2014年12月31日

【挑戦者】渋沢和樹



プロローグ 電話料金を安くする!
第1章 渦に飛び込む挑戦者たち
第2章 若き十九人の船出
第3章 弱者がトップに躍り出る
第4章 ぶどうの房と外様大名
第5章 不死鳥のように蘇れ
第6章 小異を捨てて大同に

かつてNTTは電電公社という名称で、国内の電話事業を独占する国営事業であった。
それが通信の自由化を経て、現在ソフトバンクやAUなどの携帯事業者を含めた世界になっている。
電話料金もかつてと比べれば、随分と安くなったものである。
そんな通信自由化の到来時、新たな事業者として名乗りを上げたのが、第二電電。
京セラの稲盛和夫が率いた第二電電の「挑戦」を描いたのが、本作である。

もう既に第二電電と言ってもわからない人も多いのではないかと思うが、合併などを経て、現在は携帯電話のauでお馴染みのKDDI株式会社となっている会社である。
1983年に電電公社の民営化と電気通信事業の自由化が既定路線のごとく報道される中、京セラの稲盛和夫は、「電気通信事業に正しい競争を起こし、電話料金を引き下げたいというこの思いは純粋か」と自らに問い掛ける。
思いが儲け心に基づくものであればやるべきでないというのが、稲盛氏の経営哲学。
この時もずっとそう考え続けていたようである。

やがて、その思いは純粋なものと確信し、京セラは通信事業に参入すべく、第二電電を設立する。
当初は、巨大なインフラを要する独占企業(電電公社)を向こうにまわした無謀な挑戦と思われていたが、第二電電が設立されると、鉄道と道路という簡単に回線の用地確保ができる国鉄や建設省・道路公団が名乗りを上げる。
いきなり立ち上がりから試練を迎える第二電電。

稲盛氏は国鉄に用地を一緒に使わせるよう交渉に行く。
「国鉄の土地は国有地、それを国民がフェアに使うのは当然」という理屈であるが、国鉄は拒否。
今から考えれば、稲盛氏の理屈の方が正しいと思うし、酷いものだと思うがそんな事で争っている時間もなく、やがて電電公社から東京−大阪間のマイクロウェーブに予備があると伝えられ、これを元に事業化の目途が立つ。
電電公社もAT&Tのように分割させられるのを恐れ、ライバルを育てたかったのが幸いした形である。

こうして事業化したものの、次から次へと苦難が訪れる。
携帯事業への参入を目指すも、自動車電話として電波利用を目論む日本高速通信と利用地域を巡って対立。
地域ごとに分割するか(おいしい東京を奪い合うことになる)、電波を分けあうか(採算に必要な十分な回線が確保できない)で交渉は平行線を辿り、そのままでは日本高速通信と合併せよと郵政省から通告されるのを恐れた稲森氏は、ドル箱の東京・名古屋を譲るという決断を下す。

そんな苦難を次々に乗り越え、そして結果としてはKDDIとして立派に存在感を示している。
今でこそ、稲盛氏はJALの再建を託されたりするなど、「現代の生きる経営の神様」扱いであるが、この挑戦の過程をみればそれも頷けるというもの。
稲盛氏の経営哲学を表す言葉として、「利他」が有名であるが、私心なきスタンスがずっと貫かれている。

そうしたスタンスは、会社経営に参考になるところ大である。
サラリーマンの立場であったとしても、経営マインドを身につける意味で、学ぶ価値は大きいかもしれない。
一つの事業の歴史物語として読んでも面白いし、新規事業に挑戦するための参考として読んでも役立つだろう。
自己研鑽としても有意義な一冊である・・・

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2014年12月29日

【7日間で突然頭がよくなる本】小川仁志



1日目 社会のことを知る
2日目 哲学の知識を身につける
3日目 哲学の論理パターンを使いこなす
4日目 物の見方を変える
5日目 言葉の意味を膨らませる
6日目 言葉を論理的に整理する
7日目 一言でキャッチーに表現する

著者は哲学者であるが、商社マン、フリーターを経たという変わった経歴の持ち主。
そんな哲学者がどんな魔法を使ったら「突然頭がよくなる」のだろうと、興味をもって手に取った一冊。

「頭がよい」事について、まえがきで著者は「物事の本質をつかめる人」だと定義する。
たった7日間で頭をよくする方法は、哲学のもっとも基本的なパワーである「物事の本質をつかむ」という方法をマスターすることとしている。
この本で説明されるのは、このことなのである。

まず始めに「社会のことを知る」事が必要とされる。
具体的には、自然学(科学)、歴史、文学、時事である。
そして哲学の概念を覚えることが勧められる。
概念は全部で30個。
そのうち10個が必須とされるが、正直言ってあまり興味が持てない。

物事の本質をつかむためには、複数の側面から対象を眺めることが大前提とされる。
そのためには頭をほぐし、たとえばリンゴならリンゴを100通りの見方でみるようにするのだと言う。
次に常識を疑うこと。
このあたりの事は、何となく普段自分でもやっていることでもあり、(さすがに100通りまではないが・・・)よく理解できる。

そして仲間をグループ分けし、キャッチーな一言で表現してみるというが、ここまでくるとちょっとついて行けなくなる。
例えば「考えるとは何か?」という問いに対し、「理性を生きること」という回答が示される。
そのプロセスを見ていくと、「なるほど」と思わせられるが、それに何の意味があるのだろうかと思ってしまう。
哲学者になるならいいだろうが、単に頭がよくなりたいと思う人にとって、意味があるようには思えない。

要所要所で書かれている事には納得できるのだが、結論的な話になるとよくわからない。
それで頭がよくなると言われても、“?”マークしか出てこない。
偉い哲学者の先生の仰る事は、私のような凡人には理解不能という事なのかもしれない。
キャッチーな一言はよくわからないが、物事の本質を掴むならもっと別なものがありそうな気がする。

所詮凡人なので、笑って許してもらおうと思う・・・

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2014年12月28日

【東大教授が教える独学勉強法】柳川範之



第1章 新しい「勉強」が必要とされる時代
第2章 なぜ独学が、一番身につく勉強法なのか
第3章 勉強をはじめる前にやっておきたいこと
第4章 新しい分野に、どう取りかかり、学びを深めていくか
第5章 学びを自分の中で熟成・加工し、成果をアウトプットする

何となくタイトルに惹かれて手に取った一冊。
個人的に勉強する事は好きな方であり、少しでも役に立つかもしれないという思いからである。

はじめに概念的なこと。
勉強の本質は「考えること」という意見。
これからは自分の頭で考え、自分自身で判断する力をつけるための勉強が求められており、そのために独学が必要なのだという。
そして学問を身につけた人は情報に振り回されなくて済む。
答えのある問いから答えのない問いへ。
生き残るためには応用力と独創性を身につけよ。
勉強は加工業、自分の中での“熟成”が大事。
こんな言葉が並ぶ。
そんな著者は、この本で「答えのない問いに自分なりの答えを見つける勉強」をしてほしいと語る。

肝心の方法論であるが、まずいきなり勉強してはダメだという。
学ぶクセをつけるには、疑問を持つ事が第一。
つねに「自分がどう思うか、どう考えるか」を考えるクセをつけないといけない。
そして学んだ先にある自分の姿をイメージする事が2番目に大事。
ワクワクしないと続かないという指摘は理解できる。

読書については、一言で言えば、「考えながら読む」。
「何の疑問も持たずに『ああそうなんだ』と読むのではなく、『本当にそこまで言えるのだろうか?』というような問い掛けを絶えず」する事が重要。
それは言葉を変えて何度も強調されているが、それはその通りだと実感している。
本に限らず、何にでも当てはまる指摘だろう。

タイトルに「勉強法」とはあるものの、ノウハウ本ではないように思える。
「マーカーは引かない」など、ノウハウ的なものも多いが、それが重要とも思えない。
それこそ、著者の言う事を疑ってかかってもいいかもしれない。
結局のところ、自分にあった方法を見つけるヒントにするべきなのかもしれない。

「自分なりの勉強法を見つけるための本」というのが正しいように思われる一冊である・・・

    
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2014年12月26日

【武田信玄 山の巻】新田次郎




全4巻に及ぶシリーズの最終巻。
北条と対立が続く武田家。
しかし、信玄の基盤は盤石で、京都へと向かう西上の声が上がるようになる。
西上のためには北条との問題を片づけないと、後顧の憂いを残す事になる。
一方、信玄の体調もおもわしくなく、労咳(結核)の症状は一進一退の状態。

そんな状況下、北条のトップである氏康が癌との情報がもたらされる。
トップの死により、北条の風向きも変わり、そして上杉との同盟を破棄して武田との同盟が復活する。
こうして信玄は西上への地盤固めを行っていく。
その頃、信長は比叡山を攻め、反攻していた比叡山の勢力を鎮圧する。

この時代は群雄割拠の時代。
それを強烈に感じさせられる。
戦って勝つばかりが能ではない。
戦えば味方も被害を受ける。
それはそのまま戦力ダウンへと繋がる。

一方、各地には豪族が分散している。
有力大名の動きを様子見していて、ギリギリのところで配下につくという事が当たり前に行われている。
そしてそれもそのまま戦力増強という結果になる。
現在の中央集権国家をイメージしているとなかなか理解しにくい部分である。

武田家では勝頼がいよいよ信玄の後継者としての地位を固める。
そしてついに信玄は西上に向けて出陣する。
その体は、確実に労咳にむしばまれている。
西上する信玄の前途に横たわるのは、徳川家康の支配する三河。
後半のクライマックスは、有名な信玄対家康の三方ヶ原の戦いである。

かつての家康の居城である浜松城を訪れると、今でもこの三方ヶ原の戦いが解説されている。
信玄の3万の軍勢に対し、信長の援軍を入れて1万の軍勢の家康軍。
数の上では勝負にならない。
そして浜松城の展示でも、家康は信玄勢に大敗を喫したとされている。
その経緯が著者の手によってリアルに再現される。

信玄の死には確定した説はないという。
映画『影武者』では、野田城攻略中に城から銃撃を受けて死亡したとされているが、その説ももちろんあるという(ただし、信用度は一番低いらしい)。
本小説では病死となっていて、「死して3年は死を伏せろ」という指示も描かれている。
ただ、その3年間の動きはこの小説の範疇ではないらしい。

信玄を取り巻く武将たちも、西上途中で無念のUターン。
事実かどうかわからないが、信玄が京都へ上れなかったのは歴史上の事実である。
やがて武田家は、これも有名な長篠の戦いで織田徳川連合軍に大敗し、歴史から姿を消していく。
武田家の有力武将たちは、多くが徳川に吸収されたという。

天下を取った者だけが、歴史の主役ではない。
全4巻に及ぶこの『武田信玄』も、その内容は圧巻である。
もう40年前の著作であるが、時代劇ゆえに古さは感じない。
こうした時代劇に興味のある人なら、一度は目を通すべき歴史小説かもしれない。

機会があれば、今度はまた違う人物について挑戦してみようかと思わせられる一冊である・・・



    
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2014年12月23日

改訂版 不動産投資の破壊的成功法



第1章 「横並び」から抜きん出るには?
第2章 常に反対側からものを見よ
第3章 ワンルームマンション投資は0か100かの丁半博打
第4章 巨額の自己資金なんて必要ない
第5章 ボロ物件は富裕層にとってこそおいしい物件
第6章 エリアマーケティング
第7章 物件の選び方−「管理が悪い」「空室だらけ」が狙い目
第8章 不動産投資の体験談

著者はもともと行政書士で、その後独自のマーケティングで大成功し、不動産投資においても「通販大家さん」という組織を率いるなどの活躍をされている方。
最近では、変わったところで、『100%得をするふるさと納税生活』を読んでおり、個人的にも注目している方である。

個人的に不動産投資については最近集中的に勉強している。
この本もその一環。
いろいろなノウハウが学べて、それぞれに特色がある。
されどこの本、前半はどちらかと言えば考え方の部分。
横並びのサラリーマン根性ではいけない、住宅ローンこそやってはいけないリスク、不動産投資の考え方。
このあたり、今さら感が強いが、それは読む人によって異なるところだろう。

第3章からは具体例だが、いきなり「ワンルームマンション投資は0か100かの丁半博打」とくる。
入居か空室かの0か100しかない事もあるが、節税にも担保にも不利であり、コンクリートの塊を買っているに等しいと手厳しい。
まぁ事実ではある。

具体的な中味に入っていくと、収益還元法の説明があり、銀行目線の説明が続く。
銀行から資金調達するなら、当然知っておくべき事柄の数々だが、目新しいものもある。
自己資金が足りない時の対処法では、仮受け消費税を利用するなんてのは考えたこともない。
ただし、実際の効果については一時のものでしかない。
プロパンガスを導入するとタダで給湯器を入れてくれるなんて事は全く知らなかった。

エリアマーケティングでは、東京だけが投資対象ではないとする。
日本で人口が2番目に多い都市は今では大阪ではなく神奈川だという。
そんなエリア的な話から、「管理の悪い物件」「空室が多い物件」ほど狙い目といった話が続く。
リフォームによって蘇るからというのがその理由。

最後の体験談はほんの参考だろう。
いろいろな不動産投資の考え方がある。
良い悪いではなく、一つ一つ耳を傾ければそれなりに学ぶ事ができる。
そういう意味で、この本も特色ある一冊と言えるだろう・・・

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2014年12月20日

【皇帝フリードリッヒ二世の生涯】塩野七生



上巻
第1章 幼少時代
第2章 十七歳にして起つ
第3章 皇帝として
第4章 無血十字軍
第5章 もはやきっぱりと、法治国家へ
第6章 「フリードリッヒによる平和」(Pax Fridericiana)
下巻
第7章 すべては大帝コンスタンティヌスから始る
間奏曲 (intermezzo)
第8章 激突再開
第9章 その後

著者のことは、「イタリアの歴史に関する書籍を出している作家」というイメージを持っている。
そして個人的に歴史好きということもあり、いつか読んでみたいと思っていた作家である。
この本に出てくるフリードリッヒ二世は、神聖ローマ帝国の皇帝。
とは言っても、授業で習ったか、習ったとしてもはるか忘却の彼方へと忘れ去ってしまっている。
ゆえに、白紙状態で臨んだ次第である。

フリードリッヒ二世は、1194年にイタリアで生まれる。
日本では鎌倉幕府が成立した頃である。
祖父の代からの神聖ローマ帝国皇帝である。
と言っても、イメージにある“世襲”とは違い、皇帝はドイツ諸侯(選帝侯)の推挙によって即位するのがしきたり。
よって父ハインリッヒが死んだ1197年からフリードリッヒが即位する1212年までには、15年の空白がある。

この時代、まだ各地に有力諸侯が散在する封建時代。
皇帝と言えども、後の時代のフランス王のような絶対権力を有していたわけではない。
諸侯の協力を取り付けていかないと自前の軍も十分にないため、“皇帝”といえども力は発揮できなかった。
そんな背景をしっかり理解していないといけない。

始めはローマ法王の後見を受けていたが、やがてローマ法王と対立。
カノッサの屈辱を経て、「法王は太陽で皇帝は月」と主張する法王が大きな力を有していたが、フリードリッヒはこれと対立していく。
とはいえ、フリードリッヒの主張は“政教分離”。
決して法王を亡きものにしようという事ではなかったようである。

世は十字軍の時代、フリードリッヒも法王の要請を受けて遠征する。
そしてフリードリッヒは、何と「交渉」でエルサレムを解放する。
ところがキリスト教的には、聖地は血を流して解放されるべきで、フリードリッヒの功績は認められない。
法王とは後に決定的に対立し、3度にわたって破門されることになる。

自ら世襲したイタリアと、皇帝として君臨するドイツとを支配するフリードリッヒ。
しかし、その間には法王領があり、ロンバルディア同盟に代表される北イタリアの都市国家がフリードリッヒと対立する。
イタリアでは「メルフィ憲章」を発布し、法治国家を目指していくフリードリッヒ。
その活動は精力的である。

現代的な感覚からすれば、当然と思えることが多いのだが、当時の感覚からすれば進歩的だったのかもしれない。
常備軍のない時代だったせいなのかもしれないが、力による支配には走らなかった(走れなかった)フリードリッヒ。
残念ながら、目指すところはその死後には続くことはなかった。

こうした歴史物が好きな人には面白いだろうと思う。
著者の他の著作(『ローマ人の物語』シリーズなど)もそろそろ読んでみようかという気になった上下2巻の作品である。
    
    
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2014年12月13日

【ホテルローヤル】桜木紫乃



シャッターチャンス
本日開店
えっち屋
バブルバス
せんせぇ
星を見ていた
ギフト

タイトルにある「ホテルローヤル」とは、北海道の某所にあるラブホテルの事。
このホテルを巡る6つの話と、このホテルとは関係のない話とで構成されたこの本は短編集。
ホテルを巡る6つの話は、それぞれ時間軸も異なり、ちょっと変わった形式の物語である。

冒頭の『シャッターチャンス』はカップルの話。
同じスーパーで働く貴史と美幸。
貴史はアイスホッケーの選手だったが、怪我で引退し、今は写真を趣味としている。
そんな貴史は、美幸のヌードを撮影したいと、美幸をある廃屋へと誘う。
そこはかつてラブホテルだったところだが、今は営業をやめ、廃墟となっている。

『本日開店』は、あるお寺の住職の妻幹子の話。
寺が経済的に困窮し、いつの頃からか幹子が檀家の4人と肉体関係を持つ事を条件に寺を支援してもらっている。
そんなある日、檀家の一人から元ラブホテルのオーナーの遺骨を託される・・・

『えっち屋』は、ラブホテルのオーナー田中大吉の娘雅代の話。
父から受け継いだホテルローヤルも廃業することとなり、出入りのアダルトショップ(通称えっち屋)の社員宮川に在庫を引き取ってもらう話。
最後に部屋でアダルトグッズで遊ぼうと、雅代は宮川を誘う。

『バブルバス』は、墓参りに来た夫婦の話。
読経を上げてもらう約束が、住職の手違いでキャンセルされてしまう。
生活に追われていて余裕のなかった二人。
住職に渡す予定だったお布施の5,000円が浮いた事になり、それで妻の恵は夫をラブホテルに誘う。

『せんせぇ』だけがホテルローヤルが出てこない。
単身赴任の教師野島が、予告なしで自宅に帰ろうとしていると、生徒の佐倉まりあがついてくる。
まりあは両親が二人とも失踪してしまい一人になってしまったところ。
野島も妻が結婚前から元担任と浮気していたと知ってショックを受けており、連絡なしで帰宅するのも浮気が続いていることを何となく感じているから。
そして、その通りの現場を目撃した野島は行くあてのない佐倉まりあとビジネスホテルに泊まる。

『星を見ていた』はホテルローヤルで働くパートのミコの話。
既に60歳になっていたが、足を悪くして働けない夫を養いながら働いている。
長男、長女とも長年連絡はなく、次男だけが時折連絡をよこす。
夫とは毎晩SEXをしているが、ある日、次男が逮捕されたとニュースで知る。

『ギフト』は田中大吉の話。
リース会社と建設会社の社長からラブホテル建設を持ち掛けられ、しがない看板屋稼業から足を洗い、大きく飛躍するチャンスと考えているが、建設契約を結んだあと、妻は離婚届を残して出て行ってしまう。
そして愛人は大吉の子を身ごもる・・・

それぞれが北海道を舞台に、ホテルローヤルと微妙な関わりを持って描かれるが、すべて独立した別々の話。
どの話も、主人公は幸せとは微妙に距離のあるところで暮らしている。
まったく不幸というわけではないが、幸せというにはちょっと切ない境遇。
その微妙な距離感が何とも言えない雰囲気を醸し出している。

この雰囲気がこの小説の魅力なのかもしれない。
一つのラブホテルを切り口に、いろいろな物語が織りなされていく。
感じるところの多い小説である・・・

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2014年12月11日

【振り切る勇気】田中仁



01 セピア色と有頂天の起業
02 メガネとの出会い
03 業績低迷、買収提案
04 起死回生
05 メガネの常識を打ち破る
06 購入体験も変える
07 ウェアラブルの先を行く
08 世界に打って出る

著者はメガネの“J!NS”の創業社長。
メガネのJINSと言えば、我が家でも家族御用達のブランドで親近感がある。
その理由はやはり安さである。
ただ、安いだけだと「家族みんなが」とはならない。
そんなわけで、“良い会社”というイメージがあるから、手に取った一冊である。

タイトルの「振り切る」とは、野球のフルスイングの意味。
ここぞと言う時は、中途半端ではなく恐れずに思い切りバットを振る、振ってきたという体験からその重要性を語っているのである。
野球でもフルスイングと言えばカッコいい。
カッコいいがその分空振りのリスクはあるわけで、大抵の人はそこで躊躇する。
しかし、「チャレンジした失敗は必ず糧になる」という信念がそれを支えているようである。

著者は早々に起業するが、始めは雑貨を扱っていたようである。
しかし、偶然友人と訪れた韓国で、安いメガネがその場で手に入る事に友人が感動。
メガネをしていなかった著者は、自分ではわからなかったが、友人の姿を見て「これは当たる」と直観。
それまで事業を行っていた群馬ではなく、福岡でメガネ事業をスタートする。

著者の予想通り格安メガネ店はヒットするが、競合も出現。
やがて上場も実現するが、老舗メガネ店の反撃などもあり、業績は低迷する。
そんな中で、ユニクロの柳井氏の教えに目を覚まされ、役員で合宿を行い自らのビジョン
「メガネをかけるすべての人に、よく見える×よく魅せるメガネを、市場最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」
を策定する。

そして追加料金をなくすというチャレンジにフルスイング。
それが当たって業績は回復。
その後もPC用メガネの開発などの大ヒットを生み、確たる存在感を示していく・・・
始めから思い通りにできたわけではなく、チャレンジしてフルスイングしてきた結果が現在の成功に結び付いている。

創業者の苦労談・成功談が好きな人にはお勧めできる。
個人的にはやはり経営ビジョンて大事だと改めて認識させられた一冊である。

     
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2014年12月09日

【奇跡の営業】山本正明



第1章 営業での成功は「紹介」なくしてありえない
第2章 うまく話せない人ほど紹介は生まれる
第3章 アンケート用紙一枚で成績が劇的に伸びる
第4章 楽しくなけりゃ、営業じゃない!

著者はソニー生命のライフプランナー。
44歳にしてまったく畑違いの建設業から転職し、10年連続で毎週2件以上の新規契約を獲得(これはかなり凄い事のようである)するという、まさに「奇跡」の成績を収めている方のようである。

そんな著者が、自らの「奇跡の成績」の要因として挙げているのが、「紹介」。
これは営業に関しては、もうあちこちで語られているので、「今更」感が強い。
個人的には、「やっぱりそうなんだね」と確認するのみである。
もちろん、初めてという人には非常に参考になるだろう。

そんな自分であるが、では学ぶべきところはないかというと、そんな事はない。
まず、建設業というまったく保険と関係のない世界から飛び込んで、なぜ成功へ辿りつけたのか。
その秘訣として著者は、「『いいな』と思うことを素直に真似すること」と語っている。

たとえば著者は、同僚からスーツの胸ポケットに木綿の白ハンカチをさすといいと聞き、即真似したという。
これは簡単なようで、なかなかできない(みんなやらない)事だと思う。
頭でわかっていても、やらないのが人間なのである。
こういうところは意識したいと思う。

さらにその考え方。
・「保険に加入できないお客様」のもとにこそ「行くべき」である
・「非効率の効率」
・価格をアピールすれば例外なく不安が生まれる
要するに、「目先の利益」を追いかけてもダメで、まずは「人の役に立つ」事を先に意識すべきという事なのだと思うが、思うところ大きい。

自らのスタンスについては、
・自分をさらけ出せば相手は共感してくれる
・「いいな」と思ったことは今日からすぐ実践する
・ノウハウは秘密にするより公開した方が断然お得
という点に注意を惹かれた。
こうした考え方はすぐに取り入れたいと思う。

また、「ニューロ・ロジカル・レベルにおける5つの階層」という考え方は、初めて知ったが、これも興味をそそられた。
@ 自己認識・ミッション・使命
A 信念・価値観
B 能力
C 行動
D 環境
という5つの階層があり、例えば下位の「環境」を変えたければ、その上位の「行動」を変えるという考え方らしい。

総じて並はずれた結果を出している人には、学ぶべき点が多い。
「紹介」こそすべてなのだろうが、そこにプラスαされたものがなければ、「仏作って魂入れず」になるだろう。
素直に見習いたいと思わせられる一冊である・・・
   
    
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2014年12月05日

【満室大家さんガラガラ大家さん】尾浦英香



第1章 なぜ男性大家さんは満室にできないのか?
第2章 10秒で決めさせる部屋づくり術
第3章 必ず成功させるマンション経営の秘訣
第4章 満室大家さんの条件

不動産投資については、集中的に情報を集めたいと考えているが、中でも重要なのは空室対策だと考えている。
そんなところに、目についたのがこの本。

著者は、「空室改善士」として自ら会社経営をされている方のようである。
この頃、消費では“女性目線”ということが重要性を持ってきているが、それは不動産についても同様のようである。

「部屋を決めるのは女性」
著者はずばり言い切る。
ファミリー向けの賃貸住宅を決めるのは「奥さん」、学生の一人暮らしは「お母さん」、成人男子の一人暮らしを決めるのは「彼女」と確かにその割合は高いと思う。
そこまでいかなくても、「彼女を部屋に呼ぶ」ということを念頭に置く男は少なくないだろう。

そんな女性の心を掴むのは、わずかに「最初の10秒」だという。
玄関、バス、トイレ、キッチンと目立つ場所に磨きをかけるのだと。
ただし、「誰からも好かれる部屋」はダメだそうで、著者は「35歳の学校の先生として仕事をバリバリしている女性」といった具合に、ターゲットを明確にして取り組んでいるようである。
そんなターゲットの明確化は他でも聞いた事があるが、不動産でも効果的らしい。

10秒で決めさせるためには、いろいろと方法がある。
・予算がなくても“一点豪華主義”−その部屋の売り、特性を明確にする
・「ひと言で説明できる」マンションにする−コンセプトマンション(介護、ペット、音大生向け等)
・色に徹底的にこだわる
・「ここぞ」という設備はお金をかける
・リビングをより広く
・友人から褒められる部屋にする
・水回りは全面的に改装
何より部屋作りで大事なのは企画とプロセスであるとのこと。

色についてはさらに詳しく説明があり、
@ メインの色(暖色系がよい)を決める
A メインの色の配分は20%まで
B 白を引き立て役にする
C なるべく価格を抑える(クロスは安価でよい)
となっている。
ここが「10秒で決める」大きな要素かもしれない。

この本は全体的に、「賃貸マンション経営を始めましょう」という類のものではなく、始めたあと、「どうしたら確実に家賃収入を得られるか」に主眼を置いている。
豊富な実績に裏付けられた事例があり、なるほどと思わせられる。
ただ、読んだだけではすぐ実践というわけにもいかず、恐らくこの本の真の目的は「集客」なのだろうと思う。
たとえそうであっても、「だからけしからん」とは思わず、考えるヒントになることは確かであり、それなりに興味のある人にとっては読む価値は十分にある。

賃貸マンションを所有している人、あるいは検討している人にとって、一読の価値ある一冊である・・・
    
     
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