2015年06月28日

【比較ケースから学ぶ経営戦略】松田久一



Prologue 潰れない会社はない
Chapter 1 会社の戦略を読む
Chapter 2 変わる顧客を基軸にする
Chapter 3 シーズを生かして差異づくりをする
Chapter 4 ライバルに競り勝つ
Chapter 5 限られた資源を集中させる
Chapter 6 人づくりに力を注ぐ
Chapter 7 戦略をさらに深く読む

常日頃から、会社の経営戦略には興味を持っている。
自分たちの会社にふさわしい「経営戦略」は何だろうといつも意識しているからである。
そうなると、この本のようなタイトルを見るとついつい手にとってしまうのである。
しかも「比較ケースから学ぶ」とある。
机上の空論よりも、現実の例の方がはるかにわかりやすいと思うこともある。

さて、そうした理由で手に取った本であるが、中味を見ていくと、さっそくコダックの経営破たんの例が挙げられている。
写真フィルム市場が短期間で消えてしまうという大波に転覆したのであるが、同じ状況下でありながら生き残った富士フィルムが対比される。
この例は、昨年読んだ『魂の経営』とかぶるところである。

両社の明暗を分けた理由を、著者は「5つの行動の差」として紹介している。
@ 顧客ニーズのとらえ方の差
A 顧客のイメージングニーズを満たす製品サービスの差
B 写真フィルム市場での競争力の差
C 多角化事業への集中投資の差
D 組織づくりの差

Aは言葉だけだとわかりにくいが、要はデジタルカメラと撮った写真のプリントサービスのことであるが、こうした言い回しが何ともわかりにくい。
ここの部分は、むしろ『魂の経営』の方が参考になる。

持続的に成功するための戦略の原則を、著者は5つ挙げる。
@ 顧客 変わる顧客を基軸にする
A 差異 シーズを生かして差異づくり
B 競争 現場の競争で少しでも競り勝つ
C 集中 限られた社内資源を、集中させる
D 組織 組織作り、人づくりに力を注ぐ

それぞれの具体例として挙げられているのは、
@ エルメスと三越
A 花王とアップル
B アサヒビールとキリンビール
C GEとシャープ、フィリップス
D トヨタ自動車、ファーストリテイリング、グーグル
である。

個人的に今一番参考になったのが、Aの「差異づくり」である。
「差異づくり」とは、具体的に、
「製品革新」:他社が同じようなサービスをまったく提供していないような独占的な差異を生む
「差別化差異」:他社とは差別的な価値や品質を提供する
「コスト優位」:他社と比べて低価格である
となっている。
まさに自分たちが今やっていることだから、よけいしっくりとくる。

「会社とは潰れることを前提に考える」という意見もなかなか新鮮であった。
言われてみれば確かにその通り。
そして、「会社を経営するというのは危機をどう乗り切るかを考えること」という意見もしかり。
どんな参考書を読んでも、これで大丈夫というものなどない。
こうした事例から、エッセンスを学び取るしかない。

参考になった差異づくりでは、「コダックはキーデバイスを製造しなかった」、「エルメスの差異づくりは原料と職人技」である。
よそと同じことをやっていては、特に中小企業は難しいだろう。
こうした具体例に基づく検証は、やっぱり参考になる。
専門的な勉強をしてきたわけではない身としては、読書に頼るしかないが、その時にこうした本は大いに役立つ。

実際の仕事に役立てたいと思わせられる一冊である・・・

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2015年06月22日

【思考力を鍛える50の哲学問題】小川仁志



下手の横好きで、個人的に哲学は大好きである。
カントやヘーゲルといった哲学者について学ぶこともさることながら、日常生活において、哲学的に考え議論することはもっと好きである。
そんな性分ゆえ、タイトルを見ただけで手に取った一冊である。

著者は当然ながら哲学者。
念頭にあったのは、マイケル・サンデル教授の「これからの『正義の話』をしよう」である。
同じとはいかなくても、似たような議論を期待してページを開く。

冒頭では、「哲学とは、物事の本質を議論する学問」との説明がある。
現代の難問を考えるにあたり、50人の哲学者から50の哲学概念を選んだという。
思考のトレーニングと同時に哲学の入門書の意味合いも込められているようである。
そしてさっそく、さまざまな問題が出てくる。

・なぜ年をとると1年が早く感じるのか?
・人間はどこまで賢くなれるのか?
・なぜいじめはなくならないのか?
・人はなぜ勉強するのか?
一見してわざわざ「哲学」を持ち出すほどではないような問いであるように思う。
その“違和感”は、残念ながら正しいものであった。

たとえば最初の「なぜ年をとると1年が早く感じるのか?」について、著者はベルクソンの「純粋持続」という考え方を持ち出す。
ベルクソンによれば、時間は人間の内側から生きられるものだという。
そこから派生して、「時間のとらえ方を変えると、人生はまったく違うものになる。1年が早いなどという必要もなくなる」と著者は語る。
しかし、その意見はそもそもの問いに対する答えなのかと思えてならない。

次の「人間はどこまで賢くなれるのか?」についても、ヘーゲルの『絶対知』の考え方を持ち出すが、「人間がもうこれ以上進化しないと考えるほうがおかしい」という結論は、ヘーゲルを持ち出すまでもないものである。
ヘーゲルの『絶対知』を説明したかっただけなのかもしれないが、それならそもそもの問いが不要だろう。
さらに、ヘーゲルの『絶対知』とは、わずか3ページの説明で説明できるものなのかという疑問もある。

サンデル教授が、「5人を助けるために1人を殺すことは正義か」という鋭い問い掛けから議論を展開させたことと比較すると、どうもピントがボケている説明が続く。
各問い掛けと、それに対する解説に使われる哲学と導き出される考え方のアンバランス。
一言で言えば、このアンバランスが、「なるほど感」をもたらさない。

もっとも、『最大多数の最大幸福』を説いたベンサムの功利主義を車に当てはめたのは、「なるほど感」があった。
「車は事故による犠牲者がいても、車のおかげで幸福になる人の数の方が圧倒的に多いから、これをやめようとはない」というものである。
こうした例はごくわずかであり、あとはどうも読んでいて苦痛になる解説が続く。

・3Dプリンターの限界は?
・どうしてストーカーになるのか?
・なぜ鏡を見るのか?
・なぜ人は動物園をつくるのか?
・日本人はどうして英語が苦手なのか?

せっかくの問い掛けであるが、どれもこれも解説に使われている哲学の説明とマッチしていない。
無理やりこじつけられている気がするものもかなり多い。
哲学の解説をやりたかったのだとしたら、著者は「完全に外してしまった」と言わざるを得ない。

残念ながら、読む価値のある本とは言い難い。
哲学者だから哲学の面白い本が書けるとは限らないということなのだろうが、残念な一冊である・・・

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2015年06月20日

【これから日本で起こること】中原圭介



第1章 アベノミクスの失敗は最初からわかっていた
第2章 アメリカ型資本主義が国民生活を疲弊させる理由
第3章 インフレ経済が日本の中間層と地方経済を苦しめる
第4章 なぜ円安でも日本経済は回復しないのか
第5章 これから何が起こるの〜2017年、日本の試練がやってくる

個人的に注目しているエコノミストである中原圭介氏の一冊。
ビジネス界で生きている以上、これから日本経済がどうなっていくかについては、興味を持たざるを得ない。
タイトルからして無視できない一冊だと感じて手に取った次第。

著者は2013年の一年間に7冊の本を書いたという。
通常は2〜3冊だというが、それだけアベノミクスに対する警鐘を鳴らしたかったらしい。
著者は、経済学者による「権威盲信」を戒める。
歴史や現実の企業の動きを考えれば、経済の予測は難しくないが、多くの経済学者たちは「ポール・クルーグマンがそう言ったから」という理由で、それまでの「常識」を疑わないと言う。
それはまるで、中世のキリスト教絶対主義のようであるとする。

経済政策とは誰のためのものか?
この問いに、著者は「普通の暮らしをしている国民のため」と答える。
一見当たり前のような問い掛けがなされ、答えが示されているのは、「今の経済政策が普通の暮らしをしている国民のためになっていない」という著者の思いがあるのだろう。

アベノミクスがうまくいかない理由を著者は2つ挙げる。
アベノミクスの目的は、
@「量的緩和で低金利を促すことにより企業の設備投資が大幅に増える」
A「量的緩和がもたらす円安により、輸出が大幅に増えて国民の所得が上がる」
であるが、これに対し、きっちりと反論する。

すなわち、
@需要が見込めない中では、企業は設備投資を増やさない
A海外の需要が減少しているため、輸出は増えず、円安が進んでも価格は下げず、賃金にも転嫁しないため国民の所得は上がらない
とする。
「Jカーブ効果」も今の日本には当てはまらないと、経済学の理論を真っ向から否定する。
もっと現実をよく見ろというのが、著者のメッセージである。

また、景気が回復しているアメリカの“成功事例”も中身の検証が必要とする。
今は株主がCEOに短期的な株価対策を求め、CEOは安易な人件費削減と自社株買いに走る。
その結果、株価は上昇して株主は潤うが、解雇された従業員は所得が減少し、結果、格差の拡大につながっている。
確かに、言われてみれば、それがアメリカでおこっている現象である。

消費税増税によって、ぐらついたアベノミクスであるが、著者は消費税が原因ではないと言う。
日本でもアメリカのように一般国民の所得が富裕層と大企業に移転しているからという。
GDP成長率よりもその中身が大事という意見は、もっともである。
そして日本人の価値観を反映した日本企業の経営姿勢は、日本が世界に誇るべきもので、アメリカ型に追随する必要はないと語る。

著者の本を次々と読み漁るのは、そのわかりやすさに他ならない。
難しい経済理論を振り回すではなく、実に簡単な理屈で理論展開する。
クルーグマンの理論についていける人は少ないと思うが、著者の理論にはみんなついていけると思わせられる。
ちなみに、今後の見通しとしては、2017年には日本経済が混迷し始めるという。
2016年中には株を手放した方がいいらしい。
今後注目していきたいと思う。

まだまだ次々に著書が出るだろう。
しっかりフォローして日本経済をウォッチする目を養っていきたいと思うのである・・・

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2015年06月17日

【自分を敬え】辻秀一



CHAPTER 1 自分を敬え。
CHAPTER 2 自分を信じよ。
CHAPTER 3 自分を鍛えよ。
CHAPTER 4 自分を磨け。
CHAPTER 5 自分を鼓舞せよ。
CHAPTER 6 自分を育てよ。

本書は、サブタイトルに「超訳・自助論」とあるが、英国の作家サミュエル・スマイルズが150年あまり前に執筆した「自助論(Self Help)」について、その本に込められたメッセージを超訳で紹介するものである。
「自助論」は正式には『西国立志編』という邦題で出版され、福沢諭吉の『学問のすゝめ』とともにベストセラーになったらしい。
学校で習った“Heven helps those who helps themselves.”という言葉は、この本が出典だという。

そんな自助論を6つのテーマに分けて語っていく。
・運命は自分の力で変えられる
・勉強なくして有能になることはできない。勉強をすることにより、人は才能を活かすためのさまざまな新しい知識を得ていく。
・一歩、前へ。
・知恵を極め、人格を向上させ、幸福で役立つ人間になる。
書かれていることは、あまりにも当然過ぎて、時として青臭い感じもする。

・幸福さえも習慣にできる
・人格こそが財産
・考えることと感じることは個人そのもの
・人格は世間という潮流の中で形成される
しかし、言われてみれば、実に鋭く心に刺さってくる言葉が多い。

・人格が社会の良心である
まさにその通りだろう。
自分は果して社会に貢献できているだろうか。
・素直さとは外界に自分の扉を開くこと
自分は扉を開けているだろうか。
・高潔な人格を有する人は、生き方が真摯であり、常に人格を磨いている人
自分は果して磨けているだろうか。

・熱意が勝利を呼び寄せる
・努力という投資
・創意工夫とは新しい今を創造していくこと
・行動を構成する内容と質
・一流の境地は修練の向こうにある
・練習が不可能を可能にする
・天才とは、自分に火を点けられる人
CHAPTER 5『自分を鼓舞せよ。』に並ぶ言葉は、確かに自分に向けると熱くなれる気がする。

・尊重のマインドはすべての人に対して向けられるべき心のあり方
・時間厳守は最高位の礼儀
・礼儀が人と人をつなぐ
人間関係がイマイチ苦手な自分としては特に意識したいところである。

一つ一つは短いながらも、心に響くものがある。
こうした真理は月日が経過しても腐敗することはないのだろう。
「当たり前のことじゃないか」と思わずに、素直に受け入れたい言葉の数々である。
すぐに読み終えてしまえる内容だが、何度も読み返したいものである。
最後の言葉が印象に残る。

「堂々とした生き方」
ずっと意識し続けたい言葉である・・・

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2015年06月16日

【コンサルタントの教科書】和仁達也



Chapter 0 報酬設定 なぜ、コンサルタントの報酬はピンキリなのか?
Chapter 1 勝ちパターン コンサルタントで年間報酬3000万円稼ぐための「正しい努力」とは
Chapter 2 営業戦略 独立1年目から安定収入を得るための着眼点
Chapter 3 新規開拓 営業で見込み客を前のめりにさせる「お困りごと」の引き出し方
Chapter 4 聞く力 クライアントとの信頼関係を構築する「聞いて気づかせる力」
Chapter 5 契約交渉 ビジネスを上向きにする「価格交渉」と「値上げ」の技術
Chapter 6 サービス向上 顧客とのつき合いが10年以上の「長期契約」になる秘訣
Chapter 7 事業拡大 年間報酬3000万円を稼ぎ続ける「ビジネスモデル」のつくり方

著者は経営コンサルタント。
サラリーマンから27歳で独立し、以後ゼロから新規開拓して現在の地位を築いた方のようである。
そんな著者が、この本を書いたのは、主として、
「現役のコンサルタントでもっと飛躍したい人」
「将来、コンサルタントとして独立を目指している社会人や学生」
「安さ優先の価格競争ではなく付加価値の価値競争を志向する士業者」
向けなのだという。

著者のコンサルティングスタイルは、自ら「パートナー型」と称しているもの。
「クライアントのビジョンを明らかにして、そこに到達するために逆算してプランを作って、社長と社員が向かう方向を一致させる」ことらしい。
つまりある程度の期間にわたる取り組みが必要なもので、すなわち、その間安定収入が確保できるということらしい。

確かにコンサルタントといえば、「問題解決請負人」だか、「問題を解決すると不要になる」存在でもある。
その痛し痒しの状態を、パートナー型は解消するようである。
社長にとっては、社内にいない「相談役」を月15万円と「新人一人雇うくらい」で確保できるなら、価値を認められるのだろう。

27歳で独立して早々に顧客を確保できるとは、そう生易しいことではない。
独自の観点から相手の“お困りごと”を見つけていく。
そのお困りごとトップ3は以下の通り。
@ 会社のお金の流れが漠然としていることによるストレス
A 社員との立場の違いが生む「危機感のズレ」によるストレス
B 次のワクワクするビジョンが見えないストレス

決め手は社長との会話になるが、ここで社長にアドバイスをしてはいけないと説く。
相手の話を聞いた後、「なぜそう考えるのか」を尋ねる。
多くの場合、その理由が不明確だと気づき、次第に自分の意図する方向へと進むようである。

社員向けのミーティングで発言を促す工夫は参考になった。
@ 3分間で各自にアイディアを3つ考えてもらう
A 隣同士でそのアイディアをシェアする
B 最後にアイディアを発表してもらう
なるほど、これなら確実に意見をくみ上げられる。
これは使えそうだと思う。

クライアントへの要望は、「先に言えば説明、後で言えば言い訳」というフレーズも気に入る。
コンサルタントでなくても顧客商売なら通用する考え方だと思う。
こうしたちょっとした工夫が、大したものだと思わせられる。
顧問料も説明の仕方一つで、安いと思ってもらえる。

さらに長期契約の4つのポイントが参考になる。
@ クライアントを依存させるのではなく、自立させる
A 痛みを与える(欠点を指摘する)のではなく、快楽を与える(見落としていた盲点に気づかせる)
B 「間違った期待」や「過剰期待」をさせない
C 接点を社長のみではなく、幹部他の社員にも広げる

本や教材からセミナーなど、個別コンサルティングに至る「営業のじょうご」を作り上げ、安定収入を確保しているところなども、しっかりとした形を作り上げている。
同業者向けコンサルティングも行い、その基盤は盤石そうである。
別にコンサルタントでなくても、いろいろとヒントになる考え方はある。
それなりに成功している人の考え方はやはり違うと思う。

自らの仕事にも通じる学びの一助としたい一冊である・・・

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2015年06月15日

【会社勤めでお金持ちになる人の考え方・投資のやり方】中桐啓貴



第1章 会社勤めでもできる7つの投資
第2章 株式会社のしくみがわかれば、株は怖くない
第3章 あたりまえだけどなかなかできない株式投資のルール
第4章 投資をする前に知るべき法則
第5章 この基本を知らずに投資信託を買うな
第6章 NISA徹底活用法
第7章 積立投資で着実に1億円をつくる方法

著者は元証券マンで、現在はコンサルタント兼FP業界の専門家としてご活躍の方らしい。
この本は、サブタイトルに『「投資」と「給料」で着実にお金を増やす方法』とある通り、普通のサラリーマンでもお金を貯められると説いた本である。
日頃から資産形成には興味があり、必然的に手に取った次第。

初めに投資の基本が語られる。
株式から不動産、投資信託にギャンブルなどである。
そして株について、実はきちんと基本が理解できればこわいものではないとの説明が続く。
株式の仕組みは初心者向けで、わかっている者からすると眠くなる。

そして実際の株式投資の考え方。
といっても、デイトレードは儲けられないとする。
もともとサラリーマン向けであれば、デイトレードはまず無理な話。
さらに株式投資では、「儲けることより損をしないことが重要」だとする。
実際の経験から、その通りだと思うし、このあたりは著者に対する信頼感もわいてくる。
その説明は、オーソドックスで堅実である。

肝心の投資については、「仕事がメイン、投資は補助輪」とその基本を説く。
そして、「短気で儲けたお金は短期で出て行く。長期で儲けたお金は長期で出て行く」とする。
お金が出て行くスピードはそのお金を稼ぐのに使った時間、労力に比例するという「ガイアの法則」なのだそうである。

また、お金の使い方として、「自己投資」と「見栄投資」とが説明される。
他人から見えるのが「見栄投資」で、著者はこれを戒める。
さらに「一度膨張した支出は収入が減っても下がらない」というパーキンソンの法則が取り上げられる。
儲けるばかりではなく、支出の話があるところも、さすがお金の専門家である。

そして基本的な投資としては、投資信託が勧められている。
投資信託は、売れているものが良いということはないとのこと。
市場平均を上回る運用成績が良い投資信託であり、決して運用額の大きさではないこと。
NISAを活用し、「値幅が大きい株式投信で毎月積立」、「絶対収益型に一括投資」、「絶対分配型投信」の3つのパターンが勧められる。

巻末には具体的なファンドも掲載されていて、サラリーマン向け投資指南の本としては、良心的な本だと感じる。
投資信託にはあまり関心がなかったが、積立型をやってみようかという気になった。
投資に興味のある人は、一読の価値ある一冊である・・・

【著者お勧め投資信託】
積立用:
「スパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンド」
「朝日Nvestグローバル・バリュー株オープン」
「JPMエマージング株式ファンド」
長期熟成用:
「トレンド・アロケーション・オープン」
「野村グローバル・ロング・ショート」
一括投資:
「テンプルトン世界債券ファンド(限定為替ヘッジコース)」
「米国変動好金利ファンド」

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2015年06月13日

【神坐す山の物語】浅田次郎



神上がりましし伯父
兵隊宿
天狗の嫁

見知らぬ少年
宵宮の客
天井裏の春子

浅田次郎の作品の内、密かに個人的に“不思議系”と名付けている系統の作品である。
舞台となるのは、東京は奥多摩の山中。
御嶽山の神社。
その神社に住む一族の、それぞれのエピソードを集めた短編集である。
短編が集まって、一つの物語になっているとでも言えるだろうか。

『神上がりましし伯父』は、文字通り伯父の話。
死者が見える“私”の下に、ある朝伯父が訪ねてくる。
されどその姿は普通の人には見えない。
やがて届けられた伯父の入院の知らせ。
だが、“私”には伯父がもうこの世の人ではないことがわかっている。
伯父の葬儀は、御嶽山の本家の神社で取り行われる。

『兵隊宿』はおばさんのイツの昔話。
日露戦争の頃、ある雪の降る夜、兵隊の一隊が神社を訪ねてくる。
聞けば行軍の途中で行方不明となった一兵士を探していると言う。
外の気温は低く、迷ったら命はないかもしれないと思われる中、その一兵士は見つからない。
そしてその兵士である古市一等卒が、後日イツの婚礼の日に訪ねてくる。
古市一等卒がこの世の人ではないのではないかと恐れたイツであるが、意外な事実が明らかになる。

『天狗の嫁』は、伯母のカムロの話。
カムロは子どもの頃、いずことも知れずに3日ほど行方不明になったことがあったという。
そしてある時、御嶽山の神社に台風が到来する・・・
『聖』は、子どもの頃、寝物語に聞いた喜善坊と名乗る山伏の話。
その喜善坊が、修業をさせてほしいと神社にやってくる・・・

『見知らぬ少年』は、“私”が子どもの頃、神社で出会った少年の話。
「かしこ」という不思議な名の少年。
かしこは、“私”に神主である祖父から習ったという軍歌を教えてくれる・・・
『宵宮の客』は、神社に一夜の宿を求めてやってきた男の話。
その男には、一人の女が付き添っていたが、その女の姿が見えていたのは、応対した神主の祖父とちとせ伯母だけであった・・・

『天井裏の春子』は、きつねに憑かれた少女春子の話。
狐払いで名を知られた神主の祖父を訪ねて、母子が神社にやってくる。
春子に取り憑いていたのは、老狐であった・・・

まだ不思議な物語は、当たり前のように存在していた昭和の頃。
御嶽山の神社の神主一族の話は、どれも味わい深いものがある。
死者と話をしたり、狐に憑かれたり、今ではとても信じられぬ話でも、浅田次郎の物語の中では素直に受け入れられる。
そんな話があったんだと、素直に思えるのである。

今でも奥多摩の御嶽山には、この物語に出てくるロープウェイはあるし、物語に出てきた神社もありそうな気がする。
いつか行ってみたいものである。
取り立てて心を動かされるというほどではないが、各物語ともしみじみと伝わってくるものがある。

浅田次郎の作品としては、まずまずと言える一冊である・・・

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2015年06月12日

【スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営】山井太



Introduction 「真北の方角」に進み続ける
Chapter 1 熱狂的なファンが支える
Chapter 2 クリエーティブとものづくりの魂
Chapter 3 販売は科学 仕組みをつくる
Chapter 4 仕事後にキャンプ!のワークスタイル
Chapter 5 星空の下で五感を研ぎ澄ます
Chapter 6 白い頂へのヒストリー

著者はアウトドア用品を販売し、最近上場を果たした株式会社スノーピークの代表取締役。
3代目の社長として、両親から受け継いだ会社を上場させるまでに至らしめた経営を語った一冊である。
個人的に、この手の経営者の話は大好きである。

まず初めに語られるのがミッションステートメント。
その中に、「自然指向のライフスタイルを提案し、実現するリーディングカンパニー」という言葉がある。
この会社のやっていることであり、こういうミッションステートメントはやはり有効なのだろうと改めて思う。
我が社も見習うべきだろう。

父の会社に入社した著者。
「もっとしっかりとしたテントやキャンプ用品がほしい」と思ったという。
そしてそれまで、高くても19,800円だったテントに対し、「これ以上はない」という品質のテントを作ってしまう。
その価格、なんと168,000円。
常識的には、売れるはずがないと思うところ、これがユーザーの支持を集めてしまう。

「マーケティングはやらない」と宣言し、あくまでもユーザー目線で商品を開発する。
社長自ら年間50泊くらいキャンプをするそうであるから、商品に対するこだわりも強いだろう。
ユーザーとキャンプイベント「スノーピークウェイ」を開催し、焚火を囲んで語り合う。
ここから次の商品に対するヒントを吸収する。

製品はすべて「永久保証」というから凄い。
その製品はスノーピーク本社のある新潟県燕三条の地元中小企業との連携で製造する。
スノーピークは開発に特化しているらしい。
社員も実際にキャンプで商品を使い(キャンプ研修があるらしい)、販売のプロとなっていく。
その社員も学歴ではなく、キャンプに対する熱意から採用しているという。

そこから感じられるのは、「商売という言葉が当てはまらない」ということだろうか。
「売れるから作る」のではなく、「キャンプを楽しめるものを売る」なのだろう。
そうしたスタンスは、業種こそ違えど自分の働く会社にもあてはまりそうな気がする。
「道を究める」という言葉が想起される。

自分達は何をする会社か。
こだわるものは何なのか。
改めて意識したいと思わせられる一冊である・・・

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2015年06月11日

【0ベース思考】スティーブン・レヴィット/スティーブン・タブナー



原題:Think Like a Freak
第1章 何でもゼロベースで考える
第2章 世界で一番言いづらい言葉
第3章 あなたが解決したい問題は何?
第4章 真実はいつもルーツにある
第5章 子どものように考える
第6章 赤ちゃんにお菓子を与えるように
第7章 ソロモン王とデイビッド・リー・ロスの共通点は何か?
第8章 聞く耳を持たない人を説得するには?
第9章 やめる

日頃から先入観や偏見を排除して、フラットに物事を考えようと意識しているが、そんな自分にこの本のタイトルはかなり突き刺さってきた。
読まずにはおられないとタイトルだけで手に取った一冊。
そして著者は、『ヤバい経済学』『超ヤバイ経済学』の著者だと知る。
両著からして、かなり期待できると思って読み始める。

第1章では、イギリスのキャメロン首相とのやり取りがある。
大規模な支出削減に迫られたキャメロン首相。
しかし、すべての医療を原則無料で利用できる国民健康保険(NHS)は、削減の対象外と宣言していた。
そこで著者が喩え話で「思考実験」を仕掛ける。

「もしイギリスの全国民が、生きているあいだ好きな乗り物を何でも無料でもらえるとしたら?誰でも好きなときに車のディーラーに行って、気に入った新型モデルを無料で手に入れ、家に乗って帰れるとしたらどうなるだろう?」
その問いで医療無料の問題点を指摘しているのだが、『超ヤバイ経済学』で見せてくれたキレ味健在という感じでいい。

さらにアメリカで行われているホットドッグの大食い大会で、記録的な数を食べて優勝した日本人の例が採り上げられる。
なにせそれまでの記録が、12分間で25と1/8本だったところ、何と50本食べたという。
本人は、出場にあたっていろいろと研究し、それまでとはまったく違った食べ方を編み出したのであるが、その発想がそれまでの延長線上のものでないところが、ポイント。

また、胃潰瘍について、それまで世間に広く信じられてきた治療法とはまったく異なる治療法が1981年に発見される。
それまで「強い胃酸の中で生きられる菌はない」と信じられてきた事に対し、オーストラリアの若い研修医が、胃酸の中で生きる菌が発見され疑問が呈されていたことを契機に、胃潰瘍の真の原因を発見する例が解説される。

中国の貧しい村で子どもたちの学力を上げたのは、じつは無償で配られたメガネだった。
アメリカで犯罪の発生率が減少したのは、中絶が認められたからだった。
「寄付をお願いするのはこれっきり」というアプローチをしたところ、それまで以上の寄付が集まった。
インドでコブラに懸賞金をかけたところ、懸賞金目当てにコブラの養殖を始める者が多数出て、かえってコブラは増加した。

さまざまな例は、それだけでも面白いが、いかに人は偏見ともいうべき考えにとらわれているかということがわかる。
新しい発想というのは、実は特別なことではなく、子どものように純真に発想することにあったりすると言える。
結論的には、想定内のものであるが、やはり読めば説得力が違う。
意識してはいても、なかなか「0ベース思考」は簡単ではないのかもしれない。
改めて心掛けたいと強く思わせられる一冊である・・・

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2015年06月06日

【千日のマリア】小池真理子



過ぎし者の標
つづれ織り
落花生を食べる女
修羅のあとさき
常夜
テンと月
千日のマリア
凪の光

定期的に読まずにはいられない作家が小池真理子である。
最近少しご無沙汰気味なのが残念である。
ほぼ2年振りに手にしたのは、短編集。

『過ぎし者の標』
主人公の美貴が車に乗り込み、いずこかへと出掛けていく。
何やら感傷的な旅の雰囲気。
そして映画監督だった男との過去が綴られていく。
それは付かず離れずだった男との物語。

『つづれ織り』
主人公の美和子の子供の頃の思い出。
父親が女を作り、母と兄と家を出て3人の生活が始る。
近所に住んでいた大家の大学生の息子。
子供の頃には意味がわからなかった出来事も大人になればわかることもある・・・

『修羅のあとさき』
主人公は行雄という名の中年男。
冒頭はその行雄に宛てられた熱烈なラブレターである。
行雄はそのラブレターを書いた女性苑子を訪ねようとしている。
行雄と苑子は一時清い交際をしていたが、やがて行雄がかつての恋人聡美とよりを戻したことで行雄は苑子に別れを告げていた。
行雄はその苑子を訪ねていく・・・

『千日のマリア』
主人公の秀平の義母美千代の葬儀で物語は始まる。
かつて秀平は美千代の運転する車に乗っていて事故に遭い、左手を切断する怪我を負っていた。
当時自暴自棄になっていた秀平は、妻が仕事で出張に出ていた毎週末、美千代の経営するレストランの2階で閉じこもっていた。
やり切れぬ思いを美千代に理不尽にぶつける秀平。
そして思わぬ行動に出る・・・
タイトルの重みがじわじわと伝わってくる物語。

どの物語も短い中に味わい深い世界が広がる。
例によって小池真理子の文章が、物語の世界へと引き入れてくれる。
読んでいて感じる心地良さは相変わらずである。
しかしながら、やっぱり長編の味わいもまた捨てがたいところ。
次の新作が待ち遠しい限りである。

まだならば、過去に読んだ作品をもう一度、とも思う。
そんなことも考えてみたい小池真理子の作品である・・・

posted by HH at 15:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 小池真理子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする