2014年03月30日

【戦士の休息】落合博満



1 カッコイイとは、こういうことさ。
2 同じ映画を何度も観てきた。
3 ここ一番では、納得するまで時間を使え。
4 ナンバーワンであり、オンリーワン
5 「オールスター」を考える。
6 スウェーデンとハリウッドを観比べる。
7 偉大なるマンネリズムについて。
8 野球の映画は興味ない。
9 私の中には三船敏郎がいるのだろうか。
10 戦争映画について書くのは難しい。
11 故きを温ねて新しきを知れ。
12 私の映画ベスト10
13 半世紀にわたる筋金入りのファンとして、最近の日本映画を観た。

野球選手の本は、野村監督本を含めてかなり読んでいる。
その中で、数は少ないが、落合監督の本は読みたくなる部類の筆頭である。
そんな落合監督の本が出たと思ったら、何と野球ではなく映画の本。
実は映画ファンらしい。
自分と同じ趣味を落合監督はどう語るのか、そんな興味を抱きつつ手に取った一冊。

映画にハマったきっかけは高校時代。
理不尽な先輩のいじめに耐えかねて、学校をさぼり一日映画館に入り浸っていたという。
映画館では、スクリーンに向かって一番右か左の端に座るという。
真ん中だとスクリーン全体を見るのに視線を左右に動かさないといけないから、というのが理由らしいが、そんな拘りが“らしく”て良い。

自分の中のヒーローは、ジョン・ウエインとオードリー・ヘップバーン。
「美しさではナスターシャ・キンスキーの方が上」らしいが、オードリー・ヘップバーンには、美しさ以上のものを見ているようである。
ジョン・ウエインは西部劇のヒーロー。
やはりここは多感な時期にエネルギー溢れる作品に触れた影響が大きいのだろう。

映画の話だけに、その作品を自分が観ているか否かで、話の重みも違ってくる。
その意味で、観ている作品が多かったのが幸いだった。
「男はつらいよ」「007シリーズ」の偉大なマンネリ。
特にそれまでの路線を外れたダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドに対する同じ意見には嬉しくなる。

さらには制作者に対する批判には思わず膝を打つ。
『安易に人気小説やコミックを映画化しようとするのではなく、制作にはこだわりを持った作品を生みだしていってもらいたい。〜「これを観てもらうんだ」という武骨な勇気。映画界の先人たちが、何もないフィールドに道を作っていったような勇気だろう。』
これを読んで、相通じる考え方ではないかと思われる 「じゃやってみれば」のロボットの阿部さんの作品はどうなんだろうと思った。
採りあげられていなかったのは残念である。

『映画は最高のエンターテイメントであり、観終わって「楽しかった」と思えればそれでいい』
このあたりも私とまったく意見が一致する。
三船敏郎やチャップリンに対する想いは別として、落合監督が選ぶベスト10はやっぱり私との微妙な年代差を反映してか思いは重ならなかった。
だが、総じて意見が合うと感じたのは喜ばしい限り。

『映画は観る者の年齢、その時の立場によって、同じ作品でもまったく違って観られる事を知った。これからも新作だけでなく、かつて観た作品もリピートしながら映画を楽しみたい』
最後の意見もまったくその通り同じ思いである。
野球の話もふんだんに出てくるし、今後本を出すのなら、たとえそれが野球の本であったとしても、映画にも言及してほしいと思わずにはいられない。
ますます今後も目の離せない監督である・・・


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2014年03月27日

【悪韓論】室谷克美



序章  李王朝の昔から続く宿痾
第1章 韓国コンプレックスに陥ることなかれ
第2章 格差王国の身分制度
第3章 就職浪人大国の悲惨
第4章 短期退職者が溢れる国に匠はいない
第5章 長時間労働大国の怠慢
第6章 嘘吐き大国は≪外華内貧≫で老人自殺大国
第7章 詐欺大国の上に訴訟大国
第8章 高級マンションはヤミ金大国の象徴
第9章 お笑い詐欺大国、だから原発が恐ろしい
第10章 恩赦大国に腐臭なき人はいるのか
第11章 韓国型生活様式が内包する売買春大国
終章  「大国」「強国」だけのウリナラ

昨今は、だいぶ日韓関係が悪化している。
どうも日本人は大人しくて、韓国には一方的に言われるままになっている。
そんな不満のエネルギーの爆発が、こういう本になって現れるのだろうかと、タイトルを見て思った。
最近、この手の本がやたらと目につく。

著者は元時事通信の記者。
ソウル特派員の経験があって、韓国事情に通じているようである。
タイトルからして、抱いているのは悪感情。
この本の内容もその通りである。

ただし、だからといって、著者の悪意に満ちた独断と偏見が満ち溢れた本というわけではない。
現地の3大メディア(朝鮮日報、東亜日報、中央日報)の報道や公式統計を多数引用しており、客観性がかなり高い。
私も基本的に韓国嫌いであるが、だからと言って悪口を聞いても良い気分はしない性格。
したがって、この客観性は冷静にこの本を読むのに大いに役立つ。

「日本の大学進学率は5割台だが、韓国は8割を越えている」
「日本の失業率は4〜6%だが、韓国は2%台で世界最低」
「日本の家電メーカーすべての売上高を集めても、韓国のサムスン1社に適わない」
よく言われるこれらの事柄について、著者は統計を挙げて否定していく。

著者は悪口的に挙げているのかもしれないが、韓国では大卒男子の入社平均年齢は28歳だと言う。
それは「留学」が大きな理由だが、なぜ留学するかと言うと、「就職口がないから」。
就職と言っても大企業と中小企業では大きな格差があり、みんな大企業に行きたがる。
必然的にみんな大学へ行き、大卒が当たり前になるからプラスして資格を取り、英語を学ぶ。
留学してもダメなら大学院へ行き、結果、「学歴大国」となる。
何だか大変な社会だ。

しかし苦労して入社しても短期で退職してしまう不思議。
同期が先に出世すると、プライドの高さゆえ辞めてしまうのだとか。
その先は、月給の高さより、「肩書き」を求めて転職するらしい。
長く勤めないから熟練工も育たない。
ホワイトカラーを格上に見て、ブルーカラーを軽視する風潮があると言う。

「韓国で2011年に偽証罪で起訴された人は日本の66倍」
「日本の671倍も偽証が氾濫する韓国の法廷 韓国人は世界一の嘘吐き民族」
日本語サイトにもアップされた記事だそうだが、韓国社会はなかなか嘘に抵抗が無いらしい。
美容整形に熱心なのはよく知られているが、それはプライドの高さなのか見栄なのか。

驚いたのは、恩赦制度。
制度自体は別に驚かないが、その頻度は凄い。
各政権ごとにしばしば恩赦がなされる。
金大中政権(552万人)、盧武鉉政権(650万人)、李明博政権(283万人+152万人に加え、2010年、2012年と気前が良い)。
恩赦は汚職や交通など軽犯罪が中心なのだろうが、その数が凄い。

読めば読むほどこんな国に生まれなくて良かったと思えてしまう。
韓国嫌いの人には溜飲が下がる思いがするかもしれない。
ただ、だからと言ってこういう事実を知って満足しているのはやはり良くない。
我が国にも汚点はあるだろうし、「人の振り見て」という言葉もある。
もって他山の石として、自らを高める努力をしないといけない。
そんな事を思わせられる一冊である・・・

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2014年03月21日

【誰も戦争を教えてくれなかった】古市憲寿



序 章 誰も戦争を教えてくれなかった
第1章 戦争を知らない若者たち
第2章 アウシュビッツの青空の下で
第3章 中国の旅2011-2012
第4章 戦争の国から届くK−POP
第5章 たとえ国家が戦争を忘れても
第6章 僕たちは戦争を知らない
終 章 SEKAI no OwarI
補 章 ももいろクローバーZとの対話

もともと歴史好きという資質があるのだが、歴史に関する本にはついつい目がとまる。
特に「戦争」というのは、歴史における一つの大きなキーワードだと思う。
そんなキーワードが目について手に取った一冊。
青い表紙が印象的でもあり、ひょっとしたらそれは中で出てくる“8月15日”をイメージしているのかな、とも思う。

読み始めると、タイトルからくるイメージとは違う事に気がつく。
「戦争」と言えば、特に日本人は第二次世界大戦を真っ先にイメージするだろう。
これはそのイメージ通りではあるが、ただし、「戦争博物館」というものをその中心においている事が、当初のタイトルから得たイメージとは違うところであり、そしてこの本の試みの面白いところである。

冒頭、ハワイのアリゾナ・メモリアルを訪れるところからこの本ははじまる。
そこは日本の真珠湾攻撃で沈没した戦艦アリゾナの残骸をベースにした博物館。
そこが「爽やか」で「勝利」を祝う「楽しい」場所であるのは、戦勝国ゆえなのであろう。
多くのアメリカ人にとって、第二次世界大戦は「良い戦争」だった。
そこから「戦争の残し方」の違いに、著者は心を惹かれたようである。

そして著者はアウシュビッツへ向かう。
第一収容所のアウシュビッツと第二収容所のビルケナウ。
広大な博物館は、「当時の実物をそのまま残す」という基本方針が貫かれているらしい。
「1955年(開館時)のまま、時が止まってしまった博物館」なのだと言う。
同じ敗戦国であるドイツ。
ベルリンには至るところに戦跡があるという。

我々日本人に関係深いのは、中国と韓国。
中国では、有名な南京大虐殺記念館を訪れる。
「30万人」という数字が強調される展示。
されど「つまらないよ」という地元の大学生の言葉が印象的。
そして、上海、瀋陽、北京・長春、大連、旅順と旅は続く。

韓国では、独立記念館。
著者が「本書比では世界最大」と語るそこは、7つのミュージアムから成り立っている巨大な施設らしい。
アトラクションもあって、エンタメ性が高いらしい。
博物館ではないが、板門店も紹介されている。
韓国には行きたくもないが、板門店はちょっと行ってみたい気がする。

さらに日本に戻って、沖縄、靖国神社(遊就館)、広島、京都・舞鶴、東京・深川と続く。
興味深いのは、「大きな記憶」と「小さな記憶」という喩え。
国家によって博物館や教科書という形で残される「大きな記憶」。
そして数多くの戦争体験者によって語られる「小さな記憶」。
「小さな記憶」は、目を凝らせば回りに溢れている。

博物館巡りから、著者の思考は様々に巡る。
韓国嫌いでも、K−POPは若者の心に届く。
軍隊がなくなっても平和にはならない。
国家も、そして戦争もその姿が変わって行く。
今や国家同士の総力戦戦争は起こりにくい。
それはアメリカでも、無人機や民間軍事会社などという形で新しい戦争の姿が現れている。

最後に補章として、ももいろクローバーZとの対談が納められている。
ここでは歴史を知らない若者の姿を知ることができて、意外に新鮮。
「嘆かわしい」と見る事もできるが、こうした世代が中心になっていくと、また歴史観も変わってくるのかもしれない。

この本は、「歴史を学ぶ」本ではない。
言うなれば、「歴史から考える」本と言える。
様々な戦争博物館を偏見を持たずに見学して帰ってきて、そこから著者なりに感じた事。
それから一緒に考えてみる事ができる。
読み方次第で、深いところに行ける一冊である・・・
   
   
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2014年03月19日

【小さな会社がお金を借りるなら銀行はおやめなさい】加藤康弘



序章 間違いだらけの借金常識 7つのケース
第1章 ビジネスにおける「借金」とは何か
第2章 誰も教えてくれなかった「金融機関・公的資金」の活用法
第3章 企業するときに知っておきたいお金の話
第4章 借りられる事業計画書のポイント
第5章 銀行との上手な付き合い方

著者は、「資金調達コンサルタント」の行政書士。
そんな著者が語る、「借金」に対する考え方の本である。

普通お金を借りるなら、まず銀行と考える。
一見、矛盾するかのようなタイトル。
敢えて逆説的な表現を使って、読者に本を手にとってもらおうという魂胆なのだろうか。
だが、内容とずれたタイトルはいかがなものかと思う。

タイトルとマッチしているのは、第2章。
その要諦は、要は“日本政策金融公庫”の公的資金を使いなさいという事に尽きる。
あとは、“考え方”だ。
借金を「怖いもの」とだけしか考えていないと、事業を大きくできない。
消費者としてなら、「借金は怖い」と考える事はむしろ好ましい。
借金に頼る生活など良いわけがない。
されど、事業となったら話は違う。

・起業したてでも、日本政策金融公庫なら借りられる。
・借金は「早く返せばいい」というものではない。
・利息は「金額で考える」と良い。
・多少金利が高くても、金額に直すと大した差が無い事がある。
・事業は「借金で」潰れるのではなく、「お金がなくて」潰れる。
・無借金経営が、必ずしも良いとは限らない。

これらの主張は、多少強引な理由づけが見られるところがあるが、まぁ真実である。
借金=悪という固定観念に凝り固まらないようにしないといけない。
借入期間を長くすれば、月々の返済額は小さくなる。
事業はどこでどうなるかわからないし、できるだけ「借りておく」のも、現金の確保という意味で経営の安定につながる。
余れば、繰り上げ返済はすれば良いし、途中で「期間を延ばしてもらう」方がハードルは高い。

どちらかと言えば、金融初心者向けの指南書と言える内容。
知らない人には、考え方の点で参考になるかもしれない。
タイトルに惑わされる事なく、金融素人を自任する経営者は、一読しておく価値はあると思う一冊である・・・

posted by HH at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月16日

【死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日】門田隆将



第1章 激震
第2章 大津波の襲来
第3章 緊迫の訓示
第4章 突入
第5章 避難する地元民
第6章 緊迫のテレビ会議
第7章 現地対策本部
第8章 「俺が行く」
第9章 われを忘れた官邸
第10章 やって来た自衛隊
第11章 原子炉建屋への突入
第12章 「頼む!残ってくれ」
第13章 一号機、爆発
第14章 行方不明四十名!
第15章 一緒に「死ぬ」人間とは
第16章 官邸の驚愕と怒り
第17章 死に装束
第18章 協力企業の闘い
第19章 決死の自衛隊
第20章 家族
第21章 七千羽の折鶴
第22章 運命を背負った男

東日本大震災から3年。
衝撃の福島第一原発事故は、いまだに終息に至っていない。
本書は、関係者への取材から事故当時の様子を描いたノンフィクションである。
副題には「吉田昌郎と福島第一原発の500日」とあり、元福島第一原発の所長だった故吉田昌郎氏を主人公としたリアル・ドラマかというイメージを勝手に抱いていたが、実はそうではない。
吉田昌郎氏は、当事者の一人として登場するのみ。
正確には、「死の淵を見た男たち」とすべきだろう。

地震発生の瞬間。
緊迫する事務棟内。
原子炉は緊急停止する。
非常ベルが鳴り響く中で、安全確認の点検作業が行われる。
そしてそこへ襲い来る津波。
点検にきていた3人は、津波に襲われ、寸でのところで助かる。

まもなく、緊急対策室に「非常電源オフ」の報告がなされる。
一般人が聞いても何とも思わないが、それが何を意味するかを知る関係者に衝撃が走る。
所長の吉田の脳裏には「チェルノブイリ」の文字がよぎる。
その緊急対策室から離れた原子炉建屋に隣接する中央制御室では、電源が落ちて真っ暗となる中、職員たちの行動ルールが決められ対応に追われる事になる。

一連の事態の推移を読んでいくと、否が上にも緊張感が伝わってくる。
当事者の生々しいやり取りが、それを盛り立てる。
恐怖感が湧きおこる中、運転員たちによってすぐに原子炉への注入弁を手動で開く作業が行われるが、この時それをやっていなかったら一時間後には線量が上がり、もう近付けなくなってその後の「冷却」がまったくできなかったというのだから、何とも言えない。
際どいところで、「為すべき事」が為されていたのである。

事故ですっかり有名になった斑目原子力安全委員長が登場し、管総理を始めとする官邸も対策に乗り出してくる。
ニュースでもさんざん報じられた出来事だが、当事者の証言から表に出てこなかった状況も明らかにされる。

特に管総理に関しては、その行動に多くの批判が集まった。
事故対応に追われる最中の管総理による現地訪問。
海水注入中止指示。
東電本店での、「撤退したら東電は100%潰れる」発言。
されど管総理の言い分にも一理あるなと言うところが正直な感想。
マスコミの報道を鵜呑みにしてはいけない。

様々な関係者たちの行動を通じて、当時ニュースで報じられなかった現場の様子がリアルに目の前に展開される。
危機に瀕した時の人間の行動。
特に現場の責任者たちの言動には感動を覚える。
当時ニュースを見ながら、どうなるのだろうと漠然と考えていたが、最悪日本の1/3がダメになる可能性も確実にあったと知り、改めて恐ろしさを感じる。

現場の当事者の行動にしばし目頭が熱くなり、漂う緊迫感に今後我々がなすべき事を感じさせる。
これからを考える上で、我々日本人が読んでおきたい一冊だと思う・・・

   
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2014年03月15日

【年収1000万円の貧乏人年収300万円のお金持ち】伊藤邦生



Chapter 1 いつまでも豊かになれないサラリーマン、ますます豊かになる資産家
Chapter 2 労働者のお金の流れ、資産家のお金の流れ
Chapter 3 貧乏人のお金の減らし方、お金持ちのお金の増やし方
Chapter 4 働きアリで終わる人、ゴールドスワンとして羽ばたく人
Chapter 5 落とし穴にハマる貧乏人、確実に儲けるお金持ち
Chapter 6 お金持ちと貧乏人を分ける5つの資質

本書は、かつて大手証券会社でトレーダーとして勤務していて、その後不動産投資で独立した著者が指南する投資家への転身指南書。
「年収1000万円の貧乏人」は何となくイメージできるが、イメージしにくかったのが、「年収300万円のお金持ち」。
しかし、要は「年収300万円でも堅実にお金を貯める人は不動産投資によって豊かになれる」という事。
不動産投資サービス会社を運営する著者を考えると、“我田引水”的な匂いが漂う本である。

著者の主張は間違っているとは思わないが、考え方の相違は随所に見られる。
サラリーマンの生涯年収3億円のうち、半分が「生活費と子供の養育費」に消えていき、残りは「税・社会保障」「家」「金利・保険」に消えていく。
つまり、「公務員」と「建設会社」と「銀行員・保険マン」を食べさせるために働いていると言えるという。
だが、そうやって“持ちつ持たれつ”なのがこの世の中だ。

だから「家は買わない」と主張するが、一生家賃を払い続けて何も残らないより、同じ金額のローンを30年払って誰にも追い出される心配のない家を手に入れる事は比較できないと個人的には思う。
それに結局、著者流に言うならば、賃貸に住む事は「大家さんを食べさせるために一生働く」事に他ならないと思う。
結局、誰かを儲けさせるわけだし、それなら建設会社や銀行を儲けさせたとしても、老人になってもなお家賃の心配をしなくて済む方がマシだと思ってしまう。

年収1000万円の人が貧乏になるのは、「収入が多いがゆえに散財してしまう」という事らしい。
それに対し、年収300万円の人は堅実に貯えるから、それを投資に向けられるという。
そして不動産投資について語る。
その部分になると、さすが専門家だけに同意できる説明が多くなる。

最初は小さな投資から始める(0を一つ増やせばいい)
不動産投資はセンミツの世界(優良物件は少ない)
好条件の投資物件はゴールドスワン(=優良投資家)に優先的に回ってくる(広く出回っている物件に優良物件などない)
フルローンで買うのであれば、最低でも利回り15%くらいないと収支は回らない(これがわからない人は不動産投資など考えない方がよい)
買った瞬間に損をする新築物件(建設会社の利益が物件には上乗せされている)
などなどの指摘は、いちいちごもっともである。

最後に「お金を稼ぎ続けるために大事な事」が語られる。
1 優位性
2 規律
3 忍耐
4 リスク管理
5 覚悟
それぞれ納得の内容。

要は安易に勧誘の話に乗って、わかったような気になって一端の投資家気分で投資しても儲かる事は、けっしてないという事。
どこにどんなリスクがあって、それをどうするかわかっていて、それなりの覚悟があって初めてうまくいく可能性がある。
素人なら(少なくとも仕事などでわかっているという人以外は素人だ)専門家にアドバイスしてもらう他はない。
専門家とは、そこらの不動産を紹介するだけの不動産屋ではない。
結局、著者のような専門家に頼るのが一番という事だろう。

前半は今一の内容だが、後半部分はそれなりに内容のあるものだと言える。
タイトルはともかく、投資を考える時には一読しておく価値ある一冊だと思う。

posted by HH at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/会計・財務 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月09日

【戦略参謀】稲田将人



第1章 高山、最初の地雷を踏む
第2章 「バケツの中味」が重要だ
第3章 経費削減と経費低減は違う
第4章 社員がやる気になる人事制度とは
第5章 起死回生の販促プラン
第6章 混沌のなか、海図を求める
第7章 新業態を立ち上げる

著者はマッキンゼー出身の経営コンサルタント。
本書は、架空の大手紳士服チェーン「しきがわ」を舞台とした経営改善の物語である。
ストーリー形式で経営改革等の変革を語るという点では、数ある同様のビジネス小説と同類項と言える。

この手のビジネス小説には、成長期にある将来有望な若手を腕の良いコンサルタントが指導するというパターンが多い。
その方が「ストーリーを楽しみつつ学ぶ」という目的を叶えやすいのだろうという事は想像に難くない。

主人公は、「しきがわ」の若手社員高山。
ある日、古参の阿久津専務の前で、専務が導入した成果報酬制度を批判し、不興を買ってしまう。
創業二代目若社長体制のしきがわにおいて、先代から仕えている阿久津専務は、いわば社内の影の実力者。
これまでも、気に入られなくて飛ばされたり辞めたりした者も多い。

そんな高山が新たに配属されたのは、二代目社長の肝いりで創設された経営企画室。
ヘッドハンティングされてきた室長の伊奈木の元、「経営企画室って何をするのだろう」という疑問から、高山は取り掛かる事になる。
そしてそんな高山に、伊奈木は自分も知っているコンサルタント安倍野を紹介する。
こうして、安倍野を訪問しては教えを請うという高山の生活が始る。

まずは、PDCAを早く回すという事が語られる。
新規事業に取り組んでいたしきがわであるが、赤字が継続。
そこで問題解決の思考ステップとして、
@ 現状把握
A 真因の追究
B 解の方向性
C 具体策の比較検討
が語られ、PDCAのサイクルを早く回す事が提唱される。
事業部が対策として徹夜で作った実行計画であるが、残念ながら内容までは明示されなかった。

続いて改革は、経費に及ぶ。
売上が同じでも経費が下がれば利益は増える。
と言っても、ただやたらに「使わない」だけでは解決にならない。
なぜなら、経費は売上を作りだす要素でもあるからである。
そしてしきがわで行われるのは、蛍光灯一つ一つにスイッチをつけて小まめに消すプロジェクト。
日本電産でもやっていたような気がするが、ちと地味過ぎるきらいがある。

そして専務が導入した「成果主義報酬」システムの問題点から、人事制度について考えられる。
ここでは、個人についてのインセンティブ制度に加え、店舗単位での計画達成度に応じたインセンティブ制度が提案される。
ただ、その具体的中身までは開示されない。

改革に対する反対勢力としての専務の存在。
その問題点の根本。
物語としては、面白く語られていく。
ただし、経営の「教科書」としては総論ベースでの話が主流であり、あまり参考にはならない。
あくまでも物語として楽しむレベルだろう。
求めるものが、「教科書」としての分野であれば、物足りなさというのは否めない。

そうした前提で楽しむべき一冊である・・・
   
    
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2014年03月08日

【鎮魂】盛力健児



第1章 大阪戦争
第2章 報復(かえし)
第3章 血統書つきの野良犬
第4章 山健三羽カラス
第5章 懲役16年
第6章 出所
第7章 「宅見若頭暗殺事件」の深淵
第8章 「クーデター」の真相
第9章 さらば、山口組

本書は、元山口組盛力会会長の自叙伝。
もっとも直接筆を取ったというのではなく、インタヴューに答えたものを書籍化したようである。

いきなり山口組三代目組長田岡一雄銃撃事件(ベラミ事件)から話は始まる。
山口組組長を銃撃するとは大胆な狙いだと思うが、やられたらやりかえさないとまずいのがこの世界。
ところがぐずぐすしているうちに、誰もやらないと盛力が親父と呼ぶ山健組組長山本健一が山口組の若頭を降ろされるという事態に発展する。
そこで盛力が自ら動く事になったと語られる。

ヤクザ社会は、階層社会。
山口組は組長をトップとし、2に若頭がいて、その下に直参と呼ばれる傘下がいる。
全員が自分の組を持っていて、盛力は2の若頭山健組組長山本健一の下で、自分の盛力会を持っているという構成になっている。
このあたりはなかなかややこしい。

そして田岡組長銃撃の報復を盛力は自分の組の者にやらせる。
警察は、事件の首謀者としてトップを狙う。
実行犯は下っ端でも、今は「使用者責任」としてトップを捕まえる事ができる。
そういう狙いの警察が、執拗に盛力を取り調べる。
盛力としては、自分(の組)で止めないといけないという使命感がある。
過酷な取り調べに対し、盛力は舌を噛むという手段に出る。
慌てた警察はそれ以上の追及をやめ、盛力は懲役16年の刑を負う。

ヤクザの世界には詳しくなくとも、時々起こる抗争事件は否が応にもニュースになる。
ニュースで耳にした「田岡」「竹中」「宅見」などの名前は記憶に残っているし、「宅見若頭暗殺事件」なども覚えている。
そうした人物や事件の“裏話”という事もあって、この本はなかなか面白い。

16年の刑期を終えて出所した盛力。
しかし、バブル期を経てヤクザ組織も「金がモノを言う」世界に変質。
「宵越しの銭は持たない」という昔堅気の盛力には、その空気は合わなかったようである。
ヤクザの世界でも勢力争いはあり、それは山口組という巨大組織の内部においても同様。
そして盛力が仕えた三代目から、六代目へと時代も流れていく。
平成21年、引導を渡されて盛力は山口組を引退する。

一冊の本になるのは、「表に出せる話」だろう。
のべ30時間以上にわたる「オン/オフ」のインタヴューだったと、あとがきに書いてあり、個人的には「オフ」の部分を知りたかったと思う。
称賛するべきものではないと思うが、アンダーグラウンドの世界を知るには興味深い一冊である・・・


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2014年03月05日

【弥勒の月】あさのあつこ



かつては、時代劇など年寄りの読むものという感覚があった。
だが、藤沢周平の世界に触れ、時代劇に抵抗はなくなった。
最近では、藤沢周平以外にも手を広げているが、これもまた初めて読む作家による時代劇である。

履物問屋稲垣屋惣助が女遊びをして帰る道すがら、橋の上に女が一人佇んでいるのが目に入る。
気がつけば水音がし、女が飛び込んでいた。
調べにあたるは、北定町廻り同心小暮信次郎と岡っ引の伊佐治。
やがて女は、小間物問屋遠野屋の女房りんと判明する。

どう見ても身投げと処理されるところ、りんの主人遠野屋清之介は信次郎に、状況を調べてほしいと願い出る。
“匂う”ところのあった信次郎は、伊佐治に調べさせる。
こうして調べが進むにつれ、遠野屋清之介の人物像が浮かび上がってくる。

どう見ても普通の商人には思えない身のこなし。
実はもともと武士であったと判明する。
それがどういうわけで、商人になったのか。
その出自ながら、商才もあって商売は繁盛している。
夫婦仲も良かったのに、なぜおりんは身投げしたのか。

同心信次郎もただの同心には思えない振舞いもあり、それを老兵である伊佐治が支える。
果たしておりんはなぜ身投げしたのか。
清之介の隠された過去は。
次第にストーリーが浮かび上がり、そしてその先が気になってしまう。

何の予備知識もなく読み始めたのだが、意外にストーリーに引き込まれていた。
派手な剣戟はないものの、江戸の物語らしく、静かにゆっくりとストーリーは進む。
やがて迎える結末。
藤沢周平の世界とも宮部みゆきの時代劇の世界とも違う味わい。
藤沢周平の新作が期待できない今、その他の世界にも少しずつ目を向けていきたいと思うところであるが、この作家も面白いかもしれないと思わせられた・・・
    
    
posted by HH at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説/時代劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする