2013年12月29日

【クロネコヤマト「感動する企業」の秘密】石島洋一



第1章 震災時に見るヤマト魂〜有事にマニュアルは必要ない〜
第2章 実践される「全員経営」〜ヤマトパワーの原動力〜
第3章 ヤマトの人づくり〜制度と風土の合わせ技〜
第4章 お客様の問題解決が仕事〜運送業を超えた、ソリューション企業へ〜
第5章 100年目でも目指すのは「愛される企業」〜新しい民間企業のあり方〜
第6章 ヤマトの粘り腰〜創設時から受け継がれる「根気」〜

ご存知宅急便のクロネコヤマトを採りあげた本である。
著者は公認会計士。
ヤマトホールディングス会長とは高校時代の友人であり、かつ研修講師も務めるという関係からだろうか、機会があって出版と相成ったようである。

ヤマトと言えば、全役員の反対を押し切って故小倉会長が宅急便をスタートしたエピソードや、官庁との対決ストーリーが有名だが、これは最近のヤマトを採りあげたもの。
最近ではなんと言っても、震災対応。
ライバルの佐川急便が撤退する中、センター止めという対応を取るヤマト。
しかし、現場はそこから自主的にお客様のところに届けてしまう。

さらに荷物一つにつき、10円の寄付を決める。
10円と言っても、年間取扱個数が13億個だから130億円。
年間利益の4割に及ぶ額になる。
それに対し、株主代表訴訟のリスクを問われると、「会社が今為すべき行動だと信じるので、訴えられれば受けて立つ」とトップが答える。

ヤマトの現場まで浸透する「全員経営」。
現場のセールスドライバーも営業をしたりする。
東京電力の副社長に直談判でセールスをした伝説的なセールス・ドライバーの例が挙げられる。
社員のやる気を高めるのは社員。
元旦に出した広告が社員のモチベーションを高める。
女性パワーの活用も当たり前。

営業車が無駄に多い事から、深夜の点検作業を請け負う関連会社を作る。
そして今度はそれを似た悩みを抱える外部の中小企業にサービスを展開する。
ヤマトオートワークス鰍ヘこうして発展している。
そのサービスは倉庫業務へも向けられる。
通販会社との連携で、通販商品の翌日配達も可能となる。
お客様の問題解決が仕事になっている。

こうした例を見ていくと、ヤマトはトップダウン型の会社ではなく、ボトムアップ型の会社だとわかる。
理想的な部分だけではないと思うが、少なくともここに紹介されているのは実例だし、それだけでも素晴らしい。

働く事のヒントになる部分もあるし、学びとなるところは多い。
単なる「ヨイショ本」ではないし、読む価値のある一冊だと思う。

    
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2013年12月28日

【世界一わかりやすいコスト削減の授業】若井吉樹



1限目 「現場」を知らずしてコスト削減はできない
2限目 できるだけこまめにつくろう
3限目 「ムダな動き」をなくせ
4限目 お互いに助け合えるしくみをつくる
5限目 結局、人を切る以外に方法はないのか?
6限目 「人を生かす」コスト削減の秘訣
7限目 価格の引き下げに挑戦する
8限目 人を大切にする会社、人に大切にされる会社

銀行員という仕事柄、「コスト削減」という言葉にはついつい反応してしまう。
昨今、業績の悪い企業さんとお付き合いする時、このキーワードは重要だ。
相手と話をする、相手の言葉を実感を持って理解する、そして時としてきらりと光る質問の一つでもする。
その為には、日々勉強が欠かせない。
なのでこういう一冊は見逃せない。

「コスト削減」と言うと、真っ先に「人件費カット」という言葉が脳裏に浮かぶ。
しかし、冒頭で単なる人件費削減ではなく、「人を生かすコスト削減」だと宣言される。
実に興味深い。
ページをめくるのがもどかしい気がする。

内容は多くのビジネス書にお馴染みのように、ストーリー仕立てで進んでいく。
それも「主人公は素人で、プロがアドバイスして会社を変えていく」という、これもお馴染みのストーリー。
ここでは営業成績が振るわなくて、営業から工場の管理部門に異動となる野口が主人公として登場する。
そして叔父の経営する居酒屋で、なぞのおじさんと出会い、コスト削減のレクチャーを受け始める。

まずは現場を観察。
必要な作業と不要な作業、身の回りの「使わないモノ」の整理整頓。
「まとめて作る」より「こまめに作る」。
「動作経済の原則」で疲れずにすばやく作業する。
なぞのおじさんのレクチャーで、工場は改善を見せていく。

改善のヒントとして「ECRSの原則」なるものが出てくる。
E:Eliminate なくせないか
C:Combine  一緒にできないか
R:Rearrange 順序の変更はできないか
S:Simplify  単純化できないか
これは面白い。

好転する工場。
助け合い運動によって残業も減っていく。
しかし、改善効果が出ると、「半分の人数でもやれる」となり、他の工場で人員削減の動きが出てしまうという悪循環が生じる。
されどこれも、なぞのおじさんのアドバイスにより、外注作業の内製化により、サービスの質を落とさずコスト削減を実現していく。

工場の改善と合わせ、叔父の居酒屋も同じ事をやって改善を見せていく。
工場と居酒屋。
同じ手法で、それぞれ改善していく様子は、実にわかりやすい。
ストーリー仕立てで、読みやすく、シンプルでわかりやすくもある。
難しい分厚い本を読むのも良いかもしれないが、本質は薄くてシンプルなのかもしれない。

著者には別途、「在庫削減」をテーマにした同様の本があるようである。
そちらも読んでみたいと思わせられる一冊である。


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2013年12月22日

【探そう!ニッポン人の忘れもの】



1章 ふれ合い
2章 おおらかさ
3章 感謝の言葉
4章 心のこり
5章 ひたむきさ
6章 あのときの風景

著者の名前を確認しようと思ってみたら、名前がない。
ふしぎに思って中を見てみると、ずらりとさまざまな人の文章が並ぶ。
テレビ番組「めざましテレビ」、「とくダネ!」の呼び掛けに2,640通もの応募があり、その中から厳選された作品が本作に納められているというわけである。

一人400字詰め原稿用紙一枚という制約の中で、さまざまな人の想いが綴られている。
思い出の形は人それぞれ。
落とし物であったり、おつかいであったり、家族のあつまるこたつであったり。
普通の人には何でもない物が、その人にとっては、忘れ得ぬ思い出であったりする。

間違えて乗ってしまった急行電車。
困っていたら、本来の停車駅ではない駅で30秒だけ停車して留まってくれた車掌さん。
今、問題を起こしているJR北海道だが、もうそんな事はどこでもやってくれない気がする。
古き良き時代の良い雰囲気が読む者にも伝わってくる。

3歳か4歳で、妹と二人だけで遊んでいて、いつの間にか家から遠く離れてしまい泣いていた姉妹。
見かねたおばさんが寄ってきて、持っていたボールの住所から家まで送ってくれる。
我が家を見ても、ご近所でもまず子供だけで遊ばせていないと思うと、あの頃は良い時代だったのだろうかと思ってしまう。

深夜の事件連絡をした警察官。
かける相手を間違えてしまったが、電話に出た見知らぬご婦人は恐縮して謝る警察官に、「こんな時間に働いていただいてありがとうございます」と返答したという。
自分もかくありたいと思わせられるエピソードである。

実にあっという間に読めてしまう本であるが、自らのエピソードに重ね合わせて読んでみるといいかもしれない。
心密かに自分の原稿を書いてみるのも面白いのではないかと思ってみた一冊である・・・
   
    
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2013年12月17日

【禁断の魔術 ガリレオ8】東野圭吾



第1章 透視す−みとおす
第2章 曲球る−まがる
第3章 念派る−おくる
第4章 猛射つ−うつ

東野圭吾の代表作ガリレオシリーズの第8弾。
登場人物は、主役の湯川学にお馴染みの刑事草薙と内海。
この第8弾は、第7弾同様、4話からなる短編集である。
されどこのガリレオシリーズ、短編集でも実に内容は濃い。

第1章は、透視術が使えるとでも言えるホステスが登場する。
草薙に連れられて湯川はある銀座の店を訪れる。
そこのホステスであるアイは、封筒に入れた名刺の内容を透視するという特技を売り物にしていた。
そしてそのアイが殺される。

アイがなぜ殺されたのか。
犯人と事件の背景。
そしてホステスをしていたアイの事情。
読み進むうちにドラマは濃さを増していく・・・

第2章ではプロ野球選手柳沢の妻が殺される。
プロとしてキャリアの終わりを迎えようとしていた柳沢。
犯人はあっさりと捕まる。
されど湯川が紐解く事件の、というより妻の行動。
ちょっとウルッとするラストが良い。

第3章では双子の姉妹が登場する。
双子同士にテレパシーがあると言われる事があるが、この姉妹もそんな不思議な感覚で通じ合っている。
胸騒ぎを覚えた春菜が、若菜に連絡をしたところ、若菜は何者かに襲われて瀕死の重傷を負っていた。
湯川がこの姉妹間のテレパシーに科学的に挑む。

第4章は、湯川の高校の後輩古芝伸吾が登場する。
湯川の教える帝都大学に入学するも、姉の死を機に大学を辞めてしまう伸吾。
一方フリーライターが殺害される事件が起こり、その背後に大物政治家の影がちらつく。
そしてまたあちこちで、壁に穴があき、バイクが突然炎上しと不思議な事件が続発する。
すべての糸が絡み合い、そして最後に見事に収斂されていく。

単なる推理で犯人を挙げていくというスタイルだけではなく、各章さまざまな変化球が投げ込まれる。
そしてそれぞれ根底に流れる人間ドラマ。
時としてウルウルしてしまう。
そんな温かさが、この本の特徴。

さすが東野圭吾と唸らされる。
これだから、読むのをやめられない。
次回作を待ち焦がれたいと思う・・・


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2013年12月15日

【日本人は「経済学」にだまされるな!】中原圭介



Chapter1 日本人は「経済学」を信じてはいけない
Chapter2 インフレ経済学が日本経済を襲う!
Chapter3 インフレ経済学が日本人を貧乏にする!
Chapter4 インフレ経済学が日本企業を苦しめる!
Chapter5 インフレ経済学がまき散らす「世界経済」のウソ
Chapter6 インフレ経済のウソからあなたの資産を守れ!

個人的にずっとその意見をウォッチしている中原圭介氏の著作。
現在アベノミクスで好調に回復している日本経済。
しかし、経済学に裏打ちされたその政策を著者は危ないと言う。
正当とされている経済学がいかに現状にあっていないか。
それを説いた一冊。

経済学が実は実用的ではない、と言われても普通の人にはわからない。
しかし、返済能力のない人たちに住宅ローンを組ませ、それを証券化し、「金融工学を駆使すれば価格変動リスクを抑えられる」という定説で世界中にばらまいて大問題となったサブプライムローン問題を考えると、それは素直に理解できる。

アベノミクスが目指す緩やかなインフレも、ノーベル賞受賞経済学者のクルーグマンの主張を取り入れているが、ノーベル賞すら「金を生む道具になる」として、否定する。
「リフレを進めたアメリカが、その結果格差が拡大している」と主張している著者。
結果としては、否定しようがない。
金融緩和で余った資金が、商品先物市場等に流れ、それによって商品の値段が上がり、庶民の生活を圧迫する。
だとすると、我々庶民の生活は実に危うい。

市場はもはやコントロールできず、金融当局が物価をコントロールする事など不可能と言い切る。
その根拠はシンプル。
「高騰した住宅価格を下げようとすれば、金融の引き締めをしなければならないが、そうすると景気が悪くなって失業者が増える。だからと言って金融緩和をすればお金が住宅市場に流れ込んで価格が高騰する。
中国の例を取っての説明はしっくりくる。

「バブルの時でも日本のインフレ率は2%」という事実には驚く。
今政府がやろうとしているのが2%のインフレ政策だからだ。
著者は「デフレには良いデフレと悪いデフレがある。悪いデフレは悪いインフレよりずっといい」と主張する。
デフレが悪とされてきた日本経済だが、諸外国の事例からすると、それでもまだマシなのだと言う。

「実は日本経済は円安に弱く、もう円安のメリットはない」という主張も今の世の中の動きと逆行している。
「円安によって競争力が確保されても、海外需要が弱ければ輸出は増えない」という当たり前の理屈には、ショックすら覚える。
逆にエネルギーコストの上昇によって収益は悪化してしまう。

著者の主張は具体的で、素直に理解できる。
「サラリーマンがランチに500円しか使えない」も、むしろデフレによって「500円できちんとした食事ができる」と言えるというのも納得。
「給料が上がらなくてもクビよりマシ」
海外の事例を見ればその通りと言える。
日本は、アメリカよりもドイツを目指すべきらしい。

そうした間違い指摘だけでなく、最後に今後の提言もあるところが良いところ。
批判だけの意見は傾聴に値しない。
官僚は規制緩和だけ考えれば良い
病院の株式会社化が医療を成長させる
農地の集約化
観光予算を手厚く
法人税を半分に
税制・社会保険制度の簡素化

今回の一冊も実に為になる。
経済の事はよくわからないと逃げるべきではないだろう。
なぜなら、それは直接我々の生活に影響してくるからである。
肝に銘じつつ、常に知識の吸収にどん欲でありたいと思う。
中原氏の著書は、これからも必読書としたいと思う・・・

    
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2013年12月14日

【逆説の日本史20】井沢元彦



第1章 1862年編−幕府を窮地に陥れた生麦事件と島津久光
第2章 1863年編−“攘夷は不可能”を悟らせた薩英戦争と下関戦争
第3章 1864年編−沖永良部島流罪の西郷赦免で歴史は動いた!

シリーズ第20巻。
これまではほぼ1年に1冊のペースであったのが、 19巻から半年と、今回は間隔がえらく短い。
まぁそれはそれで歓迎ではある。

幕末も3巻目となるが、まだまだ明治維新前夜。
学校で習う歴史では、ペリー来航から明治維新まではあっという間だったが、ズームアップしてみると実にいろいろな出来事が起こっている。
坂本竜馬が仲介した薩長同盟だが、当時の歴史の流れを見てみると、それがいかに劇的な出来事であったのか、がよくわかる本書である。

1862年。
薩摩では藩主の父島津久光に睨まれた西郷隆盛が、島流しにされる。
さらに島津久光は、長州藩士久坂玄端らが進めようとしていた薩長同盟(第一次薩長同盟というべきもの)を潰してしまう。
「明治維新を遅らせたバカ殿」と著者は手厳しい。

当時は“開国派”と“攘夷派”が対立。
それぞれ“反幕”と“公武合体(天皇と幕府の協力体制)”とが組み合わさり、4派が対立状態。
反対派は斬り捨てるのも当然という世相。
持論を主張するのも命がけの時代である。

1863年。
長州藩はあくまでも過激な“攘夷”に藩意が傾く。
藩主でさえも、それにNoと言えない。
そんな中で高杉晋作は、上海に渡航。
海外情勢に目覚め、ここで著者は高杉晋作は“隠れ開国派”に転じたと主張する。
上海で2丁のけん銃を入手した高杉晋作は、その1丁を坂本竜馬に渡す。
歴史の面白さかな。

伊藤博文、井上馨ら長州ファイブと言われた若者がロンドンに留学。
一方、長州は攘夷の過激度を増していく。
時をほぼ同じくして薩摩と長州はそれぞれイギリスと戦う。
そして彼我の戦力差が明らかとなるが、それに目覚めて攘夷の無謀を悟る薩摩藩とそれでも目覚めず、完全攘夷を目指す長州。

のちに海軍は薩摩が作り、陸軍は長州が作る。
近代化の意味を理解し、世界に冠たる海軍軍備を誇った帝国海軍と、いつまでも旧式装備で精神主義が蔓延っていた陸軍の違いはここから来ているという解説はなかなか面白い。

国際情勢を無視してあくまでも完全攘夷を目指す過激な長州には、天皇すら拒絶反応を起こし、やがて会津・薩摩が中心となって8月18日の政変を起こし、朝廷から長州と完全攘夷派の7卿を京都御所から追放する。
そして1864年。

西郷隆盛が島流しから赦免されて、表舞台に復帰する。
勝海舟、一橋慶喜、孝明天皇、新撰組も登場し、良く知られた幕末史が展開される。
驚くのは、当時のロンドンタイムスの記事。
「日本の職人はイギリスの職人と同程度の技量を持ち、将来的にはこの類まれな国の知能と信頼に対して我々は敬意を持って刺激を受ける事になるかもしれない」と絶賛している。
まだちょんまげの時代に、こうした素質を既に見せていた祖先に対し、誇らしい気持ちが湧いてくる。
同時期、外国勢が中国をこき下ろしているのと対照的である。

本書は1864年で終わる。
明治維新まであと3年。
我々は既に歴史の結末を知っている。
しかし、この本に沿って歴史を追っていくと、まだまだこの先どうなるかわからないという気持ちになってくる。
ますます楽しみなシリーズ。
次巻が待ち遠しい限りである・・・

   
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2013年12月12日

【ウルトラマンになった男】古谷敏



第1章 ウルトラマンへの道
第2章 過酷な撮影現場
第3章 ウルトラセブン〜独立
最終章 四十年後

著者は古谷敏氏。
と言ってもわからないが、オールドファンなら、「ウルトラセブンのアマギ隊員」と言えばすぐわかるだろう。
そのアマギ隊員が、実は「初代ウルトラマン」の中に入っていたとは知らなかった。
これは、そんなアマギ隊員のウルトラマン奮闘記である。

鞍馬天狗に憧れ、俳優を志したアマギ隊員。
念願かなって東宝のニューフェースに合格。
俳優の入口に立つ。
されど初めは大部屋に入り、その他大勢の中の一人。

そんなある日、「主役」と言われて円谷プロに出向く。
その主役が実はウルトラマン。
当時は「ウルトラQ」という怪獣番組が先行していたが、ヒーローモノは初めて。
「顔が出ない」という事に抵抗感を感じるアマギ。

しかし、請われるのを無碍にするのもどうかという祖母のアドバイスで引き受ける事に。
ところが、ぬいぐるみの中は、想像以上に過酷な世界。
傍から見れば感じないが、汗まみれになり、釘を踏み抜いたり、苦しくなったりと重労働。
あまりに過酷なので、思い余って辞める決意をする。

しかし、その決意を告げに行く道中、バスで偶然乗り合わせた子供たちが、夢中になってウルトラマンの話をしているのを目にする。
自分の辛さばかり考え、子供たちの夢の事まで考えなかった己を恥じる。
その日から一層仕事に打ち込む。
スペシウム光線のポーズも毎日何百回と練習したという。
そしてついにクランクアップ。

その働きもあって、次の『ウルトラセブン』でついに念願の隊員に選ばれたという。
そこからは、良く知っているアマギ隊員となる。
昔テレビで観た、そして数年前に興味を持ち始めた息子とともに観た『ウルトラマン』。
その舞台裏を垣間見れるだけでも興味深い。
人が一生懸命やった事というのは、つくづく後に残るものだと思わせられる。

『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に夢中になっていたかつての子供たち必見の一冊である・・・

    
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2013年12月07日

【ムカつく相手を一発で黙らせるオトナの対話術】バルバラ・ベルクハン



第1章 戦わずして勝つ
第2章 ユーモアで勝つ
第3章 攻撃したくなったら

「嫌味ばかり言う上司、すぐに文句をつける部下、いつもケンカ腰の同僚・・・いつも言われっぱなしのあなたへ、やり返さず、逃げ出さず、堂々と笑顔で対抗する“返し技”をお教え致します」という宣伝文句に惹かれて、手に取った一冊。
日頃そうした言葉のやり取りで、ムッとする事も多いだけに、興味をそそられたのである。

「第1章戦わずして勝つ」では、カチンとくるひと言に対する対応策のレクチャーである。
まずは「やまびこトーク」。
カチンとくるひと言を言われた時には、それを繰り返し意味を尋ねる。
「あなたの報告書、ちょっと雑だったね」
⇒「どういうところが雑だったのでしょう」
これはどこかで聞いた事がある意見であるが、効果的ではないかと思う。

また、「ユーモアで返す」というのは、言われなくても簡単に思いつく。
ただ、とっさに当意即妙で切り返すのは難しい。
そういう人には、「沈黙」というのも良い手。
「あ、そうなんだ」という一言コメントも良いらしい。

男と女の違いに対する解説にはドキリとさせられる。
男同士では何気ない会話でも、相手が女性の場合、「言葉による攻撃」と受け取られる可能性があるという。
これは男と女の違いによるもの。
男の子は取っ組み合い、女の子はおしゃべりという子供を例にした喩えがわかりやすい。
これは気がつかないとちょっと怖い事になる。

ユーモアで勝つのは難しい事だと思うが、「威張り屋には褒め言葉」というのは効果的な気がする。
お腹の中では「バカだなこいつ」と思っていても、「さすがですね」とやるわけである。
「迂回トーク」はまったく関係ないに話題を振ってしまう事。
その際、話題は楽しい事の方が良いようである。

しかし、中にはどうしても我慢できない事もある。
その時は、攻撃する前に「諍いの原因を明らかにする」と良いという。
その真意は「冷静になる」という事にあるようである。
また、「あなたのした事はあなたについてまわる」というインスタント・カルマの説明も面白い。
仕返しはついて回る。
不当な目にあって抵抗する時は、堂々と、たとえ自分がされた場合でも受け入れられるように行動すべきだと。

議論に勝っても必ずしも意味があるとは限らない。
何のための競争であり議論なのか。
本当に重要な事は何なのか。
腹が立って相手を攻撃したい場合は、そんな事を考えてみると良いという。
「相手を認める」のも一手。
相手のいう事に頷いて議論を終わらせる。
ただし、その時大切なのは、相手の意見に巻き込まれず、自分の考えを否定しない事。

看板にある通り、「オトナの対話術」としてとても参考になる。
大事なコツは、たぶんどの方法でも「冷静になる」という事が必要な事だと思う。
ただ、やっぱり頭に血がのぼる時はのぼるし、意識していないと難しいだろう。
まずは「冷静になる」事から心掛けて、ここに書いてある事を試してみようかと思うところである・・・

    
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2013年12月05日

【警視庁似顔絵捜査官001号】戸島国雄



著者は元警視庁の鑑識課の方。
鑑識と言うと、刑事ドラマでは、犯罪現場で主人公の刑事の後ろでパシャパシャと写真を撮っている人たちであるが、この方はまさにその写真係の方。
本業の他に、ひょんな事から似顔絵を始め、それが捜査に役立つ事がわかり、腕を磨いていき、やがてタイトルにある「似顔絵捜査官」の栄えある第1号に任命された似顔絵捜査の第一人者である。

似顔絵捜査と言うと、真っ先に「モンタージュ写真」が浮かぶ。
しかし、モンタージュには、「わざわざ警視庁に出向かないといけない」「膨大な写真を見ているうちに特徴を忘れる」などの欠点があるという。
“その場”で被害者に聞きながらささっと仕上げる似顔絵が、機動性に富んでいるのだと。

どんな分野でも、本を出すような人は、やはり人とは違うモノを持っている。
誰もやらない似顔絵を捜査に活かせないかと考えた著者は、独自に似顔絵の勉強を始める。
上野公園で似顔絵を書いているホームレスの似顔絵師たちを見つけ、仲良くなって怪しげな酒を一緒に飲みながら、似顔絵のコツを学んでいく。

ただ書くだけでなく、証言者の記憶にはいろいろな影響要素がある。
雑談で心をなごませたりというテクニックも駆使し、証言者が自信のない時は無理に書かないなど独自の手法を確立させていく。
「スケベそうな雰囲気」と言った証言でも、それを特徴に描き加えていく。

時に重傷を負った被害者のベッドで、時に4歳の子供から、そして腐乱死体からも特徴を汲み取って似顔絵を仕上げていく。
逮捕してみたら、そっくりだったという評価を積み重ね、やがて各地から似顔絵の依頼が飛び込んでくる。

本業の鑑識でも、三島由紀夫割腹事件・三菱重工業連続爆破事件・ホテルニュージャパン火災・日航ジャンボ機墜落事故等の昭和の大事件・事故の捜査に当たる。
考えてみれば、普通の刑事は管轄があったり異動があったりするから、こんな大事件事故をすべて経験するような事はないのだろうと思う。

そしてついに海を渡ってタイ警察にも協力する。
このあたりはもう一冊の著書になっているようである。
単なる読み物としても、非日常世界なので面白いし、一つの道を極めたプロの話としても面白い。
何でもプロならば道を究めるぐらいやらないといけない。

果たして自分は十分できているだろうか。
そんな事を胸に手を当てて問いたいと思わせられる一冊である・・・


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2013年12月04日

【歪笑小説】東野圭吾



伝説の男
夢の映像化
序ノ口
罪な女
最終候補者
小説誌
天敵
文学賞創設
ミステリ特集
引退発表
戦略
職業、小説家

東野圭吾と言えば、ミステリー。
だがこれは、ミステリー路線からは大きく外れる。
と言って、 「ナミヤ雑貨店の奇蹟」とか「手紙」のような“不思議感動系”とも違う。
ちょっと皮肉の利いた軽い読み物といったものである。

物語舞台となるのは、灸英社という出版社。
登場人物は、編集長の獅子取を始めとした編集委員や作家やその周辺の人々。
各章それぞれ順番に主人公となって物語が進むパターンである。

物語を通じて描かれるのは、出版業界の内側。
出版不況と言われるこのご時世、出版社は“売れる作家”の原稿が喉から手が出るほど欲しい。
プライドもへちまもなく、徹底したごますりで原稿を確保する伝説の編集長獅子取(『伝説の男』)。
作家が偉いのかというと、出版した本の映画化の話が来て、舞い上がる駆け出しの作家(『夢の映像化』)を見ていると、実に滑稽。
大作家との“お付き合い”に気が重い新人作家(『序ノ口』)。
美人の編集者に我を忘れる作家(『罪な女』)。

それぞれ様々な切り口で物語が積み重ねられる。
それによって、自然と出版業界の内幕も理解できてしまう。
売れる作家はほんの一握り。
どうやら、ちょっと文才があるくらいでは、食べていくのも難しそうである。

会社で不遇を囲う男が、周りを見返そうと会社での冷遇の屈辱に耐えながら、新人賞を目指して執筆に励む。(『最終候補』)
されど現実はあまりにもシビアである。
そんな厳しい世界を、コメディータッチのオブラートにくるみ、さり気なく垣間見せてくれる。

ホームランバッターはバントもうまい。
そんな感想を抱かせられる一冊である・・・


  
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