2014年05月29日

【自分が源泉】鈴木博



第1章 「自分が源泉」とは−すべての結果は自分が創りだしている
第2章 「完了」−「自分が源泉」で「完了」を生きる
第3章 「インテグリティ」−人生を自らの存在理由から生きる
第4章 「コミットメント」−未来を創作する

著者は長年中小企業経営者研修“SEE”を主宰してきたヒューマン・グロース(人間成長)トレーニングの第一人者。
個人的に年に一回、著者による短い研修を受けていることもあって、書籍化されてすぐに購入。
今回、思うところあって再読する。

タイトルにある「自分が源泉」とは、「すべての結果は自分が創りだしているという立場をとる」考え方のこと。
この考え方に立つと、癌ですら自分で創りだしたことになる。
癌は治らないと考えてしまうと、組織の癌に対して自分はどうすることもできないとなり、うまくいかない原因を自分以外の外部のものに求めてしまう。
されどそこで、その結果を自分が創りだしていると考える事により、新たな解決策が見えてくる事がある。

「自分が源泉」のエッセンスを理解したあとは、「完了」という概念を学ぶ。
これは自分が囚われ、使われている感情や思いを「完了」させ、そこから自由になることだとされる。
そうした感情や思いを完了させるとは、無理やりしまい込むことではなく、「そのままでいいという許可」を与える事であると言う。
一言で理解する事は容易ではないが、豊富な具体例が理解を助けてくれる。

「インテグリティ」とは、存在理由の事。
経営者研修では、「偶然でないとしたら」「必要で起こっているとしたら」「何か教えてくれているとしたら」という問い掛けをし、自分自身のインテグリティをとらえるのだと言う。
このあたりは企業の存在意義を見出すのに良い部分だろう。
視線を自分自身にも向けてみたい。

最後の「コミットメント」は、「結果に対する責任を伴う目標宣言」。
ただ宣言すれば良いというものではない。
「This is the oneの原則」
組織内の無言ルール“ノーム”
「コミットメント」がなぜ不可能を可能とするパワーを持つのか。

この本を手元に置いておこうと思ったのは、著者本人から講義を受け、サインをもらったからということだけではない。
十分理解したつもりになっているが、果たしてそうだろうかと時折確認したくなる為でもある。

人間、壁にあたったり、窮地に陥った時には、何かにすがりたくなるというもの。
「自力で」そこから抜け出そうとした時に、手に取って参考にしたいと思うものがあれば幸いである。
この本は、私にとってそんな一冊だと言える。
これからも折に触れ、読み直してみたい一冊である・・・

    
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2014年05月28日

【人は一瞬で変われる】鎌田實



第1章 小さなきっかけが「変わる力」を引き出す
第2章 「がんばらない」で自分を変える
第3章 明確な目標があれば人は変われる
第4章 形から、経験から、中身も変わっていく
第5章 「誰かのために」が自分を変える

著者は諏訪中央病院の名誉医院長。
テレビにも出演している著名人である。
タイトルにある通り、「自分を変えたい」と思っている人に「変わることができる」と説いたのが本書である。

第1章では、人は小さなきっかけで変わっていくという事例が紹介される。
慢性骨髄性白血病で99%助からないと言われた少女。
お姉さんが「1%もある」と可能性を説き、やがて助かるどころか日本初の骨髄バンクを設立するまでになる。

暴力沙汰を起こした生徒、不登校の生徒が変わる。
「なんとかなるかもしれない」が口癖のドクターが、リハビリ患者を変えていく。
一冊の絵本が感動を引き起こし、読む人を変えていく。
行動を変える(=行動変容)とは、自分の中に眠っているものを引き出すだけのことである。

自分を変えるのに努力は不要。
芸能人の藤村俊二は、嫌なことからヒョイと逃げてしまう(それでついたあだ名が“オヒョイ”)が、それが良いと紹介される。
頑張らずにだらだらで良いと言われると、何だか安堵する。

他人の要求も自分の要求も大切に考え、うまくバランスが取れるタイプBの性格の人は癌になりにくいとか。
人に優しく自己犠牲的なタイプCは、心の中に感情を留めてしまい、かえってダメらしい。
自分はどう見てもタイプCだから、少しは我がままになっても良さそうである。

自分を変えるには、頑張らなくても良いが、明確な目標は必要。
徒競走はビリでも、エベレストに登ってしまった女性がいる。
小さな成功を繰り返し、健康と仕事と両方で改善してしまった中小企業の経営者がいる。
たかの友梨ビューティークリニックで有名なたかの友梨氏の半生は凄いの一言である。

その他にも弁護士の大平光代氏など、劇的に人生を変えた人の例が紹介されているが、概して変わるのにドラマチックな出来事や人に真似のできない努力は必要ないと説かれているのが、耳に心地よい。
誰にでもできそうであるし、実際そうなのであろう。

だからと言って、「では変わらなきゃ」と焦る必要もなさそうだ。
この本全体を通じて流れる感覚からすると、そんな感じがする。
変わりたいと思うのなら、「少しだけ変わる」ところから目指しても良いかもしれない。

個人的に今一つの転機に来ている。
たぶん今の出来事にカタがついたら以前とは考え方も行動も変わるだろう。
そんなタイミングだったせいか、心にスムーズに溶け込んできた一冊である・・・

http://www.kamataminoru.com/index.html
http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/

  
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2014年05月26日

【ライス回顧録】コンドリーザ・ライス



原題:A Memory of My Years in Washington
No Higher Honor
著者はアメリカ・ブッシュ政権で、はじめに国家安全保障担当大統領補佐官、そして政権2期目では国務長官を務めた人物。
政権中枢にいた有名人の回顧録であり、当時の政権の裏側が覗けるかもしれないと興味を持って、分厚いのを覚悟で手に取った次第である。

ブッシュ政権と言えば、なんと言っても“9.11”とそれに続くアフガニスタン戦争、イラク戦争。
後半ではリーマン・ショックも起きる。
現在のオバマ政権と比べると激動感がある。
プロローグでは、「今日のトップニュースと歴史的な評価が一致することはまずない」と語られる。
アラスカの購入を喩えに挙げ、当時は批判を浴びたことも歴史的に見れば評価されるべきことかもしれないというのもので、これが全編を通じて著者が言いたいことなのだろうという気がする。
だが、歴史の評価は必ずしも良い方にいくとは限らない。

パパ・ブッシュに仕えた関係で、ジョージ・W・ブッシュの選挙戦を手伝うことになった著者。
そして激戦の末、当選。
その貢献もあって国家安全保障担当大統領補佐官に就任する。
そして9.11が発生。
当時の生々しい様子が描かれているところは、やっぱり興味深い。
この時代、米露は蜜月時代。
プーチンは既にロシアの指導者である。

テロとの戦いが幕を開ける一方、インドとパキスタンとの間に緊張が走り、パレスチナ問題も長いトンネルに入ったまま。
そして北朝鮮では核問題が起こる。
世界に影響力を持つアメリカは、やはり外交のスケールが日本とはケタ違いである。

表向きは「大量破壊兵器の脅威」を謳いつつ、その事実は石油利権確保のための戦争だったと言われているイラク戦争。
さすがに「石油」とは書けないのだろう、大統領の言葉として「武器について白状するか、白状しなければ戦争だ」と紹介することで、この疑惑に対する回答としているのかもしれない。

イラク戦争が続く一方、アメリカ外交も多忙。
中東各国の次はアフリカ。
みなアメリカの動きに注目している。
その他キューバや日本も登場する。
日本の首相としては、小泉さんは評価されているが、それに続く3首相については、「誰とでも取り替え可能」と手厳しい。
北朝鮮については、「拉致より核」というスタンスで、これは立場上仕方ない。
残念ながら日本については、良い印象はなかったようである。

ブッシュ再選後、国務長官に就任。
国務長官は、国璽(great seal)=外交文書に押される印章=の保管者であるというエピソードが興味深い。

その後も中東・アジア・アフリカ・ロシア(グルジア)と舞台は目まぐるしく変わる。
国務長官も実にハードスケジュール。
休暇がフイになることも日常茶飯事だった様子。
深夜に起こされて、電話協議なんてシーンも出てくる。

イラクの安定には本当に安堵した様子が伺える。
そしてそれらと共に石油利権を確保する石油法の可決がさらりと触れられている。
やっぱり石油がウェイトを占めていたのだろう。

黒人女性初の国務長官として、その意味も語られている。
今はスタンフォード大学に復職しているそうだが、誰にでもできる仕事ではないという事が良くわかる。681ページの厚さは手に取るのに勇気がいるが、その重みがアメリカ外交の8年の重みかもしれない。
どこまで事実が書かれているのか知る由もないが、素人的には読み応えあり、そして読む価値もある一冊である・・・

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2014年05月23日

【日本一働きたい会社を目指す!】加治敬通



第1章 どん底からの再生
第2章 お客様のお声の実践
第3章 「暗病反」より「明元素」
第4章 寝ても覚めても新たな試み
第5章 縁する人を幸せにする−お元気様研修
第6章 感謝を軸に経営改革−全体感動フォーラム
第7章 絶対に潰れない会社を目指す

著者は九州を地盤とするスーパー「ハローデイ」の2代目社長。
テレビでもよく紹介されていて、今や店内ディスプレイなども有名となっている。
そんなスーパーも元は普通のスーパー。
オーナーの息子として著者が入社した時は、経営的にどん底の時。
倒産寸前の状態であったが、そんな状況から今日の成功に至るまでを綴った一冊。

父が創業したスーパーを継ごうと決めたのは、小学校3年の時。
しかし、入社した1988年、会社は売上高60億円に対し借入金60億円、毎年の営業損失1億円。
銀行員の目から見なくても危ない会社だとわかる。
16店舗の中には雨漏りも直せず、お客さんが傘をさして買い物をしている店舗もあったと言う。

そんな状況下、著者は1店長からスタート。
そして試行錯誤の日々。
うまくいかずに、思わず愚痴も出る。
すると、参加していた経営者の集まりで先輩経営者から叱責を受ける。
部下や取引先に対する文句を並べたところ、「人の悪いところを指差す時、人差し指以外の3本の指は自分に向けられている」と教えられる。
その“3本指事件”以来、著者は変わっていく。

お客様の声を聞き、それをすぐ実践に移す。
それらはすべて店内に貼り出し、従業員やお客様みんなで共有する。
「ピンチはチャンス」と唱え、「暗くて病的で反抗的」な言葉の使用を避け、「明るく元気で素直」=“明元素”を目指す。
店舗の指導もアラ探しスタイルから高いところを目指すフレンドリースタイルにしてゆく。

本店の隣に強力なライバルスーパーが出店。
対抗するために知恵を絞り、それをやがて「寝ても覚めても新たな試み」運動へとつなげていく。
そして紆余曲折。
あちこちぶつかりながら、著者は今の経営スタイルを身につけていく。
今では「日本一見学者が多いスーパー」となっているらしいが、単に店内のディスプレイなどの形だけ真似しても上手くはいかないのではないかと思わせられる。

等身大の奮闘記として面白く、時折目頭も熱くなる。
業種が違っても、「著者の気付き」は有益なヒントとなり得る。
このスーパー「ハローデイ」が東京にないのが唯一残念な点であるが、いつか九州に旅する事があれば、是非訪れてみたいと思う。

薄いが「中味の熱い」一冊である。


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2014年05月21日

【プロフェッショナル・サラリーマン】俣野成敏



はじめに 30歳のリストラ候補はなぜ役員になれたか
第1章 プロの定義
第2章 「時間」配分法
第3章 「金銭感覚」の磨き方
第4章 プロの「報・連・相」
第5章 上司とつきあう
第6章 入社1年目に知っておきたいこと
第7章 入社3年目から差がつく考え方
第8章 給料の10%を銀行の封筒に詰めろ
第9章 「空き地」をみつけてみよう
おわりに 二十代は朝飯前

著者は東証1部上場メーカーに就職するものの、業績不振で30歳でリストラ予備軍となり、その後社内ベンチャーで成功し、最年少役員に抜擢されたという経歴をもつ人物。
そんな著者が語る「プロフェッショナル・サラリーマン」に興味を惹かれて手にした一冊。

しかし、読み始めてすぐ、これは若手向けの本だと気がつく。
定年までカウントダウンが始まったサラリーマンが読むにはちと遅い。
されど、それでも何らかのヒントにはなるかもしれないと、思い直して読破した。

初めにプロの定義が示される。
「プロとは、最悪のコンディションでも胸を張って請求書が出せること」だと言う。
やはり“結果”が重要なのは当然だろう。

「プロは仕事を4つに定義する」という解説は面白い。
「仕事」は「仕入れる事」
「仕入れ先」は、上司。
仕事を進めていくと、自分なりにいろいろと思うところが出てきて、「思事」となる。
それが高じると、「今度はこうしたい」と「志事」となり、やがて自分で何かを始めて「始事」となる。
それが最終的に会社の資源=「資事」となる。
心したい事である。

「上司は仕事の仕入れ先」という発想は、なかなかだ。
ゆえに人間性を求めない。
だから不平不満も出てこない。
また、とにかく最初は本業一筋。
本業がしっかりしていれば、“水路”はいろいろと引ける。
その通りだろう。

仕事は直線ではなく、(途中で確認を入れる)M字を描く。
残業代で稼ぐより、基本給アップを狙う。
面接で5つの地雷を踏まない。(1 会社の事を調べてこない 2 できる事、やりたい事を言わない 3 自分の都合ばかりを言いたがる 4 過去や現状の不満を述べる 5 質問しない)
「後工程はお客様」だと思う。
こんな考え方は、若手でなくても参考になる。

どんな上司だろうと出世させる。
「仕事の受け取り方」がうまい。
上司にとってコンビニであれ。
仕事の目的と背景を確認する。
上司との付き合い方は、これまでできていただろうかと自問してみるにはいいだろう。

最後に人生80年を24時間で表すと、「20代は朝飯前」という話が印象的。
午前0時が0歳で、昼の12時が40歳。
早帰りして家でゆっくりビールを飲むためには、午前中にしっかり働かないといけない。
なかなかズキリとさせられる。

全部で74のルールが書かれているが、若手には有益なアドバイスだし、若手でなくても今一度確認する意味はある。
人生の時間外労働を少しでも減らせるように、改めて頑張りたいところである。
読むのにちょっと遅かったが、まだまだ時間はあるし、少しでも取り入れて頑張りたいと思わせられる一冊である。

  
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2014年05月15日

【耳かきエステはなぜ儲かるのか?】鬼頭宏昌

    


プロローグ 負けない企業の鉄則
第1章 耳かきエステはなぜ儲かるのか
第2章 立ち飲み屋はなぜ儲かるのか
第3章 小型ラーメン店はなぜ儲かるのか
第4章 簡易葬儀はなぜ儲かるのか
第5章 コンサルタントはなぜ儲かるのか

著者は元飲食店経営者で、事業を拡張し売却した後、コンサルタントに転じたという人物。
株式会社スモールビジネス紹介センターの代表者として、その社名の通りスモール・ビジネスの企業コンサルタントをしているようである。

起業するには、豊富な資金も新しいアイディアも経験やノウハウも不要だと著者は言う。
負けない企業の鉄則はすばり、次の5つ。
1 ビジネス選び、立地選びで妥協しない
2 景気ではなく、時流の波に乗る
3 水平移動する
4 事業の本質を見抜く
5 最初は小さく始める
そして、以上5つの鉄則に基づき、耳かきエステ・立ち飲み屋・小型ラーメン店・簡易葬儀・コンサルタントの5つの事業の魅力と成功のポイントが解説される。

5つの事業のうち、個人的に一番理解が難しかったのが、タイトルにもある耳かきエステ。
儲かるイメージが湧いてこないのである。
要はアキバ系ビジネスを“水平移動”させたもので、浴衣の女の子がひざまくらで耳かきをしてくれるというものらしい。
風俗店ではないので届出もいらず、初期投資も低く、時間あたりの料金はキャバクラ並みで、しかし時給は格安なのだという。
成功の秘訣も語られているが、正直儲かるかもしれないが、自分でやりたいと思うビジネスではないせいか、あまりピンとこない。

それに対し、小型ラーメン店はピンと来るものがある。
60席の店に客6人だと人気のない店と思われるが、12席の店に客6人だと人気のある店と思われるという指摘は、なるほどと思う。
席が少なければ“行列”になりやすく、それがまたお客さんを惹きつける事になる。
居酒屋は夜しか営業できないが、ラーメン業態は昼から深夜まで営業できるという点も特徴的。
商圏人口の多い駅前などの立地がベストと勧められる。

簡易葬儀は知らなかった世界。
少人数向けで費用も30万円程度の家族葬や直葬に人気が集中するらしい。
確かに高齢になれば会葬者も少なくなるだろうし、なるほどと思うところがある。

コンサルタントの頁では、よくあるネット集客のノウハウを紙のDMで展開した事例が印象的であった。
何でもネットが一番と考えがちだが、ネットに詳しくない高齢の経営者には伝わらない。
コンサルタント業成功の秘訣は次の通り。

1 専門性の高いビジネススキルを磨く
2 フロントエンド商品とバックエンド商品を設計しておく
3 リアルとネットを駆使し、自分だけのブルーオーシャンを作りだす
4 セールスしないとコンサルティングサービスは売れない
5 セールスの際は礼儀礼節をわきまえた上でフラットな関係を築く

自分がやるとしたら、これが最も参考になると思われた。
薄い本だが、そこここに参考になる点が散りばめられている。
知識としてもっておくには参考になる一冊。
学ぶ気があれば、学びの多い本と言えるかもしれない・・・


   
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2014年05月12日

【ハーバード戦略教室】シンシア・モンゴメリー

    


THE STRATEGIST BE THE LEADER YOUR BUSINESS NEEDS

シラバス:企業のオーナー、経営者だけが受けられる講義
第一講:35の国から164名の経験豊富なリーダーが集まった
第二講:最初の課題「マスコミの異業種参入」をクラス全員で検討
第三講:「スーパーマネージャー」の失敗にどよめく受講生
第四講:イケアの躍進が示す会社の「目標」を実現する戦略の例を見る
第五講:ファッションという意外な業界に目標を実現する戦略の例を見る
第六講:今度は受講生の番だ。独自の戦略を立てるメソッドを明かす
第七講:最後のケーススタディーで戦略決定後も続く戦いを知る
最終講:最後にストラテジスト、そして戦略の本質を語る

著者はハーバードビジネススクールの教授。
著者が教える講座に入学が許されているのは、「年間売上高が10億円から2,000億円の企業のオーナー、あるいは経営者のみ」だと言う。
その条件だけで、俄然興味が湧いてくる。

「戦略教室」と邦題にはあるが、原題にある通りまず出てくるキーワードが、「STRATEGIST」=ストラテジスト(戦略家)。
ストラテジストとは、「戦略を立て同時に企業を導く指揮官」と定義されている。
「戦略とリーダーシップは組織の頂点で一つになるべき」と説かれており、それぞれ別個のものではないという。
それゆえに、著者の講義の対象者が、オーナーあるいは経営者に限定されているのだろう。
当然ながら、この本も読者にストラテジストになる事を求めている。

第二講からは実例解説となる。
最初の例は、アメリカを代表する住宅・商業用建材の総合企業マスコ。
正直言って初めて名前を聞いた。
“日用品の巨人”として知られていたマスコだが、その成功のノウハウを持って家具業界に参入する。
結果としてマスコの参入は失敗に終わるが、そこで「スーパーマネージャー神話」が解説される。
ウォーレン・バフェットも指摘する通り、業界の選択こそが重要であり、どんな業界でもスーパーマネージャーなら成功するという事はない。

次のイケアの事例は、身近にあって親近感のある企業だけに興味深い。
創業者のイングヴァレ・カンプラードは、少年時代にマッチの販売からスタートし、様々な商品を売るうちに通販会社イケア・アグナリッドを創業する。
やがて家具販売に参入するも、閉鎖的な業界ゆえに安売りに対し商品供給を阻まれ、商品見本市からも締め出される。
しかし、そうした困難を克服し、今日の成功を築きあげる。
イケアの成功の鍵は企業の目標だと著者は言う。
それはその企業がなぜ存在し、どのようなニーズを満たそうとしているのか、だと言う。
良い目標は気高いと。

続いて採り上げられるのは、グッチの低迷と復活。
ここではストラテジストの最も重要な仕事は、「考えること」ではなく、それを実現できるよう組織を整えていくことだとする。
そうした内部での調整を経たあと、会社の内部と外部にその理念を伝えるために、戦略を簡潔な文言にまとめるよう勧められる。

優れた戦略の特徴は、
・明快で説得力のある目標が土台になっている
・本物の価値を付加する
・明確な選択
・価値創造システムを創る
・意味のある測定基準
そして情熱
である。

最後のアップル社の例も、よく知っているだけに自然とページをめくる手も早くなる。
ストラテジストとして最も重要な仕事は、まだ存在しないものを創出することであり、そのために必要なことは以下の問いに正面からぶつかることだと言う。
・わたしの会社は世界に何をもたらしているか?
・それは重要で我が社独自のものか?
・その独自性は希少で真似しにくいか?
・明日重要な存在になるために今日何をするべきか?

また、リーダーに対し、「チームの声に耳を傾ける」ことを勧める。
「最高のコミュニケーションは人の話を聞くところから始る」と説かれる。
以上の通り読んでくると、これは言ってみれば「ストラテジスト養成講座」と言うべき内容だとわかる。
実際の講義に参加するのは、自分は要件も満たせず無理であるが、そのエッセンスは十分に味わえる一冊である。


    
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2014年05月06日

【駅物語】朱野帰子

   


第1章 通勤定期券
第2章 鉄道グッズ
第3章 伝言板
第4章 旅行鞄
第5章 エンブレム

タイトルにもある通り、「駅」それも「東京駅」を舞台とした物語である。
主人公は新卒で東本州旅客鉄道に入社した若菜直。
そして配属されたのは東京駅。
初出勤の日、偶然同期入社の犬塚俊則と出会うも、相手はなぜかほとんど無視。
そして先輩の橋口由香子に教えられながら、「職場」に出る。

職場の面々は個性的な人たち。
直属の上司は助役の松本、そして副駅長の吉住、嘱託の老駅員出雲。
最初の職場はホームの監視。
指導員は藤原。
藤原は口の利き方もぞんざいで、指導振りも親切とは程遠く、しかも過去には事件も起こしているらしい。

ホームの監視も傍から思うほど楽ではない。
入線する電車は、定刻発車を義務付けられており、ホーム駅員もその一翼を担っている。
駆け込み乗車は遅延の元凶。
乗客からは様々な質問が浴びせかけられ、理不尽な暴力に見舞われる事もある。
終電を見送った後は仮眠室で短い睡眠を取る。
物語のイントロは、知られざる駅員の勤務実態であり、これはこれで興味深い。

やがて主人公の直には鉄道好きの弟がいた事、そして直は一年前のある出来事でその場に居合わせた5人の恩人を探している事が明らかになる。
個性的な仲間たちとの交流と、5人の恩人を捜しながらの日々の業務。
小さなエピソードを加えながら、一人、また一人と恩人が見つかっていく。
そして「一年前のある出来事」自体もわかってくる。

何だか無理やり駅にこじつけたような物語に思えなくもないが、知られざる駅の裏側の描写と相俟って、それなりに物語を楽しむ事ができる。
機械化などによって段々便利になっていくと、駅員の数も減っていく。
いずれやってくる未来では、東京駅はどんな変化を遂げているのだろう。

日本の鉄道の運行能力は世界一だそうであるが、この物語はそんな日本の鉄道を支える駅員さんたちへのオマージュにも思える一冊である。

     
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