだと「一兵卒も使わず」中国に勝てそうである。

なかなか冒頭から面白いと期待して読み進めたが、タイトルにある「戦わずして中国に勝つ方法」について述べたのはこの部分だけ。
あとは、現代中国の状況についての説明のみである。
著者は、産経新聞の中国特派員。
そんな経歴からだろう、内容としては日本にいてはわかりにくい中国の現状説明であり、興味深い。
タイトルにこそ違和感はあるものの、それを別にすれば、実に面白い。

反日感情に溢れる中国国内であるが、日本コンプレックスもあり、日本文化も若者に浸透している。
話題となっているPM2.5の数値も政府発表を信じず、米大使館の公表値を信じる民衆。
政府の意向が、必ずしも国民の意向とは限らないようである。

北朝鮮、韓国、台湾、香港、周辺国に対する国民感情。
宗教弾圧、マスコミ統制、ネット規制。
重慶市トップの簿熙来が失脚した事件。
賄賂、愛人、不正、それらはどこの国でもある事だが、やっぱり中国はその程度が酷いようだ。
そんな様子が語られていく。
日本にいては、とても知りえない事情。

そういう事情は個人的に興味深く、そうしたものを知り得たという点で、この本に意義がある。
タイトルとのずれは修正しようもないが、それはささやかな問題。
冒頭の「ヒラリー長官の警告」だけで十分だろう。
中国国内の現状を知るという意味では、参考になる一冊である・・・
   
    
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2013年11月04日

【昨日までの世界】ジャレド・ダイアモンド



原題:The World Until Yesterday

第1章 友人、敵、見知らぬ他人、そして商人
第2章 子供の死に対する賠償
第3章 小さな戦争についての短い話
第4章 多くの戦争についての長い話
第5章 子育て
第6章 高齢者への対応−敬うか、遺棄するか、殺すか?
第7章 有益な妄想
第8章 ライオンその他の危険
第9章 デンキウナギが教える宗教の発展
第10章 多くの言語を話す
第11章 塩、砂糖、脂肪、怠惰

「文明の源流と人類の未来」という邦題もついたこの本。
原題にも“What Can We Learn from Traditional Societies?”とあるように、この本は昔ながらの「伝統的社会」=高度に文明が発達する以前の未開の社会=「昨日までの世界」を取り上げ、その根底に流れる人類普遍のテーマを現代社会に照らして考えてみようとするものである。
難しい説明になる通り、内容はとても難しい本である。

冒頭にパプア・ニューギニアの例が紹介される。
ニューギニア高地人が、“発見”されたのは、なんと1931年。
まだ100年も経っていない。
その“ファーストコンタクト”からニューギニアのダニ族、ダリ族、フォレ族、アラスカのイヌピト族、南アメリカのヤノマミ族、ニューブリテン島のカウロン族など39の伝統的社会が取り上げられる。

そんな伝統的社会でも、人々は家族を構成し、日々の食糧を得、敵から身を守り暮らしている。
それは小国家そのもの。
そこには独特の秩序があり、それは文明化された現代でも生きていたりする。
第2章で紹介されている子供の死の賠償の話が興味深い。

あるドライバーが飛び出してきた子供をはねてしまう。
我々であればすぐに車を止めて、負傷者の救助活動にあたるのが常識。
されどこのパプアニューギニアでは、すぐに車を発進させ最寄りの警察署へ向かうこととされている。
我々の社会では、明白な「ひき逃げ」であるが、この国ではそれが「法律で認められている」。
そうしないと、現場周辺にいる同族の人々から殺されてしまうからだという。

その後の遺族を交えた交渉。
ドライバーは表に出ず、彼を雇っていた会社が被害者に賠償をする。
会社が賠償できなければ、彼の住んでいる村の人々がこれにあたる。
別のケースでは、襲撃を受けて家族を殺された者が、和解のため“家族を殺した人たち”に賠償をしている。
見知らぬ文化の世界には、我々の常識には当てはまらない常識が浸透している。

昨日までの世界には、当然戦争もある。
それは我々が馴染んでいる国家間の戦争からすると、まるで規模が違う。
急襲、待ち伏せ攻撃、騙し討ち。
騙し討ちの例として挙げられているのは、宴に招いて丸腰にさせ、料理をふるまい油断したところを一気に虐殺するというもの。
“卑怯”、“正々堂々”という概念は、そこにはないようである。

子育てについての記述も興味深い。
時として過保護的な子育てに加え、子供が火の回りや刃物で遊ぶといった危険行為も放置する放任的子育て。
それはその一族の置かれている環境にも左右される。
娘たちは、小さい頃から年下の子供たちの世話をするため、14歳にして立派な母親となる。
セックスでさえ、子供たちにはタブーでない。

高齢者に対する対応は、高齢化社会に住む我々には興味深い。
手厚く保護されている高齢者。
その知恵と役割。
一方で、遺棄されたり伝統的に殺されたりする社会もある。
そんな社会とアメリカ社会が対比されるが、どちらが良いとか優れているとかは、一概に結論付けられない。

伝統的社会では、リスクも現代社会と異なる。
大型肉食獣に襲われる、毒蛇に噛まれる、倒木の下敷きになる、樹上から落下する、山火事に巻き込まれる、迷子になって野たれ死にする・・・
人間の三大欲も順序が違う。
シリオノ族では、食事とセックスでは、とにかく食事が一番。
セックスはしたいときにできる事であり、空腹の埋め合わせに過ぎない。

下巻で多くのページが割かれているのが、言語。
方言をどう考えるかという問題はあるが、世界にはおよそ7,000の言語があると言われている。
伝統的社会ほどその数は多く、2〜5つの言葉を使って暮らす社会も珍しくない。
言語が違うと意思疎通ができないという考え方と、伝統的言語が話者の減少により“絶滅”するのを食い止めなければならないという意見もある。
多言語を話す人の方が、アルツハイマーになりにくいという報告もある。
このあたりは哲学的な思考となる。

最後は糖尿病の話。
西洋化された伝統的社会に蔓延したのが、糖尿病。
そのメカニズムと伝統的社会に広まった原因分析が面白い。
慢性的な飢えに対応するため備えられた人体のメカニズムが、飽食の環境下で悪影響を及ぼす。
されどそれらは対処方法が明らか。
「食事は時間をかけてゆっくり」という当たり前の言葉が、重みを持って届いてくる。

上下巻あわせてページ数以上に読むのに時間がかかったが、こうした人類学の本に興味を持つ人ならお勧めかもしれない。
次は著者のピューリッツァー賞受賞作品である、『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎 』も読んでみたくなった・・・
   
       
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2013年11月03日

【ハーバード・ビジネススクール「これから」を生きるための授業】エリック・シノウェイ/メリル・ミードゥ



原題:Howard’s Gift
1 すべての働く人へ−ハワード先生「後悔しない生き方の授業」
2 「ピンチ」を人生最大の「チャンス」に変える方法
3 夢をかなえる人はゴールからスタートを切っている
4 一度きりの人生を、あなたはどう描くか
5 「自分らしさ」は選べる
6 「自信を土台にできる人」「自信過剰に陥る人」
7 “弱点”をなくすより、“強み”を伸ばしなさい
8 「他人が敷いたレール」を走らない
9 情熱に火をつける「メンター」を探せ
10 上手に助けを求められる人
11 「もっと自分を高める環境」を選ぶ
12 時に「人生の迷路」を楽しめ
13 「失敗をバネにできる人」が得るもの
14 未来を切り拓く人は、もう静かに行動を起こしている

原題は、ハーバード大学教授であるハワード・スティーブンソン教授から取られている。
ハーバードの大学院で教授に師事した著者が、ハワード教授から学んだ教えを一冊の本にまとめたのが、本書である。
そこで語られるのが、「いかに生きるか」。

人生には「変動期」が訪れる。
それは、「追い風の時」「向かい風の時」「沈黙の時」の3つに分類される。
どの時期がどうだという事はなく、ただその時どうするか、が問われる。
「何もしない」のは最悪の判断。
一つ一つの出来事に、「自分はこのことに対し、何ができるだろう?」と問い掛けて、自分で人生の舵を取らないといけない。

生き方を考える上で、参考になるのが、「ゴールからスタートを切る」事。
「自分の葬式で、人々に自分のことをどのように語ってほしいか」を考えるといい。
自分はどんな人間になりたいのか。
何を遺したいのか。
それが考えるヒントとなる。

人生の日々を過ごす中で、すべてA評価をとろうとしてはいけない。
AマイナスかBプラスの平均点で良いのだと自分に認めてやる事が大切。
そしてその過程でやるべき5つの宿題がある。
@ 必要と欲求を区別する
A 投資コストと機会のコストを比較する
B 利益と不利益をはっきりさせる
C 比例と釣り合いを考えよ
D 目標を正しい順番に並べよう
宿題をすべて片付け時間配分に迷ったら、「エネルギーが一番増えそうなもの」を選ぶといい。

努力が有効なのは、ある能力が改善可能で、克服すべき壁が高くない場合のみ。
120キロのレスラーが努力しても、棒高跳びで良い成績を残すのは難しい。
仕事で目標を達成した人は、「自分の得意なこと」「好きなこと」「必要とされる能力」がピタリと合致する仕事を見つけられた人である。

自信と傲慢は別。
転職に二の足を踏むのは普通の感覚。
能力を正しく評価し、最大限に活用してくれる会社は必ず存在するが、自分から積極的に探さないとけっして見つける事はできない。

転職せずとも「リスクを負ってでも前進する」という考え方は、どこでも当てはまる。
その際、リスクについて予測するのに5つのステップがある。
@ リスクを分散する
A 長期的な影響を見る
B スタートからゴールまで見て、それからゴールからスタートまで見なおす
C やり直しがきく決断と、やり直せない決断とを分ける
D リスクを分散させる

さらに3つの注意点として、
@ リスクに関して、他人の定義に振り回されてはいけない
A 心配するべきときが来るまで心配するな
B 選択しないことを選択するな
が挙げられる。

そして、大事なことは「成功と失敗の間に線を引くことはできない」ということ。
失敗も次の成功の元となることは多々ある。
最後に「水しぶきを立てるだけでなく、さざ波を起こすように計画を立てる」事が説かれる。
より長く残り、広い範囲に広がるのがさざ波。
これはなかなか含蓄のある言葉。

全体的にアメリカの社会をベースにした話だが、日本の社会においても役立つ事が多い。
自らの生き方を考える上で、参考になる一冊である。
    
  
posted by HH at 21:37| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/人生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする