2015年11月15日

【競争しない競争戦略-消耗戦から脱出する3つの選択-】山田英夫 読書日記602



第1章 競争しない競争戦略 
第2章 ニッチ戦略
第3章 不協和戦略
第4章 強調戦略
終 章 薄利の奪い合いからの脱却

自らの会社の存続を考えると、自ずから「戦略」というキーワードに反応するようになる。
それも血みどろのレッドオーシャンにいる場合は、どうしてもブルーオーシャンへ移動したくなる。
そんな時、この本のようなタイトルを見れば、手が出るというものだろう。

「競争しない」とは、実に甘美な囁きであるが、そのためには、リーダー企業と「棲み分ける」か「共生する」かであるとする。
そしてその具体的な方法として、「ニッチ戦略」、「不協和(ジレンマ)戦略」、「協調戦略」の3つがあるとする。
なんだか教科書みたいだと思ったら、本当にその通り。
著者は、早稲田大学ビジネススクールの教授であり、これは教科書的な位置付けの本であった。

「競争しない」と言っても、まったく競争がなくなるということはありえず、この本では「競争しない」ことを「既存の業界リーダー企業と争わないこと」と定義している。
はじめに紹介されるのは、「ニッチ戦略」。
ニッチとは、単に売り上げが小さいことを意味するのではなく、「リーダー企業と争わない」という点で、「差別化」とも異なる。

ニッチにも種類があり、「量」と「質」の軸から「技術」「チャネル」「特殊ニーズ」「空間」「時間」「ボリューム」など10種類が挙げられている。
そしてそのそれぞれに具体的企業が紹介されていて、理解しやすくなっている。
例えば、手術用の縫合針のマニー、経営者死亡保障に特化した大同生命保険、北海道に特化したコンビニのセイコーマートなどは、テレビや身近な例として知っているので、イメージしやすい。

不協和戦略には、@企業資産の負債化A市場資産の負債化B論理の自縛化C事業の共食化の4類型がある。
@は、文字通り企業の資産が価値を持たなくなるようにするもので、営業職員を多数抱えた既存の生命保険に対し、ライフネット生命保険が仕掛けた「ネット専業保険」が例示される。
Aは、POSレジの大手企業東芝テックに対し、スマホ決済で対抗したスクエアやペイパルなどである。
Bは、リーダー企業が顧客に説明してきたことを覆せず、有効な対抗策が取れないもので、それまでの「掲載課金型」のリクルートに対し、「成果報酬型」で成功したアルバイト求人のリブセンスが例示される。
Cは、リーダー企業が事業の共食を招くことになるため参入できないもので、従来のスポーツクラブに対して、プールや風呂を持たないフィットネスクラブを展開するカーブスのような例である。

不協和戦略は、リーダー企業が圧倒的な力を持っている業界こそ効果があるというところが特徴である。
これはなかなか心強い。
「自分の業界は大手にかなわないから」と思っているなら、知恵を振り絞ってみる価値はありそうである。
我が不動産業界はどうだろうか。

協調戦略は、「バリューチェーンへの組み込み方(自社のVCか他社のVCか)」及び「機能の代替か追加か」によって4つに類型化できる。
「自社による航空機エンジンの製造」から「他社をも含むエンジンの予防保全・補修・スペアパーツ管理」へ転換を図ったGE。
他行の引き出し手数料で収益を上げるセブン銀行。
他社製品も含めて配達するオフィス・グリコ等々。
改めて説明されるといろいろあるものである。

内容的には、はっきり言って「教科書」である。
理屈を理解するには優しくまとめられていて、若手向きであろう。
ある程度のレベルの人なら、自社の事業と見比べてみて、あれこれと事業展開を考えてみるようにしないとダメであろう。
その際の良い指針となりうるものである。

ゆっくりと自社の事業モデルを考えてみたいと思うのである・・・

posted by HH at 22:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 教科書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする