2015年11月18日

【贖い】五十嵐貴久 読書日記603



Part 1 熱帯夜
Part 2 猛暑
Part 3 沛雨
Part 4 焦暑
Part 5 色なき風
Part 6 晩秋

初めて目にする著者であるが、面白そうなので手に取った一冊。
これがなかなか良い選択であった。

何気なく始まる物語。
井の頭線の久米山に住む吉岡慎二は、同僚と飲みに行く直前、妻からの電話で息子が帰らないと知らされる。
違和感を抱いて帰宅するも、息子は帰宅せず。
そして翌朝、小学校の門前に置かれた息子の切断された頭部が発見される。
なにやら以前あった酒鬼薔薇事件を彷彿とさせるイントロである。

そして埼玉県志木市にある春馬山の雑木林で、中学生の少女浅川順子が他殺体で発見される。
さらに愛知県警の坪川は、市内のスーパーで1歳児が行方不明になったという通報に駆り出される。
まもなく、子供はコインロッカーで他殺体で発見される。

なんの関連もなさそうな3つの事件。
それぞれ警視庁の星野と鶴田里奈、埼玉県警の神崎と中江由紀、愛知県警の坪川が事件の捜査に当たる。
それぞれ「事情」を抱えた刑事で、捜査本部では傍流の立場である。

そんな事件とは一見無関係に、三友商事に勤務する稲葉秋雄が登場する。
定年を控えた独身で、スポーツクラブに通い、健康維持に努める。
社内では出世とは程遠いものの、部下の人望も厚く、定年延長の利用を請われているが、本人は退職を決意している。
そんな老企業戦士は、最初の事件のあった久米山に住んでいる。

バラバラの3つの事件がどう絡んでいくのか、読みながら興味心を刺激する。
キーを握るのは捜査一課の警部星野。
過去の事件の余韻があり、捜査一課内では“浮いた”存在。
そのため、取り扱いに困る女刑事の鶴田里奈と組まされている。
そんな星野が、何を考えてか、不思議な行動を取っていく。
理由もわからないまま、里奈はそれについていく。

こうして次第に事件の全貌が明らかになっていくのであるが、これが何と面白い。
先の予想できない展開ほど面白いものはない。
先が知りたくて、なかなか読むのをやめにくくなる。
直接のストーリーとは関係ないものの、警察内部の「助け合いかばい合い」の文化や縦割り組織の弊害が描かれる。
このあたりは、フィクションなのかそれとも実情を描いているのか、どちらにしても興味深い。

警察の事件ものは数多創られているが、まだまだこれだけ面白いストーリーが紡ぎ出される。
いろいろな登場人物の立場に身を置いて読むと、また味わいも変わる。
この作家の他の作品も読んでみたくなった。
面白いものに飢えている人には、オススメの刑事ドラマである・・・

posted by HH at 15:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説(スリリング) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする