2015年07月30日

【挑戦する会社】神田昌典



第1章 ビジネスの新たな伝説を創る!
第2章 生まれ変わる日本への準備をしよう
第3章 新規顧客獲得と新規ビジネスへの鍵
第4章 お金のあり方、稼ぎ方も大きく変わる!
第5章 稼ぐ仕組みが大変化していく「V理論」
第6章 世界ビジネスが加速する時代へ!
第7章 あなたのビジネスを次世代型に変えるヒント

何だか久しぶりにその名前を見つけて手にとってしまった一冊。
著者の神田昌典の名前は、10年以上前に書店に溢れていたような気がする。
我が家にもまだ何冊か残っているし、今は何をしているのだろうかと思いつつ、ページをめくる。

その「今は何を」であるが、どうやら「THE実践会」という経営者コミュニティを主催しているようである。
そして「フューチャーマッピング」というノウハウを広めているらしい。
その詳細は、ここでは触れられていない。

これからの10年の潮流を現す言葉は、”GRACEFUL JAPAN”だという。
G:Graying society・・・高齢化社会
R:Reuse/Recysle/Reinvent・・・循環型社会
A:Asia・・・アジア経済圏
C:Community・・・コミュニティの時代
E:Education・・・教育の時代
F:Free Agent・・・フリーエージェントネットワーク型社会
U:Utilities・・・エネルギー革命
L:Legend・・・誰もが英雄になる時代
何となくわかる部分と疑問に思う部分があるキーワードである。

これからの5年間であなたのビジネスは完全に変わらなければならないという。
「未来をつくる」「脳をつくる」といったキーワードが登場し、来るべき東京オリンピックに向けてチャンスを作り出せという。
非営利法人なんかもその一手法だとする。

「想像するだけで、お金が稼げる。そして想像力は、無限である」
「ビジネスコミュニティ時代には【新しい貨幣】が必要」
元気の良いタイトルが続いていく。
しかしながら、なんとなくしっくりくるものがないと感じる。

従来のホテルとは一線を画したホテルグリーンコア(ベッドがないビジネスホテル)の例はちょっと興味深かったが、それ以外のところでは、途中からだんだんと内容が頭に入ってこなくなってしまった。
それはなぜかと問われれば、何だか「金、金、金」のモードについていけなくなってしまったというのが、正直なところ。
確かに凄いとは思うものの、もういいかなと思えてしまったのである。

読む人の立場によって、読後感はそれぞれ異なるだろう。
これを読んでわくわくする人、何らかのヒントを得る人もいるだろう。
若い人とか、収益機会を求めてギラギラしている人なら、感じるところも多いのかもしれない。
されど、私自身はそうではない。
年を取ったとも思わないが、違うものを求めたいと思うのである。

「読む価値がない」というつもりはないが、個人的にはもっと自分の感性にフィットするものを求めたいと思った一冊である・・・

     
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2015年07月29日

【21世紀の資本】トマ・ピケティ



原題:LE CAPITAL
第T部 所得と資本
 第1章  所得と産出
 第2章  経済成長−幻想と現実
第U部 資本/所得比率の動学
 第3章  資本の変化
 第4章  古いヨーロッパから新世界へ
 第5章  長期的に見た資本/所得比率
 第6章  21世紀における資本と労働の分配
第V部 格差の構造
 第7章  格差と集中−予備的な見通し
 第8章  二つの世界
 第9章  労働所得の格差
 第10章  資本所有の格差
 第11章  長期的に見た能力と相続
 第12章  21世紀における世界的な富の格差
第W部 21世紀の資本規制
 第13章  21世紀の社会国家
 第14章  累進所得税再考
 第15章  世界的な資本税
 第16章  公的債務の問題

5,500円もする本がベストセラーになっていると話題になっていたことから、「積ん読リスト」に入れていた一冊。
今世の中で話題になっている「格差」を採り上げた内容であるため、世間の関心を集めたのであろう。それでもこの手の分厚い本が売れるなんて、我が国もまだ捨てたものではないと嬉しくなる。

冒頭からこの本の内容を代表する数式が示される。
それが、γ>g である。
ここで、γは「資本の平均年間収益率」であり、gは「経済成長率」である。
平たく言うと、γは「資本(=資産)が生みだす利益」であり、gが「額に汗して稼ぐ利益」となる。

つまりこの不等式は、稼ぐより資産を持っている者が富むことを意味している。
さらに歴史をひも解くと、常にγ>gが成り立っているという。
要は、「額に汗して稼いでも、持っている人には追い付けない」ということである。
結構ショッキングな内容だ。
それが、γは4~5%だが、gは1~1.5%などと説得力のある数字で語られるから、なおさらである。

利用されているのは主にイギリスとフランスのデータ。
両国ともそうした古くからのデータが残っているのだという。
そこはさすがに老大国である。
そして様々な角度から上記の事実が検証される。

図や数式による説明は明快でもあるが、わかりにくくもある。
ただ個人的には、小説の一場面を採り上げての説明が特にわかりやすかった。
たとえばバルザックの『ゴリオ爺さん』では、まじめに勉強して実績を挙げて、パリでトップの判事になっても5万フラン稼ぐ者は5人もいないが、お金持ちのヴィクトリーヌ嬢と結婚すれば20代で100万フランの富とそこから上がる5万フランの収入が得られると語られる。

小説の中でも利回り5%となると、それは現代でも変わりない。
資本は常に労働よりも分配は不平等であるとされるが、こうした例で説明されるとわかりやすい。
こうして歴史的にも格差は拡大傾向にあるが、唯一格差が縮小したのが、1914年~1945年の期間。
年号ですぐわかるが、2度の大戦である。
2度の大戦による破壊、大恐慌が引き起こした倒産、この時期に成立した公共政策が原因である。

されど、戦後は再び拡大路線に戻る。
21世紀も格差拡大の傾向は続くと予想される。
インフレも資本の再配分という点では役に立たず、資本の配分をさらに拡大する結果をもたらすのみ。そうした金持ちが益々栄える世の中に対し、理想的な手法は「資本に対する世界的な累進課税」という考え方も提示される。

また、公的債務に関する説明では、巨額の公的債務を抱える我らが日本国民としても関心が高い。
これに対しては、やはり民間資本に対する例外的な課税(一時的な特別税)が、最も透明性が高く公正で効率的な方法だという。
インフレも歴史的に効果があることが証明されている(安倍政権もこれを狙っているのだろう)が、緊縮財政は「最悪の解決策」だとする。
このあたりは、今後も興味をもっていきたいところである。

600ページを超える大著で、内容も簡明とは言い難い。
ベストセラーといっても、ホントにみなさん読んでいるのだろうかと思わずにはいられないが、覚悟を決めてとにかく読めば面白いことは事実である。
それにしても、内容的にはちょっとショックなところがある。
今後、我々の社会はこの問題をどうとらえればよいのだろうか。
真面目に考えてみたいと思うところである・・・

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2015年07月23日

【東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと】伊藤元重



序章  人生にも戦略があっていい
第1章 「読む」「書く」「話す」力を鍛える
第2章 発想力を鍛える
第3章 効率を上げ、仕事の質を高める
第4章 現場からめいっぱい学ぶ
第5章 ロールモデルを探せ−私の20~30歳代

著者はタイトルにもある通り、東大教授。
専門は経済のようであり、専門の著書も多数あるようであるが、この本においては経済のことは脇に置いておいて、ゼミで学生相手に語っている話が中心のようである。

はじめに、「人生にも戦略があっていい」と語られる。
ただ、人生は想定外の連続。
その中で何を大切にするかというと、「レイバー」「ワーク」から「プレイ」への変化だという。
レイバー=肉体労働、ワーク=事務仕事であるが、プレイとはやりがいのある仕事ということのようである。
なるほど、興味をそそられるイントロである。

著者も他の多くの人と同様、「読書」の効能を訴える。
速読などは必要なく、ただし、気がついたことを自分の言葉でメモすることを勧めている。
「自分の言葉で表現できたもののみが、自分の血や肉となっている」とする。
ランダムにメモしたら、今度はそのメモを再度読んでまたメモをつくる・・・
書くことはまた最良のインプットだというが、こういう考え方は新鮮である。

ゼミで重視しているのが、「人とのインタラクション」。
自分一人で考えるだけでなく、ディスカッションやディベートを通じて新たな気づきが得られる。
これは、何となく日頃実感していることでもある。

また、一方で、1日30分一人になってひたすら自分の仕事について考えることも大事だという。
著者は歩く時間をそれに充てているようである。
それゆえに、「ウォーキングエコノミスト」と呼ばれているらしい。

「プロの議論は疑ってかかれ」というのも、近頃強力に実感している。
プロはその世界のプロであるがゆえに、固定観念に固まってしまっているところがある。
素人だから、気づくこともあると、著者は自らの経験を例に挙げて説明する。
昨年、異業種に転職した私も、日々「プロ」相手に異文化を吹き込んでいるところである。

最後のロールモデルについては、教師よりむしろ仲間の方が刺激が大きいということを語る。
少人数制を極めていっても、ある程度のところで頭打ちになる。
それは「仲間からの刺激がなくなる」かららしく、著者もこれまでに大きな影響を受けた友人・同僚の例を挙げる。
自分の子供たちの教育を考えるにあたっては、大いに参考になる。

「人生で大切なこと」と大上段に振りかぶったタイトルであるが、その内容には全く同意である。
タイトルに偽りはない。
十分に一読の価値はある。
自分もそろそろこうした「語る言葉」を持ちたいと思うところである。
そういう意味でも、大いに参考にしたい一冊である・・・

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2015年07月18日

【ゼロ・トゥ・ワン】ピーター・ティール



原題:ZERO to ONE
1 僕たちは未来を創ることができるか
2 1999年のお祭り騒ぎ
3 幸福な企業はみなそれぞれに違う
4 イデオロギーとしての競争
5 終盤を制する
6 人生は宝クジじゃない
7 カネの流れを追え
8 隠れた真実
9 ティールの法則
10 マフィアの力学
11 それを作れば、みんなやってくる?
12 人間と機械
13 エネルギー2.0
14 創業者のパラドックス
終わりに 停滞かシンギュラリティか

著者はシリコンバレーで現在もっとも注目される起業家、投資家の一人だそうである。
PayPalを共同創業し、Facebook初の外部投資家でもあったらしい。
基本的に書籍の推薦依頼を書かないという瀧本哲史氏(『君に友だちはいらない』)が推薦文を書いているということもあり、冒頭から期待が盛り上がる。

基本的に世の中にない新しい企業を生みだそうとする者たちに向けた本であり、だから「0から1(を生みだす)」というタイトルなのである。
そしてそのゼロから1を生みだす垂直的な一歩は、「テクノロジー」だとする。
その意味は、「ものごとへの新しい取り組み方、より良い手法」すべてとのことである。
そして著者がこれまでの経歴を通じてつかみ取ったエッセンスがさまざまに紹介されていく。

それらは要約すると、「どんなビジネスも答えを出すべき7つの質問」に集約される。
1 エンジニアリング:ブレークスルーとなる技術
2 タイミング:適切なタイミング
3 独占:小さく始めて独占する
4 人材:仕事を超えた関係
5 販売:プロダクトだけではなく、それを届ける方法があるか
6 永続性:10年後、20年後も生き残れるポジション
7 隠れた真実:他社が気づいていない独自のチャンス

独占については、特に「小さく始める」ことが強調されている。
小さく始め、規模を拡大し、終盤を制する(ラストムーバーとなる)ことが重要。
様々なことに応用ができそうな気がする。
そして「誰と始めるか」の重要性も説かれる。
仕事を超えた関係をマフィアと呼んでいる。
それは、『GILT』でも強調されていたし、やはり共通の真実なのだろう。

そんなノウハウばかりではなく、最後に熱いメッセージもある。
「未来が勝手によくなるわけはない−ということは、今僕たちがそれを創らなければならないということだ」
「目の前のチャンスをつかんで仕事と人生において新しいことを行うかどうか」
個人的には、起業は難しいが、そういう心意気は持ちたいと思わせられる。

「ただこれまでと違う未来ではなく、より良い未来を創ること」
それが「ゼロから1を生み出すこと」だとまとめる。
素直に受け止めたい言葉である・・・

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2015年07月14日

【2018年までのマンション戦略バイブル】沖有人



第1章 住まいの常識を変える7つのメガトレンド
第2章 人口減少時代の自宅の選び方
第3章 自宅投資としての不動産の買い方・売り方
第4章 人口減少時代の不動産投資の基本
第5章 180度変わる自己投資物件の選び方
第6章 東京に投資する理由
第7章 相続対策としてのマンション活用法
第8章 2018年までの資産組み替え戦略

著者は、不動産のコンサルティング会社の経営者。
昨年、『マンションは10年で買い替えなさい』を読んで興味を持ち、著者の経営する会社が運営するマンション評価サイト住まいサーフィンを見たりしていたが、続編とも言える本が出たということで手に取った一冊。

前著『マンションは10年で買い替えなさい』では、自宅を使った不動産投資ということで、なかなか面白い着眼点だと思っていたが、この本ではその流れを受けてさらなる指南となる。
前著以後の市場の変化を受けての解説。
住まいの常識を変える7つのトレンドがまず説明される。

@ デフレからインフレへ
A 人口増加から減少へ
B 相続対策需要の増加
C 資金の出し手の国際化
D 不動産評価方法の変化
E 新築購入リスクの増加
F 自宅購入者の情報力向上

基本的に自宅を投資対象にしてしまいましょうという考え方は、前著で明らかなので、ここでは補足説明的なものになる。
理屈は十分に理解できるが、実際に自分でやるかどうかとなると、これはその人の性格にもよると思う。
私であれば、まず考え方が合わない。

そもそも儲けるために、タイミングをみて何度も自宅を売ったり買ったりということをしたいとは思わない。
著者も説明しているが、購入時点で、
「『この物件を売りに出した場合、買い手は誰になるのか』を考え、『高く買いたいと思う人がいる物件』を選ぶ」ということであるが、自分の好みより人の好みなわけで、そこまでしたくないと思ってしまう。

また、「思い入れや地縁を捨て、あくまで資産性で物件を選ばなくてはならない」とする。
確かに、投資であれば私情は排除しないといけないだろう。
湾岸地域や城南地域、港区周辺などの人気地域を例に上げているが、子供がいれば引っ越し=転校という問題もある。
個人の好みであるが、やりたい人にはいいのではないかと思う。

やりたい人には、具体的な指南が続く。
@ 買ってはいけない時期がある
A 単価の高いエリアが底堅い
B 駅からのアクセスはいいに限る
C 大規模マンションは得をする
D タワーはランドマーク性に価値がある
E 面積は小さいほど損をする
F 適正価格以下で購入する

マンション購入指南書ではあるが、広く不動産全般の考えは、一考に値する部分も多い。
親は子供に財産を残そうと思うものだが、「郊外の一戸建てなど残されても、場所によってはかえって負担になる」なんてところは、該当する人はよく考えたほうがいいだろう。

不動産投資に興味ない人には面白くも何ともない本かもしれない。
ただ不動産投資に興味がある人なら、読んでおいて損はないと思う。
現在都内の不動産価格は高騰しており、高値掴みをしないためにも、勉強は必要である。
そんな勉強のためと考えるなら、参考になる一冊である・・・


posted by HH at 22:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 不動産 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月13日

【マスカレード・イブ 】東野圭吾



それぞれの仮面
ルーキー登場
仮面と覆面
マスカレード・イブ

似たようなタイトルだと思っていたら、実はそれもそのはず、『マスカレード・ホテル』の続編だということであった。
「続編」と言っても、時系列からすると、この本は『マスカレード・ホテル』の前日譚にあたる物語である。
(だから、「イブ」なのだと思う)

『マスカレード・ホテル』で舞台となったホテル・コルテシア東京。
本作でもその舞台は同じ。
ホテル・コルテシア東京のフロントに立つのは、山岸尚美。
前作の主人公の一人である。

そんな尚美の前に現れた客は、かつて学生時代に付き合っていた男宮原隆司。
宮原はある大物芸能人のマネージャーをしているが、その夜、尚美の携帯に宮原から「大変なことになった」と電話がかかってくる・・・
(『それぞれの仮面』)

前作でのもう一人の主人公新田は、ホワイトデーの翌朝、彼女と二人でホテルでくつろいでいるところを殺人事件が発生し、呼び出される。
殺されたのは実業家の田所昇一。
さっそく、夫人の美千代に事情聴取に出掛ける・・・
(『ルーキー登場』)

三連休の前日、フロントに立つ尚美の前に、オタク風の男たちがやってくる。
男たちは、宿泊客の「タチバナサクラ」の部屋を教えてほしいと要求してくる。
「タチバナサクラ」は売り出し中の謎の女流作家。
尚美は、当然ながら答えられるわけもないが、男たちはそのままロビーで“張り込み”をする・・・
(『仮面と覆面』)

尚美はホテル・コルテシア大阪の新規オープンに際し、助っ人として派遣される。
一方、東京のとある大学の教授室で、ある教授が刺殺されているのが発見される。
容疑者の最有力候補は、准教授の南原。
生活安全課から回された婦警穂積理沙と組むことを命じられた新田が、しぶしぶと捜査にあたる。
やがて南原は、事件当夜ホテル・コルテシア大阪に宿泊していたとのアリバイを主張する・・・
(『マスカレード・イブ』)

前作でペアを組んだ尚美と新田は、それぞれ登場するものの、この本では二人に接点はない。
しかしながら、前作につながる推理の片鱗がここでも十分発揮される。
尚美は、フロント業務をこなしながら、さまざまな客の仮面の下の素顔を推理していく。
事件の推理とは違うものの、かのシャーロック・ホームズのごとき細かい観察による推理は、なかなか楽しませてくれる。

短編の形式をとりつつ、前作の前哨戦となっているわけで、そのあたりも“一粒で二度のおいしさ”を味わわせてくれる感がある。
こうなると、この『マスカレード』シリーズも継続するのかという期待を持ってしまう。
それならそれで、違った楽しみも味わえるかもしれない。

いずれにせよ、いろいろと幅広く楽しませてもらえる東野圭吾作品。
今回も期待通りであった・・・

posted by HH at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月09日

【その女アレックス】ピエール・ルメートル



原題:ALEX

何となく面白そうだと手に取った一冊。
作者の名前は初めてであったが、なぜかそう感じたのである。
時折、そういう本に手を出すが、これが見事に正解であった。

主人公はタイトルにある通り、アレックスという名の女性。
職業は看護師である。
そのアレックスがある夜、食事をして一人自宅へと帰る途中、何者かに襲われ拉致される。
殴られ、手荒く扱われた揚句、裸で狭い檻の中に監禁される。
レイプするわけでもない男が何を要求するのかと思いきや、「淫売がくたばるところを見てやる」と不気味に語る。

一方、拉致現場の目撃者からの通報で警察が動き始める。
捜査の指揮を執るのは、カミーユ・ヴェルーヴェン警部。
小説ではわからないが、背が低い男らしい。
1年前に最愛の妻を誘拐された上に殺害されるという経験をし、心の傷も癒えぬまま臨時に捜査の指揮を任される。

第一部は、誘拐されたアレックスと事件を追うヴェルーヴェン警部とが並行して描かれる。
ここは物語の全体の入り口。
ヴェルーヴェン警部の人物像と、彼を支えるルイ、アルマンという二人の部下、そして上司のグエンといった人物が描かれていく。
偶然の幸運で、女が監禁されているという情報がもたらされ、警察は現場に急行する。
そして意外な顛末・・・

小説は3部構成となっている。
この第一部が第二部へと移ると、物語の雰囲気はガラリと変わる。
第一部では描かれなかったアレックスの予想もしなかった行動。
そしてパリ警視庁(物語の舞台はパリである)にとっては、事件は続いており、ヴェルーヴェン警部の捜査も続く。
そしてまた予想外の展開を見せて第三部へ移行する。

ここでもまた物語が劇的に変化する。
だんだんと結末が見え始めるに従って、物語の全体像が明らかになる。
それは実に驚くべきもの。
3部はそれぞれ連続しているが、様相はガラリと変わる。
それはまるで弁証法のような展開。
第一部を受けながらも違う物語となった第二部を受け、そしてまた第三部は違う物語となるといった感じか。

こういう小説は初めてだし、読み終えて深い読後感を得た。
実に、面白い。
母国フランスでは、ヴェルーヴェン警部の物語はシリーズになっているようであるが、翻訳はされていないようである。
ちょっと残念であるが、この本だけでも読めたのは幸いと言える。

どうやら映画化の話もあるようで、実現されたらたぶん、面白いものになるに違いない。
果して、キャスティングはどうなるのだろうという興味が湧く。
「読まなきゃ損」と断言できるフランス犯罪小説である・・・
    
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2015年07月08日

【パナソニック人事抗争史−ドキュメント−】岩瀬達哉



第1章 カリスマ経営者の遺言
第2章 会長と社長の対立
第3章 かくて人事はねじ曲げられた
第4章 潰されたビジネスプラン
第5章 そして忠臣はいなくなった
第6章 人事はこんなに難しい

タイトルには、「人事抗争史」とあるが、内容はと言えば、歴代社長間の対立・暗闘・苦闘とも言うべきものだろうか。
パナソニックトップの雲の上の話である。

パナソニックと言えば、「松下電器」。
そして松下電器と言えば、創業者の松下幸之助。
著者は、どうやらこの手のドキュメンタリーが得意なジャーナリストであるらしいが、さすがに「経営の神様」には批判の目を向けることはなく、その矛先は二代目社長の松下正治に向かう。

松下正治は、松下幸之助の娘婿であり、その縁もあってであろう二代目社長となる。
しかし、どうも経営者としての能力は「神様」に評価されていなかったようで、「神様」は生前三代目社長山下俊彦に「ポケットマネーで50億円用意するから、正治氏に渡し引退して二度と経営に口を出さないようにさせろ」と言い残したという。
ところが、これは猫に鈴をつけるような話。
山下社長はそれを実行せぬうちに、社長の座を四代目谷井昭雄に譲る。

四代目谷井社長は、「神様」の遺言を忠実に実行しようとするが、当然ながらの抵抗に遭う。
そしてそうこうするうち、「ナショナルリース事件」「欠陥冷蔵庫事件」と世間を揺るがす大事件が立て続けに起こり、谷井社長自身の進退問題となる。
そして、本社は迷走を始める。

松下電器は映像部門への進出を図るべく、アメリカのMCAを買収する。
ところが迷走する中、USJの提案を却下し、挙句にMCAを冷たく売却する。
のちに売られた先のシーグラム下で、USJが花開き、現在の成功につながる。
このあたりの事情は初めて知るところであり、興味深い。
判断を間違えていなければ、パナソニックの凋落もなかったのであろう。

また、時代遅れとなりつつあったブラウン管テレビに投資を集中させて、テレビ部門で出遅れ、さらに次世代のプラズマと液晶のうち、プラズマに舵を切って敗北を喫する。
まだどちらが有利かわからない時、松下電器の資金力なら両方進めることもできたという。
まぁこのあたりは運不運もあるかもしれないが、結果論としては経営判断の誤りは致命的だ。

コネと地道な取材を重ねたのであろうが、普通は知り得ないような「雲の上の話」は、それだけでなかなか興味深い。
神様の娘婿松下正治氏は、すっかり「諸悪の根源」だが、ご本人には当然言い分があるだろうし、片方の話だけの「欠席裁判」は公平ではないかもしれない。
ただ、一つの見方としては、面白い。
きっとどこの企業でも、雲の上の方はドロドロしていて必ずしも現実の空のようにスカッと晴れているということもないのかもしれない。

届かぬ世界を見上る下々の庶民の立場としては、純粋に面白がって楽しめていいのかもしれない一冊である・・・
   
 
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2015年07月03日

【エースと呼ばれる人は何をしているのか】夏まゆみ



第1章 エースの資格
第2章 エースは群れない−「自己確立」のための思考法
第3章 エースの努力−「正しい努力」が「自信」を生む
第4章 エースの習慣−「前進」するための生き方
第5章 エースのその先へ

著者は、ジャニーズやAKB48、モーニング娘。などを指導したダンスプロデューサー。
自身も日本人で初めてソロダンサーとしてニューヨークのアポロシアターに出演して絶賛を浴びたという経歴の持ち主。
ダンスの世界では第一人者なのであろう。

そんな著者の記したこの本、タイトルだけで読みたくなった一冊。
されど、読む前の興味=「エースと呼ばれる人は何をしているのか」は、読み終わった後も残ったままであった。
ダンスの世界では一流でも、文筆の世界ではなかなか難しいのであろう・・・

冒頭で、「エースの資格」が語られる。
それは、「成長するため」の「正しい方法」を続けているかということであり、それは具体的には以下の3つ。
@自己を確立し
A自信を持ち
B前に向かって進む
何だかわかったようにわからないような説明である。

そして肝心の「エース」であるが、これがどうも最初に思い描いていた「エース」とは違うようである。
最初に思い描いていた「エース」とは、AKB48で言うと「センター」のことらしく、つまり、野球で言う「エース」=中心選手(ピッチャー)とは違うらしい。
「センター」以外の周りにいるメンバーが「エース」らしいが、これもよくわからない。

「エース」とは、「自分自身の実力や魅力を発揮すべき場所で十分に発揮し、輝いている人」のことを言うらしい。
そして「エース」には誰でもなれるという。
それはそれでありがたく思う。
だが、何だか抽象的な説明が多くて、イメージが湧かない。

具体的な例が欲しいが、志村けんはたった一度のダンスの指導の時、間違いを指摘したら素直に笑って場を和ませたというエピソードも、モーニング娘。のエピソードも、初期のAKB48のファンにはおなじみの「目からビーム、手からパワー、毛穴からオーラ」という合言葉も、「だから何?」と思わざるを得ない。

エースは、「群れない」「ゼロになる」「良いプライドを持つ」という説明も抽象的。
「良いプライド」と「悪いプライド」の違いもよくわからない。
「悪いプライド」とは「自己防衛のためのプライド」らしいが、今自分のもっているプライドも、もしかしたら「自己防衛のためのプライド」かもしれないと考えたら、そう思えなくもない。
たぶん、悪いプライドなのかもしれない。

とはいえ、「挨拶は名前付きでするのが理想的」なんて指摘は、具体的でわかりやすい。
それは効果的ではないかと思う。
だが、残念ながら具体的なのはそのくらいであった。
たとえばイチローは高校生の時、「毎日欠かさず素振りを10分していた」(それも「最低10分」だったらしい)といったエピソードがあった方が、理解力の乏しい我が身としては助かったと言える。

せっかくのその世界の第一人者の本であるのに、難しくて良く分からなかったのは残念であった。
「エースと呼ばれる人は一体何をしているのだろう」
答えを知りたい一冊である・・・

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2015年07月02日

【未来予測の超プロが教える本質を見極める勉強法】中原圭介



第1章 物事の本質を見極めれば、人生はきっとうまくいく
第2章 本質を見極めるためには、まず「歴史」と「宗教」を学ぶこと
第3章 学問の雑食をすると、思考の幅と奥行きが広がる
第4章 歴史を中心とした学問の融合が大局を判断する力をもたらす
第5章 本当に深い理解を得るための書籍・新聞の読み方
第6章 経験知を積むと直感を発揮できるようになる

著者は、個人的にいつもマークしている経営コンサルタント兼経済アナリスト。
先日も『これから日本で起こること』を読んだばかりであるが、この本はちょっと趣向が変わって「勉強法」の本。
実は「勉強法」の本も興味があって、たとえば昨年は『東大教授が教える独学勉強法』を読んだし、過去にもいろいろ読んでいる。
著者と「勉強法」と二つのキーワードがマッチした興味深い本として、この本を手に取ったわけである。

経済アナリストとしては、常に鋭い視点で物事をとらえている著者であるが、それにはタイトルにもある通り、「物事の本質を見極める」必要がある。
そしてそのためには、ある特定の分野の知識だけではなく、多種多様なジャンルの知識を学ぶことが求められているという。
それは大いに共感できることである。

勉強法と言っても、記憶法のようなものではない。
「とにかく幅広いジャンルの書籍をできるだけたくさん読む」
「毎日新聞を読む」
「社会人は書籍より新聞」
と至ってシンプル。
だが、個人的には大いに納得。
かく言う自分もこのブログにある通り、本に関しては“雑食”だと思う。

「偏った情報ではなく、さまざまな情報を手当たり次第に吸収し興味を広げる」ことが大切で、それゆえ自分の好みの情報を集めがちなネットはダメだという。
そして中でも哲学を学ぶことが重要で、「構造主義」「ポスト構造主義」「ポストモダニズム」の3つの思想を学ぶことが、哲学的な思考を高めるには一番効率的だとする。
ここはごっそりと抜け落ちているから、今度このジャンルの本を読んでみたいと思う。

感心したのは、資本主義のゆくえに対する意見。
安い労働力を求めて、各国を移動していくのはこれまでの流れ。
されど最近は「世界の工場」と呼ばれた中国も人件費が高騰しているという。
変わってベトナムやミャンマーなどの国が浮上してきているが、いずれ同じ道を辿るだろう。
著者はやがてその流れはアフリカにおよび、そしてその先はなく、「資本主義の成長は30年以内に限界を迎える」とする。
個人的には漠然と感じていたことだけに、腑に落ちる。

最後に「直感」と「ひらめき」が語られる。
両者は同じもののような気がするが、その違いは、「思いついたことに理由がはっきりとわかるかわからないか」らしい。
「直感」はその理由がわからないもの。
ただ、「直感」は「ひらめき」よりも物事の本質を見極めていることが多いとのこと。
「直感」型の経営者の代表は、セブン&アイの鈴木会長、「ひらめき」型の代表はソフトバンクの孫さんだとする。
このあたりは、ちょっと難しい。

ともかく、大事なことは考えること。
「考えるという行為の繰り返しによって世の中を俯瞰し、大局を判断し、本質を見極める洞察力が磨かれていく」とする。
その言わんとするところは、まったく同感である。

まだまだ限りなく学び続けたいと思うし、これまで抜け落ちていた哲学の3つの思想分野にも挑戦してみようかと思う気になった。
参考図書も挙げられているし、是非トライしてみたい。
経済分野に限らず、学び多き著者である・・・

posted by HH at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 教科書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする