2015年03月31日

【インフェルノ】ダン・ブラウン



原題:INFERNO

ダン・ブラウンと言えば、『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』『ロスト・シンボル』と続く『ロバート・ラングドン』シリーズであるが、ついに第4弾が登場。
これは読まずにはいられない。

冒頭、ロバート・ラングドンは病院のベッドで目覚める。
点滴につながれ、頭部が痛む。
一体何がどうなったのか、読む者はもちろん、当のロバート・ラングドン自身もわからない。
屍の上に立つ銀髪の女が囁く夢に襲われる。

そして突然、スパイクヘアの女が襲撃してくる。
手当してくれていた医師が目の前で撃たれて倒れる。
もう一人の女医ブルックスに連れられて逃げるラングドン。
今回の始まりは、いきなりの「トップスピード」モードである。

ロバート・ラングドンは一時的な記憶喪失にかかっている。
女医のシエナ・ブルックスの話によれば、頭部を銃撃されたとのこと。
気がつけばなぜかフィレンツェにいるし、見知らぬ殺し屋に命を狙われ、シエナとともに逃げる羽目になる。
さらに米国大使館に助けを求めたものの、やってきたのは殺し屋。
実に面白い。

たびたび脳裏に浮かぶ謎の銀髪の女性とおどろおどろしい地獄のようなイメージ。
やがて、ダンテの「神曲:地獄篇」がキーワードとして浮上する。
ロバート・ラングドンが象徴学者である以上、それに関わるものがないと物語も進まない。
例によって一つ一つ謎を解きながら、失われた記憶と、背後に動く恐ろしい計画が明らかになっていく。

登場人物は、主人公のロバート・ラングドンと一緒に行動する医師シエナ・ブルックス。
謎の組織“大機構”の総監、WHO事務局長エリザベス・シンスキー、そして恐るべき計画を立てたベルトラン・ゾブリスト。
このロバート・ラングドンシリーズは、“謎解き”が面白さの一つになっているが、ここでもダンテの「神曲」に絡めた謎を一つ一つ解明して計画の深淵に迫っていく。

息もつかせぬ面白さは、さすがであるが、ただこれまでのシリーズと比べると何かが足りない気がする。
それは何かと思うに、謎解きの内容だろう。
前作までは、「これはフィクションのはずなのに本当のことなのだろうか」と思わせる驚きがあった。
フィクションとノンフィクションとの境界がわからなくなるものがあったが、この本では残念ながらそこまでのものがなかった。
“物足りない”と言っても、それは「過去の作品と比べたら」という話であって、普通の作品と比べれば、十分に面白い。

今回は、「人口爆発」という問題点をテーマにし、考えてみれば非常に深刻な危機になりそうな話に気付かせてくれるという役割もあった。
楽しみながら、問題意識を持つという効果もある。
これでこのシリーズも打ち止めということもないだろう。

次のロバート・ラングドンの活躍を期待したいと思う・・・
   
     
   
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2015年03月27日

【学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話】坪田信貴



第1章 金髪ギャルさやかちゃんとの出会い
第2章 どん底の家庭事情、批判にさらされた母の信念
第3章 始まった受験勉強、続出する珍回答
第4章 さやかちゃんを導いた心理学テクニックと教育メソッド
第5章 見えてきた高い壁−「やっぱり慶應は無理なんじゃないかな」
第6章 偏差値30だったギャル、いよいよ慶應受験へ
第7章 合格発表とつながった家族

タイトルを見ればどんな話かすぐわかり、そしてそれゆえに、是非とも読んでみたくなった一冊。
表紙の金髪女子高生(実は本人ではなくイメージモデル)に惹かれたところもある。

物語の舞台は、名古屋にある著者が代表を務める学習塾。
そこへ主人公のさやかちゃんが入塾面接にやってくる。
金髪で厚化粧にイヤリングのへそ出しルック姿、短いスカートにハイヒール。
「何が目的で来たんだろう」と著者は思うも、挨拶がしっかりできたことから、「根は良い」と判断する。

私立の一貫高校に通っていたものの、成績は学年ビリで偏差値は30以下。
喫煙などの素行悪で、停学処分を繰り返し、付属の大学への推薦は絶望的。
聖徳太子を「せいとくたこ」と読み、日本地図を書けと言われると、大きな○を書く。
「志望校はどうする」と著者は問う。
東大か慶應か、と聞いたのは半分冗談なのだろう。
それでも、「さやかが慶應とか、超ウケる!」というノリで志望校が決まる。

もともと、素直な性格だったようで、著者の印象も良く、さやかちゃんは勉強を開始する。
著者が説く教師のあるべき姿は、教師が生徒に「知識を教える」ものではなく、共に「知識を求め、教師は先輩として生徒にアドバイスする」スタンスだという。
こういうところも、さやかちゃんが素直に言うことを聞いたところなのだろう。

そしてお母さんもまた凄い。
子供の素行は悪くとも、徹底的に味方する。
本気になったさやかちゃんが、夜も寝ないで勉強をする。
寝るのは授業中。
学校に呼び出された母親は、「寝かせといてくれ」と学校に交渉する。

人の評価には、@Doing AHaving BBeingとあるが、普通は@かAだという。
@は「〜してくれて嬉しい」というもので、Aは「学年順位が20も上がったなんて凄い」というもの。
そして、Bは「今生きているだけで嬉しい」というもの。
ほとんどの親はBで子供を愛しているものの、@とAで表現しているという。
さやかちゃんのお母さんは、徹底してBだったようで、これは親子に限らず、上司と部下とにも言える事だと言う。
単に物語を追うだけでなく、こういう解説もかなり心に残る。

さすがに著者は教育者だけに、生徒の指導方法は参考になる。
・ピグマリオン効果:親や教師が本気で期待した場合、子どもは無意識のうちにそれに応えようとする
・勉強はいかに楽しいと思わせるか:生徒を叱ったり脅したりすると、「勉強=不快、先生=不快」と脳が認識する
・自分がこれだけやったことが、これだけの成果につながったんだなと子どもに見せていく
・たとえ話は生徒の興味や知識に近いものをえらぶ
・話の最初と最後しか残らない:長過ぎる説教は最悪の効果
・歴史はドラマやマンガで覚える
・「読解」の指導:背景を想像する
・100円を捨てるダイエット:捨てた100円がもったいなくて、ダイエットを続けられる

自分の子どもの指導にも使えそうだと、メモが溜まっていく。
そしてもちろん、慶應大学に合格するまでのストーリーも心潤ませるものがある。
普通に考えれば、1年半で偏差値が40も上がるわけがない。
しかし、「この教師」に「この母親」、そして何より「本人」の持っているものが見事なハーモニーを織り成した結果と言えるのだろう。

物語としても、ビジネス・教育の参考書としても、得るところの多い一冊である。

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2015年03月22日

【現場論】遠藤功



第1章 現場とは何か
第2章 競争戦略論と組織能力
第3章 現場力とは何か
第4章 「非凡な現場」をつくる
第5章 「合理的な必然性」とは何か
第6章 現場力を進化させる道筋
第7章 「合理的な仕組み」とは何か
第8章 ナレッジワーカーを育てる
第9章 経営者の役割

著者は早稲田大学ビジネススクールの教授。
もともと工場に勤務していた経験もあるようで、『現場力を鍛える〜「強い現場」をつくる7つの条件〜』という著書もあり、「現場」についての理論家でもあるようである。
そんな著者が、サブタイトルに「『非凡な現場』をつくる論理と実践」とある通り、現場について語った一冊である。

本文は、「論理編」と「実践編」の2部構成となっている。
前半の第5章までが「論理編」である。
戦略も実行なくしては意味がない。
「一流の戦略と二流の実行力」より「二流の戦略と一流の実行力」であり、その実行力を担うのが、「現場」である。

そんな現場力を形成するのは、次の3つの能力。
1 保つ能力
2 よりよくする能力
3 新しいものを生み出す能力
これらが複合的に形成されているのが、現場である。

「保つ能力」とは、現状を維持する能力。
「平凡な現場」であり、この能力がないと「平凡以下の現場」となってしまう。
品質不良などのトラブルが生じ、競争力の劣化を招くことになる。
「よりよくする能力」とは、「改善する能力」のこと。
日本企業の真骨頂なのだろう。
そして「新しいものを生み出す能力」とは「イノベーション力」のこと。
ここまでないと、「非凡な現場」とは成りえない。

正直言って、前半の論理編はあまり心に響かない。
「現場力は大事だろう」と思うからこそ、そういうタイトルの本を手に取っているわけであり、「現場がいかに大事か」という説明をくどくど聞いても、「わかったよ」と言いたくなる。
それに現場=実行と指摘するなら、机上の理屈≠実行であり、そういう意味でもこの部分は冗長過ぎるきらいがある。

一方、後半の「実践編」は具体的な企業の事例も登場し、興味深くなってくる。
「現場」という言葉からは、どこか「工場」的なイメージが伝わってくるが、オフィスもまた現場と言える。
最初に採りあげられる住宅金融支援機構のコールセンターの事例は、その一例。
顧客からの問い合わせに苦戦していた現場が、英知を結集して改善活動に取り組み、申込書の改善によって対応したことが紹介される。
内容的には、正直言って大したことないと思うのだが、自分の職場にあてはめられないかと考えるヒントにはなる。

そんな事例から語られるのが、4つの基本認識。
1 自律分散型組織の構築には手間暇がかかる
2 「保つ能力」と「よりよくする能力」はまったく異なる能力
3 「最低でも10年」のつもりで時間軸を長くとる
4  まずは本社が変わる
事例付きであるからこそ、言わんとしていることがよくわかる。

「現場力」は、けっしてトヨタの工場のように、現場だけで育っていくものではない。
経営トップのコミットメントがまずは重要であり、それを受けてミドル層が十分に熱伝導の役割を果たさないといけない。
さらに必然性や合理的な仕組みも必要である。
そんなところが、この「実践編」ではわかりやすく理解できる。

自分の職場は工場のようなモノづくりの場ではないが、何か活かせるところはないだろうかと考えてみると、工夫の余地はありそうな気がする。
そんな考えるヒントを得られたと言う意味で、今後に活かしたい一冊である・・・

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2015年03月21日

【夢をかなえるゾウ3】水野敬也



『夢をかなえるゾウ』シリーズの第3弾である。

今度の主人公は女性。
彼氏と別れて5年。
貯金も少ない「私」の前に、ガネーシャが現れる。
そして、ガネーシャが関西弁で「私」に教えを伝えるというお馴染みのパターンで物語は進んでいく。

今回は、ガネーシャも黒い肌で筋骨隆々の「ブラック・ガネーシャ」として登場する。
「ブラック」化したとしても、そう大して違わない気がするのは確かである。
そして物語の進行にあわせて、「私」に伝えられる教えの数々。
・自分の持ち物の中で本当に必要なものだけを残し、必要のないものは捨てる
・苦手な分野のプラス面を見つけて克服する
・次の順序で一つの分野のマスターに挑戦する
 1 うまくいっている人のやり方を調べる
 2 一度自分のやり方を捨て、うまくいっている人のやり方を徹底的に真似る
 3 空いた時間をすべて使う
・自分の仕事でお客さんとして感動できるところを見つける
・一度儲けを忘れてお客さんが喜ぶことだけを考える
・自分の考えを疑ってみる
・一緒に働いている人に感謝の言葉を伝える
・余裕のないときに、ユーモアを言う
こうしたことは、普段の生活の中で意識してみたいことである。

今回はガネーシャの敵ともいうべき、黒ガネーシャ(稲荷の夫婦)が登場する。
そのあこぎな商売のやり方が、反面教師になる。
・希少価値を演出する
・あえて自分の不利益になることを言って信用してもらう
・お客を中毒にする
本で読めば反感を持つが、実際にそんなやり方をしていないだろうかと、自分に問うてみたい。

ガネーシャの口調は例によって関西弁。
だが、それがかえって味わい深く響いてくる。
「しんどいの通り越したら、その向こうにはめっちゃ楽しいことが待ってんねん」
「ドストエフスキーくんが、最高傑作『カラマーゾフの兄弟』書いたんは58歳んとき。〜略〜自分がその年齢で成功した初めての人になれるっちゅうことやから、自分が後に続く人にとっての『希望の星』となれるんや」
「自分らは努力を始めるとき、『我慢』から入るやろ〜略〜楽しいことを我慢するんやのうて『もっと楽しいことを想像する』やねん」
「この世界はな、自分が力を尽くした分だけ、必ずそのお返しを用意してくれるもんなんやで」
「問題を乗り越える方法を『自分で思いつく』ちゅうのが大事」
いちいちメモしたくなる。

コメディテイストの物語ではあるものの、ガネーシャの語る教えは“本物”のテイストである。
今回は、特に商売色が強かったので、自分のやっているビジネスを念頭にガネーシャの教えを聞いた。
今のところ外れているつもりはないが、これからもずっと心掛けたいと改めて思わせられた。

何で第3弾まで続くのか、その理由はよくわかる。
物語も、ガネーシャの教えによって成長していく「私」の姿が心地良い。
そして最後はちょっとほろっとする。
物語としても面白い。
第3弾も大満足。
まだまだ続くなら、読み続けたいシリーズである・・・

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2015年03月18日

【嫌われる勇気】岸見 一郎/古賀 史健



第一夜 トラウマを否定せよ
第二夜 すべての悩みは対人関係
第三夜 他者の課題を切り捨てる
第四夜 世界の中心はどこにあるか
第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる

サブタイトルに、「自己啓発の源流『アドラー』の教え」とあるように、この本はアドラー心理学の入門書ともいうべき一冊。
タイトルからはイメージできないが、心理学(哲学なのかもしれない)の本である。

本編は、対話編という形をとっている。
ある青年が、哲学者の下を訪ねてくる。
「世界はどこまでもシンプルであり、人は今日からでも幸せになれる」と説く哲学者の意見に反発を覚えた青年は、哲学者に議論を挑む。
「そして哲学者が、青年にアドラーの教えを語る」という形で物語は進む。

そもそもであるが、この本で語られるアルフレッド・アドラーは、日本ではあまり知られていないが、世界的にはフロイト、ユングと並ぶ心理学3巨頭として有名らしい。
その考え方は、トラウマの議論に代表されるフロイト的な原因論とは違い、目的論に立脚したものだという。
それゆえに、「人は変われる」とする。

読み進めると、
・あなたの不幸は、あなた自身が「選んだ」もの
・人は常に「変わらない」という決心をしている
・(短所ばかり目につくのは)あなたが、「自分を好きにならないでおこうと決心しているから」
という言葉が続く。
何となく、『自分が源泉』を彷彿としてしまう。

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と喝破する。
それは確かにそうなのかもしれない。
そして、「劣等感は客観的な事実ではなく、主観的な解釈」と続く。
キーワードとして語られるのが、「劣等感」。
「お前の顔を気にしているのはお前だけ」という言葉が、真理をついていると思われる。

対人関係によって人は悩む。
人は、他者の評価を気にし、他者から嫌われることを恐れる。
したがって、そこから、「自由とは他者から嫌われること」となっていく。
他者から嫌われるコストを払わない限り、自分の生き方を貫くことはできないとする。
まぁ、何となく言わんとしていることは理解できる。

また、「ここに存在しているだけで価値がある」という考え方も共感できる。
人はよく我が子に対し、理想像から減点して評価するが、ゼロの地点から出発すべしとする。
確かにそうだろう。
そのあたりも納得である。

ただし、原因論と目的論の話や、「共同体感覚」のあたりの話は理解ができない。
例えば、「あの上司がいるから仕事ができない」というのは原因論的な考えで、目的論的には、「仕事をしたくないから嫌な上司を作り出す」と捉える。
だが、楽しいはずの仕事が、嫌な上司の存在で重くなるのはよくあることだ。
共同体の話は残念ながら理解できない。

それでも「仕事の本質は他者への貢献」。
そして「幸福とは貢献感」という話は理解できる。
理解できるところ、できないところとそれぞれあるが、まぁすべて同意・共感できなくても別に構わないと思う。
またその必要もないと思う。
「アドラーはこう考えた」と理解すればいいのである。

そう割り切って考え、そしてこうした哲学的な議論が好きな人であれば、かなり面白い本であると思う一冊である・・・

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2015年03月15日

【流星ワゴン】重松清



少し前にドラマでやっているのを発見し、著者が『とんび』の重松清と知って、手に取った一冊。

物語の主人公は、38歳のサラリーマン永田一雄。
近郊のマンションに住み、妻の美代子と一人息子の広樹との3人家族である。
しかし、広樹は中学受験に失敗したことを契機に引き籠りとなり、家庭内暴力を振るっている。
そして妻は浮気をし、さらに離婚を求めてきている。

長年仲違いしてきた厳格な一雄の父は癌で死の床にあり、見舞いに行けばもらえる「御車代」を目当てに故郷に帰る一雄。
追い打ちをかけるように一雄自身もリストラで職を失っており、父を見舞ったある帰り道、絶望のあまり「死んでもいいかな」と思う。
そんな一雄の前に、一台のワゴンが止まり、中から一人の男の子が手招きする。

吸い寄せられるようにワゴンに乗った一雄。
ワゴンに乗っていたのは、橋本親子。
何と橋本親子は5年前に事故死しており、一雄自身もそのニュースを新聞で知っていた。
そして一雄は、親子とともにワゴンでドライブに出掛ける。
連れていかれた先は、一雄自身の“大事な時”とされる過去の一時点。
気がついた一雄は、まだ家族が崩壊する前の過去の世界に立っていた・・・

こんなストーリーだから、ぐいぐいと引き込まれていく。
誰にでも、「あの時ああしていれば」という過去はあるだろう。
そこに戻る事などできないと思いつつ、戻れることを夢見る。
そんな夢を、小説とは言え、目の前で叶えてくれる物語には引き込まれずにはいられないだろう。
そしてそんな過去に戻った一雄の前に、何と病院のベッドで死の床にあるはずの父親が現れる。
しかも一雄と同じ38歳の姿で・・・

38歳という年齢は、誰かの子供であり、そして誰かの親でもある年齢だ。
主人公の一雄も、厳しくて嫌っていた父の息子であり、引き籠りから家庭内暴力に荒れる息子広樹の父親である。
そんな一雄の立場と同じであるがゆえに、共感度も高くなるというもの。
この物語には、一雄と父、一雄と広樹、そして橋本父子と3組の父子が登場する。
それぞれがその秘めた思いに比べ、不器用な間柄だ。
母と娘に比べると、父と息子とはそんなものなのかもしれない。

そして自らの過去を辿る一雄。
絶望的な“未来”に向かって過ぎゆく時。
過去であるはずの“未来”は変えられるのか。
予想できない結末と、心を打つ家族の物語。

読む前に抱いた期待は裏切られることはなかった。
隋分前の本であるが、ドラマで話題になるまで気が付かなかった。
重松清の本は、ちょっと“発掘”する必要がありそうだと、思わされた一冊である・・・

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2015年03月14日

【「ザクとうふ」の哲学】鳥越 淳司



第1章 ビジネスではゲリラ戦を
第2章 お詫びする毎日、その中で掴んだもの
第3章 難しいからこそ勝機あり
第4章 なぜ、日本最大級の製造工場を稼働させたのか
第5章 恥ずかしい、情けない
第6章 なぜ、業界1位を目指したのか
第7章 改善と買収
第8章 商品開発の極意

著者は、豆腐、厚揚げを製造する食品メーカー相模屋食料株式会社の社長。
その社長が自らの来し方とともに、事業にかける思いを語った一冊である。

タイトルにある「ザクとうふ」とは、『機動戦士ガンダム』とのコラボで製造した商品。
ガンダム自体は何回か見た記憶があるものの、「ザク」と言われれても、「そういえばそんな名前の敵ロボットがいたかもしれない」と思い出す程度の知識しか持ち合わせていない。
なので、「ザクとうふ」の哲学と言われてもピンとこないが、そんな自分でもこの本は面白く読めた。
「ガンダム」ファンでなくても、「ザク」を知らなくても、まったく問題はない。

著者は元々、雪印乳業に入社。
奥様と知り合い結婚するが、その奥様のご実家が相模屋食料だったことから入社に至っている。
著者は自らの信念として、「正しく生きる、言い訳できないことはしない」と語っているが、そんな信念は、雪印時代の食中毒事件のお詫び行脚から生まれたと言う。

転職をしても、奥様の実家と言っても、豆腐屋自体は衰退産業とも言える業界。
そんな業界で大成功に至ったのは、初めの頃の「この場所で、生きていく」という覚悟だったと言う。
昨年、大企業から中小企業に転職した自分にとっては、心に刺さる言葉である。

著者はまず、「漫然と続けていたことをやめる」ことから第一歩を踏み出し、そして「木綿と絹」という豆腐の王道に力を注いでいくことにする。
そして大きな工場建設を前に、悩んでいた義父に対し、「やりましょう」とその背中を押す。
そこからは苦難の連続であったが、様々な創意工夫を重ねる。
その取り組みについては、大いに参考になる。

生協との取り組みを狙うも、その要求基準は非常に高く、改善項目は1,000にものぼったという。
それを一つ一つクリアして、ついに生協との取引を獲得するが、その過程を「あれは厳しかった」としつつ、しかし「あの壮絶な時代に戻りたい」とも語る。
この方の物事に対する取り組み姿勢は、学ぶべきところが多い。

タイトルにある「ザクとうふ」は、これまでまったく知らなかったが、こうして本のタイトルになるくらいだから、話題になったのかもしれない。
しかしこの会社は、ガンダムとコラボした豆腐などほんの「数あるうちの一つ」に過ぎないと、読んでいくにつれわかってくる。
「業界1」の企業には、やはりそれ相応の理由があるのである。

こうした成功者の哲学に触れられることが、ビジネス本を読む意義なのだと思うが、今回も大いにその意義を感じる。
明日からの自分の仕事に対する姿勢に、是非生かしたいと思わせられる一冊である・・・

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2015年03月13日

【ジョナサン・アイブ】リーアンダー・ケイニ―



1 生い立ち
2 イギリスのデザイン教育
3 ロンドンでの生活
4 アップル入社
5 帰ってきたジョブズ
6 ヒット連発
7 鉄のカーテンの向こう側
8 iPod
9 製造・素材・そのほかのこと
10 iPhone
11 iPad
12 ユニボディ
13 サー・ジョニー

アップル復活の立役者となった故スティーブ・ジョブズ。
その内幕は、『スティーブ・ジョブズ』に描かれていて興味深く読んだ。
しかし、スティーブ・ジョブズも一人ですべてをこなしたわけではない。
彼の下で、デザイン担当として復活の一翼を担った人物がいた。
その人物、ジョナサン・アイブを紹介したのが、本書である。

ジョナサン・アイブは、今やデザインの総責任者として、CEOも一目置く存在であるらしい。
『スティーブ・ジョブズ』にも登場していたらしいが、もちろん覚えていない。
そのジョナサン(ジョニー)は、イギリス生まれのイギリス人。

16歳にして既にその才能はデザイン業界の注目を集めていたと言う。
デザイン会社から奨学金をもらい、卒業後はその会社に勤める。
日本のゼブラのペンもデザインしたらしい。
そんな才能だから、1社に留まらず、やがて海を渡り縁あってアップルに入社する。
時に27歳。

アップルでは、工業デザイングループ(IDg)に所属する。
当時は、エンジニアが力を持っており、デザインチームはそれに従う形であった。
モノがまず出来上がり、「デザインはお化粧」という位置付けである。
それを当時の上司ブルーナーが中心となり、デザイン主導のプロセスを取り戻そうとする。
それが劇的に変わるのは、スティーブ・ジョブズの復帰によって。

ジョブズは生まれ持った直観的なデザインセンスを有していて、初めは外部のデザイナーを求めるが、やがて社内のジョニーの存在に気付く。
そして意気投合する。
その後のヒット商品の連発は、『スティーブ・ジョブズ』にも描かれている通り。
だが、ここではどんな開発過程があったかがわかり、興味深い。

アップルの今日の洗練された商品は、ジョブズとジョニーの存在なくしては語れない。
ジョブズだけでは片手落ちだということがわかる。
昨今、あちこちでデザインの重要性が説かれている。
しかし、エレガントなデザインをすればそれでいいと言うわけではない。
飾りではないので、当然必要な機能を備えないといけない。
どうしたらそのデザインに機能を装備させられるかが、実は難しい。

この本ではそんな舞台裏も語られていく。
アップルは秘密主義の企業であり、描かれなかった部分も多いと思うし、気がついてみれば、ジョニー本人の考えはあまり書かれていない。
「客観的に見た」という形なのである。
ただ、だからといって面白さが減じるということはない。
物語としても十分、エキサイティングである。

読めばますますアップル製品が欲しくなってしまう。
そんな一冊である・・・
    
   
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2015年03月12日

【武器としての書く技術】イケダハヤト



第1章 文章が残念な人の10の特徴
第2章 凡人の文章を最強の文章に変える10の魔法
第3章 月40万字書き続けるぼくの12の秘密
第4章 ここまで公開していいのか?書いて月50万円稼ぐ法
第5章 書く技術はこんなに人生を豊かにする

著者はプロブロガー。
プロブロガーというのも、ネット時代の新しい職業。
やりようによっては、サラリーマンでも副業としてこずかい稼ぎができそうな気もするし、そんな興味もあって手に取った一冊。

著者も初めに断っているが、「書く技術」と言っても、それはあくまでも「ネットで稼ぐ」という意味であり、いわゆる国語上の技術とは違う。
それを理解しておかないと、勘違いしてしまうかもしれない。
そして冒頭で説明されているのが、「文章術に必要な4つの力」。
1 スピード感
2 コピー力
3 引きつけておく力
4 リピートしてもらう力
「何の感情も引き起こさないような、他の誰にも話したくならないような文章はこの世に生まれた意味がない」という言葉は、なるほど、である。

第1章では、文章が残念な人の特徴が紹介されている。
何がいいたいのかわからない
文章が長い 一文が長い
同じ語尾が続く
抽象的すぎる
私的すぎる
「〜だと思います」「〜な気がします」が多すぎる
多方面に気を使いすぎて何がいいたいかわからない
まじめで優等生
最後まで読まないと結論がわからない
そもそも内容がつまらない

普段から何となく理解できていること、そうだろうかと思うことがあるが、総じて参考になる。
さらに著者なりのアドバイスもある。
「わかりやすく面白い文章が3分でできる黄金レシピ」
1 その文章で何を伝えたいか
2 まず書きたいことを箇条書きにしてみる
3 どういう流れがベストか考える
4 具体例などを入れながら肉付けしていく
5 伝わる文章に味つけしていく
違和感はないが、最後の5については、人によっては難しいかもしれない。

第2章以降、具体的な書き方のヒントになっていく。
「主観と客観を行ったり来たりしながら文章を書こう」
「なるべく数字を絡ませてフックを作ろう」
「文章はプレゼント。パッケージ化して読者に届けるイメージを持とう」
(ワンテキスト・ワンテーマの法則)

自分でブログをやっている人なら、かなり参考になる。
後半は、「ブログで稼ぐ」ということに主眼が置かれていて、興味のわかれるところかもしれない。
ただ、「稼げるブログ」=「多くの人の目に留まるブログ」と考えれば、ここもブログを書くヒントになる。

著者はまだ社会人経験も浅い26歳の方だというが、新しい業界では不利にはならない。
そうした意味では、学ぶところが大きい。
著者も注目しているブログが紹介されていたので、これは今後アクセスしてみたいと考えている。
ブログをやるなら、一読すべき一冊である・・・

著者が注目しているブログ
「ホームページを作る人のネタ帳」:http://e0166.blog89.fc2.com/
「わかったブログ」:http://www.wakatta-blog.com/
「ネタフル」:http://netafull.net/
「gori.me」:http://gori.me/
「The Startup」:http://thestartup.jp/
「バズ部」:http://bazubu.com/
「ちきりんブログ」:http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/
「脱社蓄ブログ」:http://dennou-kurage.hatenablog.com/

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2015年03月08日

【小さな会社こそ、高く売りなさい】竹内謙礼



第1章 なぜ、小さな会社は「値上げ」ができないのか?
第2章 小さな会社が大きい会社と戦うための「プレミアム商品戦略」
第3章 小さな会社が少ない広告費で戦うための「プレミアム集客戦略」
第4章 小さな会社がライバル会社よりも高く売るための「プレミアム販売戦略」
第5章 こんなにあるスモール・プレミアム戦略企業

著者は、販売戦略立案の経営コンサルタント。
そんな著者は、主として中小企業のコンサルティングをしているとのことであるが、日頃のコンサルティングを通じて得られた「スモール・プレミアム戦略」を解説したのが本書である。
「スモール・プレミアム戦略」とは、「小さな会社が、商品を高く売る方法」のこと。
「高く売る」とは、この本では「利益を1円でも多く取る」という意味で、薄利多売が困難な小さな企業にとっては、必須のことである。

小さな企業では、「金」・「時間」・「人」がない。
「金」がないから、いい商品を作れないし、仕入れられない。
「時間」がないから、早く売ろうとして安売りをしてしまう。
「人」がいないから、簡単に売ろうとして価格を下げてしまう。
なるほど、小さな企業では、「安く売る」ロジックに陥りやすい。

小さな会社には、ポーターの戦略もドラッカーの戦略も当てはまらず、そもそも小さな企業の戦略に興味を持つ者もいない。
小さな会社に、「安くて良い」商品を作れるはずもなく、生き残るには、「高くて良い」商品しかないと断言する。
確かに、その通りだと思う。

では、どうするか。
その方法として、販促方法が例示されている。
1 オプションをつける
2 価格の端数でお得感を演出
・・・
5 限定感をつける
6 比較される相場価格を提示する
7 安い商品に対して注意を促す
・・・
9 オマケや特典をつける
「高く売る」という能力は、「高くても買いたいと思わせるように『商品を見せる』という行為と同意」ということである。

一方、「集客と商品開発はセットで考える」という説明は、納得である。
「集客をイメージしながらプレミアム商品をつくる」ことの重要性は、十分理解できる。
そして何より大事なのは、「伝わりやすさ」。
以下に当てはまると、どんなに高い商品力があっても売れないという。
1 商品の良さを伝えるのに、1分以上時間がかかる
2 競合商品よりも優れている点を説明できない商品
3 抽象的な言葉でしか長所を伝えられない商品

マーケティング用語で、AIDMAとかAISASというのがあるが、そこに“D”をつけたD-AIDMA、D-AISASが説かれる。
“D”とは、“Difference”のことで、単なる「差別化」とは異なる。
こうした説明の理解を助けてくれるのが、「鍋専用豆腐」や「大きな袋のポップコーン」などの具体的事例である。

読んでいて思うのは、具体的な問題を抱えていると、あれこれイメージが湧いてくるということ。
そういう意味では、教養的に読むよりも、解決策を探している人の方が、よりヒントは多いと思う。
しかし、「成功事例を真似たものは、成功事例の劣化版でしかない」という指摘も鋭い。
「どのように応用するか」は、自ら知恵を絞らないといけないのだろう。

具体例も多く、理解はしやすい。
考えるヒントにもなるし、小さな企業の方は是非とも一読すべき一冊であると思う・・・

posted by HH at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする