2015年04月30日

【日本の論点2015-2016】大前研一



前著『日本の論点』を読んだのは、まだ半年ほど前であるが、現代の問題点はタイムリーに把握していたい。
そんな意味で、「積ん読」リストから早目に引っ張り出したのがこの本。

今の日本にとって、最大の課題は何かというと、「約1000兆円を越える巨額な国家債務をどうするかという問題に尽きる」と冒頭で述べられる。
自力で解決するには、「超倹約」か「超増税か」あるいは「両方か」しかないとする。
そのくらいは素人でもわかる。
だが、具体的にどう解決すれば良いのか。
それをこの本を読んで考えて欲しいということらしいが、まさにこちらも望むところである。

内容は、25のテーマを取り上げ、それぞれについて論評する形となっている。
傾聴に値する意見ばかりでなく、個人的には違うと思うものもある。
それはそれで、思考トレーニングになっていいと思う。
たとえば、日本を活性化させるアイディアとして、東京の大規模開発を挙げている。
通勤時間を15分短縮させられれば、約4,000万円を有効活用できるとする。
なかなかの意見だと思うが、そのためにウォーターフロントに住みたいとは思わない。
時間はかかっても、東京西部の今の住環境に満足しているものとしては、「人生はロジックだけではない」と言いたくなる。

アマゾンの成功を基に、ネット通販の王道を語る。
(ポータル、クレジットカード、物流を抑えること、豊富な会員がいればポイント還元サービスも可)
ソニーの不振原因、フランス人COOを迎えた武田薬品、日産飛躍のためにはゴーン退任がベストシナリオなどは、分析力のない身には新鮮な話である。

一方で、この方は従来から「移民・原発推進」派であり、この点ではここでも主張はかわらない。
個人的にはどちらも反対であり、大前研一氏のロジックもまったく納得できるものではない。
そこはこちらも胸を張って主張したいと思う。
ただ、「業界再編すれば電力は安定し、コストは下がる」という意見は、実に参考になる。

大前研一氏は、経済界の人だと思うが、マレーシアのマハティールやシンガポールのリー・クアンユーなど内外の政治家にもアドバイスしているから、その活躍の範囲は経済界に留まらない。
国家のあり方に対する意見も参考になる。

シリア戦に巻き込まれる可能性のある集団的自衛権、安倍流『普通の国』の危うさ、お金をムダにしない「ドイツ連邦制」の仕組み、自民党外交は政治家の“属人的な外交”になっていることから生じる問題等々はやはり、知られざる内容であり、大いに勉強になる。
「考える」ことが重要なのは言うまでもないが、そのために必要なのは、「事実を正確に知る事」。
大前研一氏の本は、「事実を知る」ということと、そこから「どう考えるか」という両面で学びは大きい。

日常生活を送りながら、考えることを続けていかないといけないが、これからも大前研一氏の本は手放せない。
そんな思いを新たにさせてくれる一冊である・・・
     
    
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2015年04月24日

【問題解決ラボ】佐藤オオキ



第1章 デザイン目線で考えると、正しい「問い」が見えてくる
第2章 デザイン目線で考えると、ありそうでなかった「アイデア」が見えてくる
第3章 デザイン目線で考えると、ホントの「解決法」が見えてくる
第4章 デザイン目線で考えると、刺さる「メッセージ」が見えてくる
第5章 デザイン目線で考えると、見えない「価値」が見えてくる

個人的に、いくつか気にかけている「キーワード」がある。
「問題解決」はその一つであり、そんなこともあって、目に留まった一冊。

と言っても、実は著者はデザイナー。
最近、「デザイン」があちこちで注目を集めているが、この本は「デザイン目線」で問題解決を図ろうとしたもの。
「デザインで問題解決」と言っても、正直ピンとこなかったし、そんな本だと知っていたら手にとっていなかったと思う。
ところが、知らずに手に取ったことが幸いしたようである。

サブタイトルに、「『あったらいいな』をかたちにする『ひらめき』の技術」とあるが、その一つが「半歩前に出る」感覚と紹介される。
「『誰もが見たことないもの』は『誰も求めていないもの』と紙一重。
理想は『本来はそこにあるはずなのになぜかない』ものを『補充する』くらいの感覚」という説明がある。
なるほど、何となくこの辺の「感覚」は感じられる。
これが、デザイナーならではの表現なのかもしれないと思って読み進める。

・「超遅読法」の勧め=二度見で情報は何倍にもなる
・何事もできるかできないかは別にして、「とりあえずやってみる」ようにしている
・「チャンスの3重構造」=「訪れる」(回数はその人次第)、「認識できるか」、「つかめるか」
・「めんどくさい」にトライすれば、チャンスも課題も見えてくる
読んでいくと、中は短い章に分かれ、それぞれコンパクトにヒントが詰められている。

・アイデアは探さない
・「当たり前」をかけ算して「メニュー」にないアイデアを
・チマチマメモ術
・ものごとを全否定も全肯定もしない、白黒はっきりつけない「グレー思考」
・当たり前を疑うためのフィルターを育てる
・すでに存在するものにアイデアを付加することも立派なデザイン
・一見草食系だけど中身は肉食系の「ロールキャベツ化」
なかなか論理的ではない、感覚的な世界が展開される。

デザイン思考を構成する3つのカギとして、「整理」「伝達」「ひらめき」が説明される。
・「整理」は、シンプルにすること
・「伝達」は、伝わるコミュニケーション(デザインとは伝えるための手段)
・「ひらめき」は飛躍させること
このあたりは、わかるようでいて難しい。

デザインとは、現状を改善する糸口を見つけることであるという。
そして、デザイン思考は誰でも身につけられると。
そう簡単にいくかどうかはわからないが、意識はしていきたいと思う。
導入部の雑談が、本文の主張を絡めてきちんとオチでいかされている。
内容とは別に、そんな文章の巧みさもあって、読み心地の良さを感じる。
そんなところにも、デザイナーならではのセンスを感じてしまう。

あらためて、「デザイン」に注目してみたいと思わせられる一冊である・・・

     
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2015年04月18日

【今すぐ妻を社長にしなさい】坂下仁



第1章 妻が社長になればすぐ裕福になれる
第2章 妻ほど社長に向いている人はいない
第3章 妻の会社がうまくいく堅実なビジネス
第4章 妻と一緒に幸せを手に入れるために

何とも刺激的なタイトルに惹かれて手に取った一冊。
中味を読まなくても、奥さんを社長にした法人を作ってビジネスをするのだろうというくらいの想像はつく。
問題は何をするか、だ。

著者の経歴を見ると、3大メガバンクの一つに勤務する現役の銀行員で、株取引で失敗して借金を抱え、仕事は何食わぬ顔でこなしながら、副業で窮地を脱したということのようである。
嫌が上にも期待が盛り上がる。

そんな期待感から読み始めたのであるが、はじめはひたすら「妻を社長にすればいかに税金を少なくできるか」がくどいくらいに解説される。
同じ事業でも、個人でやると法人でやるのとでは、税金の負担が異なり、法人の方が有利ということなのであるが、それを「妻を社長に」ということでくどくどと続く。
それがタイトルなので仕方ないと言えば、仕方ないのであるが、イライラが募る。

そもそも、いくら節税に有利と言われても、それは「稼いでこそ」の話である。
稼げなければいくら節税になると言っても意味はない。
「この人は一体何をして稼いでいるのか」という疑問がなかなか解消されない。
それに結局は「節税本」なのだから、それに徹すればいいと思う。
「お金とは他人からの感謝の気持ち」ときれいごとを並べても、「なら感謝の印として“みんなのためになる税金”を払ったら?」と言いたくなる。
やっていることは、『合法的な脱税』であり、それが悪いとは言わないが、個人的には「積極的に税金を払う人は尊敬しないといけない」と考えていることもあり、セコセコと節税に明け暮れる人間があまりきれいごとを言うなと言いたくなる。

それはそれとして、結局のところ、著者のやっていることは不動産投資だとわかる。
それを法人としてやっているだけで、大して目新しいものではない。
むしろよくある「大家さん本」の方が、いろいろとノウハウが書かれていて参考になる。
この人も、「奥さんをどうやって説得したのか」、「どういう物件を選んだのか」、「資金繰りはどうしたのか」など、個人的には興味深いところがあったので、そうした部分を書いて欲しかったと思うところである。

せっかくのノウハウがありながら、それが書かれていないということで、個人的には非常に残念に思う。
まぁ、タイトルにあるように、「同じことでも視点を変えることによって差別化できる」という意味では参考になったと言える。
それ以外には、得るもののない空疎な一冊である・・・
   
     
   
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2015年04月17日

【クローズドノート】雫井脩介



 雫井脩介というと、どうしても『犯人に告ぐ』に代表されるミステリー作家というイメージがあるのだが、実は恋愛小説も書いているようである。
この本は、映画で観て、原作を読んでみたくなったものであるが、映画の記憶が強く残っているため、少し時間をおいて今回読むことにした次第である。

 物語の主人公は、女子大生の香恵。
ある日、部屋の窓の外に、香恵の部屋を見上げている一人の男性に気がつく。
そしてその後、押し入れの奥から一冊のノートが出てくる。
長いこと気が付かなかったが、それはどうやら香恵の部屋の前の住人の物らしいとわかる。
ノートの持ち主の名前は真野伊吹。

 ノートに書かれている内容から、伊吹は小学校の先生だとわかる。
4年2組の担任で、クラスの生徒たちを「太陽の子」と呼んで、ノートには日々の学校での様子が書かれている。
そして思いを寄せる隆という名の男のことも書かれている。
毎日少しずつノートを読む香恵。

 一方で、バイト先の文房具店にやってきた客の石飛隆作と知り合う。
万年筆を売る香恵と買いに来た石飛隆作。
密かに心惹かれる香恵。
ノートに綴られた伊吹の恋がオーバーラップする。

 すっかり伊吹に共感した香恵は、思い切って伊吹に会いに行こうと決意する。
2駅先の小学校だと当たりをつけ、香恵は伊吹の残して行ったノートを持って、その小学校を訪ねていく。
そしてそこで、思いもしない事実に出会う・・・

 映画で観ていたせいか、初めて読むにもかかわらず、2度目の読書のような感覚がつきまとう。
それでも、やはり本には本の味わいがある。
そして、映画を観ていたせいか、伊吹とそれを演じた竹内結子が重なり合う・・・

 ラストはやはりウルウルとしてしまう。
良い物語だと心から思う。
実はこの物語は、著者の姉がモデルになっているのだと知る。
そんな背景もあったとわかったのは、この本を読んだおかげでもある。
観てから読んでも良し、読んでから観てもよいかもしれない。
じっくりと味わいたい物語である・・・

      
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2015年04月16日

【逆転の競争戦略】山田英夫



第1章 リーダー企業の強みは永遠か
第2章 リーダー企業はなぜ転落するのか
第3章 業界破壊者の戦略
第4章 侵入者の戦略
第5章 挑戦者の戦略
第6章 リーダー企業の対応

著者は、早稲田大学ビジネススクールの教授。
その教授が、タイトルにある通り、「逆転の競争戦略」について解説した一冊である。
ここでいう「逆転」とは、「2位の企業が1位の企業を『逆転』する」だけではなく、「1位企業の『強み』を『弱み』に変える」戦略の意味もかけられているのだという。

初めに、いわゆる老舗企業などのリーダー企業が衰退する例が挙げられる。
パソコンでは、マイクロソフトが「エクセル」や「ワード」のアプリケーションソフトや「インターネット・エクスプローラー」などをウィンドウズに同梱する方法で先行する企業を駆逐し、グーグルは無料検索でその地位を確立した例である。
タワーレコードは倒産し、百科事典の平凡社も壊滅的打撃を受ける。
リーダー企業といえども、その地位は安泰ではない。

リーダー企業の地位が崩される理由は、その地位を脅かす敵が登場するためで、その敵は3つに分類される。
業界そのものを破壊してしまう「業界破壊者」、違う業界から侵入してくる「侵入者」、そして2位以下の企業の下剋上である「挑戦者」である。
「業界破壊者」の例としては、CDを圧迫した音楽配信、電子手帳に対するiPhoneなどであり、「侵入者」としては、銀行業界に進出したセブン&アイホールディングスやオリックス、「挑戦者」としては、トヨタ自動車に対する日産自動車などである。

そして上記の3つの敵については、それぞれ実例を上げて詳説される。
実例に採りあげられるのは、名だたる有名企業ゆえ、具体的イメージも湧いて理解しやすい。
リーダー企業からも、なぜそうした逆転戦略に対抗できないかが説明される。
それらは、「企業資産の負債化」、「市場資産の負債化」、「論理の負債化」、「事業の共喰化」として説明される。

書いてあることは、特段難しいことではない。
すべて、身近な事例を、学術的に整理分類したといえる内容である。
「事業の共喰化」と言われてもピンとはこないが、トヨタ自動車は車の販売減につながるカーシェアリングには参入しにくいと言われれば、理解は早い。
言うなればこの本は、そうした「実例の学術的言語化」とでも定義できそうな位置付けである。

こうした本は、ただ読んでいても、単なる事例の羅列でしかないだろう。
具体的に「(たとえば)自分の仕事(=業界)ではどうだろうか?」といった目的意識がないと、あとには残らない気がする。
漫然と読んでいても、読み流して終わりになる気がする。
まぁ、それでも実例豊富なため、単純に読んでも面白いといえるかもしれない。
ただ、やはりこの手の本は、何かを得ようとして読むものであると思えるのである。

何か自分の仕事(=業界)に活かせないだろうか。
そんな目的意識を持って、読みたい一冊である・・・


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2015年04月12日

【社員と熱狂する経営】斎藤峰彰



Introduction 「超体育会主義」がブランドづくりの礎
Chapter 1 クールなブランドを支える熱いハートの人材育成
Chapter 2 「想像を越えたおいしさ」を生むものづくりの秘密
Chapter 3 「闘争心」「向上心」が販売力を高める
Chapter 4 「おいしい!」をマネジメントする発想
Chapter 5 「食のスーパーブランド」へのヒストリー

著者はセゾンファクトリーの創業社長。
セゾンファクトリーについては、いつも観ているテレビ東京の『カンブリア宮殿』で採りあげられていて、初めて知ったという経緯である。
実は正直なところ、「セゾンファクトリー」の名前は聞いたことはあったが、西武の「セゾン」グループの会社だと思っていたのだ。
「旬の工場」という意味から付けられた社名だという。

セゾンファクトリーは、素材の持っているおいしさを生かした製品で人気を得ているということで、これまで発展を遂げてきている。
この本は、そんな会社の創業社長の本ということもあって、何らかのヒントが得られるかもしれないと手に取った一冊である。

いきなり紹介されるのは、「超体育会主義」。
明るい体育会のノリが社内に溢れているそうで、それは来社したお客様を送迎する態度であったり、トイレのスリッパをきちんと揃えるということであったり、夏のビアパーティでは、全員がプールに放り込まれるノリだったりするらしい。
(このビアパーティでは、取引先もすべてプールに放り込まれるらしい)

そんな体育会気質の会社では、社員に4つの基本を求めているとのこと。
1. うそをつかないこと
2. 人の嫌がることをしないこと
3. 人に感謝すること
4. 地域に対して貢献すること
本社は山形の山の中にあるということで、社員も現地で募集しているらしく、「やんちゃ」な社員も多いらしい。
そんな会社ならではの基本なのかもしれない。

売っている商品は、素材の良さを生かしたおいしいものだという。
お値段はちょっと高めのようである。
そのため、販売ルートは主としてデパ地下らしい。
著者は、「百貨店(デパ地下)とスーパーは違う」と断言する。
百貨店は、「特別なものを買いたい人が来店する」という。
「商品だけでなく、食文化そのもの」を買いに来るのだと。
だから、安さが主眼のスーパーには売り場を求めないのだろう。

そうしたこだわりは伝わってくるものの、気がつけばそれですべて語り尽くせてしまう内容。
中味も写真がふんだんに使ってあり、行間を埋めるのに苦労している雰囲気が伝わってくる。
事実、あっという間に読み終えてしまった。
要はおいしいものを作らねばならないということと、社員教育ということが大事なことらしいが、それにしても、もう少し何かを得たかったと思う一冊である・・・

  
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2015年04月11日

【怒り】吉田修一



気がつくと、小説については「いつも同じ作家のものばかり」となりがち。
たまには読んだことのない方の作品にも挑戦してみようと手に取った一冊。

冒頭で、共働きの夫婦が殺される。
現場には、被害者の血を使って書かれた「怒」という文字が残されていた。
警察の調べで、犯人は山神一也とわかるが、警察はその足取りがつかめない。
そしてその後、4つの物語が平行して進む。

一つ目の物語は、千葉の漁港で働く槇洋平とその娘の愛子。
愛子は家出をして、歌舞伎町のソープランドで働いていたところを保護センターで発見され、父親の洋平と自宅に帰る。
愛子は子供の頃から少し精神的に遅れているようである。
帰ってきた愛子の目に、漁港で働く田代の姿が目に入る。
田代はいずこからかフラリとやってきて、働くようになった男で、過去は一切わからない。

二つ目の物語は、ゲイの藤田優馬。
末期癌の母を抱え、兄夫婦がいる。
そんな優馬は、ある日行きつけのある場所へと向かう。
そしてそこである男と出会い、強引なSEXをしたあと、自分の部屋に連れていく・・・

山神一也を追うのは、八王子警察署捜査一課の部長北見と警部補の南條。
テレビの特番で集まった全国各地からの目撃情報をあたっていく。
そして高校生の泉。
母と二人暮らしであるが、母の不倫から沖縄に逃げるように引っ越しする。
そこで辰哉という同級生と仲良くなり、無人島に連れて行ってもらうようになる・・・

各物語には、どこからかやってきた若者が1名登場する。
それが果たして山神一也なのか。
各物語に展開されるドラマの中で、それが一つの見どころとなる。
父娘の物語、ゲイの青年の物語、ある事件の被害に逢う女子高生、各々のドラマは単体で十分興味深く、本筋であるはずの山神一也のことをついつい忘れてしまう。

同時並行的に別々のドラマが走るという小説は珍しくはない。
ただ、それが4つもあると、なかなか忙しい。
それぞれのドラマに引き込まれていくうちに、登場人物が増えていき、終いによくわからなくなるのである。
その部分は、人によりけりかもしれない。

最後の結末は、人によっては意見がわかれるかもしれないと感じられる。
個人的には、未完的な結末がやや気になってしまった。
山神を追っていた刑事の気分そのままである。
それが狙いでもあるかもしれないし、それはそれ。
いずれにしても、この著者の他の本も機会があれば読んでみようと思わされた一冊である・・・

     
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2015年04月08日

【ファースト・ペンギン 楽天三木谷浩史の挑戦】大西 康之



第1章 天国と地獄
第2章 ファースト・ペンギン
第3章 電撃的連続買収
第4章 冒険者たち
第5章 受け継がれるDNA
終 章 ファースト・ペンギンの育て方

タイトルにあるファースト・ペンギンとは、シャチがいるかもしれない氷の下の海に、餌を求めて最初に飛び込むペンギンのこと。
この本は、日本の代表的ネット企業である楽天の三木谷浩史社長を、「ファースト・ペンギン」にたとえて描いた一冊である。

第1章では、球団創設から9年目というリーグ最短で優勝した東北楽天イーグルスの話。
喜びの中で、同時に「二重価格問題」が噴き出し、三木谷社長は窮地に立たされる。
父親の葬儀が重なるという中で、この危機を乗り越える。
時折、メディアなどに取り上げられるものの、普段の三木谷社長の様子など知る術もない。
アメリカの大物社長が集まる「サンバレー・カンファレンス」に日本からソニー社長とともに2人だけ呼ばれていることが紹介される。
既にその行動は国境を越えている。

もともとハーバードに留学していたこともあり、英語は堪能。
楽天の社内公用語が英語であることは有名だ。
しゃべるだけでなく、シリコンバレーのコミュニティにも入り、著名な大物をアメリカの自宅パーティ招待する。
そんな中から、ViberやEbatesなどの買収案件が生まれる。

国内でも役員たちを引き連れて谷川岳に登る役員合宿を開催する。
第4章では、そんな三木谷社長の周囲に集まる役員たちが紹介される。
私の元同僚の名前もあったりして、言い得ぬ差を感じてしまう。
この本は、三木谷社長本人が書いた本ではないが、だからこそ、周囲の役職員や家族の話、そして外から見た三木谷社長の姿が客観的に描かれていて、興味を惹かれるところ大である。

この本では、子供の頃からのエピソードや学生時代テニス部主将だったこと、興銀時代のエピソードなどが、折々挿入されており、華やかなエピソードとともに興味深いところであった。
彼我の差は随分と開いてしまっているが、それを嘆いても仕方あるまい。
自分は自分なりに、胸を張って歯を食いしばって最後まで走り切ろうと思わずにはいられない。

三木谷社長の人生の指針は、“Get Things Done”(やり切れ)だと言う。
自分も心掛けたいと思う。
そんな決意を新たにさせられる一冊である・・・

   
   
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2015年04月04日

【「自分メディア」はこう作る!】ちきりん



裏を知る篇
第1章 出発点
第2章 ブレーク!
第3章 自分のメディア
第4章 今、そしてこれから
表を知る篇
GROWTH
CAREER
RELATION
EDUCATION
POLITICS
BUSINESS

著者は、私が個人的にかねてから注目しているブロガー。
既に何冊か著書を出版し、私も読んでいるが、今回は自身のブログ『Chikirinの日記』について書かれているとあって、興味津々で手に取った次第。
ブログをやっている者としては、どうやって人気ブログと言われるブログになったのかは、大いに知りたいところである。

もともと著者は日記をつけていたという。
2004年に友人のブログを見て、ブログなるものを知ったという。
そしてこれはいいと思い、「ブログを書く」というより、「ブログサービスを使って日記を書く」というつもりで始めたのだという。
その記念すべき最初のブログ記事は2005年3月5日にアップされている。
私が最初に始めたブログより1年半早い。

ブログは、「はてな」を使っているが、その理由は日付のわかりやすさ。
独自ドメインにはこだわらないと言い、ニックネームの「ちきりん」の由来が語られる。
記事を書く順番は、
1 伝えたいメッセージが決まる
2 そのメッセージを伝えるための理論構成を決める
3 文章に必要な材料を集める
4 文章を書く
というものらしいが、個人的には自分と同じだと感じる。

ブログを始めて3年ほどした頃、「はてなブックマーク」が大量につけられるようになったという。
最初のエントリがその時のトピックスであり、検索にかかったようである。
ここで当時の有名ブロガーに発見されて注目され、ヤフーにもリンクを張られるようになったらしい。
もっとも、当時は批判コメントも大量にあったというから、支持ばかりではなかったようである。

注目を集めると、それまでなかった反応が様々返ってくる。
そんな中、著者は「自分のメディアを作るための5カ条」を作り運営を続けていく。
その5カ条とは、
1 コンテンツを散逸させない
2 ネットの中の人にはならない
3 つながる世界でつながらない
4 オープンな場所に居続ける
5 信用力を売らない
である。

1は、「すべての価値あるコンテンツは自分のブログ『Chikirinの日記』に集める」というもの。
それによって常に自分のブログがアクセスを集めることになる。
2は、ネットを見る人だけがわかるようにしないということ。
日常生活では使わない「ネット用語」を使うと、興味を持って見にきた“ネットに頻繁に接触しない人”に敬遠されると考えてのようである。
3は、ネットで流行となるトピックは扱わないということ。
4は、メルマガやネットサロンというところとは距離を置き、「無料で誰でも読める」場所にいること。
5は、お金のために広告宣伝のようなことはしないということ。
このあたりは、個人の信念・考え方だろう。

人気ブログとなって、本も出版したり、なんだかんだで収入も年間5百万円くらいあるらしい。
それはそれで凄いと思うが、それでも「自分の考えたことを文章化すること、自分の思考を言語化し、構造化すること、その作業自体が楽しい」と語り、たぶんその信念でこれからもブログを続けるのだろうから、その考え方自体がすばらしいと思う。

後半部分は、ブログのエントリからいくつかが選ばれて載せられている。
やはりその考え方は大いに刺激になるものばかりである。
「自分の思考の言語化」は、自分でも続けていきたいと強く思う。
改めて、多いなる刺激を受ける一冊である。
    
     
   
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2015年04月03日

【成功する子失敗する子】ポール・タフ



原題:How Children Succeed
    Grit,Curiosity,and the Hidden Power of Character

序 章 明らかになる新事実
第1章 失敗する子、しない子
第2章 何が気質を育てるのか
第3章 考える力
第4章 成功への道
第5章 わたしたちに何ができるのか

2児の父親としては、常に子どもの教育に何が必要なのか、を意識している。
この本のタイトルは、そういう意識のアンテナにジャストミートしてくる。
著者はフリーのジャーナリスト。
子供の貧困と教育政策を専門に行っている方のようである。

子供が生まれたことをきっかけに、子育てに着目した著者は、周りがいわゆる「知能至上主義」という教育重視の環境にあることに気がつく。
早く始めてたくさん練習するのが良いとされる中で、一方で一部の専門家は、「子供の発達に必要なのはたくさんの情報を脳に詰め込むことではない」と主張する。
本当に重要なのは、それとはまったく異なる「気質」、粘り強さや自制心、好奇心、誠実さ、ものごとをやり抜く力、などの「非認知的スキル」=「人格の特徴」=「性格」であるという。

何だか堅い文章に堅い言葉が続く。
内容も軽い読み物というよりも、学術的である。
暴力がはびこる高校、貧困に悩む医師などの具体例が続く。
そして子供時代の逆境を数値化すると、その数値と成人してからの「肥満、鬱、性行為開始年齢、喫煙歴、癌他の病気」などが見事に相関関係を成していたという。
まぁ、何となく想像できる結果ではある。

子供が将来成功するためには、必要な「気質」というものがあり、それは、
・やり抜く力
・自制心
・意欲
・社会的知性
・感謝の気持ち
・オプティミズム
・好奇心
などである。
こうした「気質」を育てるのは、何かを探っていく。

子供時代の逆境が、それに悪影響を与えるとしても、反対にハグや慰めのような愛情が良いかと言うと、それだけでもないという。
それは、「子供にあった大きさの逆境、転んでもひとりで起き上がる機会」であるとする。
子供の成功に影響を与える「性格の強み」は、生まれながらのものではなく、親や教師や近所の人など周りからの支援によって可能となるという結論には、ほっとさせるものがある。

様々な例を検証しながら、こうした結論を導いていく。
子供が将来成功に至るには、子供時代に親が適切に関わることが重要だということに異論はない。
この本にあるような真面目な実例検証を読めば、アメリカだけの話ではなく、すべての人に当てはまる話であると思う。
そうした意見を「お堅く検証しているところ」が、この本の面白いところかもしれない。

深く考えず、ただ良い学歴があればと、“お受験”に血眼を上げている親には読ませたい内容である。
親はいつまでも子供を保護し続けるわけにはいかない。
真に人生を切り開いていける力を身につけるには、何が必要なのか。
そんなヒントの詰まった一冊である・・・


    
posted by HH at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする