2015年01月30日

【熱烈中華食堂日高屋】神田正



第1章 ラーメンが天職、というけれど
第2章 ラーメン、以前
第3章 ラーメン道、まっしぐら
第4章 ラーメン戦略
第5章 ラーメンが、師

著者は、ラーメンチェーンで今やあちこちに見かける日高屋の社長。
その著者が、自らの人生を省みつつ、思うところを語った一冊である。

生まれた頃は貧乏で苦労したと言う。寒い冬も足袋と下駄で登校し、雪の日はまっすぐ教室のストーブに直行して濡れた足袋を乾かした。卵一個で作った卵焼きを兄妹4人で分けたものが唯一のおかずという弁当でも、御馳走で嬉しかったという。小六でキャディのアルバイトをして家計を助ける。
こういう話は、読んでいて心にぐっとくるものがある。

そんな貧乏暮らしゆえ、中学を出るとすぐに働きに出る。
いろいろな職業を転々とし、そしてラーメン屋の店員となる。
縁あって最初のラーメン屋を開店。
寝る間を惜しんで365日、睡眠時間4〜5時間で働く。
若いからこそ馬力も出るのだろう。

やがて実弟と義弟にも手伝ってもらうようになり、大宮南銀座店で当時はなかった深夜の営業を始めて、これが客に受ける。
今でこそ24時間営業は珍しくないが、この時代は異例。
熱心に働き、周囲を観察していれば、やがて女神も微笑んでくれるというものなのだろう。

日高屋は「東証一部上場企業」となる。
それはもう大成功と言えるのだが、夢を持って一生懸命働くと、運命の女神がほほ笑むが如く、人の縁にも恵まれてチャンスが巡ってくる。
非常識と言われた駅前出店は、自らの確信を胸に進めて成功させる。
周囲の声がいつも正しいというわけではない。

日高屋のラーメンは390円。
正直言って、これはかなりありがたい。
いわゆるグルメのこだわりのラーメンではないが、値段よりは美味しい事は間違いない。
安くても駅前立地と、サラリーマンが帰りに軽く飲んで帰れるというところが受けて、業績も好調なのだと言う。

そんな上場企業を作り上げた人の言葉は実に重みがある。
・「頑張れば大丈夫」
・いい癖が人生をプラスに
・“運がいい”にはワケがある
・“あたりまえ”か“ありがたい”か
・素直な人が最後には残る
・空気を読める人間は強い
・商売人より、よりよい社会人になる

経営者でなくても、このような考え方は身につけておきたいものである。
成功者と言われる人には、成功の理由というものが必ずある。
それは必ずしもビジネスの極意のようなものではなく、「心構え」のような気がする。
そんな事を改めて感じさせてくれる一冊である・・・

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2015年01月27日

【アフガン、たった一人の生還 】マーカス・ラトレル , パトリック・ロビンソン



1 空飛ぶ倉庫でアフガニスタンへ
2 俺たちが小さかった頃、そして、ばかでかいオールド・アリゲーター
3 戦士の学校
4 地獄へようこそ、紳士諸君
5 敗残兵のように
6 「じゃあな、野郎ども、あいつらに地獄をお見舞いしてやれよ」
7 なだれのような銃弾
8 尾根での最後の戦い
9 爆破と銃撃により死亡と推定される
10 アメリカ人逃亡者、タリバンに追いつめられる
11 死亡記事はひどく誇張されていた
12 「2-2-8、2-2-8!」

【これからの『正義』の話をしよう】は、近年読んだ本の中でインパクトの大きかった一冊であるが、その中でも、特に米軍シールズ(特殊部隊)の話が強烈であった。
その時のブログを下記に引用する。

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アフガニスタンで作戦に従事していた米軍特殊部隊の偵察隊が、羊飼いの親子に遭遇した。
アルカイダに密告される事を恐れた部下が、隊長に親子を殺害するよう進言。
隊長も心の中ではその判断は正しいと思いながら、キリスト教徒として親子を解放する。
その結果、親子の密告によって押し寄せたアルカイダの勢力に、3名の部下全員と救出にきたヘリに乗っていた16人が戦死する事態になった。
隊長の判断は正しかったのか、誤っていたのか。
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今でも強烈なインパクトのある話だが、その生き残り兵士が書いた当時の経緯がこの本である。
ようやく手にして、興味津々でページをめくる。

良く読むと、生き残ったのは隊長ではなく、部下であった。
本書の著者であるマーカス・ラトレル二等兵曹である。
もともと男気が強かったようで、15歳にして近所のベトナム帰還兵に訓練を申し出ている。
そして当然のように入隊し、もっとも過酷な訓練で知られるシールズ隊員に志願する。

この訓練は、映画『GIジェーン』でお馴染みだが、実に過酷。
改めて映画のシーンを思い起こしながら読み進む。
アフガニスタンでの事件も、この訓練を読んでから読むと、マーカス二等兵曹の行動がよく理解できる。

そしていよいよ潜入したアフガニスタンの山の中で、3人のヤギ飼いに遭遇する。
彼らをどうするか問われた部下のアクスは、アルカイダへの通報を恐れ、「殺すべき」と軍事上の常識的回答をする。
隊長であるマイク・マーフィは判断に迷う。
その理由は人道的なものであると同時に、米軍の交戦規程。
背けば自分達が後日殺人者として処罰されるかもしれないという考え。
そしてそれを煽るマスコミ。
ダニーは棄権し、最後のマーカスが「解放する」とし、隊長とあわせて2対1で解放を決める。

そして1時間半後、4人は200人はいるかと思われるタリバンに追われる事となる。
やはり通報されたのである。
逃げながら反撃し、次々と敵を掃討していく。
まるでランボーのようなのかもしれないが、このあたりはさすが米軍のエリートである。
されど多勢に無勢。
仲間が次々と倒れ、マーカスも重傷を負う。
この戦闘シーンの描写は強烈だ。

そして助かるまでの経緯と、行方不明と伝えられた家族の話とが紹介される。
戦死した仲間の遺体をきちんと回収する米軍。
単に「何が正義か」を論ずる題材と割り切る事はできない気がする。
実に壮絶な体験記である。

今やテロリスト=イスラム教徒というイメージがしているが、もちろんそうではない。
マーカス・ラトレルはタリバンによって仲間を殺され、自身も死の淵に立たされる。
されど彼を救い、タリバンから彼を身を呈して守ったのもアフガニスタンの山中に住む人々である。
アメリカもまた常に正義というわけでもない。

政治的背景はともかくとして、アフガニスタンの山の中で起こったこの事件。
タリバン側にも相当数の被害が出たと思われる。
一人の誇り高い米軍人の考え方も溢れ出ていて、読みモノとしても面白い。
映画化されても良さそうなものであるが、いずれハリウッドも放っておかない気がする。

ずっと読みたかったが、期待にそぐわず、大満足の一冊である・・・

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2015年01月25日

【鉄屑ロマン】増井重紀



序章  鉄屑はロマン
第1章 大阪−鉄屑人生の原点
第2章 ニューヨーク−鉄屑相場参入
第3章 心血注いだロサンゼルスの10年戦争
第4章 鉄屑と国際政治
終章 21世紀の蟻とマンモス

著者は、住友商事から米ヒューゴ・ニュー社を経て、現在は独立して鉄屑を扱って世界を股に活躍している人物。
本書は、自らその激動の「鉄屑人生」を語った自伝。

著者は、1965年に神戸大学を卒業し住友商事に入社する。
この時代にあっては、エリートに入ると思われるサラリーマン人生のスタートである。
そして輸入部門に配属され、鉄屑と出会う。
負けず嫌いの性格で、住商と取引のなかった鉄屑業者に2年間日参し、取引首位の座を勝ち取ったという。

一方、素直な努力家でもある。
ベテランの先輩に言われ、毎朝6時前に築港に通い、入荷される鉄屑の山を見て歩いたという。
「鉄屑と話ができるようになったら一人前」と言われ、事実1年半ほどで鉄屑の山を見れば産地と数量を当てる事ができるようになったという。
他にも鉄屑に携わる商社マンはいただろう。
だが、ここまでの事をしている人はそうそういないだろうと思わせられる。

やがて著者は鉄屑の本場アメリカに赴任する。
そこで現地のやり方に対応できない“日本式”にしびれを切らし、米国住商の社長に直談判、相場リスクを取るやり方を認めてもらう。
こうした行動力で、鉄屑業界に知古を得てゆき、そしてやがて米社ヒューゴ・ニューからスカウトを受ける。
結果として副社長として入社するが、鉄屑部門については半ば強引に権限を移譲させ、社長にさえ口を出させない。
何とも豪快な人物である。

ロサンゼルスでは、ライバル社と10年に渡って激突。
結果的に勝利を収める。
最後は同社を退職するが、今度は独立して「コンテナ輸送」というこれまで鉄屑業界では“非・常識”とされていた方法で、業界に君臨する巨人に挑戦している。
こんな豪快な仕事ができたら、さぞ痛快だろうと思わせられる。

「鉄は一度この世に産声をあげたら永遠にリサイクルされる」という説明は、言われてみればなるほど、である。
太古の鉄器も使用後は溶かされ、また別の鉄器となる。
義経のなぎなたも名刀正宗も貴方が使った鍋も、すべて回収されてリサイクルされ、次は火星探査ロケットの一部になっているかもしれないという。
なるほど、ロマンがあるわけである。

成功を夢見て燻っているサラリーマンは多いと思う。
だが、この方のような仕事に対する熱意をみんな持っているだろうかと、自らに問い掛けてみるのもいいかもしれない。
きっと、自分はまだまだだと思うだろう。
そして少しでも近付こうと努力したら、少しは変化があるかもしれない。

自分にまだ何か足りないと思う人は、一読してみる事をオススメしたい一冊である・・・

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2015年01月21日

【た・か・く・ら】嘉門達夫



嘉門達夫と言えば、「爆笑替え歌」や「面白い歌」というイメージで、どうしても「鼻から牛乳〜!」というフレーズが頭の中でリフレインしてしまう。
「本」というイメージとは程遠いのだが、そんな嘉門達夫の本を手に取ってしまった。

タイトルにある「たかくら」とは嘉門達夫の小学校時代からの友人のこと。
かつては嘉門達夫のマネージャーもしていた事があるらしい。
そんな友人である高倉氏はがんで早世しているが、その死を悼んで嘉門達夫が幼い頃からの思い出を綴った一冊。
そんなわけで、替え歌も出てこないし(いや、出てくるがウケ狙いではない)、当然鼻から牛乳も出てこない。
極めて真面目な本である。

冒頭、高倉氏から嘉門に電話がかかってくる。
「肺がんで余命三カ月」と言われたと。
突然そんな事を言われたら、自分だったらどう反応するだろう。
もう手遅れだと聞いた嘉門は「ん〜、そ〜か〜、ほな〜何するぅ?」と問い掛ける。
この時の反応は何となくわかる気がする。

そんな嘉門達夫と高倉氏は小学校の同級生。
この頃の思い出として描かれるのは、万博である。
何せ万博会場の近所に住んでいた二人は、他の友人たちと毎日のように通っていた。
そしてバッチ集めに夢中になる。
各パビリオンを回っては、子供らしいあの手この手でバッチを集めていく。
(ちなみに、当時集めたと思われるバッチは、本の表紙に使われている)

しかしながら、個人的には映画が700円のこの時代、入場料は大人800円、子供400円だったとか、缶詰でないパイナップルの試食が感激したとか、当時出始めたシャチハタに「未来を感じた」とか、外人が珍しくて外人というだけでサインをもらったとか、そんな時代を感じさせるエピソードの方が面白い。
そして2年の時、嘉門と高倉氏はコンビを組んで漫才をやったという。
これが嘉門が人前で笑いを取った最初の記憶らしい。

中学、高校とともに進む。
高校時代はともに甲子園でアルバイトをしたという。
そんな思い出が語られる一方で、嘉門と高倉氏は最後の3カ月を過ごして行く。
昔の友だちを呼び、冗談を言いながら、飲み食べる。
友人たちとの楽しい一時。

人より早く死ぬというのは、悲劇であるが、ある意味幸せな部分もある。
友だちみんなに見送られるからだ。
長生きして友だちがみんないなくなって、最後に死ぬとなると、その時は送ってくれる友はいない。
そういう意味で、高倉氏は友に華やかに送られていく。

本の中の嘉門達夫は、やっぱり鼻から牛乳の嘉門達夫だが、友に対する想いが底辺に流れる。
こういう本もいいと思える嘉門達夫である・・・
    
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2015年01月18日

【視覚マーケティングのススメ】ウジ トモコ



第1部 少ない投資で大きく儲けるデザイン戦略
PART1 デザインで「商品・サービス」力を上げる
PART2 デザインで「価格」を上げる
PART3 デザインで「売上」を上げる
PART4 デザインで「顧客満足度」を上げる
PART5 デザインで「広告・宣伝」効果を上げる
PART6 デザインで「マネジメント」を変える
第2部 デザイン・センスを磨く5つのポイント
POINT1 文字
POINT2 レイアウト
POINT3 配色
POINT4 トーン&マナー
POINT5 コピー

最近はあらゆる業界で「デザイン」の重要性が説かれている。
そんなこともあって、アンテナを張っていたところ目についたのが本書。
「デザイン」という代わりに「視覚マーケティング」という言葉を使っているところが興味深い。

デザインによってぱっと見た目が変われば、それだけで印象も違う。
それはもう言うまでもない。
だが注意しないといけないのは、デザインを発注する目的。
ブランディングのためなのか、アドバタイジングのためなのか、プロモーションのためなのか発注者自身もよく意識しておかないといけない。

また、広告に対しては何を期待するのかを決めないといけない。
相手を「つかむ」のか、相手を「引く(引いてくる)」のか。
それは「驚かせる」、「感心させる」ということでもある。
中小企業の場合は、「感心」の方が重要である。

デザインの重要性を認識したあとは、デザイン・センスを磨かなければならない。
それは「文字」「レイアウト」「配色」「トーン&マナー」「コピー」に分けられる。
この中で分かりにくいのは「トーン&マナー」。
これはその企業なりサービスに漂う“雰囲気”とか“世界観”と言えるもの。
言葉ではうまく表現できないがゆえに、難しいものがある。

もともとデザインなどは本を読んで学ぶというものでもない。
ゆえに本を読んで学ぼうとするのが、そもそも矛盾していると思う。
トーン&マナーと言われて、何となく理解できるが、では自社のそれは何かと聞かれても答えられない。
重要性は理解できても応用ができない。
そんなもどかしさがデザインにはある。
読んで何を得られたかというと難しいものがあるが、仕方ないのかもしれない。

引き続き感心だけは持ち続けたいと思うところである・・・

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2015年01月16日

【田宮模型の仕事】田宮俊作



第1章 木型模型との幸せな出会い
第2章 泣く泣くプラモデル製作に転向する
第3章 プラモデルは金型が命
第4章 取材こそ模型づくりの基本
第5章 とことんやるのがホビーの世界
第6章 山あり谷ありミニ四駆の18年間
終 章 外国人の見たタミヤ模型

タミヤと言えばプラモデル、プラモデルと言えばタミヤというのは、もはや当たり前過ぎるほど浸透していると思うが、この本はそんなタミヤを作り上げた元社長の自伝とも言える一冊。

タミヤの創業者は、著者の父親である義雄氏。
子供の頃から模型に憧れ、戦時中は来襲した米軍機を見て怖さより感激が勝っていたという。
戦後、父の仕事を手伝うことになるが、当時の模型は木型であったという。
組み立てるのも熟練の技が必要だったらしい。

そしてアメリカからプラモデルが輸入されるようになると、精巧な出来栄えや組み立てやすさから木型では太刀打ちできなくなり、プラモデルづくりに乗り出す。
ところが、製造過程で大きな役割を果たすのが金型であったが、当時の金型屋は殿様商売。
納期も価格も支払条件も言われるまま。
日本製のプラスチックは材質が悪く、高価な輸入材に頼り、結局高コストから最初の作品「戦艦武蔵」は大赤字となる。

そんな屈辱的な状況からやがて金型を内製化するようになり、さらに箱のイラストを売れっ子イラストレーターの先生に引き受けてもらうなど、汗と涙の奮闘記。
さらにアメリカではアバディーンの戦車博物館で、それまで見ることができなかった無数の“実物”を見て狂喜乱舞。
食事も忘れて写真を撮ったというエピソードに心が動かされる。
そこに流れる熱い思いが今でも伝わってくる。

やがてその精巧さから「タミヤ」のブランドは国内外で名声を高めていく。
子供の頃、いや今でも戦車の模型を見ると心がワクワクするのは、こんな人たちの熱い思いがあったからなのだと思うと納得するものがある。
個人的には戦車が好きだから、戦車の模型のエピソードに心惹かれたが、タミヤの模型はもちろん、戦車だけではない。
ポルシェなどの車や戦艦、戦闘機などもある。

今でもおもちゃ屋に行けば、模型コーナーを探してしまうし、古い模型専門店を見つけると、展示してあるプラモデルの作品を眺めてしまう。
もっとも最近はバンダイなどに押されているように見えるのも事実なのであるが・・・
間違いなく、一時代を築いたメーカーであり、男なら誰でも憧憬を抱いているのがタミヤのプラモデルだと思う。

そんなプラモデルの舞台裏の物語として、また夢を追って懸命に仕事をする男の物語としても楽しめる一冊である・・・

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2015年01月15日

【問題です。2,000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい】山田真哉



1日目 平社員会計学
2日目 数字力
3日目 社長会計学
4日目 パーソナル・ファイナンス

著者は、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』以来注目し、以後『食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字』『経営者平清盛の失敗』などを読んできた公認会計士の方。
もともと私自身金融の世界にいたため、やはり「会計系」の本には目が行ってしまう。
そんな著者のまた別の本。
やはりタイトルに惹かれてしまう。

とは言え、中味は身近なテーマを会計の観点から優しくわかりやすく解説したもの。
プロにとっては目新しいものではないが、ではこうして素人向けに優しく面白く本が書けるかとなれば、プロでも簡単にはいかないだろう。
そこが著者の持ち味なのかもしれない。

内容は、著者が行っている超初心者向けの会計に関する講演なのだという。
それを4日分として一冊の本にしたのが本書であるとのこと。
始めに不思議な焼肉店の話が出てくる。
どう見ても流行っていそうもないさびれた店で、聞けば昔からの馴染み客が来る時だけ営業しているという。
そんな店がどうしてやっていけるのか。
そこに隠されている“会計的に非常に収益性の高い仕組み”が解説される。

2日目は平社員会計学(何でこのネーミングなのかはわからない)と称し、機会損失・埋没費用が、「豆大福問題」として解説される。
機会損失というと固い表現であるが、床に落として売れなくなってしまった豆大福の損失額は売値の100円か原価の30円かその差額である利益の70円かと問う事により、説明されるが、こうした優しいたとえゆえに、素人でもわかりやすく理解できるようになっている。

タイトルにある「2,000円の弁当を3秒で安い!と思わせ」る方法は、アンカリング効果として説明される。
隣に3,000円、4,000円の弁当があれば、2,000円でも安いと思わせられる。
これはむしろ心理的なものだと思うが、「人は得より損をした記憶の方が2倍強く残る」(プロスペクト理論)なども合わせて採り上げられる。

最後に「パーソナル・ファイナンス」として、個人のファイナンシャル・プランが説明される。
個人的には「分かっているよ」と言いたいところであったが、一番お金を貯められるのが、就職してから子供が10歳になるまでの“ゴールデンタイム”という指摘は、分かっていても「痛い指摘」である。
社会人になって以降の45年を3期に分ける考え方は、なるほどわかりやすい。

各章の終わりには、楽しい4コマ漫画も付いていて、「これでもか!」というほど会計超初心者向けになっている。
だからプロは読まなくてもいいかと言うと、なら「こういう本が書けるか」と自問しながら読むと勉強になると思う。
素人向けに優しく解説するためには、より深い理解と思考力がいると思う。

毎度の事ながら、この方の著作は勉強になると改めて思う一冊である・・・

   
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2015年01月12日

【フォルトゥナの瞳】百田尚樹



百田尚樹の久しぶりの新刊。
毎回違う分野の本を書くと言っている著者だが、これはどちらかと言えば「不思議系」とでも分類されそうな物語である。

主人公は木山慎一郎という一人の男。
幼い頃、両親と妹を亡くし、今は天涯孤独な身。
自動車のコーティング工場で働いている。
主として高級車を対象とするこのコーティング、実は初めてその存在を知った。
もっとも、純国産のファミリーカーが愛車という身では、それも当然だと思う。

真面目な性格で、仕事熱心。
それゆえに社長にも目をかけられている。
ただ、苦労して育ってきたため女性との接点はなく、当然彼女もいないし女性に積極的にアプローチするタイプでもない。
そんな木山が、ある日電車の中で吊革を握る男の手が透けて見える事に気がつく。

何が起こったのかはわからない。
周りの人は平然としていて、どうやら透けて見えるのは自分だけらしい。
そしてさらにその後、体全体が透けて見える男を見かける。
思わず後をつけるが、その透明な男は木山の目の前で事故死する。
そんな経験を重ね、どうやら自分には人間が死ぬ前兆が、体が透明に見えるという形でわかるのだと気がつく・・・

こうして今回は、そんな不思議な“目”を持った男の物語が描かれる。
タイトルの「フォルトゥナ」とはローマ神話に出てくる運命の女神だとのこと。
人間の運命が見えるとされていて、そこから人間の死を見ることのできる目を持ってしまった主人公をたとえているのである。
普通の人にはない能力を持っているという事は、羨ましいことのように思える。
しかし、この物語の主人公木山慎一郎が持つ「フォルトゥナの目」はどうだろうか。

読み進むうちに、結末は何となく想像できてしまった。
それでも、エピローグでの百田尚樹らしい味付けはきちんと残されていたところはさすがである。
野球にたとえれば3塁打といえる作品だろうか。
十分だと思う反面、ホームランバッターにはホームランを打って欲しかったと思うところである・・・

 
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2015年01月10日

【会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから】大西 康之



はじめに あなたの会社が消えるかもしれない
第1章 再会 井植敏は『ゼロ』を読んでいた
第2章 決断 中村邦夫はなぜ動いたのか
第3章 抵抗 野中ともよは「地球を守る」と言い放った
第4章 一歩 「ニーハオ」からはじめよう−ハイアールに買われた人々
第5章 覚醒 こうやって黒字にするのか−京セラに買われた人々
第6章 意地 最後の1個まで売り切ってやる!−校長に転身したマーケター
第7章 陥穽 私はこれで会社を辞めました−セクハラ疑惑をかけられた営業幹部
第8章 贖罪 「首切り」が私の仕事だった・・・−高額ヘッドハントを断った人事部長
第9章 自由 淡路島からもう一度−テスラを駆る電池技術者
第10章 転生 「離職者再生工場」の可能性−ベビーバギーを作る生産技術者
エピローグ ダウンサイジング・オブ・ジャパン

三洋電機と言えば、新婚当初の我が家の家電製品はすべて妻が持参したサンヨー製品だったので、個人的には非常に身近に感じている。
そんなサンヨーがパナソニックの子会社になったのは、つい最近の事で記憶にも新しい。
そんなところに、三洋電機のそれからを扱った本書を目にし、興味を惹かれて手に取った次第である。

親近感がある、と言ってもそれほど詳しいわけでもない。
創業者の井植歳男は、松下幸之助の義弟であり、戦後三洋電機を創業し、以後3代にわたって井植家が社長を務めたきたなどは知らなかったし、パナソニック傘下に入る詳しい経緯も知らなかった。
そんなところは、まず参考になったところである。

冒頭から2代目の井植敏氏を突撃訪問した著者は、本人から話を聞く。
結果的に経営権を失う端緒となった金融機関からの出資について、特に住友銀行との関係の話が出てくる。
こうした普通知りようもないトップマターの話は面白いと単純に思う。

以後、著者はタイトルにもある通り、散り散りになった従業員を追う。
特に興味深かったのは、ある電池技術者の話。
国内でも超一流レベルであったその技術者は、現在忽然と姿を消しており、噂ではサムスンに行ったと言われているらしい。
札束を提示されての引き抜きの話については、やはりそういうモノを持っている人は強いのだと改めて思う。
家電製品では負けていた三洋電機も電池技術などの一部ではかなり競争力を持っていたようである。

ジャーナリストの野中ともよが会長に就任した話も何となく覚えている。
何をしていたのかはまったく知らなかったが、この本を見れば一生懸命立て直しに尽力していたようである。
しかしそこにベクトルの違う金融3社の債権者が入ってきたため、経営陣の思い描く再生スキームが頓挫していく。

金融機関には金融機関の考え方があって、それはそれで一つの正義である。
「ハゲタカ」とか言われる事もあるし、正直言って「金融機関の正義」には賛同しかねるところがある。
そうしたところに追い込まれていったのは、結局経営陣の経営責任であるから仕方ないのであるが、日本のメーカー乱立状況なども考えれば、それが「自然の摂理」のような気もする。

三洋電機を去って行った人が、必ずしも不幸になったわけではないが、それぞれの転身後の姿には興味深いものがある。
サラリーマンも大きな会社に入ったからといって、安穏としていていいわけがない。
常に自分を磨き続けていなければ、船が沈没する時になす術がない。
そんな時、荒海を一人で泳ぐ力をつけておくか、他の船から名指しで救助されるようでないと、翻弄されるだけである。
そんな事を読みながら考えていた。

単なる読み物としてもそれなりに面白いし、サラリーマンなら他山の石とするのもいいかもしれない。
関係者以外には知るすべのない事であり、そういう意味で読んで損のない一冊である。

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