2014年08月29日

【凶刃〜用心棒日月抄〜】藤沢周平



『用心棒日月抄』シリーズの第4弾。
前作で見事嗅足組の危機を救い、佐知を江戸に残し、後ろ髪を引かれる思いで主人公の青江又八郎は帰藩する。
それから16年の歳月が流れる。

かつて嗅足組の陰の頭領だった谷口権七郎は既に亡く、榊原造酒が跡を継いでいる。
そしてその榊原から、嗅足組の解散が宣告され、解散式が行われる。
藩主命によるものであるが、青江又八郎は密かに榊原に呼び出され、江戸の嗅足組についても解散する旨、伝達を命じられる。

一方、幕府の隠密も不穏な動きをし、榊原も何者かに殺害される。
今度は藩から正式な命令を受けての江戸出府となる又八郎であるが、又八郎自身何者かに襲われるなど、不穏な空気が漂う。
そして又八郎は、4度目となる江戸への旅に出る・・・

シリーズ第4弾として、そして最後の「用心棒」。
又八郎も40代半ばで、腹も出てと同年代としては共感度が高くなる。
江戸の口入屋の相模屋も年を取り、娘も結婚して子供までいる。
前作の終わりに仕官したはずの細谷源太夫は、なぜか再び浪人生活。
しかも妻を亡くし、子供たちも独立しての一人暮らしであるが、そのせいか酒に溺れ、荒んだ生活を送っている。

ハッピーエンドだった前作であるが、歳月の流れは厳しい。
前3作はいずれも相模屋を通しての用心棒家業で糊口をしのいだ又八郎も、今回はその必要がない。
そして前3作はいずれも短編スタイルだったが、今回は長編。
用心棒に雇われるのも、酒と寄る年並みで腕の衰えを隠せない細谷を助けた一度だけである。

厳密に言えば「用心棒日月抄」ではないのであるが、登場人物は同じだから仕方あるまい。
物語は、幕府隠密の動きあり、嗅足組にも別働部隊がいたりと、面白さは前3作に劣らない。
そして再会した又八郎と佐知。
二人のつつましい物語は、清涼剤として働く。

表向きの藩命は6カ月であり、時が来れば又八郎は帰藩する。
その時が近づくにつれ、佐知は寂しさを訴えるが、それは最後のページが近づく読み手の気持ちでもある。
そしていよいよ最後の剣劇となる・・・

藤沢周平の作品の中では、このシリーズはやはりベスト3に入る傑作だと思う。
今回改めて読みなおしてみたが、その思いは変わらない。
またしばらく時を置いたら、三度読みなおしてもいいかもしれない。
主人公の青江又八郎は4度江戸へ行った事だし・・・
そういう意味で、いつまでも手元に置いておきたい4冊である・・・




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2014年08月28日

【最高の授業を世界の果てまで届けよう】税所篤快



第1章 足立区の落ちこぼれ少年
第2章 バングラデシュ版「ドラゴン桜」の成功
第3章 ソーシャル・ビジネスの夢やぶれる
第4章 「五大陸ドラゴン桜」プロジェクト中東へ
第5章 ルワンダの理科教師
第6章 封鎖都市ガザと2人の女傑
第7章 「最高の授業」を世界の果てまで届けよう

著者は早稲田大学の7年生(執筆時)。
貧困地域での教育活動を行うe−EducationというNPOの代表もしている。
そんな著者が、e−Educationを行うに至った経緯とその活動を語った一冊である。

足立区で生まれ育った著者は、都立両国高校に通う事になる。
しかし、入学早々理数系の授業についていけなくなり、落ちこぼれとなる。
高校2年の時、米倉誠一郎のイベントに参加し、米倉と運命的な出会いを果たす。
落ちこぼれとは言っても、現代文の先生の勧めを素直に受け入れてイベントに参加するくらいだから、根っこまで腐っていたのではなかったのだろう。

そして予備校の東進ハイスクールに通う。
学校の三者面談で、「2浪しても受かる大学はない」と担任に告げられた事に発奮したのであるが、ここでDVD授業に出会った事が、後の運命を決める。
当時偏差値は“28”だったというから、「相当なレベル」であるが、猛勉強の末、早稲田大学に合格する。
先生たちも相当驚いた事だろうが、元々そういう力は持っていたのだろう。

しかし大逆転の現役合格も、その後の授業に失望し、大学に興味を失っていく。
そう言えば自分も大学に入学後、せっかくのやる気を「教養課程」という高校の延長のようなつまらない授業に削がれてしまった経験がある。
このあたりはよく理解できるし、日本の大学の問題点だと思う。
そういう流れで著者の興味は他へと向けられ、グラミン銀行へと行きつく。
そしてバングラデシュで貧困に根差す教育格差がある事を知る。

東進ハイスクールのDVD授業が格差解消に有効であると気付いた著者は、現地で知り合った学生マヒンと共に「バングラデシュ版ドラゴン桜」と名付けたDVD授業をマヒンの出身村で始める。
現地の予備校の有名講師の講義をDVDに納め、経済的な事情で予備校に通う事ができない学生に渡して勉強してもらうという実にシンプルなものである。
しかし、それは翌年名門ダッカ大学に合格者を出すという形で見事に成功する。

そんな「ドラゴン桜プロジェクト」の紆余曲折が描かれていくが、目につくのは著者の行動力。
感じるものがあると、秋田や九州、さらにバングラデシュまで行ってしまう。
それも何が得られるかなんて計算などしていない。
若者らしい無鉄砲さでもあるが、普通の人にはない「行動力」が「普通ではない」結果を生む。

失敗も当然あって、せっかく得られたワタミからの支援を失ったりもするし、この先どうなるかも当然わからない。
ただ、この本全体から溢れるエネルギーは、「普通の大人」の目には眩しいものがある。
あれこれもっともな理由をつけてやらないでいる大人には、チクリとくるものがあるのである。

この先失敗したとしても、今よりもずっと遠くまで行っている事は間違いないだろう。
この本から感じる若者の純粋なエネルギーを、自分もどこかに取り入れておきたいと思う。
今後このプロジェクトの行く末を気にしていたいと思うし、自分自身もそれを見て良い刺激にしたいと思う。
そんな刺激を受けた一冊である・・・

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2014年08月27日

【社長はなぜあなたを幹部にしないのか?】小山 昇



第1章 社長の決定に不満があるなら会社を辞めよ
第2章 変化を厭う管理職は必ず淘汰される
第3章 強制的に教育しなければ部下は永遠に変化しない
第4章 自発的に仕事をする部下など存在しないと思え

本業とは別に「清掃」活動による業績改善で有名であり、著書も何冊か読んでいる事から、興味を持って手に取った一冊。
ちょっとドキリとさせられるタイトルである。

本書は管理職向けに書かれている。
仕事に精進し、役員(幹部)への最後の壁を突破する為に必要な事は何か。
それを語った一冊。

「イエスマン」と言えば、否定的に捉えられるのが一般的であろうが、ここでは「イエスマンが会社を強くする」としている。
「社長の決定を実行するスピードで管理職の価値は決まる」のだと言う。
「でも社長が間違っていたらどうするのか」と普通は思うものだが、「いかなる決定でもそれに従って即座に実行する」とハッキリしている。
「仮に誤りがあっても即座に実行していれば失敗するのも早い。そうすれば社長自身も早い段階で自分の判断ミスに気付く。」と言い切る。

とにかく社長に共感し、その為には社長の本音を聞き漏らさない。
社長は何よりもスピードを求めており、社長の決定を一日でも早く実行する。
その他の心構えとしては、
・お客様への感度を磨く
・最後に指示された事を最初に実行する
・聞き役に回ると貴重な情報を吸い上げられる
・悪い事は何よりも早く報告する
などが挙げられている。

仕事のやり方として目に留まったのは、
・「お客様第一」なら会議は朝早くやれ
・部下にもできる仕事をやってはいけない
・「人」を管理するから反発を招く
・仕事を管理する鉄則は「見える化」
など、創業社長ではなく叩き上げの社長だからだろうか、その主張は実践的である。

部下の教育についてもかなり細かい。
「夜の街で部下の感性を鍛える」などは、普段自分が夜の街で感性を磨いておかないといけないだろうが、このあたりは懐を気にしていては難しそうである。
「部下と毎月一回面談をする」というのなら、かなりハードルは低いが、部下の教育について書かれている第3章は、管理職向けというより、経営者としての経験談と言えるかもしれない。

「管理職の『愚痴』はとてつもない破壊力を持つ」
「分かりやすい目標を掲げると部下は燃える」
「部下の行動をメモし、具体的に褒める」
「時間に仕事を割り振ると部下が育つ」
このあたりの教育方法も具体的で参考になる。

「イエスマンこそ会社を救う」というサブタイトル。
一見、逆説的ながら経験に裏打ちされた管理職への提言であり、素直に聞く耳を持ちたいと思わされる。
あれこれ考えずに素直に読むといいかもしれない。
今後に活かしたいと思う一冊である・・・

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2014年08月23日

【刺客 用心棒日月抄】藤沢周平



陰の頭領
再会
番場町別宅
襲撃
梅雨の音
隠れ蓑
薄暮の決闘
黒幕の死

藤沢周平の『用心棒日月抄』シリーズ第3弾である。
前2冊とも脱藩した主人公が、無事帰藩してハッピーエンドとなっており、おそらくそれで完結するはずが、好評に押されてシリーズ化されていったのではないかと思っていたが、解説を読むとどうもそんな感じのシリーズ第3弾である。

前回、無事間宮中老から託された任務を果たし、帰藩した青江又八郎。
今は妻の由亀と母と静かに暮らしている。
又八郎の働きにより、寿庵保方による陰謀も一件落着かと思われた。
仕官の口をあっせんした細谷源太夫は、結局又八郎の仲介を断ってくる。
そんなある夜、又八郎は斬り合いの現場に出くわす。
しかし、役人を呼ぶ間に斬られて死んだはずの男の死体が消えてしまう・・・

間もなく、又八郎は元筆頭家老の谷口権七郎から呼び出しを受ける。
そこで又八郎は、谷口こそ嗅足組頭領であり、かつ佐知の父だと知る。
谷口が言うには、寿庵保方は藩主の座をいまだ狙っており、その邪魔になる嗅足組をなきものにしようとしているとの事。
そして既に江戸の嗅足組抹殺のため、刺客を送ったらしいと教えられる。

谷口は、事情を知る又八郎に対し、密かに江戸へ行き嗅足組に警告するとともに、5人の刺客から嗅足組を守るように命じる。
刺客の筆頭は、貫心流の名手筒井杏平。
『用心棒日月抄〜孤剣』で佐知をはじめとする嗅足組に助けられた恩義もあり、又八郎は谷口の命を受ける。

命令とはいえ、密命につき表向きは脱藩。
こうして三度脱藩という形で又八郎は江戸へ向かう。
重要な藩命を受けているとはいえ、秘匿性から藩の江戸屋敷には行けない。
資金は谷口より得ていたが、泥棒に入られる失態により生活の糧は自ら稼がなくてはならなくなる。
そこでまた、又八郎は口入屋の吉蔵の元へと行く。

佐知の協力により刺客を捜索する一方、用心棒仲間の細谷と相模屋吉蔵に紹介された仕事をこなす日々が繰り返される。
一人、また一人と刺客が現れる。
又八郎の剣の腕は健在。
国元には由亀という妻がおり、娘も生まれた身ではあるものの、佐知との親密な関係も続く。

剣劇とラブストーリーとがうまく絡み合い、シリーズ第3弾も実に面白い。
藤沢周平のベスト3を挙げよと言われれば、『蝉しぐれ』『暗殺の年輪』とこのシリーズを挙げたいと思う。

今回もハッピーエンドとなるが、シリーズは第4弾へと続く。
一度読んだとはいえ、ワクワクしながら何度でも読もうと思うところである・・・



    
    
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2014年08月22日

【全日本プロレス超人伝説】門馬忠雄



第1章 ジャイアント馬場
第2章 ジャンボ鶴田
第3章 ザ・デストロイヤー
第4章 アブドーラ・ザ・ブッチャー
第5章 ミル・マスカラス
第6章 大仁田厚
第7章 ザ・ファンクス
第8章 スタン・ハンセン&ブルーザー・ブロディ
第9章 ザ・グレート・カブキ
第10章 三沢光晴
第11章 小橋建太
第12章 天龍源一郎
第13章 ジョー樋口

著者は、元東京スポーツのプロレス担当記者であり、その後プロレス評論家として、知る人ぞ知る人物。
最近は離れてしまっているが、元々プロレス好きであり、1980年代から2000年頃までは夢中になってプロレスを観ていた自分が、気がついたら手に取っていた一冊。

最近のレスラーはあまりよく知らないが、各章で採り上げられているレスラー&レフリーはみな良く知っている。
今だからこそ、著者も語れる知られざるエピソードの類を期待してみたのであるが、結果的には取り立てて目新しい事もなく、そんなに期待したほどでもなかったというところが正直なところであった。

それも無理からぬところがある。
と言うのも、最初のジャイアント馬場こそ30ページほど割かれているが、あとは一人10ページ程度の記述である。
採りあげられるのは、みんな日本で長く活躍したレスラーであり、まともに書いたらもっと分厚くなるだろう。
勢い、「ダイジェスト版」といった感じであり、深く突っ込んだものはない。

ジャンボ鶴田の章では、「新日本プロレスへの誘いを拒否」とあった。
こんなエピソードなら、詳しく知りたいと食指が動いたが、「新間寿営業本部長から、強引に新日本入りの勧誘があった。〜が、ブレることなく拒否」と2行で終わってしまった。
詳しい経緯を知らなかっただけかもしれないが、この程度のダイジェスト版ではファンを喜ばすのは無理かもしれない。

著者もやはり名の売れた記者/評論家であるから、レスラーとの個人的な付き合いも多かったようである。
ジャイアント馬場とは、死の2ヶ月ほど前に雑談していたというし、「あさってハワイに行くよ」と言葉をもらったのが最後と言うし、そうしたエピソードは確かに面白い。
だから書こうと思えば、各レスラーについてもっとあったと思うのである。
それが紙数の関係なのか、意欲の問題なのか、薄い内容となってしまっているのは残念である。

今のファンには、昔のレスラーの話をしてもこの程度だと興味を持ってくれないだろうし、昔のファンにはこの程度では物足りない。
どうにも中途半端感が拭えない一冊である・・・

   
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2014年08月21日

【100%得をするふるさと納税生活】金森重樹




Chapter 1 僕がふるさと納税をするようになったきっかけ
Chapter 2 ふるさと納税の手続きの流れ
Chapter 3 収入別のふるさと納税プラン
Chapter 4 ふるさと納税おすすめガイド

最近あちこちで、「ふるさと納税」なる言葉を聞く。
随分とお得だと言う。
ならば一体どんなものか。
面倒臭いと思って放置するのはよくないと、勉強のために買った一冊。

「納税」という言葉を使っているが、正確に言えば「寄付」である。
各地方自治体に対し寄付をすると、それに応じて特典(各地の特産品など)が送られてくる。
それだけだと、産地直送の買い物と何ら変わりがない。
ここで、その寄付について、税務上の還元が得られるというところがポイントとなる。

寄付をしたあと、寄付の証明書を添付して確定申告すると、一定金額の税金が控除される。
さらにそれに基づき翌年の住民税が控除され、加えて特別控除が適用されるため、結果として寄付した金額のうち、2,000円を除いた金額が戻ってくる。
すなわち、2,000円で寄付に応じた特典がもらえるという制度なのである。
著者は何と300万円もの納税額があり、これをすべてふるさと納税に当てているらしい。
つまり、2,000円で「300万円分の特典」をもらっているそうで、これは確かにお得だと言える。

この本では、ちょっとわかりにくい「寄付金控除」という制度の仕組みの説明と手続き方法、それに特典の内容が詳しく書かれている。
ここに書かれている事はごく基本中の基本。
あとは自分の所得税と住民税の金額を確認し、いくら寄付するかを決め、金額と特典とを見比べて選ぶという部分が残るわけである。

そこは最低限自分でやらないといけないが、それくらいの手間暇を惜しんでいては、何も得られない事は確かである。
基本的な事は学べたので、あとは実践。
薄い本ですぐ読めてしまうし、内容も理解しやすい。
取りあえずやってみようと思う人には有益な一冊である・・・


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2014年08月20日

【ちきりん未来の働き方を考えよう】ちきりん



序章 “働き方”本ブームが示すモノ
第1章 現状維持の先にある未来
第2章 世界を変える3つの革命的変化
第3章 新しい働き方を模索する若者たち
第4章 「ふたつの人生を生きる」
第5章 求められる発想の転換
第6章 オリジナル人生を設計するために

著者は人気ブロガーのちきりん。
ブログを時折読んでおり、また過去に読んだ『自分のアタマで考えよう』も良かったこともあって、手に取った一冊。
ちょうど自分の職業人生を見直そうと考えていたタイミングでもあって、個人的にはタイムリーであった。

「働き方」本のトレンドを見ると、それは確実にその時代を反映している。
2012年には、「ワークシフト」がブームとなり、今やすべての人が世界の潮流の中で働く事を人生の中でどう位置付ければ良いのか、考えるべきタイミングを迎えているという。

かつては60歳だった定年も、今や65歳になりつつあり、「70歳まで働く」事が視野に入りつつある。
少子化を受けて家族の形が変わり、家庭と仕事との両立は、これから男女共通の課題となる。

その中で世界を変える3つの革命的変化が起こっているという。
@IT革命による大組織から個人への変化
Aグローバリゼーションによる先進国から新興国への変化
B人生の長期化によるストックからフローへの変化

新興国に生まれても、今や教育はネットを利用すれば無料で受けられるし、国内から海外へ雇用がシフトし、これからは今までとは異なる形(海外基準の安い賃金で)働く人も出てくるだろうとの事。
特に「一生ひとつの仕事は非現実的」という一言は、まさに「我が意を得たり」の感がある。

「みんな80歳くらいまで働かないといけなくなる」という現実は厳しいが、20代以降の労働人生を「前半」と「後半」に分け、50代以降の後半は身軽になって新しい働き方に移るという考え方は、なかなか良いと思う。
生活もストック型からフロー型に変わるという考え方も参考になる。
「高齢者のシェアハウス」という考え方は、良い悪いは別として、高齢化社会の解決方法の一つである。

これからは「手に職」(=資格)の時代ではなく、「市場のニーズ」の有無だと言う。
難関資格を取る教育よりも、「社会で求められる価値を提供する力をつけるための教育」が重要だとするが、それも納得。
自分たちの子供達にも是非意識させたいと思う。

この本を読んで一番の収穫は、先にも触れた「職業人生は二回選ぶものと考える」という考え方。
「人は初めてパリに行くとなると、ルーブル美術館等の一般的なルートを選ぶが、二回目となれば好きなルートを勝手に選ぶ」という喩は実にわかりやすい。
第二の就活は、自分のやりたいことや適性、生活、必要なお金等よくわかっており、最初の就活よりも有利だと言うが、確かにそうだろう。

最後には、「市場で稼ぐ」という概念を基に、オリジナル人生の設計が説かれる。
自分だけでなく、自分の子供達をどう導くかの問題もある。
「良い大学を出て、良い会社で定年まで働け」というアドバイスは、少なくとも子供達には危険かもしれない。

ちょうど第二の就活を考えていたこともあり、まさに「未来の働き方を考える」のに実にタイムリーであった。
そういう人ではなくても、「自ら考える」人生を送るためには、必読の一冊であると思う・・・
   
   
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2014年08月16日

【黒書院の六兵衛】浅田次郎



個人的に好きな作家である浅田次郎。
新しい本が出れば読む事にしている。
今回は時代劇。
浅田次郎の時代劇と言えば、『壬生義士伝』『一刀斎無録』の例があるから、いやが上にも期待が高まるというものである。

舞台は幕末。
勝海舟と西郷隆盛の有名な会談を経て、江戸城の無血開城が決まる。
主人公の加倉井隼人は、尾張徳川家の江戸定府の御徒組頭。
仕えるは尾張の徳川家であるが、江戸生まれの江戸育ちである。
そんな隼人が、尾張屋敷に呼び出されるところから物語は始まる。

待っていたのは、官軍の軍監と称する土佐の侍。
江戸城明け渡しに際し、物見の先手を努めよと西洋軍服を渡される。
トップが無血開城を決めたと言っても、家中にはどんな感情が渦巻いているかわからず、危険を承知で隼人は配下の徒士を引き連れて江戸城へと向かう。

既に15代将軍慶喜は江戸城を出て大慈院に謹慎しており、官軍に反発する者は上野に集結している状況。
隼人達の心配は杞憂に終わり、無事城内に入る。
勝安房守(勝海舟)と会い、安心したのも束の間、一人の侍が西の丸御殿に座りこんでいると聞かされる。

侍の名は、的矢六兵衛。
幕府の陸軍にあたる「書院番」の番士で、格式高い旗本であった。
六兵衛は座りこんだまま何もしないが、開城し勅使を迎えるにあたっては退去させなければならず、しかも勝と西郷の取り決めにより流血、力づくは避けるべしと条件がつく。
ここから隼人の「六兵衛下城」に向けた奮闘が始まる。

やがて的矢六兵衛の正体がわかってくる。
と言っても、謎の人物であるという事がわかってくるのである。
由緒正しき御書院番の家柄なれど、前年の正月に突然「元の」的矢六兵衛と一家で入れ替わったという。
老父母と家中の者はそのままに、本人と妻子が入れ替わったらしい。
悪名高い高利貸が出入りしていた事から、旗本の株を金で買ったと推測される。

当の本人は、黙り込んで いる為、隼人らが関係者に話を聞く形で物語は進んでいく。
一方、六兵衛も何の考えがあってか、城内の居場所を次々と変え、次第に高位の部屋へと座り込む場所を移っていく。

気になるのは、六兵衛の出自と座り込む目的。
そして物語の展開であるが、そこは浅田次郎にうまくやられてしまう。
ただ座っているだけなのであるが、「力づくはいかん」という制約条件がついたため、いろいろな人が六兵衛の説得を試みる。
右往左往する様はどこかユーモラスだ。

読み終わって、いかがかと問われると、他の浅田作品と比べると、少々物足りなさが漂う。
期待度が高い分、「普通」だと物足りなくなるものである。
もう少し、六兵衛のベールを持ち上げてくれたら、あるいは満足感も得られたかもしれない。
これはこれで、次回作に期待したいと思うところである・・・

    
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2014年08月13日

【オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史3】オリバー・ストーン&ピーター・カズニック



第10章 デタントの崩壊−真昼の暗黒
第11章 レーガン時代−民主主義の暗殺
第12章 冷戦の終結−機会の逸失
第13章 ブッシュ=チェイニー体制の瓦解−「イラクでは地獄の門が開いている」
第14章 オバマ−傷ついた帝国の運営

アメリカ版『逆説の日本史』とも言えそうなこのシリーズも、最後の第3巻。
ベトナム戦争が終結し、時代はカーター大統領とブレジネフ書記長の時代となる。
しかし、アメリカもソ連もイラン・イラク・アフガニスタンを巡る政策を誤り、後々につながる問題を残していく。
イラン・イラク戦争も早期停戦のチャンスがあったが、アメリカはそれを自ら潰してしまう。

レーガン大統領に対しは、「想像を絶する知的レベルの低さ」と評価は手厳しい。
実際、「ラテンアメリカがあんなにたくさんの国に分かれていたなんて驚いた」と発言したらしい。
CIAの正常な諜報機能が失われ、アメリカの軍事行動は無軌道化する。
支援したグアテマラ政権は、国内で大虐殺を行い、ニカラグアではコントラへ非合法な支援を行い、挙句に国際法に違反してグレナダに侵攻する。

中東では、イラクのサダム・フセイン政権にクラスター爆弾や炭素菌を提供。
さらにイラン・コントラスキャンダルが明るみに出る。
パキスタンを援助し、そのパキスタンに逃れるアラブ人が、後のテロリストとなっていく。
イラク政権への誤ったメッセージから、サダム・フセインはクウェートへの侵攻を決意する。

ゴルバチョフ書記長の登場により、ソ連は軍縮に動く。
しかし、「スターウォーズ計画」に固執するレーガンは、歩み寄りを躊躇う。
レイキャビク階段で、ゴルバチョフは大胆な軍縮提案をするが、困惑したレーガンは応じず、歴史的な軍縮の機会を潰してしまう。
ゴルバチョフの行動により、東側諸国は次々と改革へ向かうが、それをすべて「西側の勝利」としてしまう。

クリントン政権は8年もあるが、記述は少ない。
それだけ良かったという事かもしれない。
そして悪名高きブッシュの時代が来る。
9.11テロを受け、アフガニスタンへ侵攻する。
アグレイブ刑務所では、テロ容疑者に拷問が行われる。
9.11とイラクとの関わりをでっち上げ、独仏をはじめとする反対を押し切ってイラクに侵攻する。

国内政策では、富裕層を優遇する。
ウォーレン・バフェットが、「自分の秘書は30%の税金を払っているのに、自分は17%しか払っていない」と言うような状況が出現する。
期待されて登場したオバマ大統領も、結局は帝国主義的侵略と決別できず、無人機による攻撃は激化していく。

シリーズを通して描かれるのは、アメリカにとって「都合の悪い歴史的見方」。
素人には何が真実かなどわかりようがない。
しかし、ニュース等で断片的に理解していた事と符合する事もあり、どれも正しいように思えてしまう。
特に「イラク戦争は石油のための戦争であった」事はあちこちで語られており、その前提に立てば、この本の説明ですんなりと理解ができる事も事実である。

何事も表面的に見ていてはならないという事であり、特にこのシリーズで描かれるアメリカ的行動原理を知る事は、「今後アメリカとどう付き合うか」を考える良いヒントになると思われる。
全3巻、それぞれ厚い本であるが、確実に自分の視野が広がる必見のシリーズである・・・



    
 
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2014年08月02日

【用心棒日月抄−孤剣】藤沢周平



剣鬼
恫し文
誘拐
狂盗
奇妙な罠
凩の用心棒
債鬼
春のわかれ

藤沢周平による時代劇。
中でもシリーズモノとなっている『用心棒日月抄』シリーズ第2弾である。
前作で無事、藩に復帰した青江又八郎。
許嫁の由亀と再会し、自宅で母と共に3人で暮らしている。

平穏な日々だが、長く続かない。
権力を手にした間宮中老から呼び出された青江又八郎は、藩内にまだ旧大富派の勢力が残っている事、そしてその筆頭は前藩主の異母兄である寿庵保方であるらしいと聞かされる。
その証拠となる連判状を大富家老の一族である大富静馬が持っているらしい。

証拠を持って藩外に逃れた大富静馬を公儀隠密が追っているらしいことも判明し、事は藩内の対立に留まらず、お家取り潰しのリスクも出てきている。
かくなる上は、大富静馬を追い連判状を取り戻すべしと間宮中老は、青江又八郎に命じる。

せっかく取り戻した穏やかな生活。
しかし、藩の一大事とあれば断る事もできず、又八郎は再び江戸へと向かう事になる。
前回はやむなき脱藩だったのに対し、今回は藩命。
手厚いサポートを期待したいところだが、藩内対立と財政難から又八郎は金銭面でのサポートを受けられず、自ら糊口をしのぎながら大富静馬を追うことになる。

かくして再びの用心棒家業。
口入屋の吉蔵や浪人仲間の細谷源太夫も再登場。
さらに今回は米坂八内という浪人もメンバーに加わる。
そして前回、又八郎が助けた佐知が、実は藩内で嗅足組と呼ばれる忍者のメンバーであり、その関係で又八郎を助けることになる。

江戸での用心棒家業をこなしながら、佐知のもたらす情報を元に、大富静馬を追う又八郎。
用心棒としてのエピソードを交えながら物語は進む。
やはり何度も読んで楽しめるところがある。
故郷に由亀を残してきているとはいえ、佐知の存在も大いに気になる又八郎。

武士モノらしい剣劇の面白さと、佐知を登場させロマンスの香りも漂わせ、最後まで一気に読ませてくれる。
藤沢周平の作品の中ではトップ5に入れたいシリーズである。
残りの2巻も早々に読みなおしたいと思うところである・・・



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