2015年09月27日

【たった一人の熱狂−仕事と人生に効く51の言葉−】見城徹



第1章 仕事に熱狂する
第2章 圧倒的結果を出す
第3章 起業は甘くない
第4章 切なさを抱えて生きる
第5章 トップを走り続ける男たち
第6章 悲しくなければ恋愛じゃない
第7章 人生を豊かにする遊び・買い物・食事

著者は幻冬舎代表取締役社長。
幻冬舎と言えば、ビジネス書を多少なりとも読む者であれば、それなりにお世話になっている出版社である。
私も、『置かれた場所で咲きなさい』『心を整える』などを読んでいるし、21年間で21冊のミリオンセラーを世に送り出しているという。
そんな著者が、「755」というSNSで語った言葉をもとにしてできたのが、この本ということである。

「755」とは、堀江貴文がサイバーエージェントの藤田晋社長とともに創設したSNSで、名前は堀江貴文の囚人番号から取られたらしい。
実は、そんなSNSがあることすら初めて知った次第である。
そんなところよりも、語られている内容がとにかく熱い。

「学歴なんか関係ない」ということは、ある程度社会人になれば誰もが感じることだろう。
「どこまで自分に厳しくなれるか。相手への想像力を発揮できるか。仕事の出来はこうした要素で決まるのであって、学歴で決まるわけではない」と語る。
まさに正論であるが、ここでは「相手への想像力」という言葉に注目したいと個人的には思う。

新人編集者として、角川書店に入社した著者は、なんと「角川書店では書かないと決めている作家と仕事しよう」と決めたという。
「他人ができないことをやれ」というのは簡単だが、普通はそうはうまくいかない。
それを著者はやりのけてしまう。

「朝から晩まで仕事について考え抜き、骨の髄まで仕事にのめり込む」
「結果がでない努力に意味はない」
石原慎太郎を口説きに行った時は、代表作『太陽の季節』と『処刑の部屋』を目の前で全文暗唱しようとしたという。
No Pain,No Gain.
なかなか凄まじい方である。

「一休みなんかするな」
「無知を武器にしろ(無知だからこそ、とんでもない発想が生まれる)」
「己の名を上げろ(安全地帯でモノを言っても誰の胸も打たない)」
「正面突破を恐れるな」
なかなか心に響く言葉が並ぶ。

仕事ができない人の共通点は、
・自分に甘い
・思い込みが強い
・小さなこと、片隅の人を大事にしない
・約束を守らない
・時間に遅れる
・他者への想像力が足りない
事だという。
これは共感するところである。

「GNO(義理・人情・恩返し)は絶対死守」
「自分で汗をかきなさい、手柄は人にあげなさい、そしてそれを忘れなさい」
「つまらないことをやたらと人に頼まない。そのかわり、人の頼みは全力で引き受ける」
「現実に七転八倒しながら匍匐前進する」
「恋愛が下手なやつに仕事はできない」
並ぶ言葉はどれも熱い。

タイトルに「熱狂」という言葉が使われているが、著者を表すのにこの言葉は実に適切である。
これだけ仕事に熱狂したら、それは大した成果になるだろう。
仕事が面白くないとか、会社で評価されないとか、くよくよ言っている人はまずこのくらいやれるか、を自らに問うべきだろう。
これだけやれば、そうした悩みは胡散霧消するだろう。

サラリーマンであれば、是非とも自分自身と比較してみるといいかもしれない。
著者と同じレベルとはいかなくても、このレベルを目指せば、高みに辿りつけるかもしれない。
仕事に限らず、何かに熱狂してみたくなる一冊である・・・

posted by HH at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/経営者の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月26日

【ようこそわが家へ】池井戸潤



第1章 現代ゲーム私論
第2章 名無しさん
第3章 善良なる小市民、悪意の一般人
第4章 真夏の攻防
第5章 名無しさんの正体
第6章 名も無きひとりの人間として

池井戸潤は個人的に「お気に入り作家」の一人に加えている。
なかなか一気に全作品読破というわけにはいかないが、折に触れ読むようにしている。
今回は、ドラマ化もされていたこの本である。

主人公の倉田太一は、銀行からナカノ電子部品という取引先に出向している。
大体銀行は50歳を過ぎるとこうした形で取引先に出向し、そこと水が合えば銀行を退職し、「転籍」という形でそこの社員となる。
だが、水が合わなければ銀行に返される。
さすが銀行出身の作者だけに、こうした舞台設定は興味深い。

ある日倉田は、通勤電車で割り込みをしてきた若い男を注意する。
ところが、それで男から逆恨みされ、後をつけられて自宅を知られ、花壇を荒らされたり郵便ポストに猫を放り込まれたり、車を傷つけられたりと嫌がらせを受けるようになる。
また、勤務先ではやり手の営業部長真瀬の不正に気づくも、決定的な証拠がない中、逆に真瀬の不興を買って居心地の悪い思いをする。

倉田自身は、気弱な人間で、社内ではやり手で声の大きな真瀬に面と向かって声を荒げられると、反論できなくなる。
唯一の部下である西沢からは、頼りないと思われているだろうと思っていてもどうにもならない。
そんな主人公の姿がちょっともどかしくもある。

物語は倉田の家庭と職場と、それぞれで同時並行して起こる問題を扱っていく。
姿の見えないストーカー。
やがて家の中からは盗聴器も見つかる。
職場では真瀬の不正を疑うも、隠ぺい工作に阻まれつつも、次第に不正の輪郭が見えてくる。
家庭では息子が、そして職場では部下の西沢が、倉田をサポートする。

一見、誰にでも起こりうる事態。
特に家庭でのストーカーは、恐ろしいと思う。
車内でケンカを売られ、腕に自信があるからといって安易に買うのはやめようと思わせられる。

いつの間にかストーリーに引き込まれ、読むのをやめられなくなるのは、いつもの池井戸作品の特徴でもある。
またほかのも読みたい、と素直に思う。
次は、今ドラマでやっているやつだろうか・・・

posted by HH at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 池井戸潤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月22日

【キャロリング】有川浩



第1唱 オラトリオ
第2唱 もみの木
第3唱 コヴェントリーキャロル
第4唱 もろびとこぞりて
第5唱 ホワイト・クリスマス

なんとなく不思議なテイストが気に入って、定期的に手に取っている有川浩の作品。
「キャロリング」というタイトルは、クリスマスに歌う歌キャロルから来ているのだろうと思う。
それが証に、各章は「各唱」となっていて、それぞれクリスマスソングのタイトルがついている。

物語はクリスマスを前に、廃業が決まった子供服メーカーである『エンジェル・メーカー』が舞台。
主人公の大和俊介は、ここで営業マンをしている。
社長の西山英代は、母の旧友。
子供の頃からの知り合いである。

本業の傍らで、会社は学童保育をしている。
その中の生徒の一人6年生の航平は、両親が別居し、やり手のビジネスウーマンである母は、ハワイ赴任が決まっている。
両親の思いとは裏腹に、航平は両親に仲直りしてほしいと思っている。
そしてハワイに行く前に、それを実現させようと、エンジェル・メーカーの社員柊子を巻き込む。

柊子はもともと大和と付き合っていたが、今は別れてしまっている。
そんな関係から、柊子に付き合って、大和は航平が父親に会いに行くのに同行することとなる。
一方、その父親が務める整骨院には、よからぬ連中が借金の督促に来ている。

冒頭では銃を突きつけられる大和の姿。
これはサスペンスかアクションなのかと思っていると、あまりにも冒頭と合わない穏やかな展開のドラマが続いていく。
どう結びついていくのかという興味がずっと続く。

主人公は大和俊介なのだが、航平にも航平の両親にも柊子にも、赤木ファイナンス社長の赤木にもそれぞれの物語がある。
それぞれの物語が絡み合ってドラマを織りなす。
ストーリー的には単純なのだが、随所で目頭が熱くなる。
このあたりは、有川浩ならではだと思う。

わざとらしくないエンディングは、ドラマの続きを自然と想像してしまう。
また次の作品も、と素直に思う。
これからも読み続けたい作家の一人である・・・

posted by HH at 18:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 有川浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月21日

【ケンカの流儀−修羅場の達人に学べ−】佐藤優



T 修羅場脱出、僕の方法
U 日常にひそむ修羅場
V 非日常の修羅場
W 修羅場の達人に学ぶ

個人的にビジネス書はよく読んでいる。
そして気がつくと特定の人の著書を何冊も読んでいるということがよくある。
そのテイストが好みに合うのだろうと思うが、この本の著者もそういう「テイストの合う」作家の一人。

サブタイトルに「修羅場の達人に学べ」とあるが、これは数々の修羅場をくぐってきた著者流の「修羅場のくぐり方」となっている。
それだけで食指が動くというもの。
ただ内容的にイメージしていた修羅場とはちょっと違っていたが、まぁそれはそれで楽しめた部分はある。

始めに著者の外務省時代の仕事ぶりが書かれている。
「逮捕されるまで悔い改めなかった僕の『やりすぎ』」とあるが、外交官として各国の外交官と酒を飲みながら情報のやり取りをする。
「自分の話したことを正確に覚えておけ」
「機微に触れる情報を聞いたら聞き返すな」
などの話は、普通の人にはあまり役立ちそうもないが、まぁ読み物としては面白い。

著者は今でもロシア語とチェコ語を学んでいるという。
辛い外国語学習を「修羅場」と定義しているが、こういう風に定義すると、一般人にもいろいろな「修羅場」があることになる。
「人は易きに流れる」として、流されないために逮捕されて収監されていた512日間で学術書を中心に220冊の本を読み、思索について62冊のノートを書いたという。
こういうスタンスは見習いたいと思う。

夏目漱石の『吾輩は猫である』からもエピソードを採り上げる。
こじつけに近い気もするが、内容は内容だ。
「派閥」というと悪いイメージがあるが、会社に入って「どの派閥にも加わっていないという人は、能力が低くて相手にされないか、性格に極端な偏りがあるのですべての派閥から敬遠されているという場合がほとんど」という指摘は、モノの見方は一つではないと思わせられる。

著者がたくさんの本を読んでいるということは、この本でよくわかる。
『かもめのジョナサン』、『八日目の蝉』や聖書の『ヨブ記』まで採り上げられる。
元ロシアの専門家らしいロシア情報もあり、それらが「修羅場」として語られる。
しかしながらここに言う「修羅場」の定義は広く、ちょっとピンとこない。
あまり「修羅場」に拘らずに読んだ方が普通に面白いと思う。

著者は、いろいろと普通の人にはできない経験を積んできている人であり、また自身本もたくさん読んでいるためか、語る内容には耳を傾けたくなるものがある。
いろいろ読みたい本はたくさんある中であるが、折に触れてこれからも手に取りたいと思う作家である・・・

posted by HH at 12:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月17日

【村上海賊の娘】和田竜



村上海賊といえば、戦国時代に瀬戸内海を支配していた海賊という程度の知識しかなかったが、『のぼうの城』の原作者の手による小説ということで、興味を持って手にした一冊。

時は天正4年。
織田信長はその勢力を関西に伸ばし、今や7年にわたって対立してきた大阪本願寺を包囲して殲滅しようとしている。
窮地に陥った大阪本願寺は、西の雄毛利家を頼り、兵糧の支援を要請する。
強力な信長勢との全面対決に慎重な毛利家では、当主毛利利輝を中心にこれを支える小早川隆景らが協議を重ねる。

織田方の包囲網を突破し、兵糧十万石を大阪本願寺に届けるには、陸路はほぼ不可能であり、唯一の可能性がある海路が検討される。
そしてそのために、瀬戸内海を支配する村上一族に支援を要請することとなる。
村上海賊は、能島・来島・因島と3家に分かれており、最大勢力である能島村上がその鍵を握っている。

主人公村上景(きょう)は、この能島村上の当主村上武吉の娘であるが、この手のストーリーにありがちな美女ではなく、醜女であるというところが面白い。
女主人公と言えば、最近のハリウッドで流行っているアクション女優はみんな美女なのであるが、醜女となると、映画化する時はどうするんだろうと余計な心配が湧いてくる。
そしてそれに加え、男勝り。
弟の影親をいたぶるだけではなく、その行動すべてが男より男らしい。

そんな景は、海で大阪本願寺に加勢に行こうとしていた源爺や留吉ら農民グループを助ける。
行き掛かり上、船で大阪まで送るが、そこで織田方の勢力下にある眞鍋海賊と知り合う。
眞鍋海賊は、眞鍋道無斎から家督を譲られた七五三兵衛(しめのひょうえ)が当主として指揮を取っている。

物語の前半は、全体の導入部と、眞鍋海賊と景との絡みとなる。
そして当主七五三兵衛がまた凄い。
強力はもちろん、ハチャメチャながら一本筋の通った屈強な男で、豪傑として描かれる。
その描写は、誰が主役だったかわからないくらいである。
何となくこの展開に違和感を覚えていたが、それは後半への布石。
ここで豪快なリーダーとして強烈に印象付けられたがゆえに、クライマックスの海戦が実に大迫力となってくる。

とにかく、眞鍋海賊の男たちが熱い。
その熱が、同じ織田傘下の沼間家の当主義清に伝播する。
さらには、毛利方の当主児玉就英や乃美宗勝の行動も熱い。
計算打算で動く男よりも、信念に従って動く熱い男たちが物語を動かしていく。
そして主人公の景も、負けず劣らずそれについていき、そして追い越していく。
損得を超えて動く登場人物たちの行動が、読む者の心も熱くしてくれる。
なかなかの物語。

最後まで、どうなるかわからぬ合戦の行方。
途中で読むのをやめるのが実に苦痛となる。
登場人物は、みな実在の人物。
実際はどうだったかはわからないし、それは問題ではないが、とにかくストーリーは面白いの一言に尽きる。
この分だと、『のぼうの城』の原作も相当面白かったのかもしれないと思えてくる。

時代劇が好きな人はもちろん、そうでない人も、刺激を欲する人は是非とも一読すべき一冊である・・・
    
   
posted by HH at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説/時代劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【僕がコントや演劇のために考えていること】小林賢太郎



著者のことはまったく知らなかったが、劇作家であり、パフォーミングアーティストであり、コントグループ「ラーメンズ」、演劇プロジェクト「K.K.P」、ソロパフォーマンス「Potsunen」など、劇場を中心に活躍している方らしい。
そんな著者が、タイトルにある通り、日頃の考えを語った一冊である。

そもそも著者のことを知らないのも無理からぬこと。
著者はあまりテレビに出演せず、もっぱら劇場を活動拠点としているらしい。
テレビに出演していたとしても、あまりテレビなど見ないから芸能人の名前もあまり知らない身としては、なおさらである。

やはりこの手の人の考え方は、どこか人と変わっている。
自らを「変な人」と言いながら、「普通の人」だという。
「特別なもの」を生み出そうとするとき、それがどんなふうに特別なのかを「普通」という視点から見極める。
実はこれは今の仕事でも意識していること。
私の場合は、「普通」を「顧客」と置き換えている。

文章のタイトルだけ見ていても、頷けることが続く。
・自分で決める力を養う
・「オリジナルを生み出す」ということから逃げない
・我慢ではなく努力、後悔ではなく反省
・うちはうち、よそはよそ
・できない理由を並べずに、できる方法を考える
・人のせいにしない

「人のせいにしない」では、「もっと一流の人と仕事がしたいと思ったら、まずは自分が一流になることだと考え、やる気を出していればいい」と語っているが、大いに共感させられる。
さらに続く。

・やっちゃいけないことはない、ただしデタラメは通用しない
・返事や挨拶には機能がある
・やりたくない仕事は、やるべき仕事に矯正してしまう
・絶対に売れない方法は「辞める」ということ

舞台や演劇に関することはそうでもなかったが、己の仕事に相通じる考え方などは、やっぱり不偏の真理は異なる仕事であっても変わらないものだと実感する。
著者のことも著者の仕事のことも何も知らないが、書かれていることは、真理だと思う。
なんでこの本を読もうと思ったのか、既に忘れてしまっていたが、読み終えて無駄には思わなかった。
著者も「1行でも自分のためになると思ったら、その本は買いだ」と語っている。
いずれ著者のパフォーマンスも観てみたいと思う。

食わず嫌いはよくない。
少しでもアンテナに引っ掛かった本は、まずは読んでみるべきだと、改めて思わされる一冊である・・・
    
   
posted by HH at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月13日

【貧困OLから資産6億をつかんだ「金持ち母さん」の方法】星野陽子



第1章 女こそ稼がなくてはいけません
第2章 「貯められない女」が資産6億円を持つまで
第3章 金持ち母さん的「お金の効用」
第4章 「しあわせな経済的自立」のための「7つのヒント」
第5章 知らないうちにお金が集まる女になる「8つの習慣」
第6章 成功を手にするまでの「4つのステップ」

著者は翻訳家兼不動産投資家。
離婚を機にお金を稼ぐことに注力し、タイトルにある通り資産6億円を持つに至るが、そこに至る考え方をまとめたのがこの本。
当初、不動産投資本の一つかと思っていたが、不動産投資に留まらず、範囲はもう少し広い。

不動産投資で資産を築いたという人はこれまでも数多いるし、そうした本も何冊も出ている。
ただ、注意しなければならないのは、「純資産(資産から負債を引いたもの)がいくらか」ということだ。
資産が6億円あっても、借入が6億円あれば純資産はゼロだ。
何かあれば、それは非常に脆い砂上の楼閣と言える。
著者も素直にそこは認めているが、この本は不動産投資に留まらないので、そこは良しとしたい。

冒頭、「お金について真剣に考え、行動している人たちはお金に困っていない」とある。
大事なのはやっぱり「実践」だろう。
前半は著者が、OLとして働き始め、ユダヤ人の元夫と結婚し、やがて離婚してお金を稼ぐ必要に迫られるまでの過程が描かれる。
普通は実家を頼ってパートなどで細々と働くという選択肢を取るような気がするが、ここで行動を起こしたことが、やっぱり本を書くほどになる理由だろう。

最初の投資物件は440万円のワンルームだったらしいが、その時までに貯めていた現金で買ったところが評価できるところだろう。
借金して買うと、投資採算は悪くなるし、何より空室時には資金流出に耐えねばならない。
そしてこのマンションを売却し、その結果、家賃と売却資金とで6年間で投資額は2倍になったという。
そして次に3億円のアパートを購入する。

不動産は3億円のアパートが2棟だけのようである。
それだけだともっと持っている人も多いだろうと思う。
わざわざ本を出すほどではないと思うが、この本の意義はそれだけではなく、プラスアルファの考え方のところだろう。

ユダヤ人の元夫からは、「ユダヤ教ではしあわせとお金の両方があって成功者」という考え方を学ぶ。
さらに、
・お金が回る仕組みを築ける否かは、頭がいい悪いではなく、知っているかいないかだけ
・男はいつも誰かと比較、競争しているからしあわせを感じられない
・自分をまず愛して満たしてしあわせになる
・同じ目的を持つ仲間と会う
などの考え方は、とても参考になる。

最後に「どん底にいても確実に上にいける4つのステップ」が紹介されている。
・目標を設定する
・計画を立てる
・現状確認をする
・「計画」と「現状」のギャップを埋める戦略を練り、行動する
何と驚くほど当たり前するものである。

ただ、これはやっぱり「やるかやらないか」だろう。
当たり前だからと言って、やらなければ何にもならない。
この本を通して感じるのは、「実践」だ。
本業の翻訳に加え、不動産賃料、印税、預金利子、株の配当、自動販売機からの売り上げ、携帯電話のアンテナ料、アフィリエイトと著者は8つの収入源を持つ。
これだけでも、「実践」のあとが伺える。

「お金があったら」と嘆く前に、自分には何ができるだろうと考えてみたいものである。
単なる不動産投資本には分類したくない一冊である・・・

posted by HH at 16:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 不動産 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月10日

【スゴい賃貸経営のツボ 】尾浦 英香



第1章 満室経営はどこでやるかの見極めが決め手
第2章 お金が貯まる賃貸住宅を手に入れるポイント
第3章 こんなに簡単!利益を長〜く得る管理のコツ
第4章 賃貸住宅で節税もする賢い大家を目指す

著者のことは、昨年『満室大家さんガラガラ大家さん』を読んで知り、その後実際にお会いして簡易コンサルティングを受けるに至っている。
その著者から、「新刊が出た」とご案内をいただき、手に取った次第。

「物件選びから節税まで、大事なとこだけ集めました」と本の帯に書いてあったが、まさにその通りの内容。
「まずやるべきことは賃貸経営の目標設定」とされている。
改めて考えてみればその通り。
そこがしっかりしていないと、いわゆる「行き当たりばったり」になってしまう。
それだと、失敗しかねないと感じる。

・初心者は人口20万人くらいの都市から始める
・自宅から2時間以内で行ける場所に絞り込む
・地域の調査は自分の足で歩いて回るのが一番
不動産投資はただ買えばいいというものではなく、自ら汗をかけという教えは大事なことである。

そんな素人向けの解説は今さら感があったが、「入居者が途切れない物件の4つの条件」は参考になった。
それは「スーパー」「学校」「病院」「役所」の4つの施設。
事故物件でもすぐに埋まったという話は興味深い。

ある程度経験があれば、賃貸住宅運営に関するあれこれは確認する程度だろう。
前著『満室大家さんガラガラ大家さん』でも触れられた内容もある。
ただ、素人の方なら、「大手不動産の30年一括借り上げは要注意」など読んでおくべきところは多いだろう。
「空室は放置せず、水を流す」など、プロでもできていないところはあるかもしれない。

何事も勉強せずしてやるのは無謀。
賃貸住宅を買おうと言う人は、せめてこの本くらいは読んでおくべきだろう。
プロならこの本と同じくらいのことが書けるか、と考えてもいいかもしれない。
そういうことも含め、勉強になる一冊である・・・

posted by HH at 08:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 不動産 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月04日

【格差大国アメリカを追う日本のゆくえ】中原圭介



第1章 中間層が没落するアメリカ
第2章 格差はなぜ拡大したのか
第3章 経済学は何のためにあるのか
第4章 中間層と国家の盛衰
第5章 21世紀のインフレ政策は間違っている
第6章 世界の模範となる日本

常時出る本をウォッチしている中原圭介氏の著作をまた手に取る。
著者はずっとアベノミクスに警鐘を鳴らしている。
安倍総理に反対と言えば、もっぱら集団的自衛権を中心とした安全保障関連法案に反対するものが多いが、エコノミストである著者の批判対象はもっぱらアベノミクス。
正直言って、個人的にはアベノミクスはうまくいっていると考えている。
だから、著者の批判には懐疑的であるのだが、実はその提言には納得させられるものが多い。

アベノミクスが目指すのは、アメリカのインフレ志向の金融政策であるが、そのアメリカの現状を見ると、目指す方向性は確かに恐ろしいものがある。
アメリカは現在空前の株高好況にある。
しかし、巷で言われているように、格差が拡大し、いまや国民の1/3が貧困層またはその一歩手前なのだという。
そのあたりは、『ルポ貧困大国アメリカU』でも読んだところである。

アメリカでは株主の力が強く、雇われた経営者は株高を演出するために従業員の首を切り、自社株買いで株価を吊り上げている。
また、多国籍企業は複雑な租税回避行為をとっており、たとえばアマゾンなどは日本では税金を払っていない。
政治も近年金権化してきており、大企業とそのバックにいる株主の影響力が大きくなっている。

そんな現状を知ると、何とも言えない気分になる。
そしてその結果、一部の者だけが裕福になり、格差が拡大する。
著者は中間層の没落が、国家の衰退につながるとの説を古代ギリシヤやローマ帝国、唐などの例を挙げて説明して行く。
事例は古いが、だからといって当てはまらないとは限りらない。

・デフレは必ずしも悪ではない
・「円安=製造業にプラス」は時代遅れ
などは、当初政府が言っていたことと逆であるが、著者の論証は納得せざるを得ない。
アメリカ自身が苦しんでいる金融緩和と株主資本主義を、日本が目指すのはいかがなものかという著者の問いは、確かにその通りであると思う。

失われた20年と言っても、日本はその間雇用を守り、生活保護に代表されるセイフティネットが治安の良さを下支えしているとして、著者は評価している。
格差をつけない人事体系が、働く人のモチベーションを支え、日本企業の強さの原動力となってきたと説く。
ROE重視の経営は、それを破壊すると警鐘を鳴らす。

著者はエコノミストであり、こうした分析をするのが仕事。
一般の我々とは比べるべくもなく、我々がこうした事実がわからないのも仕方がないと思う。
ただ、関心があればこうした主張も目に留まるわけだし、そういう意味で、アンテナは常に張っておきたいものである。

できればこのままうまくいって欲しいが、好調に思われるアベノミクスも危うい要素を秘めているという事実は、知っておくべきことだろう。
またしても勉強させてもらったが、まだまだ著者の著書からは目が離せないと思うのである・・・

posted by HH at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月03日

【土漠の花】月村了衛



第1章 ソマリア
第2章 土漠
第3章 血
第4章 花

「これは面白い」と読むのをやめられなくなってしまった一冊。
自衛隊が海外で戦闘に巻き込まれるという内容の物語は、下手をすると現実味のない荒唐無稽のつまらないものになりがちだが、うまく現実味を持たせたところに、この本の成功があるような気がする。

舞台はソマリア。
ソマリアの海賊対策のために自衛隊の派遣部隊が、ジブチに駐留している。
そこへCMF連絡ヘリが墜落し、救助の要請が入る。
そして吉松3尉をリーダーとする捜索救助隊が現地に向かう。
現場を確認し、翌朝から回収作業に入るべく野営した一行の下に、現地人女性3名が救助を求めてくる。

事情を聞けば、現地の民族対立でワーズデーン氏族に追われてきたビヨマール・カダン氏族の者だという。
ワーズデーン氏族による虐殺から逃げてきたのである。
3人を保護しようとした矢先、追いかけてきたワーズデーン氏族の襲撃を受け、なんと隊員3名が戦死する。
そしてリーダーである吉松3尉も射殺されてしまう。

友永曹長は敵の隙をついて仲間とともに脱出する。
逃げてきたビヨマール・カダン氏族の女性2名も殺され、唯一生き残ったアスキラを連れ、自衛隊員たちはワーズデーンの攻撃を回避しつつ、逃走へと移る。
ここからの脱出劇が全編にわたって展開される。
その臨場感溢れる迫力が面白くてやめられない。

自衛隊も最近では海外での活動が許されている。
といっても、平和憲法を掲げる我が国の自衛隊にとって、戦闘行動などもっての他。
ここでも、本来なら米軍があたるべき救助活動について、米軍が現地武装勢力の掃討作戦中で人員が割けないという理由で、自衛隊にお鉢が回ってきたことになっている。
実にありうべき前提である。
そこへ突然の襲撃。

数で勝る武装勢力に、訓練は行き届いているが実戦経験がない自衛隊員が、予想すらしなかった実戦に巻き込まれて行く。
思わず映画『ブラックホークダウン』(この映画もソマリアが舞台だ)を思い出してしまったが、まさに同じような展開である。

生き残った自衛隊員一人一人の人生が描かれていき、そこにもまた物語がある。
死と隣り合わせの現実の中で、葛藤を抱えながら、日頃の訓練を生かしながら、ひたすら安全地帯への帰還を目指していく。
単なるアクションの面白さだけでなく、貧しさから部族対立が起き、幸せに暮らしたくても暮らせない現地の人々の問題も浮かび上がる。
読み終えて、思わず唸ってしまった・・・

映画化されたら、かなり面白いだろうなと別の期待も湧いてくる。
何か肩肘張らずに読める面白い物語はないだろうかと探している方には、是非オススメしたい一冊である・・・

posted by HH at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | スリリングなストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする