2014年07月30日

【「また、必ず会おう」と誰もが言った。】喜多川泰



一日目 それはウソから始った
二日目 偶然もしくは必然?
三日目 冒険
四日目 四国へ
五日目 一期一会
その後・・・

以前読んだ『賢者の書』
シンプルなストーリーながら、何かを感じさせてくれるその本が気に入り、もう一冊と手に取ったのが本書。
期待していた通りの満足感を与えてもらう。

主人公は熊本に住む高校生の和也。
修学旅行でディズニーランドへ行く事になっているが、つい成り行きで「行った事がある」と友だちに嘘をついてしまう。
よくありがちなパターンだ。
和也の言葉を信用しない友人たちに、証拠を見せろと詰め寄られ、夏休み明けに証拠写真を見せる事になる。
和也は苦し紛れに夏休み中にディズニーランドへ行き、証拠を捏造しようと思い立つ。
嘘を嘘で塗り固めるのはよくあるパターンだが、そこまでするかと思いつつ、高校生の発想を微笑ましく思う。

思うはいいが、熊本から東京となると、交通費だけでも高校生のおこずかいでは厳しい。
和也は母親にも嘘をつき、ディズニーランドへ行くお金を出してもらう。
せっかくのディズニーランドも、そんな動機だし、おまけに一人ぼっちとなると、そんなに面白くない。
取りあえず証拠写真を撮り、いざ帰るとなったその帰り道でハプニングが起きる。
羽田空港までのバスが渋滞で遅れ、なんと和也は飛行機に乗り遅れてしまうのである。

手持ちのお金もギリギリで、泊まることもできない。
途方に暮れていると、一人のおばさんが話しかけてくる。
おばさんは和也の話を聞くと、自分の家に招いて泊めてくれる事になる。
そしておばさんの家で二人で話すうちに、おばさんは和也に「帰りのお金は貸さない、自分の力で帰れ」と言う。
初めのうちは戸惑っていた和也だが、何かを感じた和也は自分の力で帰る事を決意する。

こうして東京から熊本の自宅へ帰る和也の旅が始まる。
その5日間にわたる和也の旅が、本書の物語となる。
サブタイトルに「偶然出会った、たくさんの必然」とあるが、空港で声をかけてくれた親切なおばさんを筆頭に、和也は多くの人と出会い、そして多くを学んでいく。

ストーリーはシンプルだが、中味は濃い。
「人より先に動いて人の役に立つ事」とおばさんは教えてくれる。
おばさんによって和也は、それまで当り前だと思って受け入れてきた母親の世話をありがたいと思えるようになる。
トラックのおじさんには、人としてのあり方を教わる。

「結局、どこにいようと自分が頑張った分しか人は幸せになれなる事ができない」
「英語が話せても、話す内容がなければすぐにあなたに対する興味は薄れていく」
なるほどと思う話が多い。
結局、「人生は誰と出会うかで決まる」と言う。
確かに、その通りなのかもしれない。
「自分はそんな人との出会いを大切にしているだろうか」と思ってみる。
やっぱり、この本を手に取って良かったと思う。

人との出会いと同様、一冊の本との出会いもまた大事。
良い本に出会えたと素直に思う。
また、別の本も読んでみたいと思うところである・・・

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2014年07月29日

【外資系金融のExcel作成術】慎泰俊



第1章 見やすいExcelの表を作る
第2章 Excelの作業スピードを3倍にする
第3章 初心者のためのモデル作成入門
第4章 本格的に財務モデルを組む
第5章 財務モデルを使った分析
第6章 モデル上級者になるためのヒント

タイトルに惹かれて手に取る本は多いが、日頃仕事でExcelを使う事も多く、興味をそそられたのがこの本。
「外資系金融」というタイトルも絶妙で、これだけでも野球で言えば、メジャーリーガー的な印象で、さらに一段レベルが高いように思えてしまう。

仕事でExcelを使う目的は色々あるのかもしれないが、やはりメインは資料作成だろうか。
第1章では、「見やすい」表の作成について説明される。
表の作り方はその人のセンスに負うところもあるのかもしれない。
ただし、
 ・情報の並べ方が人間の認知の仕組みに従っている
 ・情報が必要最低限である
という原則に従っていると、見やすいと言う。

また、フォントやサイズ、行と列の幅、桁を統一するなどの細かい部分に気を配る事で、見た目の印象もかなり変わる。
その他配色、罫線、項目、タイトルといった部分も書かれているルールに従うと、確かに見栄えは良くなる。
内容が一番である事は間違いないが、それが美しく伝わる事も大切である。

次に作業スピードを早くする方法であるが、これは次の3つの方法がある。
 ・ショートカットを覚える
 ・様々な機能を覚える
 ・関数を使う
ショートカットは日頃から使っているが、確かに便利で早い。
ただ、Excelのバージョンアップで変わってしまったのにはショックを受けた。
機能や関数の詳しい説明は、他の参考書に譲っている。

第3章以下は、具体的な財務モデルの作成例。
この手の説明は、読むだけだとなかなか理解が難しい部分がある。
しかし、ありがたいことに指定されたURLから事例と同じ表をダウンロードできる。
これによって実際にPCを操作しながら覚えられる。

実は個人的に仕事でこの手の財務モデルはよく作っている。
金融機関の人間から見ると、特に目新しいものはない。
個人的に参考になったのは、第1章の見やすい表の作り方だけであったが、そうでない人には参考になる部分も多いだろうと思われる。

単に表を作ってお終いというだけだと、目的にもよるがちょっと寂しい。
大事なのは作った表をどう使うか。
最後は財務モデルを作った分析が取り上げられているが、ここの部分はうまく使えるようになりたいものである。

仕事でExcelを使っている人であるならば、この本に書かれている事はマスターしておいて損はないと言えるだろう・・・

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2014年07月25日

【超合金の男】小野塚謙太



1. 超合金の誕生
2. 変形と合体(超電磁ロボ コンバトラーV)
3. デザインへの衝動(闘将ダイモス他)
4. 奇策(東映スパイダーマン)
5. 獅子の系譜(未来ロボ ダルタニアス)
6. スーパー戦隊の誕生T(バトルフィーバーJ)
7. スーパー戦隊の誕生U(電子戦隊デンジマン)
8. 機構と精度(闘志ゴーディアン)
9. 第2次ロボットブーム渦中(宇宙大帝ゴッドシグマ他)
10. ポケットの守護神(黄金戦士ゴールドライタン)
11. ポピー企画室始動(マシンロボ)
12. メタルヒーローの誕生(宇宙刑事ギャバン)
13. 臨界点(ビデオ戦士レザリオン)
14. 回帰点(星銃士ビスマルク)
15. 夢を見る

「超合金」と言えば、我々の世代では「マジンガーZ」であろう。
TVアニメをずっと見ていたし、おもちゃでも遊んだ。
そんな超合金の玩具を影で世に送り出してきていたのが、この本の主人公村上克司氏であるとの事である。

もともとはバンダイに勤めていた村上氏。
独立のため退社するが、思うようにはいかず、誘われてポピーに入社する。
ポピーはバンダイの子会社である。
そしてある日、新作アニメの初号試写に出かける。
そこで「マジンガーZ」を観てショックを受け、「精密なミニカーを造るダイキャスト製法でこのロボットをポケットサイズの玩具にしてみたい」と申し出る。

開発は難航するも、やがてズシリと重い「超合金」のマジンガーZが完成する。
個人的にも買ってもらった記憶がある。
そして次が「勇者ライディーン」。
マジンガーZの成功で、次を狙うバンダイグループ。
村上氏は、今度は企画段階から開発に参加、そして“変身”というキーワードを提案する。

こうして鳥型に変形する巨大ロボット「ライディーン」が誕生するが、これも我が家にあった(自分用か弟用かは忘れてしまった)から、遊んだ記憶がある。
あのライディーンはどうしたんだろうと、懐かしくなる。

こうして存在感を出した村上氏は、次々と開発を続ける。
「コンバトラーV」では、「変形合体玩具」の端緒を開く。
合体後の強度やプロポーションの問題は、「ボルテスV」で解消。
スーパーカーブームを背景に、工業的なカーデザインの概念とマンガ的スタイルを融合し、「ライジンゴー」を完成させる。

「闘将ダイモス」は、トレーラーがロボットに変身。
屈伸による変身を成し遂げた「DXワンセブン」。
母艦が巨大ロボ・レオパルドンに変形。
「ダルタニアス」は、ライオンとの融合と、ロボット玩具を続々と発表していく。

またロボット以外に、スーパー戦隊シリーズ「電子戦隊デンジマン」、「太陽戦隊サンバルカン」と戦隊モノを手掛け、やがて「宇宙刑事ギャバン」をデザインする。
正直言って、リアルタイムで遊んでいたのは、「ライディーン」までで、その後のロボットは、知っていても名前のみという程度。
「宇宙刑事ギャバン」は、名前しか知らないが、専門的には画期的なものだったらしい。

本人が書いていないせいか、評論的な内容はやむを得ないだろう。
デザインの才能というより、子供心をかなり残している人だと感じる。
たぶん、自分があれこれ空想して楽しみながら開発したのではないだろうか。
ご本人が心情を含めて書いていたらもっと面白かったのではないか。
そんな事を感じた一冊である・・・


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2014年07月24日

【約束の海】山崎豊子



第1章 潜水艦くにしお
第2章 展示訓練
第3章 衝突事件
第4章 海難審判
第5章 去るべきか

昨年亡くなった山崎豊子の最後の作品。
残念ながら、連載途中で未完で終わっている。
本作品は、既に書き上がっていた第1部。
第2部以降は、巻末に今後の構想という形でまとめられている。

山崎豊子の作品は、これまでも『大地の子』『沈まぬ太陽』『運命の人』と読んできているが、実在の
事件をモデルにしているパターンは、単なるフィクションとは異なる面白さがある。

『沈まぬ太陽』では、JALをモデルとした、表からでは窺い知れない企業の汚い部分が描かれていたし、逆に『運命の人』については、主人公に肩入れできない感覚を覚えてしまった。
本件も海上自衛隊の潜水艦と漁船の衝突事件がモデルとなっているらしい。

主人公は、海上自衛隊に勤務する花巻朔太郎。
第一志望の大学入試に失敗し、防衛大学に入学。
そのまま海上自衛隊に入り、潜水艦「くにしお」に配属されている。
一般の人に潜水艦と言ってもあまり馴染みがない。
冒頭では訓練の様子や、ソ連原潜(ちょっと時代が古い)との遭遇が描かれたりと、この第1巻は、海自潜水艦の解説的な部分となっている。

登場人物は花巻朔太郎を中心に、先輩の自衛官原田や朔太郎が密かに恋心を抱くフルート奏者の小沢頼子だったりする。
その他元海軍軍人で、秘められた過去を持つ朔太郎の父。
悪役的な存在感を持つ元同僚の丹羽や元同期の北。
朔太郎に思いを寄せるサキなどがいるが、第1部では皆紹介的な登場に留まっている。

朔太郎の乗艦する潜水艦くにしおは、年に一回の一般への公開訓練である展示訓練に向けて出航する。
そして帰投する時、観光漁船と衝突し、漁船側に死者が出てしまう。
マスコミは、一斉に自衛隊を批難し、朔太郎も海保からの取り調べに晒される。

自衛隊を目の敵にする“平和主義者”がたくさんいる我が国であるが、山崎豊子の自衛隊を見る目は中立的で、“平和主義者”たちとは一線を画している。
朔太郎の父は、どうやら真珠湾攻撃に参加し、米軍による日本兵捕虜第1号となった人物がモデルらしい。
第2部以降での事件の展開、サイドストーリーの展開に興味が注がれる。

様々な余韻を残したまま第1部が終わる。
あとは巻末の「今後の構想」で物語の続きの概要を知るのみとなっているが、誠に残念である。
もう山崎豊子の新しい小説を読む事はできないが、今後は過去の作品を追々読んでみたいと考えている。
つくづく、もうちょっと長生きしていただきたかったと思う・・・

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2014年07月19日

【コワ〜い不動産の話】宝島社編集部



第1章 コワ〜イ新築住宅の話
第2章 コワ〜イ中古住宅の話
第3章 コワ〜イ新築マンションの話
第4章 コワ〜イ中古マンションの話
第5章 コワ〜イタワーマンションの話
第6章 コワ〜イ住宅ローンの話

不動産、特に住宅となれば、それは普通の人には一生モノの買い物。
だから良いものを適正な価格で買いたいと誰もが思うもの。
だが、世の中は必ずしも善意ばかりではない。
コワ〜イ話も現実にあるのは事実であり、そうした事実を知識として持っておきたいと手に取った一冊。

第1章は新築住宅の注意点。
デザイナー住宅はしばしば特殊なデザインであるがゆえに、防水工事が十分にできず、後日雨漏り等の原因になるという話は意外な事実だ。
都心部に多い狭い敷地での3階建住宅は9割が欠陥という指摘は、驚き以外の何ものでもない。

中古住宅は、目に見えるところだけリフォームして売りに出される事が多く、見えないところに瑕疵がある事があり、住宅診断を行う業者に相談をした方が良いという指摘は覚えておきたい。
検査済証があるか、建築制限付ではないかなどは素人でもチェックできる。
あとは白アリぐらいか。

新築マンションは、内覧会で買うというのが注意点。
デベロッパーの倒産には要注意。
梅雨のあとは、手抜き突貫工事があり、3月と8月竣工物件には要注意。
地下付マンションは、ゲリラ豪雨で水が流れ込む可能性も考えないといけない。
そして無料駐車場(特に機械式)は、修繕計画がなく、あとで泣きを見る可能性がある。
最上階は、もっとも泥棒に狙われやすく、子供の転落事故も多い。

中古マンションは、やはり老朽化による建て替えが様々な事情でできなくなる事がコワイだろう。
管理費・修繕積立金の杜撰な管理、重要事項説明書に改修工事の実績と積立金は載っており、購入前に修繕積立金残高と実施した修繕計画とのバランスを確認する事が必要だと言う事は、覚えておきたい。
またマンション屋上に携帯電話の基地局がある場合、健康被害があるそうであり、これも覚えておきたい。

タワーマンション等の高層階に住む女性は、流産・早産となるケースが多いという事は、思ってもいなかった事。
理由は種々挙げられているが、やはり人間の住む環境としては不自然なゆえに、何らかの不具合があっても不思議ではないかもしれない。

住宅ローンについては、かつて問題となったゆとりローンは、最近はもう新規で提供する金融機関はないだろうから、問題はないかもしれない。
親子ローンや収入源は、わざわざ強調する事でもないだろう。

執筆時は、2009年とそんなに古くはないから、これから不動産を買おうと考えている人は、読んでおくと良いかもしれない一冊である・・・

    
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2014年07月18日

【野球にときめいて】王貞治


   
第1章 家族の物語
第2章 野球をしていれば幸せだった
第3章 背番号1の誕生
第4章 「一本足打法」まで
第5章 快感とスランプ
第6章 巨人ナインの誇り
第7章 ホームラン王への道
第8章 早すぎた現役引退
第9章 新天地ホークスへ
第10章 一本道

サブタイトルに「王貞治半生を語る」とあるように、この本は“世界のホームラン王”王貞治の半生記である。
もともと個人的に野球好きであり、野村監督の本など多数読んでいるが、やっぱりジャイアンツファンとして、王さんの本を読まずにはいられない。

名前からして中国系とは思っていたが、王さんは今でも中国籍だという事は初めて知った事である。
父親が若い頃来日し、日本人の母と結婚。
下町で中華そば店を開いたという。
有名な荒川コーチとの出会いは、中学2年の時であり、この時荒川氏のアドバイスで左打ちに転向する。
この二人の出会いも運命的だ。

高校は都立を受験するも失敗し、早実に入る。
都立に行っていたら野球はやっていなかったというから、世の中何が幸いするかわからない。
野球をやることに父は反対するが、兄と伯父が説得してくれたという。
「今から思えば」の話である。
高校時のエピソードでは、甲子園で優勝した事よりも、中国籍だったことから国体に出られなかったというエピソードの方が面白かった。

やがて高校を卒業。
巨人に入団し、背番号1をもらう。
既に1年先輩に長嶋がいて、キャンプで同室になる。
王のいびきがうるさくて、長嶋が眠れなくなって大部屋に移されたという。
さらに寝坊して長嶋に起こされる。
「長嶋さんに世話を焼かされたという人は何人もいるようですが、世話を焼かせたのは僕ぐらい」という言葉は実に微笑ましい。

そして荒川コーチと再会し、有名な特訓で一本足打法を編み出す。
このエピソードは有名だが、当時荒川コーチは30代だったという事実の方が、改めて知った意外な事実である。
1962年の7月1日から一本足打法を始め、1ヶ月で10本のホームランを打つ。
それまで3ヶ月で9本だったというから、もの凄い効果である。

一本足となったあとの活躍はある程度知っている。
やっぱり興味を惹かれるのは、“知られざるエピソード”だ。
19歳の時に高校一年生だった奥様と知り合い、6年交際して結婚する。
40歳で引退するが、今にして思えばまだまだやれたという。
巨人以外のユニフォームを着ることはないだろうと思っていたというが、それは世間もそうだったのではないだろうか。
でも実はオリックスや横浜、日本ハムなどからオファーは来ていたらしい。

「名選手必ずしも名監督ならず」の言葉を見事はねのけた王監督。
WBC監督もやり、もはや球界の歴史に残る選手・監督となった。
本当はもっとたくさんのエピソードが入るのだろうが、そんな半生がさらりと語られる。
いつか「完全版」が読みたいと思うが、実現するだろうか。
ジャイアンツファンでなくても、野球好きにはお勧めの一冊である。

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2014年07月17日

【売れ続ける理由】佐藤啓二


   

プロローグ 人口4,700人の町の小さな店に、なぜ全国600社超から視察研修依頼が殺到しているのか?
第1章 瀕死のどん底から、おはぎが1日2万個売れるようになった理由
第2章 同業他社でなく、「家庭の味がライバル」という非常識な商品ルール
第3章 「惣菜をつくる姿勢をつくれ!」さいち式レシピなしの人づくり
第4章 売上・客数がぐんぐんアップする門外不出の「アナログ閻魔帳」の秘密
第5章 チラシなしでも家庭の絆があれば、お客様がひっきりなしに押しかけてくる

著者は、仙台・秋保温泉でスーパー「主婦の店さいち」を運営する株式会社佐市の代表取締役社長。
1店舗しかないスーパーでありながら、1日平均5,000個、お彼岸中日のピークには1日2万個売れるというおはぎとお惣菜を中心に売上を上げているようである。
そして全国600社超が視察に訪れるというが、その内幕を語った一冊である。

さいちはもともと現社長が4代目となる雑貨・土産物店。
業績が悪化する中で、恩人と出会い、その支援を受けてスーパーとしてリニューアル。
しかし、競争も激しくなる中で、おはぎ作りに挑戦する。
専務である社長夫人が、お客様の声を受けて改良を重ね、やがてヒット製品へと育っていく。

普通スーパーと言えばチラシによる集客が一般的だが、1店舗しかない弱みから価格競争に勝てず、チラシを廃止。
オリジナルのおはぎと惣菜中心の経営へと舵を切る。
いずれもレシピなどなく、専務の人的対応に負うところも多く、多店舗展開はできないが、その味が強みとなって顧客の支持を得ていく。

少人数ゆえに社員のやる気を育てる人づくりをする。
視察に来たところには企業秘密も惜しげなく開示。
自ら“閻魔帳”と名づける手書きのノートに天気、気温、客数、売上などを記し経営に役立てる。
問屋や農家に対し、仕入れも値切らず「共存共栄」を目指す。

600社も視察に来ると言うが、本を読む限り大手にはとても真似できないのがノウハウのようである。
社長も専務も24時間365日働いているようだし、手作りのおはぎや惣菜は大量生産は難しそう。
田舎のスーパーでもここまで経営者が情熱を傾ければ成功するのも不可能ではないとの印象を受ける。
ノウハウを全社に水平展開するというわけにはいかないのではないだろうか。

おはぎは無添加ゆえにその日のうちに食べなければならず、したがって食べたければ現地に行くしかない。ネットで気軽に注文できるものではないのが残念である。
このスーパーはスーパーと言えども、以前読んだ鹿児島のスーパーA−Zとはまた違ったタイプのスーパーである。
しかしながら、「チラシは撒かず、仕入れは地元業者優先、お客様優先のスタンス」など共通点も多い。
地方にしかなく、東京からは行くのが難しいという点も共通して残念なところであるが、いつか行ってみたいところである。

商売をするという事がどういう事なのか、その秘訣を垣間見る事ができたように思える一冊である・・・

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2014年07月14日

【用心棒日月抄】藤沢周平



犬を飼う女
娘が消えた
梶川の姪
夜鷹斬り
夜の老中
内儀の腕
代稽古
内蔵助の宿
吉良邸の前日
最後の用心棒

藤沢周平の作品はもうかなり読んでいる。
まだ読んでいない作品もかなりあるが、もう一度読みたいと思う本も少なくない。
この「用心棒日月抄」シリーズはその筆頭であり、今回改めてシリーズ第一作を手に取った。

主人公の青江又八郎は浪人。
かつてはさる北国の藩で仕官し、城下の道場では師範代をも務める腕前であったが、藩主謀殺の計画に巻き込まれ、やむなく許嫁のお由亀の父親を斬って脱藩している。
江戸に出てきた又八郎は、食うために長屋に住み、口入屋の相模屋に仕事を世話してもらいながら糊口をしのいでいる。
相模屋の主人吉蔵の下には求人情報が集まり、吉蔵は又八郎や同じ浪人の細谷源太夫などの求職者に仕事を世話しているのである。

最初の仕事は犬の用心棒。
「生類憐みの令」の世の中、田倉屋の妾宅の飼い犬が何者かに狙われる。
万が一の時には責任が本家に及ぶ事を恐れた田倉屋が、犬のために用心棒を雇うことにしたのである。

そして次がやはり商家の娘の護衛。
犬や娘の護衛と言った仕事に、武士のプライドにちくりとくるものを感じながら、それでも時には人足仕事しかない事もあり、贅沢は言えない。
そうして次第に又八郎は江戸での暮らしに慣れていく。

そんな又八郎の日常生活を描きつつ、国元からは藩主謀殺を主導した大富家老が、口封じのために刺客を送ってくる。
一方、世の中では、松の廊下で吉良と浅野の刃傷事件が起きる。
そして又八郎の身の回りで、復讐に燃える赤穂浪士の暗躍が始る。

口入屋の吉蔵や、六人の子持ち浪人の細谷などとの交流を描きながら、物語は進んでいく。
赤穂浪士との絡みや、国元からの刺客との死闘があり、この手の武士モノとしての魅力を十二分に網羅したストーリーは読み応え十分。
結末を読むと、この物語は完結しているが、シリーズ化されたのは後から読者の支持が出てきたのだろう。

内容の面白さを鑑みればそれも十分頷ける。
久々に読み返してみたが、その面白さは全く色褪せていない。
これを機に、改めて全シリーズを読み返してみようと思わせられた。
藤沢周平の世界を語る時に、外せないシリーズであると強く思うのである・・・

 


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2014年07月11日

【君に友だちはいらない】瀧本哲史




第1章 秘密結社をつくれ
第2章 本当の「よいチーム」とはなにか
第3章 ビジョンをぶちあげろ、ストーリーを語れ
第4章 よき仲間との出会いのために
第5章 チームアプローチはあなたと世界をどう変えるか

著者は京都大学準教授であり、エンジェル投資家でもある人物。
以前、『僕は君たちに武器を配りたい』を読んでおり、そのテイストが気に入っていた事もあり、本作を知ってさっそく手に取った次第である。

現在の日本は、かつてなく「グローバル資本主義」が進展しており、それによって商品はもちろん、人間も「コモディティ化」が始っているという。
人材のコモディティ化は、ブラック企業が跋扈する原因となり、それを逃れるためには、「武器としてのチーム」を創りだすことだと言う。
「君に友だちはいらない」というタイトルではあるが、この本はチーム(仲間)を作れと主張する本である。

チーム作りの象徴として採り上げられているのは、映画「七人の侍」。
本の表紙を始めとして、映画のスチール写真がそこかしこに使われている。
世の中を変えるのは、「世代交代」という最初の主張には頷けるものがあるが、人の考え方はなかなか変わらない。
パラダイムシフトを起こすためには、若者によるチーム作りが必要だとする。
税所青年の『ドラゴン桜』プロジェクトが一例として挙げられているが、これはこれで興味深く、この本(『最高の授業を世界の果てまで届けよう』)は別途読んでみたいと思う。

良いチームの共通点は以下の5つ。
1 少人数である
2 メンバーが互いに補完的なスキルを有する
3 共通の目的とその達成に責任を持つ
4 問題解決のためのアプローチの方法を共有している
5 メンバーの相互責任がある

これ以外には多様なメンバーがいる事が必要条件とされる。
単にSNSで繋がっているだけではダメであり、人的ネットワークこそが自分を規定するため、仲間は選べと言う。
毎年東大に多数の合格者を排出する有名校には、おのずとそういう雰囲気が出来あがっているという例が挙げられる。

自ら中心となって強いチームを作るには、「でか過ぎる絵を描くこと」。
そしてチームには、「魔法使い(メンター)」、「エルフ(優等生)」、「ドワーフ(優秀な営業責任者)」、「トリックスター(既存の秩序に挑戦する)」の4つのタイプのメンバーが必要である。

これからの時代に求められるのは、「一人のカリスマ」ではなく、「群雄」。
最後は個への提言に止まらず、「アジアで最もリスクを取る国」、「世界から人々がやってくる国」になろうと、国家への提言もなされている。
それぞれの章は、具体的な事例を元に語られており、そうした事例を学びながら著者の主張が理解できる。

著者は採用面接で必ず次の質問をするという。
「今まであなたがやってきた仕事で、もっとも会社を儲けさせたものは何でしょうか?チームでの仕事の場合、あなたがそこで果たした主導的な役割は何ですか?」
自分なら何と答えるだろうと、しばし思案した。
本筋以外にも、しばし読むのをやめて考えるところも多かった。
いろいろな意味で新しい発見と気付きが得られ、一読の価値ある一冊である。


 
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2014年07月10日

【プロレスに復活はあるか】蝶野正洋



第1章 もうプロレスの熱狂は戻ってこないのか
第2章 プロレス界は今こそ真実と向き合え
第3章 プロレスラーの強さとはなにか
第4章 今のプロレスラーに欠けているものはなにか
第5章 プロレスラーの矜持
第6章 プロレスに復活はあるのか

著者は、元新日本プロレスの闘魂三銃士の一人として名を馳せたプロレスラー。
既に年齢は50歳を越え、一線を退いているが、独自ブランド『アリストトリスト』を展開したり、全日本プロレスのプロデューサーをしたりと活躍しているようである。
そんな第一人者の著書ゆえ、プロレスファンとしてはスルーできず、手に取った次第である。

戦後何度かブームとなり、闘魂三銃士の時代まではかなり勢いのあったプロレスだが、今はすっかり衰退している。
その原因として、著者は以下の3点を挙げている。
1 総合格闘技ブーム
2 「裏事情」が表に出た事
3 プロレス界の体質そのもの

個人的にはまったく同感である。
アントニオ猪木が、「キング・オブ・スポーツ」と標榜し、異種格闘技戦でそれを証明してみせたが、勃興してきた総合格闘技の前に、最強であるはずのプロレスラーたちは尽く惨敗した。
弱ければ人気を失うのは世の常である。

著者が一番の問題としている“3”は、分裂を繰り返す業界体質を指しているが、確かにそれはあるかもしれない。
しかし、結局試合が面白ければファンは満足するであろうし、それが一番の問題かというと、正直個人的には疑問に思うところである。

むしろ真の原因は、“2”であろうと思う。
「裏事情」とは何を指すのか、著者は具体的には書いていないが、はっきり言えばそれは試合における「シナリオの存在」だろう。
昔はごまかせたが、今は暴露本も次々と出版されているし(しかもレフリーや有名選手などが告白している)、ネットでも出回っている。

日本では何故“ストロング・スタイル”や“UWF”といったアメリカン・プロレスにはないものが受けたかと言えば、それは日本人らしい「真剣勝負好き」だからだろう。
アメリカン・プロレスのような“ショーマン・シップスタイル”が受けなかった事をみればすぐにわかる事である。
著者も当然そんな事はわかっているだろうが、そこはわかっていても書けないのだろう。

「プロレス界は真実と向き合え」とし、そのあり方を説いているが、異業種と交わったり、フリーコンテンツとして提供されても、リング上の戦いが“演技”であれば何の意味もない。
レスラーがいかに強いかをアピールしても、「闘い」や「怒り」をどう表現しようとも、同じである。

原因分析を誤れば、対策も効果は期待できない。
いくら組織や業界の体質を改善しても、商品が悪ければモノは売れない。
それはどんな業界でも同じである。
そうした点で、著者の主張はどこか空しく響く。
どうせならもっとリング上の事を赤裸々に書いた方が良かったのではないか、とつくづく思うところである・・・

   
    
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