2015年07月29日

【21世紀の資本】トマ・ピケティ 読書日記567



原題:LE CAPITAL
第T部 所得と資本
 第1章  所得と産出
 第2章  経済成長−幻想と現実
第U部 資本/所得比率の動学
 第3章  資本の変化
 第4章  古いヨーロッパから新世界へ
 第5章  長期的に見た資本/所得比率
 第6章  21世紀における資本と労働の分配
第V部 格差の構造
 第7章  格差と集中−予備的な見通し
 第8章  二つの世界
 第9章  労働所得の格差
 第10章  資本所有の格差
 第11章  長期的に見た能力と相続
 第12章  21世紀における世界的な富の格差
第W部 21世紀の資本規制
 第13章  21世紀の社会国家
 第14章  累進所得税再考
 第15章  世界的な資本税
 第16章  公的債務の問題

5,500円もする本がベストセラーになっていると話題になっていたことから、「積ん読リスト」に入れていた一冊。
今世の中で話題になっている「格差」を採り上げた内容であるため、世間の関心を集めたのであろう。それでもこの手の分厚い本が売れるなんて、我が国もまだ捨てたものではないと嬉しくなる。

冒頭からこの本の内容を代表する数式が示される。
それが、γ>g である。
ここで、γは「資本の平均年間収益率」であり、gは「経済成長率」である。
平たく言うと、γは「資本(=資産)が生みだす利益」であり、gが「額に汗して稼ぐ利益」となる。

つまりこの不等式は、稼ぐより資産を持っている者が富むことを意味している。
さらに歴史をひも解くと、常にγ>gが成り立っているという。
要は、「額に汗して稼いでも、持っている人には追い付けない」ということである。
結構ショッキングな内容だ。
それが、γは4~5%だが、gは1~1.5%などと説得力のある数字で語られるから、なおさらである。

利用されているのは主にイギリスとフランスのデータ。
両国ともそうした古くからのデータが残っているのだという。
そこはさすがに老大国である。
そして様々な角度から上記の事実が検証される。

図や数式による説明は明快でもあるが、わかりにくくもある。
ただ個人的には、小説の一場面を採り上げての説明が特にわかりやすかった。
たとえばバルザックの『ゴリオ爺さん』では、まじめに勉強して実績を挙げて、パリでトップの判事になっても5万フラン稼ぐ者は5人もいないが、お金持ちのヴィクトリーヌ嬢と結婚すれば20代で100万フランの富とそこから上がる5万フランの収入が得られると語られる。

小説の中でも利回り5%となると、それは現代でも変わりない。
資本は常に労働よりも分配は不平等であるとされるが、こうした例で説明されるとわかりやすい。
こうして歴史的にも格差は拡大傾向にあるが、唯一格差が縮小したのが、1914年~1945年の期間。
年号ですぐわかるが、2度の大戦である。
2度の大戦による破壊、大恐慌が引き起こした倒産、この時期に成立した公共政策が原因である。

されど、戦後は再び拡大路線に戻る。
21世紀も格差拡大の傾向は続くと予想される。
インフレも資本の再配分という点では役に立たず、資本の配分をさらに拡大する結果をもたらすのみ。そうした金持ちが益々栄える世の中に対し、理想的な手法は「資本に対する世界的な累進課税」という考え方も提示される。

また、公的債務に関する説明では、巨額の公的債務を抱える我らが日本国民としても関心が高い。
これに対しては、やはり民間資本に対する例外的な課税(一時的な特別税)が、最も透明性が高く公正で効率的な方法だという。
インフレも歴史的に効果があることが証明されている(安倍政権もこれを狙っているのだろう)が、緊縮財政は「最悪の解決策」だとする。
このあたりは、今後も興味をもっていきたいところである。

600ページを超える大著で、内容も簡明とは言い難い。
ベストセラーといっても、ホントにみなさん読んでいるのだろうかと思わずにはいられないが、覚悟を決めてとにかく読めば面白いことは事実である。
それにしても、内容的にはちょっとショックなところがある。
今後、我々の社会はこの問題をどうとらえればよいのだろうか。
真面目に考えてみたいと思うところである・・・

posted by HH at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする