2015年12月30日

【かもめのジョナサン】リチャード・バック



 『かもめのジョナサン』と言えば、あまりにも有名ではあるが、実は今まで読んだこともなく、当然ながらその内容も全く知らなかった。
なんとなく、「児童文学」というイメージでいたのだが、それが全くの誤りであったとわかり、この「完成版」を読んでみることにした次第である。

 「完成版」が従来のものとどこが違うのかというと、従来のものは、Part1からPart3までであったのが、Part4が加わったということらしい。
冒頭の「完成版への序文」で著者自らが語っているが、なんでも当初ボツにしたものを奥様が最近になって引っ張り出してきたという経緯のようである。
読み直してみて、現代に問い掛けるのにふさわしいと判断したのであろう、全くその通りだと思う。

 かもめのジョナサンは、その名の通りカモメである。
群れのみんなは、毎朝漁船の周りを飛び、漁師たちが撒き餌をするのを横から失敬して朝飯とするのを当然としている。されどジョナサンはただ一羽、そんな喧騒から離れ、ひたすら飛ぶことに夢中になっている。
上昇、急降下、右展開、左展開、スピードへの挑戦。

 両親をはじめ群れの仲間たちは、そんな飛行練習の無意味を説き、みんなと餌をとるように勧める。されどジョナサンはそんな言葉には耳を傾けず、やがて群れの誰もがなし得ない飛行速度時速342キロを達成する。しかし、それを快く思わない群れの仲間たちは、評議会の名においてジョナサンを群れから追放処分とする。自由に飛ぶことを良しとするジョナサンは、その決定をも意に介さず、群れから離れて自由に飛ぶ道を選ぶ。物語はそんなジョナサンが同じような仲間と出会い、自らの飛行能力を高め、やがて他の若いカモメに自分と同じように飛ぶことを教えるようになる様子を描いていく。

 注目のPart4は、ジョナサンの教えるグループが大きな勢力となるとともに、やがてジョナサンが去った後、彼を神格化する動きが出てくることが語られる。
飛ぶことよりも、彼がどんな様子で、何を語ったかを重要視して議論し始めるのである。
直接教えを受けた弟子たちが、それを正そうとしても治らず、やがて弟子たち自身も神格化の対象となっていく・・・

 従来部分も、毎日目の前の餌を求める群れの仲間たちと、自由に飛ぶというあり方を追求するジョナサンの生き方が、強烈なアピールとなって伝わってくる。
群れの仲間たちは、現代の日々の生活に追われている我々自身を暗示しており、そこには笑えないものがある。
新たに加わったPart4も、特に組織においては実によくありがちなことであったりする。

 「飛ぶ喜び」「生きる喜び」を求めるジョナサンの姿は、我々にかくあるべしと伝え、我々もまたそうありたいと思う。
されど実際は、そんなジョナサンを異端視し、群れから排除する仲間のカモメたちと同じように振舞っているのではないかと思わされる。
なかなか深い物語である。

 合間合間に挟まれるカモメの写真。
文章自体は短く、すぐに読み終えてしまう。
そのシンプルさの中に、大きな真理が含まれている。
自分自身どんなカモメでありたいか。
じっくり考えてみたいものである。

あまりにも有名なこの作品。
読んだことがない人は、一読すべき一冊である・・・

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2015年12月26日

【昭和史】半藤一利



はじめの章 昭和史の根底には“赤い夕陽の満州”があった
第1章 昭和は“陰謀”と“魔法の杖”で開幕した
第2章 昭和がダメになったスタートの満州事変
第3章 満州国は日本を“栄光ある孤立”に導いた
第4章 軍国主義への道はかく整備されていく
第5章 二・二六事件の眼目は「宮城占拠計画」にあった
第6章 日中戦争・旗行列提灯行列の波は続いたが・・・
第7章 政府も軍部も強気一点張り、そしてノモンハン
第8章 第二次大戦の勃発があらゆる問題を吹き飛ばした
第9章 なぜ海軍は三国同盟をイエスと言ったか
第10章 独ソの攻略に振り回されるなか、南進論の大合唱
第11章 四つの御前会議、かくて戦争は決断された
第12章 栄光から悲惨へ、その逆転はあまりにも早かった
第13章 大日本帝国にもはや勝機がなくなって・・・
第14章 日本降伏を前に、駆け引きに狂奔する米国とソ連
第15章 「堪へ難キヲ堪へ、忍ビ難キヲ忍ビ・・・」
むすびの章 三百十万の死者が語りかけてくれるものは?


歴史問題は、韓国と中国との間で、昨今盛んに言い立てられている問題である。
「自衛戦争論」「侵略戦争論」あるが、果たして歴史の真実はどうだったのだろうということは、誰にとっても関心のある問題であると思う。
いったい何が真実だったのか、そんな興味から手に取った一冊である。
もちろん、これを読めば真実がわかるなどと思っていたわけではないが、ある程度知られている本だけに、大いに参考になることは確かだろうと思った次第である。

まず昭和史の前にざっとそれまでの流れが語られる。
「開国から40年で近代国家を作り上げ、次の40年でそれを滅ぼした」という指摘は印象深い。
中国に対しては、対華二十一か条の要求を突きつけ、自衛のためとはいえ、侵略を進めていく。
排日運動も盛んになり、日本兵の横暴も語られる。
ワシントン軍縮条約で英米比の戦力制限を受け、日英同盟を廃棄する。
このあたりから、徐々に道を過ち始めている。

そして昭和に入り、張作霖爆殺事件が起こる。
事件を起こしたのは関東軍であり、驚くことにこの事件では陸軍のトップのコントロールも効いていない。昭和天皇は事件の究明を命じるも、軍部はこれを事実上拒否。怒った天皇は、時の田中総理に辞職を迫り、内閣解散となった数日後に田中総理は亡くなる。これ以降、側近の忠告もあり、天皇は「内閣の上奏に拒否しないことを今後の大方針とする」と決める。「君臨すれども統治せず」は、立憲君主制の原則であるが、一貫して戦争反対の立場を取っていた昭和天皇の考えを考慮すれば、我が国にとってはこの原則は凶と出たことになる。

有名な石原莞爾は、実は以下のような構想を持っていた。
「満州をしっかり確保し発展させ国力を養う。中国とは戦わずに手を結んで、最終的には中国の協力を仰ぎ日中共同で満州を育てていく」
実現していたら、歴史もさぞかし変わっていたであろう。

印象的だったのは、新聞社が戦争への世論を煽ったこと。
満州事変に際しては、「毎日新聞後援、関東軍主催」と揶揄されるほど、毎日新聞と朝日新聞が競って世論を煽る。
世論の後押しを受けた軍部はますます強気になる・・・
言論統制が激しくなって批判的なことが一切書けなくなるのはずっと後のこと。
新聞社の責任も実はかなり大きいとわかる。

上海事変、五・一五事件、二・二六事件と続き、軍部に反対するものは殺されるというムードが出来上がっていく。
上海事変では、天皇が陸軍を引き上げさせろと要求するが、一方で「勝っているのになんでやめる」という現場の意見が勢いを増す。

南京事件は、陸軍の戦史などをもとに冷静に分析する。
中国が主張する30万人は虚報だが、「中国人捕虜・便衣兵などへの撃滅・処断による死者16,000人、一般市民15,760人」の中には、日本兵による「虐殺」と各種非行事件の被害者は確実にいると指摘する。
そのあたりは冷静に受け止めなければならない事実なのだろう。

対米英戦争に反対する勢力が次第に強硬派に押されていく。
「半年はなんとかなるにしてもその後の補強や資源の確保はどうするのか」という山本五十六の冷静な反論が無視される。
4度の御前会議が開かれるが、天皇はせめてもの抵抗として明治天皇の歌を披露するに留まる。
そして、開戦が決定される。

著者は、この昭和史を振り返り、日本人としの反省点を挙げている。
・国民的熱狂を作ってはいけない
・抽象的な観念論を好み、具体的な方法論を検討しようとしない
・主観的思考による独善
・対処療法的なすぐに成果を求める短兵急な発想
これらはいずれも現代の我々に相通じるものがあるような気がする。
「平和憲法」を掲げてさえいれば、「平和が維持出来る」という思考はまさにその典型だろう。

一冊の本を読んでそれを丸ごと鵜呑みにするのは愚の骨頂である。
そこは冷静に判断したいと思うが、歴史上の事実に基づき記述されている部分はそのまま受け入れられるところである。
そうして改めて感じるところは、やはり軍部(特に陸軍)の暴走という部分が大きいというところである。
そしてマスコミの煽り。
当事者にしてみれば、その時は最善の判断だと思っていたのであろう。
必要なのは、他者の意見に冷静に耳を傾け、複眼的に思考することだったと思える。

日本人なら誰もが一度はきちんと見直してみたい昭和史。
その一助になる一冊である・・・

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2015年12月20日

【米陸軍諜報指導官に質問されたらあなたは何も隠せない】ジャームズ・O・パイル/マリアン・カリンチ



Find Out AnythingFrom Anyone,Anytime

序章 質問テクニック習得の効果 
第1章 考え方を変える
第2章 上手な質問の作り方
第3章 質問のタイプを把握する
第4章 領域別に「発見」する
第5章 よく聴き、よく黙り、よくメモする
第6章 答えを分析する
第7章 専門知識はどうたずねるか?

著者は米軍の尋問官だという(共著者は著述家)。
そんな米軍の尋問テクニックを知ることができるなら、それは誰でも興味深いだろう。
まさか軍事機密まで暴露されるとは思わないが、大いに興味をそそられて手に取った一冊。

しかし、内容はといえば、「尋問」というよりも、「質問」に力点が置かれている。
まぁ一般人が「尋問」などする機会もないだろうし、そういう「アレンジ」はいいだろう。
そんな「質問」において、上手なのは、「答えとして説明=情報を求める」、「一つの項目に焦点を絞る(一問につき一つ)」ものだという。
ホワイトハウス担当記者の拙い質問例をあげて、それがわかりやすく説明される。

この本で説明される「質問テクニック」は以下の通り。
・優れた質問テクニックを見分け、実践する方法
・避けるべきタイプの質問の見分け方
・未確認の報告やゴシップに対する適切な質問の出し方
・相手の話を上手に聴き取り、あらゆる手がかりを追求するテクニック
・質問のタイプの見分け方
・適切なタイミングで会話の流れをコントロールする方法
だが、正直言って本を読んでどうにかなるというものではない。

上手な質問のタイプとして六つが挙げられている。
・ストレート-基本的な疑問詞を1語だけ使う
・工作質問-答えが分かっていることをあえて質問する
・問い直し-同じ情報について2つの異なる質問をする
・集中追求-同じ内容の質問を出し方を変えて繰り返す
・要約確認-相手に回答の再考・確認するように仕向ける
・息抜き-本筋に関係ない質問
しかしながら、「工作質問」「問い直し」などは、どちらかという「尋問」色が強い気がする。
普通の会話では、なかなか使い方が難しいかもしれない。

一方、下手な質問として4つ紹介されている。
・誘導-一つの答えを示唆する
・否定-「〜ない」という否定表現を使うと、質問の内容が不明確になる
・曖昧-漠然としている
・混合-二つの話題を一つの質問で取り上げる
これはなんとなく普通の会話でも利用できそうである。

また、質問を4つの領域に分けて話すというのもなかなか参考になった。
4つの領域とは、「人」「場所」「物」「出来事」である。
さらに、「よく聴き」「よく黙り」「よくメモする」というのは、そのままその通りだろう。
質問とは、相手から答えを引き出す物である以上、相手に喋らせないといけない。
よく質問なのか演説なのかわからない問いかけをする人がいる。
聞いていてもよくわからないし、うんざりさせられてしまうものである。
改めて言われるまでもない。

タイトルからイメージしていたのは、もっと違うこと。
だが中身は「質問術」。
悪くはない内容だとは思うのだが、やはりもっと適切なタイトルをつけて欲しい物である。
(一応サブタイトルに『交渉事で主導権を握るための質問術』とはなっているが・・・)

昨年も『パワー・クエスチョン』という本を読んだが、「質問する力」についてはもはや疑う余地はない。
あとは、「どうやったら適切な質問ができるようになるか」だ。
いろいろな人が、「我こそは」と得意のノウハウを主張する。
それはそれで否定するつもりはないが、わかりやすさというものはある。

この本のノウハウは、なかなか凡人が読んで理解・使用できるというものではない。
長年トレーニングを積んだ者にしか使いこなせそうもないと感じさせるものがある。
当然といえば当然。
そこを理解した上で、読んでみたい一冊である・・・


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2015年12月19日

【横綱の品格】双葉山 時津風定次



第1章 ゆくて遥かに
第2章 立浪部屋
第3章 同門の人びと
第4章 ひとすじの道
第5章 相撲のこころ
第6章 双葉山道場
第7章 力士と条件
第8章 交わりの世界

戦前の大横綱双葉山の自伝。
ご本人は昭和43年に亡くなっており、もう死後45年ということになる。
この本はかつて「相撲求道録」として出版されたものの復刻版ということである。

双葉山の生まれは明治45年。
大分県の出身。
小学生の頃、家を助けて船での運送業に携わっていたという。
父の事業がうまくいかず、進学を諦めて力士になることにする。
「お前もひとつ、相撲にならんか」と父親に言われたそうであるが、今とは異なる時代を感じられる。

立浪部屋に入門した双葉山は、稽古に精進する。
宴席に招かれた時、仲間たちが踊る中、一人踊らずにいて理由を問われた双葉山は、「相撲以外は稽古していないから踊れない」と答えたという。
さらには仲間と競い合って早起きし、暗いうちから稽古場に立ち、しまいには朝の4時から稽古をするようになると、「早すぎる」と師匠から小言を頂戴したという。
スポーツ界の成功者には、皆なるほどと思わせられるトレーニングのエピソードがあるものである。

昭和の初期を奏した稽古で過ごし、やがて順調に出世していく。
一度も勝てなかった男女ノ川に勝って「恩返し」をし、関脇、大関と進む。
その当時は、まだ自分の実力に自信を持てなかったようである。
そして昭和12年、第35代の横綱に推挙される。
この頃、すでに69連勝の最中である。

読んでいくと、この方は随分とストイックだったと思える。
相撲ひとすじに精進し、横綱になっても、今度はその責任感からさらに「一にも稽古、二にも稽古、ただ稽古一途に進むほかなかった」と語る。
そうしたスタンスは、時代が暗くなっていったはずの戦時中の時代背景が、文脈からはあまり伝わってこないところにも表れているように思う。

昨今、土俵では外国人力士が活躍し、横綱にも外国人力士が名を連ねている。
相撲も国際化が進む中では仕方ないと思うものの、その一方では、社会が豊かになって国民がハングリー精神を失いつつあるのかもしれないとも思う。
相撲に限らずであるが、「時代が違う」と言われればそれまで。
しかし、双葉山の生きた姿から学べるものは多い気がする。

わざわざ復刻版を出そうと思った人も、そんなところを感じたのかもしれない。
せっかくの機会を逃すのももったいない。
読むのに時間のかかるものではないので、何かのヒントを探す人は一読してみるといいかもしれない一冊である・・・

  
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2015年12月16日

【熱狂宣言】小林成美



序章  「1967」2周年パーティー
第1章  若年性パーキンソン病の告白
第2章  100店舗100業態という奇跡
第3章  高知での少年時代、憧れの東京
第4章  迷走の時代を越えて
第5章  素顔の松村厚久
第6章  外食産業のさらなる未来
終章   新たな治療、上場の鐘

この本は、東証一部上場企業である株式会社ダイヤモンドダイニング創業者松村厚久を主人公としたものではあるが、書いているのはご本人ではない。
スポーツ選手などの本を手がけているライターである。
ご本人は全面協力しているものの、ご本人が書いていないという点で、『スティーブ・ジョブズ』などと同類と言える。

『スティーブ・ジョブズ』もそうであったが、本人が書いていないということは、内面の思いが書かれていないという反面、周りの評価など客観的なものが入ってくるという良さがある。
この辺りは、一長一短といったところかもしれない。

ダイヤモンドダイニングと聞いて、すぐに反応はできなかったが、「ヴァンパイア・カフェ」のことは聞いたことがある。
そんなテーマレストランを多数展開している会社である。
調べてみたら、新宿にある「キリストンカフェ」と「絵本の国のアリス」には行ったことがあった。
一方で、同じかと思っていた監獄レストラン「ロックアップ」は別系統であった。

そんなテーマレストランを率いる松村社長は、実は若年性パーキンソン病に侵されている。
パーキンソン病とは、脳内のドーパミンの異常で、手足の震えなどの運動障害が起こる病気のようである。
モハメッド・アリが罹った病気として印象に残っているが、上場企業の社長でそういう病気になってしまったのは、大変なことだと想像される。

しかしこの松村社長は、実に人格者らしく、彼を慕う人脈のネットワークがすごい。
初めは、自伝ゆえのヨイショかと思っていたら、どうもそうではないらしい。
ネクシーズの近藤社長、ダイニングイノベーションの西山社長(「牛角」のレインズインターナショナルの創業者)、GMOの熊谷社長、同じ「熱狂」(『たった一人の熱狂』)がキーワードの見城幻冬舎社長などそうそうたるメンバーが、熱い友人として登場する。
単に勢いで上場まで行ってしまった社長さんではないようである。

高知から出てきて、大学時代にサイゼリアでアルバイトし、飲食業の楽しさに目覚める。
就職し、ディスコの黒服をやり、日焼けサロンでお金を稼いで、飲食業に進出する。
初めての場所は銀座と決めるも、なかなか店舗を借りられず、駆けずり回ってようやく最初の店「ヴァンパイアカフェ」をオープンさせる。
その後、常にオンリーワンの店作りを心がけ、「100店舗100業態」に挑んでいく。

上場を企業人としての成功と捉え、目指す人は多いのだろうが、松村社長の場合、「社員が結婚の挨拶に行って相手のご両親に安心してもらえる」「社員が住宅ローンを組みやすくなる」という理由を掲げているところがいい。
病気の症状が出る中、「熱狂」を掲げて社員と共に邁進していく。
自分にはとても真似のできないスケールである。

ご本人が実際にどんな人物なのかは分からないが、本を読む限りはかなりの人格者に思える。
ヨイショなのか、それとも実際その通りなのか、もう少し判断できそうなエピソードが欲しかったと個人的には思う。
それにしても、これでダイヤモンドダイニングに興味を持ってしまった。
他の店舗にも是非行ってみたいと思わせられる一冊である・・・


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2015年12月15日

【ササる戦略】土居義則



Strategy 01 ダイドードリンコ株式会社
Strategy 02 森永乳業株式会社
Strategy 03 ミニストップ株式会社
Strategy 04 江崎グリコ株式会社
Strategy 05 株式会社横浜DeNAベイスターズ
Strategy 06 本田技研工業
Strategy 07 小林製薬株式会社
Strategy 08 ライフネット生命保険株式会社
Strategy 09 小金屋食品株式会社
Strategy 10 株式会社トリドール
Strategy 11 株式会社Gunosy
Strategy 12 キューピー株式会社

「戦略」という言葉は、私が読む本を決める際の1つのキーワードである。
条件反射的に手に取ってしまうと言っても過言ではないかもしれない。
そんな「戦略」を謳った一冊であるが、著者は記者。
知らなかったのであるが、「Business Media誠」というオンラインビジネス誌に寄稿しており、この本はそこから生まれたらしい。

各章に一企業が当てられていて、全部で12の企業が紹介されている。
初めのダイドードリンコは、ご存知飲料メーカー。
自動販売機で缶コーヒーを販売する際、長年左上が「一等地」とされていたらしい。
というのも、消費者は左上から右へ、そして左下から右端へと視線を移動させるので、一番左端が真っ先に目に止まる一等地と信じられてきたという。

ところが、技術が進歩し、アイトラッキングによって実は消費者の視線は「左下」に集まるとわかる。
当然、左下に缶コーヒーを置いたら売り上げが数10%伸びたという。
なるほどと思うも、「それじゃあ他の場所に置かれた飲み物はどうなんだろう」という疑念が湧く。
缶コーヒーだけが売れればいいのか、缶コーヒーが特別利益率が高いとか、もう少し突っ込んで欲しいと思ってしまった。

ミニストップのソフトクリームは以前から何度か食べたことがあって、知ってはいた。
しかし、実はその運営は難しく、なかなか真似できないらしい。
機械の設置スペースや保健所への申請、機械のメンテナンス、アルバイトの技術・・・
それでセブンイレブンなど他のコンビニでは取り扱っていないのかと納得。
どんな商売でも、こうした隠れたニッチがあるかもしれないと思う。

横浜ベイスターズが取り上げられているのに、ちょっと驚く。
球団は最下位近辺をウロウロしているにも関わらず、入場者数は年々増加しているという。
それは20代後半〜40代前半の「アクティブサラリーマン」をメインターゲットとし、イベントなどの催しで、「人を誘いやすい雰囲気」を作っているという。
飲食メニューの改善など組織の違いもあってできないものもあるらしいが、球場の解放などそれまでにない新しい試みも見られる。
こうした取り組みは、自分の仕事でも参考になる。

その他、海外進出した企業の取り組みなど、企業の苦労話はもともと好きなためか、読んでいて面白い。
1つの企業の戦略を深掘りするのもいいが、この本のように「良いとこ取り」も良いかもしれない。
各章は短く、正直もうちょっと深掘りしても良いのではないかと思うが、総じて興味深い内容である。

「戦略」に興味のある人は、一読しても良いと思う一冊である・・・

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2015年12月14日

【貧困女子】鈴木大介



第1章 貧困女子とプア充女子
第2章 貧困女子と最貧困女子の違い
第3章 最貧困女子と売春ワーク
第4章 最貧困女子の可視化
第5章 彼女らの求めるもの

何やら穏やかならぬタイトルであるが、格差拡大が危惧される我が国において、収入面でその底辺にいる人たちのうち、特に女性にスポットを当てたルポである。
タイトルの「最貧困女子」であるが、これは年収114万円未満で、特に10〜20代の女性を「貧困女子」というのに対し、さらにその下の層に所属する女性たちを指している。
何だか読むのを躊躇わせるものと興味とが混ざり合うタイトルである。

読んでいくと、そこには一括りにできない様々な実態があることがわかる。
単に年収が低いだけが問題ではない。
年収が低くとも、「プア充女子」と呼ばれる女性たちは、地域の中で仲間とシェアし助け合い、低い年収をカバーして生きている。

「貧乏」と「貧困」は同じようでいて実は異なる。
「貧乏」は単にお金がないだけ。
「貧困」は、それに加え「家族・地域・友人などあらゆる人間関係を失い、もう一歩も踏み出せないほど精神的に困窮している状態」だとする。

著者は、人は低所得に加え、「3つの無縁」と「3つの障害」から貧困に陥るとする。
「3つの無縁」とは、「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」であり、「3つの障害」とは「精神障害・発達障害・知的障害」であり、これらを複合的に抱えているのも珍しくはないらしい。
そんな女性たちの取材実例が紹介されていく。

女性たちが落ちて行く先は決まって風俗であるが、それも容姿によって「救われ具合」が異なるのは想像に難くない。
毎日出会い系サイトで「募集」しても、書き込みから何時間しても「応募」がないケース。
その「日銭」で二人の子供を育てる女性が登場するが、なんとも言えない気分になる。

著者もただ興味本位、金目的で取材しているだけではなく、それなりに苦境脱出の手助けを試みたらしい。
だが、ただ一人として改善に導けた例はないと告白している。
そしてやがて圧倒的不自由・悲惨・壮絶から、著者は「尻尾をまいて逃げ出」す。
読む者にとっても、いい気分がしないもので、直接接していれば当然かもしれないと思う。

そして著者は、そんな状況の改善策としてまず「小学生時代に救いの手を」としている。
何事も早めの対処が肝心なゆえ、それはよくわかる。
特に5時以降の時間外の「居場所ケア」「夕食サービス」については、いいアイディアだと思う。
だが、成人後の「セックスワークの正常化」案については、違和感を禁じえない。
こうした「最貧困」は可視化できないところに問題があるというのはよくわかるが、「セックスワーカーの社会的地位を高めていき、彼女らが労働者として保護されるようにする」という案は、なかなか過激だ。

まぁその意見の是非はともかくとして、週一回の副業でセックスワークに従事する女性とか、およそ普段考えもしない実態が描かれているところは、全くの興味本位であるが収穫であった。
何でもそうだが、世の中の実態を知るということは、改善の第一歩である。
いろいろと付随して考えさせられるところの多い本であることは確かである。
何もできるものはないが、世の中の事実を知るには良い一冊である・・・

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2015年12月13日

【グレートカンパニー】リッチ・カールガード



原題 : The Soft Edge Where Great Companies Find Lasting Success

第1章 「グレートカンパニー」が持つ成功し続ける条件とは何か
第2章 なぜ経営者は財務諸表だけを眺めていてはいけないのか
第3章 チーム全体の信頼を高める
第4章 変化に対応し続けるための「知性」を育てる
第5章 失敗を恐れないチームをつくる
第6章 他社には真似できない「テイスト」を生み出す
第7章 心に響くストーリーの語り手になる
結論  データと感性の融合が最強のチームをつくる

著者は、現在「フォーブス」誌発行人であり人気コラムニストとのこと。
さらにはアントレプレナーとしても数多くの起業を成功させ、ベンチャー投資家でもあるらしい。
要は起業の才溢れるビジネスマンなのであろう。
そんな著者が、成功する企業について語った本である。

なんとなくタイトルからして『ビジョナリー・カンパニー』シリーズを連想したが、この本もまたすぐれた企業が有する特質について、「ソフトエッジ」という言葉を使って説明している。
サブタイトルに「すぐれた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件」とあるが、それがすなわち「ソフトエッジ」である。

企業は「長期にわたって成功するための完全な三角形」として、「戦略的基盤」「ハードエッジ」「ソフトエッジ」の3つがあるとする。
このうち、「ハードエッジ」は「スピード」「コスト」「サプライチェーン」「流通」「資本効率」の5つであり、これは分かりやすい。
これに対する「ソフトエッジ」とは、「信頼」「知性」「チーム」「テイスト」そして「ストーリー」である。

「信頼」とは文字どおりであり、企業の成功を支える土台である。
「信頼」こそがイノベーションを生み、「知性」とは、変化に対応し続けるためのものであり、失敗を恐れないチームが企業の力となる。
他社に真似のできないものが「テイスト」であり、心に響く「ストーリー」が企業の力となる。
「ストーリーとは会社であり、会社とはストーリーである」として特に強調されている。

こうした「ソフトエッジ」がもたらす強みが、永続的な魅力の本質だとする。
具体的な企業として、ノースウェスタンミューチュアルという保険会社や企業ではないがインディアナ大学のバスケットチームとか、メイヨー・クリニック、フェデックスなどが紹介されている。
果たして自分の勤めている会社はどうなんだろうと比較してみるのもいいかもしれない。

やや教科書的であるのは、仕方ないかもしれない。
ただ、いくつかはその通りだと共感できる指摘もある。
「苦境に立たされた時こそ企業文化が問われる」
「雑談しにくい職場に創造性は生まれない」という指摘は、もっともだと思う。

『ビジョナリー・カンパニー』シリーズもそうだが、優れた企業についての研究というのも個人的には必要だと思っている。
確かに栄枯盛衰はあるかもしれないが、働く自分の会社がより「すぐれた企業」に近づくためには何が必要なのか、常に意識していたいと思っている。
そういう自分には、この手の本は心地よい。

『ビジョナリー・カンパニー』シリーズもまた続編が出るかもしれないが、この手の本は意識的に読み続けたいと思う。
この本に続編が出るのかどうかはわからないが、出るなら読みたいと思える一冊である・・・

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2015年12月10日

【なぜ、スーツは2着目半額のほうがお店は儲かるのか?】千賀秀信



Prologue 価格はどう決めるのか?
Part 1 戦略が変われば価格も変わる
Part 2 なぜ、スタバは値下げをしないのか?
Part 3 「買いたくなる」気持ちを誘導する価格戦略
Part 4 価格競争の裏で儲ける方法とは?
Part 5 知って得する価格設定のノウハウ

著者の肩書を見ると「計数感覚・養成コンサルタント」となっている。
このあたりは、「自分ブランディング」なのかもしれないが、一方で公認会計士でもあるようであり、会計系の本だということはタイトルからもわかる。
この手の本は、『問題です。2,000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』とか、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?不正会計編』『50円のコスト削減と100円の値上げはどちらが儲かるか』など、似たような本を何冊も読んでいる。
だが、もともとこういう系統の本が好きなこともあって、やはり見れば読んでみたくなる。

内容はといえば、期待通り会計系のものである。
価格はどう決まるのか、「原価志向」、「需要志向」、「競争志向」とそれぞれ価格決定のメカニズムの解説から始まる。
数字は苦手という人でも、入りやすいのではないかというイントロである。

具体的な内容となると、企業の実例が例示されていて分かりやすい。
例えば、Part1「戦略が変われば価格も変わる」では、「コンビニとまいばすけっと」、「レクサスとディスカウントストア」、「ニトリと大塚家具」などが採り上げられているが、身近な例だけにイメージしやすい。
ニトリと大塚家具など、店舗内の様子を頭に浮かべながら、経営指標を見ていくとより一層理解が深まる。

続いて採り上げられるブランド戦略は、『100円のコーラを1,000円で売る方法』でも説明されていたリッツ・カールトンのルームサービスで頼む1,000円のコーラの例そのものである。
「高級ホテルで頼む1,000円のコーヒー」、「値下げしないスタバ」、「高くても売れるフェラーリ」。
これも『100円のコーラを1,000円で売る方法』を思い出せばよくわかる。

タイトルとなっている「スーツ2着目半額」は、同時に2着購入してもらえると、2着目については固定費がほぼゼロとなることから、可能になるという説明がなされている。
多少会計がわかればこの理屈はすぐわかる。
なるほどと言われてみればその通りであり、よく考えついたものだと感心してしまう。

丸亀製麺が、安くても儲かる仕組みとして、最後におにぎりを勧めている意図が語られる。
これが利益アップの決め手となっているということであるが、具体的な数字で解説してくれているところがわかりやすい。
普段何気なく見逃しているこうした各企業の戦略を、係数を挙げて解説されているので、興味を持って理解できる。
やはり各企業ともよく考えているわけである。

こういう例を見ていくと、企業の戦略というものは、やはり数字を意識して考えないとダメなのだろうと実感する。
ヒラメキでも通じるのかもしれないが、限界利益などを念頭に考えられたものはやはり違う気がする。
頭の体操にもなるだろうし、自社の戦略を考える立場の人なら意識しておきたいところだと思う。

もともと好きなこともあるが、この手の本はやっぱりやめられない。
気がつけば似たような本ばかりかもしれないが、それでも次もまた手に取るだろうと実感させられた一冊である・・・

posted by HH at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/会計・財務 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月06日

【御社の寿命 - あなたの将来は「目利き力」で決まる!】中村 宏之



第1章 調査員が走る!企業倒産ドキュメント
第2章 会社はなぜ倒産するのか ごまかしを重ねる会社と見抜けない銀行
第3章 まじめで堅実な社長が会社をつぶす データで見る企業と倒産の関係
第4章 生き残る企業の条件 優良会社5社の社長は語る
第5章 ドジョウの角さん 名物情報記者の奮戦記
第6章 「帝国ニュース」の記述で語る昭和・平成倒産史
第7章 倒産の基礎知識 これで経済ニュースが読み解ける

なかなか興味深いタイトルだと手に取った一冊。
タイトルを見て、その本を手に取るケースはかなり多い。
当然、タイトルから連想される内容を期待しているわけであるが、その通りであれば良し(というか本来そうあるべきだろう)、だが実際は「看板相違」がかなり多い。
この本もそんな一冊。

タイトルから、自分の会社の寿命はどうなのかわかるのだろうかと思っていたが、中身は倒産にまつわる諸々。
著者が帝国データバンクとなっているから、そうなるのも実は自然なのだが、それならそうと、それがわかるタイトルにしてほしいものである。
また、サブタイトルに「目利き力」とあるが、この本を読んでも「目利き力」は身につかない。
これも看板に偽りありで、強いて言えば、「倒産する会社の特徴・見分け方」だろうか。

過去の有名企業の倒産を扱った第1章。
スカイマーク、白元、エドウィンらが紹介される。
記憶にあるものもあるが、さらりと触れられるだけで、深堀はされていない。
「目利き力」として、粉飾を見抜いた支店長の例だとか、危ない会社の特徴とかが紹介されているが、これらは金融機関の人から見れば参考になるかもしれない。

将来の話ばかりする社長、華美な社長室、倉庫、経理部長、職場環境等々企業の倒産の兆候はあらゆるところに現れる。
一般の事業会社の営業マンあたりが身につけるのは困難かもしれない。
「会社をつぶす社長の10のポイント」などはありきたりだし、「倒産企業の社長の平均年齢59歳」などなんの参考にもならない。

企業倒産史は、「そんなこともあったか」という程度。
読み物としてはそれなりだろう。
この本を読んで、危ない会社と取引して損失を出すことから回避できるようになるかと言えば、そんなことはない。
参考にもならないし、まぁ読み物として面白いという程度だろう。
そういう目的で読まないと、肩透かしを食らうことになる。

そもそもであるが、「目利き」など出来るものではないと考えている。
外見から人を判断するのが難しいように、企業も判断するのは難しい。
会社をつぶす社長の10のポイントに全て当てはまっていても、必ず倒産するものではないし、そもそも銀行以外は、倒産を疑って取引するのは困難である。
せいぜいが過度の与信とならぬようにリスクコントロールするくらいであろう。
そもそも内容と合っていないタイトルをつけて平気で売り出すのに、「目利き」もないだろう。
それともそういう本を見分ける「目利き力」をつけさせてくれようとしているのだろうか。
いずれにせよ、その程度の本に得るものがあるとも思わない。

まぁ「軽い暇つぶしの読み物」程度に考えておくべき本だと言える一冊である・・・
   
   
posted by HH at 18:23| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする