2014年10月31日

【経営参謀 戦略プロフェッショナルの教科書】稲田将人



第1章 商売繁盛のサイクル
第2章 市場が求めるものをプロファイリングせよ
第3章 市場を攻めるということ
第4章 戦略完成
第5章 表面化する思惑
第6章 新業態成功、そして改革の行方
第7章 経営者としての最終判断
第8章 現実を受け入れ、未来に目を向ける

著者は、元マッキンゼーの経営コンサルタント。
以前『戦略参謀』という本を読んでおり、“参謀”という言葉に反応してまたまた手に取ったのがこの本。
サブタイトルに『戦略プロフェッショナルの教科書』とあるが、物語形式でそれを語る形になっている。

主人公の高山が面接を受けるシーンから物語は始まる。
レディースアパレルを展開するグローバルモードの面接である。
高山は以前、紳士服のしきがわに勤めていたと語られる。
それによってこの本は、『戦略参謀』の続編だとわかる。
主人公の高山は、『戦略参謀』で活躍した若手社員である。

見事採用となった高山は、グローバルモードが展開するブランド「ハニーディップ」の立て直しに携わる事になる。
期限は半年。
子供向けファッションブランドである「ハニーディップ」は低迷に喘いでいた。
高山は、『戦略参謀』でもアドバイスを求めた安倍野に今回も助けを請う。

最初にRVAPSサイクルなるものが説明される。
R:Recognition(認知)
V:Visit(来店)
A:Approach(接近-あれはなんだろう、面白そうだ)
P:Purchase(購入)
S:Satisfaction(満足)
難しい事ではないが、こういう形で整理するのもわかりやすい。
そして高山は、“風船大作戦”で千葉ショッピングセンター店の売上を回復させる。

しかし、それはほんの前哨戦であり、局地戦。
ブランドそのものの改革と新業態の展開へと物語は移るが、ここでも『戦略参謀』同様、PDCAの重要性が繰り返し説かれる。
それを否定するつもりはないが、そればかり強調されるのもどうかと個人的には思う。

ただし、“現状認識”の重要性は改めて同感する。
「そもそもなぜ低迷しているのかわかっていないのに、思いつきで手を打つだけなら時間と経費がかかるばかり。思いついたことを片っ端から実施するなんて、目隠ししてバットを振り回しているようなもの」という喩えはわかりやすい。
そういうケースは多いのではないだろうか。

物語形式だと、物語の展開に目が行きがちだが、時折ハタと気付く事がでてくる。
「会社が成長すると、事業規模が大きくなって分業が進み、最後に社長業をいかに分業するかが重要な課題になる」
「差別化の軸というのは、『より安く』『より便利に』『より楽しく、より良いものに』の3つしかない」
などは目に留まった部分である。
特に、レッドオーシャンでの熾烈な戦いに徒労したくなければ、『より楽しく、より良いものに』を追求していくしかない。
こうした事を改めて言葉で認識するのは自分にとって良い事であった。

高山の活躍でグローバルモードも業績改善となれば、ストレート過ぎて面白くない。
そこは夏希常務という反対勢力を登場させて、物語を盛り上げている。
会社の業績改善にストップをかけるような行動をするのはいかがなものかと思うが、現実的には妬みや嫉みなども加わってそんな事もあり得るのではないかと思える。
最後はハッピーエンドで予定調和的なところはやむを得ないが、物語としてもそれなりに楽しめる。

経営参謀を目指す気持ちがあるなら、楽しみながら参考にできる一冊である・・・
    
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2014年10月28日

【武田信玄 林の巻】新田次郎



新田次郎による『武田信玄』シリーズの第2巻。
「風林火山」に合わせ、「林の巻」である。

『風の巻』に続くこの巻、信玄はまだ“晴信”である。
そして晴信と正妻三条氏との間にできた嫡男太郎と今川義元の娘との祝言で、この巻は始まる。
この時代、今川義元はまだ一大勢力を保っている。
そして武田は、今川家そして関東の北条氏と姻戚関係を通じた同盟を結ぶ。
北からは長尾景虎(上杉謙信)の脅威が迫る。

晴信はしばしば影法師を利用する。
以前、黒澤明監督の『影武者』を観たが、あの映画は武田信玄の影武者を描いたモノであった。
そんな事がふと脳裏をよぎる。

長尾景虎との有名な川中島の戦いは、前哨戦に入る。
また、諏訪で養生していた湖衣姫が病でこの世を去る。
この湖衣姫というのは、実は著者の命名なのだと言う。
昔は女の名前など記録に残さなかったから、本名がわからず苦肉の策だという。
ただウィキペディアなどでは既にこの“湖衣姫”で説明されており、既成事実化しているから、ちょっと驚くべき事実である。

やがて晴信は僧侶の心を掴むべく剃髪する。
ただし、還俗はせず出家だけした形であるが、それをもってようやく法名として「信玄」を名乗る。
こうした細かい経緯など知らなかったため、このあたりは非常に興味深く読む。

そして今川義元が上洛すべく、2万の大軍を率いて駿府を出発する。
この時代、上洛するのが天下統一への道。
武田は西に今川義元がいて上洛できない。
信玄は山本勘助にある密命を与えて織田家へと送る・・・

桶狭間のあと、物語は川中島の大会戦へと進む。
長尾景虎は上杉謙信と改名。
信玄は海津城を築いて川中島制圧の意図を示す。
双方とも地元の百姓の協力を得て、“地の利”を得ようとする。
キーワードは“霧”。
武田側は山本勘助、上杉側は風間勘兵衛が諜報を担う。
武田は17,000、対する上杉は13,000の兵力がついに激突する・・・

迫力ある合戦が続く終盤は読むのをやめられない。
信玄の後継者は湖衣姫の子勝頼であるが、ここでは嫡男太郎義信がその地位にある。
この後、どのようにしてその地位が入れ替わるのかわからないが、この合戦でその兆しが現れる。

やっぱりこの川中島が全体を通じてのクライマックスになるのだろうか。
かなりページも割かれており、読み応えは十二分にある。
挿入されている地図も想像力を補ってくれる。
読み終えて多少の脱力感を覚えつつ、気持ちは第3巻へ。
やめられない止まらないシリーズである・・・

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2014年10月23日

【餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?不正会計編】林總



CHAPTER 1 ようこそ「虎の穴コンサルティング」へ
CHAPTER 2 一流ワインコンサルタントになりたければワインのテイスティングを学べ
CHAPTER 3 美人社員はなぜ働き者なのか?
CHAPTER 4 行列ができるスイーツ店は、本当に儲かっているのか?
CHAPTER 5 「数字のマジシャン」のトリックを暴け
CHAPTER 6 シャブリとシャルドネは別物か?
CHAPTER 7 在庫管理にコンピュータはいらない?
CHAPTER 8 新生バイオ社の化けの皮をはがせ!

著者は、以前『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『50円のコスト削減と100円の値上げはどちらが儲かるか』を読んだ事がある公認会計士の方。
本業の傍らで、こうした執筆活動をするというのも凄いものだと思ってしまう。
本作は、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』と同じタイトルだが、『不正会計編』とついている。
金融業界に身を置いていた人間としては、自然と興味が湧いてくる。

中味は、と言えば例によって物語形式で進む。
主人公は、ニューヨークコンサルティング社に入社した菅平ヒカリ。
『50円のコスト削減と100円の値上げはどちらが儲かるか』では大学3年生であったが、晴れて就職したようである。
エリートコンサルタントを夢見ていたヒカリだが、入社早々タイガーコンサルティング社に出向を命じられる。

同社は同じように出向になったコンサルタントが、次々に辞めている事から「虎の穴」との異名を取っている。
どうやらタイガーコンサルティングは、ニューヨークコンサルティングが受け切れない“危ない仕事”を受けているらしいことがわかってくる。
「辞めるべきか」と思うヒカリだが、恩師である安曇のアドバイスもあり、頑張る事にする。

安曇は、毎回ワインを奢る事を条件にヒカリに協力することにする。
そしてワインのテイスティングにたとえ、コンサルティングの3つのステップを教える。
1 目的と成果物の明確化
2 (ステップ1)外観・・・決算書分析(財務分析)
3 (ステップ2)香り・・・担当者への質問
4 (ステップ3)味わい・・・現地調査による事実の収集
5 結論

最初の仕事は、高級不動産の仲介と分譲を営む財前不動産。
ここ数年売上は右肩上がりだが、どういうわけか赤字で、しかもそれが年々増えているという。
その原因を見つけて対応するというのが、ヒカリに与えられたミッション。
ヒカリは安曇にアドバイスを受けながら、現場に密着し美人社員の不正を暴く。

一つのケースのあとには著者の解説がつく。
「多過ぎる費用はそこに作為があるかもしれない」という具合である。
ヒカリの物語を楽しみつつ、そこから得られる学びをまとめるというパターンは、門外漢には取っつきやすさがあるかもしれない。
内容も初歩的であり、むしろ素人向けと言える。

こうしてヒカリは、「営業利益50%、ROE50%」の“優良企業”、「数字のマジシャン」の異名を取る辣腕経理部長のいる半導体製造メーカー、連結決算会社、在庫管理に問題を抱えた会社などの現場をこなしていく。
そうした各現場を通じ、読み手にも学びが得られるようになっている。

今回は、「不正会計」に焦点を当てたものであるが、1つの着眼点としては面白かったと思う。
特に製造委託会社に原料を置いて販売して加工品を仕入れるケースなどは、決算書だけ見ていても問題点はわからない。
良い悪いではなく、実態をきちんと把握しなければ解決できない例である。
金融に詳しい人はそれなりに、詳しくない人はヒカリの物語として楽しめるかもしれない。

この方の著作は手軽に楽しめて学べるところがあり、これからも注目していきたいと思う・・・

   
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2014年10月16日

【魂の経営】古森繁隆



第1章 本業消失−富士フィルムに何が起こったのか
第2章 第二の創業−富士フィルムの挑戦と改革の全貌
第3章 有事に際して経営者がやるべきこと−「読む」「構想する」「伝える」「実行する」
第4章 すべては戦いであり負けてはならない−世の中のルールと勝ち残るための力
第5章 会社を思う気持ちが強い人は伸びる−仕事で成果を出し成長を続けるための働き方
第6章 グローバル時代における日本の進路−国と企業の強みと可能性について

著者は富士フィルムホールディングスの代表取締役会長兼CEO。
富士フィルムと言えば、その名の通りフィルムメーカー。
しかし世の中ではデジカメが主流となり、写真フイルムの時代は過ぎ去ってしまい、かつて世界に君臨した王者コダックも事実上破綻した。
この未曽有の危機を富士フィルムは乗り切るが、その舵取りをした著者が内幕を語った一冊である。

危機はある日突然やってきたものではなく、80年代初頭から既に予想されていたらしい。
その危機=デジタル化に対し、富士フィルムは3つの戦略で備えたという。
@ デジタル技術の自社開発(デジカメの製造)
A 感光材料の延命(画質水準の向上)
B 新規事業の開発(インクジェット、光ディスク、医薬品)

著者が社長に就任したのが2000年。
そしてこの年、世界の写真フイルム需要はピークに達し、そこから急落する。
2003年にCEOに就任すると、いよいよ「第二の創業」とも呼ぶべき改革に着手する。
世界中での工場の再編と現像所の集約、リストラ、それと平行して液晶パネルの生産に欠かせない「偏光板保護フィルム」事業への投資。

新事業としては、「勝てる事業」ではなく、「勝ち続けられる事業」を選ぶとし、ヘルスケアや化粧品、医薬品などへ本格参入する。
いずれもそれまでの技術が応用できたらしい。
新事業参入には、潤沢な資金を使ってM&Aを利用する。
年間2,000億円に及ぶ研究開発も継続する。
大事なのは「自分で変化を作り出せる企業になること」だと語る。

有事に際し、経営者がやるべき事は4つ。
@ 「読む」−現状と将来を読む
A 「構想する」−どこへ向かうか、何をするべきか
B 「伝える」−経営者の意思を組織の隅々まで伝える
C 「実行する」−断固としてやり抜く

上記の中では、特にCが重要ではないかと思うが、著者も「やると決めたらスピーディーに、ダイナミックにやる」とし、それにはある種の野性的な賢さや勘、力が求められる」と語る。
これを「マッスル・インテリジェンス」と呼んでいるが、なるほどと思うところである。

こうした考え方の背景や、そうなるに至った経緯などが語られていく。
最後は日本の進路についても、ご自身の考え方が披露される。
日本の課題としては、「責任を曖昧にしてしまう体質」を挙げているが、これは確かにその通りだと思う。

「魂の経営」と銘打った通り、その口調は熱い。
倒産してもおかしくなかった企業を引っ張って生き残らせた方ならではの迫力を感じると言える一冊である・・・


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2014年10月15日

【同じ条件、同じ時間で10倍仕事ができる人、10分の1しかできない人】島原隆志



第1章 こう考えて動きなさい 成果を上げるシンプルな原則
第2章 10倍成果を出す人 10分の1しか出せない人
第3章 「評価の高い人」がしていること 成果を評価につなげる方法

著者は潟Cンバスケット研究所という会社を経営し、日本で唯一の“インバスケット・コンサルタント”として活躍している方。
“インバスケット”という耳慣れない言葉は、最近になって目につくようになっていたが、今回関連する書物を初めて手に取った次第である。

“インバスケット”とは、「架空の人物になりきって制限時間内に多くの案件を処理していくというビジネスゲーム」だとのこと。
何やら面白そうである。
そしてこの本も、ある会社に入社した二人の同期のサラリーマンを登場させ、同時に会社人生をスタートしたのにその後大きく差が開いてしまった理由を探っていくスタイルで進む。

主人公は、入社12年目の35歳のサラリーマンの戸井。
役職はリーダーとなっているが、部下のいない実質ヒラ社員。
ある時、同期で課長に出世している十場と再会する。
その時、戸井は同期入社で十場と一緒に働いていた頃の事を思い出してゆく・・・

ビジネスマンに差がつく理由は「行動」がすべて。
「コンピテンシー」とは、「成果が上がる人の行動特性」のことであるが、この「コンピテンシー」を何より高めないといけない。
そしてその「コンピテンシー」を発揮するには、「仕事に対する考え方」をしっかり固める必要がある。
コンピテンシーを高めるには、「行動」「姿勢」「人間性」を変える必要があるという。

概念の説明のあと、戸井と十場の具体的な行動の比較が始る。
ショッピングセンターの視察に行き、何を提案するかを問われた二人。
「トイレの場所がわかりにくく、トイレの看板を増やす事」を提案した戸井と、「ショッピングセンターのロゴマーク」を提案した十場。
ここでは、「大きな仕事か、現実的な仕事か」の判断となるが、この場合は、「できるだけ大きな売上を狙えるところに的を絞って成果を上げるべき」と説明される。

そんな感じで、
・どこまで相手の要求を飲めばいいのか(成果の出ない人はあまり考えずに次々と仕事を受けてしまう)
・将来の対策を考えながらも、「急ぎの仕事」にテンポ良く取り組む
・「デッドライン」の時間をはっきりと意識して逆算して予定を立てる
・当事者として成果につなげることを意識して「生産的な発言」をする
・段取りを把握しながら仕事を進めて、適宜「途中経過」を報告する
・アイディアを提案する際、具体的な実例に落とし込んで「行動」に直結させる
などの行動が、戸井と十場の行動を通して語られる。
具体的であってわかりやすい。

大事なのは、自分の成果を評価につなげる行動。
成果を上げるだけでなく、何が評価されるのか(組織に何を求められているのか)を知る事がまずは重要との事だが、それは確かにそうだろう。
さらに
「メールの返信で最後に一行温かい言葉を書く」
「納品後に簡単なお礼のメールを送る」
「お見送りでエレベーターまで送ってくれる」
そんなちょっとしたプラスαが好印象に繋がるといった事も書かれている。

我が身を振り返りつつ、一気に読んでしまったが、得る所は大きかった。
サラリーマンなら一読の価値は十分にある。
これから少しでも取り入れてみたいと思わせられた一冊である・・・
   
   
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2014年10月14日

【マンションは10年で買い替えなさい】沖有人



第1章 住宅コストは賢い人ほど下がる
第2章 自宅マンションを「資産」にする7つの法則
第3章 人口減少時代のマンション購入の極意
第4章 絶対に破産しないローンの払い方

最近タイトルに『〜しなさい』とつく本をよく目にするような気がする。
指南系の本などは、こうした「先生がモノを言う」風の体裁にした方が売れると思われるからなのだろうか。

この本で訴えたい事は、最初に一例として挙げられているA太とU介の“マンション格差”に集約されている。
A太とU介はともに新築マンションを住宅ローンで購入し、そろそろ引っ越したいと考えている。
A太は5,000万円で購入したマンションが5,000万円で売れそうだとわかり、一方のU介は3,500万円で購入したマンションの評価が1,930万円だとわかる。
A太は余裕で買い替えを検討できるが、U介は住宅ローンが評価額以上残っていて、買い替えは無理である。
どうしてこのような格差が生まれるのか。

著者は、さまざまな物件のデータを集めて分析し、この格差の勝ち組に入る方法を明確にできたので、本書を書くことにしたという。
それは筆者の運営するサイト『住まいサーフィン』で無料公開しているというから、親切な事である。
それによって住み替えられるマンションライフの実現を後押ししているとの事である。

そうした“勝ち組マンション”を手に入れるには、一にも二にも「立地」だと言う。
そしてそれはすなわち、「アクセス」。
今は利回りが重視されるため、「賃料が高く設定できる」=「都心へのアクセスが良い」事が評価が上がる要因との事。
地価が高ければ良い事ではない事は、武蔵小杉が大化けした理由として説明される。

10年で住み替える理由の一つは、「大規模修繕」。
これは一騒動になりがちだとか。
マンションを売る際、ランニングコストを抑えようと、当初の修繕積立金を低く設定する為らしい。
また、買う立場に立つと、「築10年以内」の人気が高く、また「瑕疵担保責任」「住宅取得控除」が10年で切れ、「固定資産税の減額」も5〜7年になると言う事であり、それは確かに一理ある。

10年ごとに新築マンションを買い替えるにしても、「時期」は重要で、それは新築と中古の価格差が開いた時は買わない方が良いとのこと。
また大規模マンションが良く、面積は広い方が良いとの事。
売る際は、空室にして「実需用」として売るなど、ノウハウは細かい。
業界慣習も知らないと、知らないうちに安く売らされる事にもなりかねない。

総じて「10年ごとにマンションを住み替えた方が良い」という理屈はよくわかり、それに異を唱えるつもりはない。
ただ、現実的に自分で実行するとなれば、まずしないだろう。
やはり自宅は戸建てがいいという事は抜きにして、ずっと住み続けたいと思うからである。
『住まいサーフィン』に違和感がない人には良いかもしれない。

それはともかく、業界慣習など知っておきたい知識はたくさんあり、一読の価値は十分にある。
マンション購入を考えている人は目を通した方が良いと思う。
「知は力なり」と感じる一冊である・・・
   

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2014年10月09日

【考える力をつける本】轡田隆史



第1章 「今日一日」からはじめる知的生活術
第2章 新聞から何をどう読み取っていくか
第3章 「量の読書法」と「質の読書法」
第4章 「いい問い掛け」の条件
第5章 メモの作法と方法
第6章 「鍵の束」としての辞書と索引
第7章 「考えるきっかけ」をどうつかむか
第8章 「書くこと」は「考えること」
第9章 「情報」を生かすための考え方
第10章 議論の方法−「論理的な考え方、話し方」とは?
第11章 オリジナルなものを生み出す力
第12章 「好奇心の領域」を広げてゆく法
第13章 遊び上手は仕事上手

著者は朝日新聞の元論説委員。
朝日新聞は読んでいないから知らないが、夕刊誌のコラム「素粒子」を8年間執筆されていたという。
その為か、本書の文章は流れるような美しさを感じる。

この本を手に取ったのは、ズバリ、タイトルに惹かれたからに他ならない。
「考える」という言葉は、自分の中で大きな役割を占めるキーワードだからである。
著者は冒頭で、「『考える力』とは、実はものごとの細部にわたって積極的に意識して行動する力」と語っている。
その具体例が、本書で語られる内容となる。

最初は、「時間の上手な使い方」。
トイレや会社に着くまでの時間を最大限利用する。
ゆとりを持てない人は、結局、良い仕事はできない。
頭の中でも昼寝はできる。
記者だけに新聞から何をどう読み取っていくかはお手のもの。
ただ、ここはノウハウ的なものではなく、どちらかと言えばヒントに近い。

読書は“ツン読”を推薦しているという。
できるだけたくさん読む。
それも速読術は巷に出回っているものではなく、「たくさん読んで読みなれること」だと言うが、このあたりは大いに共感する。
「読んでいてメモしたい時は端をちょっと折るに限る」とも言うが、このあたりも然りである。

「いい問い掛け」が何より重要との意見は、先日読んだ『パワー・クエスチョン』にも通じ、やっぱりこれが真理なのだろう。
「問いかけるべき相手はまず自分自身」
「質問はすべて具体的に」
このあたりも実感として日頃思うところと同じである。

「書くこと」を重視するのも、全く同感。
書くことによって、考え方がまとまったり、真の理解につながったりする。
「『書くこと』は『思うこと』や『考えること』をさらに深化させる、自分自身のこころの奥への小さな旅」というが、読みながら「我が意を得たり」の感がある。

「オリジナルとは、1%のひらめきと99%の伝統を学ぶ努力」という。
ここでの99%は、
「自分で書いたものを読む」
「先人の書いた文章をできる限り多く読むこと」
としているが、やはりそれが基本なのだろう。
「考えるとは質問することだが〜言いかえれば質問のできる知己を得ること」
確かに、壁打ちより実践的なラリーの方が上達するだろう。

読んでいて共感する部分が実に多かった。
という事は、割と考える力が身についているということなのだろうかと思ってみたりする。
そうなら嬉しいし、それをさらに深化させたいとも思う。
そして常に「考える」ことを意識していたいものだとも思う。
所々、「朝日新聞」的な意見が目につき、「やっぱり・・・」と思う事しばしばであったが、それはそれで流れるような文章とともに読み流せる。

実に参考となった一冊である・・・



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2014年10月06日

【なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?】山口 揚平



序章  お金とは何か?
第1章 ハゲタカが跋扈し、お金でお金が殖えた時代
第2章 自分の価値をお金に換える覚悟と難しさ(バリューtoマネー)
第3章 企業や個人が国家に代わってお金をつくる世界へ(クレジットtoマネー)
第4章 お金を媒介とせず、モノや価値を直接交換できる環境の広がり(バリューtoマネー)
第5章 信用でつながる新たなコミュニティづくり:資本より信用を貯めよう(クレジットライン)

最近この手の変わったタイトルの本にはすっかり慣れてしまった。
一体中味は何の本かと思っていたが、そのヒントはタイトルの「貧乏」「金持ち」という言葉にある。
その言葉の通り、「この本は『お金の本』である」と序章に記されている。

ゴッホは生涯2,000点にものぼる作品を残したが、生前に売れた絵はわずかに1点のみだった。
ところが、ピカソは7万点にのぼる作品を残し、その遺産は日本円にして約7,500億円になったという。
その特徴的なエピソードは、ピカソはたとえ少額でも小切手を切ったというものである。
もらった相手は、それを額に入れて飾ったため、結局支払いをせずに済んだという。
この二人の画家を対象的な例として、話は進む。

第1章は、お金でお金が殖えた時代の話。
コンサルティング会社に就職した著者は、M&Aの世界でマネー最前線を経験する。
ダライ・ラマ14世の「欲望は海水を飲むことと似ている」という言葉が象徴的だ。
また中国のことわざにも深い味わいがある。
 お金で「家」は買えるけど、「家庭」は買えない
 お金で「時計」は買えるけど、「時間」は買えない
 お金で「ベッド」は買えるけど、「睡眠(快眠)」は買えない
 お金で「本」は買えるけど、「知識(知恵)」は買えない
 お金で「名医」は買えるけど、「健康」は買えない
 お金で「地位」は買えるけど、「尊敬」は買えない
 お金で「血」は買えるけど、「命」は買えない
 お金で「セックス」は買えるけど、「愛」は買えない

お金には、「使う」「貯める」「稼ぐ」「殖やす」「流す」の5つのステップがあるが、日本人は「殖やす」「流す」が苦手。
「流す」とは、投資のこと。
日本でも「金持ち父さん」として有名になったロバート・キヨサキ氏も、実際は本に書かれている投資で稼いだのではなく、セミナーとゲームと本の印税が収入源だったという。
(私事だが、最初にこの本を読んで、「これは少なくとも日本ではできない」と判断して以後本も読まなかったのは、どうやら正しい判断だったようである)
そして著者は、「100万人の個人投資家に正しい知識と情報を提供」すべくシェアーズを立ち上げる。

そんな著者の考え方は、なかなか面白い。
お金とは信用のこと。
あらゆるものが価値(バリュー)と信用(クレジット)で成り立っている。
事業とは、価値と信用を創造するゲームだと言う。
世界のGDPトップ100のうち、40%を国家ではなく企業が占めると言っても、もはや不思議ではない。以前読んだ「企業が『帝国化』する」にその様子が詳しく紹介されていた。
現代は資本ではなく、信用が主体の社会=信用主義社会へと変わりつつある。

言われてみればなるほどと思う。
お金についてのこうした考え方は、哲学的でもある。
ただ普通の人があまり「生きるとは」などと考えないように、お金についてもここまで考える事はない。
日々お金に追われているからかもしれないが、ふと立ち止まってこんなことを考えるのも良いかもしれない。
そしてまた明日から元の生活に戻っていく。
そんな一冊である・・・
    
    
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2014年10月03日

【日本の論点】大前研一



大前研一の本は、やはり定期的にチェックしておきたいもの。
昔から得るところは大きいのは、今も変わりない。
この本は、タイトルにある通り、現在の日本が抱えている様々な問題について、著者が独自の意見を述べているもの。
それだけで興味深い。

冒頭は著者とジャック・アタリ氏との対談。
膨大に膨れ上がった我が国の累積債務について、独特の資産課税と付加価値税による解決策を提示している。
個人的には、いかがかと思うが、こういう提案自体は考える要素として実に参考になる。

以下20の提言がなされているが、どれもこれも参考になる。
1. 全国に広がる空き屋を自治体が整備して、バケーション用の別荘のように貸し出す
これは以前から著者が提案している「心理経済学」に則って、小金持ちがお金を使う仕組みをつくろうと言うもの。
貯め込むのではなく、人生をエンジョイしようというものだ。

2. クオリティ国家10を見てこい
スイスを例に挙げて、国民一人当たりGDPは世界トップクラスで、グローバル企業も多数輩出。
その様子は確かに何かのヒントになりそうである。

3. 3,500万円を墓場に持って行くのではなく、「お金を使ったら人生は豊かになるし、子や孫からも感謝される」方向に変える。
4. 下請けなのに強い台湾企業を見習う
5. 新しい日本のお家芸を探す
6. 観光立国を目指すなら、「一泊二日」発想から脱却して「滞在」型を目指す
8. 「競争させない教育」の弊害
9. 日本の企業や若い世代は、世界の農業最適地に飛び出せ
10. 「病気を定義」し、病院への入場を制限し、救急車は有料化
11. 憲法96条は占領軍の最悪の置き土産
12. 「都構想」「道州制」が世界マネーを呼ぶ
13. 「日本版一国二制度」
14. 日本の地方分権、足りない人材は世界から補う
16. 歴史的役割を終えた省庁は解散
19. 日本人の被爆恐怖症は偏っている

どれも指摘されるとなるほどと思う事ばかり。
情報量も違うのかもしれないが、ここにあるような論点は、普通の人でも意識としてもっておきたい事だろう。
膨れ上がるばかりの国家債務に対し、消費税を少し上げる程度しか対策を打ち出せない政治家。

救急車の有料化なんて言ったら、共産党あたりから「弱者切り捨て」と真っ先に批判が出てくるだろう。
だが、膨れ上がる医療費と救急車をタクシー代わりに使う現状からすれば、ごく当たり前の解決策なのだろう。
と言っても、すべて有料化せよというのではなく、運ばれた内容によって、「これは仕方ない」というものは無料で良いとしている。
当然やるべき事なのかもしれない。

大前氏は、もともと原子力専攻だけあって、原発は賛成派だ。
安全対策は当然であるが、ここは個人的に受け入れ難い内容だ。
ただ、大した事ない被爆量を大げさに扱っているという指摘は傾聴すべき事だと思う。
是非はともかく、これらの提案を一度は自分の脳みそで考えてみるのも悪くないと思う。
問題意識を持つという意味で、一読の価値ある一冊である。
   
     
posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 大前研一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする