2016年02月29日

【アンナ・カレーニナ】トルストイ



原題: Анна Каренина

トルストイの代表作であるが、これまで読んだことはなく、この歳になってようやく読んでみようと思った次第である。
すでに映画は観ていてストーリーは知っているのであるが、その内容がよかったこともあって、改めて原作もとなった次第である。

主人公は、タイトルにもある通りアンナ・カレーニナという19世紀ロシアの伯爵夫人。
そのアンナは、兄の浮気に端を発した兄夫婦の離婚の危機に、夫妻を訪ねてモスクワへとやってくる。
その車中でアンナと同席した婦人をモスクワ駅で迎えたのが、アレクセイ・ヴロンスキー。
互いに意識し合い、やがて二人は不倫関係になってしまう。

何せこの時代、現代とは違って貞操観念がものすごく強い。
不倫などというものが、簡単に許されるものではない。
アンナには夫との間に一人息子がいるものの、さらにヴロンスキーとの間にも子供を身ごもる。
この時代の文学表現の限界なのか、気がつくと二人はいつの間にかデキていて、熱いベッドシーンの一つでもあればわかりやすいのにと現代の感覚からは思うところである。

物語は、文庫本で上中下巻に分かれる大作なのであるが、すべてアンナのことばかりではない。
実はほぼ半分を占めるのが、「もう一人の主人公」ともいうべきコンスタンティン・リョーヴィン。
アンナの兄嫁の妹であるキチイに惹かれるも、キチイはよりによってヴロンスキーに惹かれ、リョーヴィンのプロポーズを断ってしまう。
失意のリョーヴィンは領地であるポクローフスコエ村へと帰っていく。

領地に戻ったリョーヴィンは、失恋の痛手を癒すべく領地の農村経営に力を入れ、やがてそこに生きがいを見出していく。
そしてヴロンスキーがアンナと深い関係になってしまったことから、病んだキチイはリョーヴィンの愛を受け入れ、結婚して彼の領地で暮らすようになる。
無信仰だったリョーヴィンは、農村の素朴な生活の中で信仰に目覚めていく・・・

アンナは、ヴロンスキーとの関係を夫に告白する。
夫のカレーニンは、ヴロンスキーに決闘を申し込むかどうか迷うが、このあたりも時代を感じさせる。
もっとも現代でもこうしたケースでは、相手の男に損害賠償を請求するということがあるので、形は違えど根は同じかもしれない。

この結果、アンナは社交界を締め出される。
ヴロンスキーには影響がないようであり、やはり同じ浮気でも女の方が世間の風当たりは強い。
またリョーヴィンの兄は、乱れた生活を送り病に倒れる。
娼婦のマーシャと一緒に暮らしているが、訪ねて行ったリョーヴィンは、妻のキチイがマーシャと同室することに神経を使う。
このあたり不倫や娼婦といった「汚れた女」に対する世間の冷たい視線を感じさせる。

後先考えず愛に走ったアンナが、やがて直面する現実の冷たい壁。
農村で地に足をつけて生きるリョーヴィンが得ていく精神的な安らぎ。
ロシアの農村と宗教、社会制度、貴族たちは母国語に加えてフランス語を話し、そんな社会の様子が物語と平行して描かれていく。
精神的に追い込まれていくアンナと安らぎを得ていくリョーヴィンの対照的なラスト。

現代でもなんでも自由になるわけではないが、この時代から比較すればはるかに自由であると改めて思う。
長い物語であるが、『カラマーゾフの兄弟』よりは正直言って読みやすいし、味わいもある。
どちらも名作として名高いが、個人的な好みから言えば、こちらの方に軍配を上げたいところである。

これまで読まないで来てしまったことが残念な一冊である・・・

    
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2016年02月22日

【新しい道徳】北野武



第1章 道徳はツッコみ放題
第2章 ウサギはカメの相手なんかしない
第3章 原始人に道徳の心はあったか
第4章 道徳は自分で作る
第5章 人類は道徳的に堕落したのか?

著者は今や「ツービート」と言っても通じないかもしれないと思われるビートたけし。
いや、この本では「北野武」となっている。
漫才からスタートし、今や俳優・監督としても一流の地位を築いたたけしは、著作にも進出しているが、以前読んだ『間抜けの構造』では、「ビートたけし」で出版していたのに、この本は「北野武」となっている。
その違いがちょっと気になる。

「新しい道徳」と言っても、何か従来と違う道徳を考えているわけではない。
「なんだかおかしいなあと思うから書いただけ」と本人が語る通り、最近の道徳の教科書を見て、違和感を感じたという内容が綴られている。
のっけから「道徳がどうのこうのという人間は信用しちゃいけない」と手厳しい。

読み進めば、たけしの毒舌が目に飛び込んでくる。
「自分を見つめて」という表現に、「小学校1年が自分を見つめるわけがない」。
「一番うれしかったことを書きなさい」という表現に、「小学校1年に一番うれしかったこともない、そういうのは歳をとって昔をふり返って思い出すもの」。
「いいことをしたら気持ちいい」という表現に、「年寄りに席を譲るのは人としてのマナーの問題、気持ちいいではない」等々辛辣である。
もっとも、そんなに突っ込むほどのことか、と個人的には疑問に思う。

しかし、「年寄りを大切にしなさいと言いながら、なぜかを教えていない」という指摘は、確かにその通りだと思う。
今の日本があるのは、年配の人たちが頑張ってきたおかげということは、やはりきちんと教えるべきだろう。
だが、「なぜ本を読んでいた二宮金次郎は銅像になって、スマホを片手に歩いている女子高生は目の敵にするのか」という部分は、「同じじゃないでしょ」と突っ込みたくなる。

「大人が心にもないことを言っている限り子供には伝わらない」
「教科書の内容をそのまま子供に伝えるのが教師の仕事だっていうなら、パソコンでもロボットでもできる」
「なんで道徳を守らなきゃいけないか、そんなことも考えずに道徳を教えることこそ不道徳の極み」
そんな指摘は、確かに核心をついていると思う。

「挨拶は人間関係を円滑にするための1つの技術」
「自分が傷つきたくないなら、他の人を傷つけるのはやめよう」
「守ることができるかどうかわからない道徳を抱えて生きるよりも、自分なりに筋の通った道徳を作ってそれをきっちり守った方がいい」
「道徳を他人まかせにしちゃいけない」
自分自身の体験に基づいたエピソードも交えたたけしの言葉には、思わず「そうだなぁ」と頷かされる。

「女遊びなんてするに決まってんじゃねえか」というたけしらしいセリフもあり、楽しみながら、考えさせながらの内容である。
難を言えば、最近の道徳の教科書を読んでいないので、いまいち伝わりにくい部分があることだろうか。
改めて、道徳の教科書を読んでみたくなった一冊である・・・

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2016年02月20日

【数学×思考=ざっくりと】竹内薫



1. オーダー(規模)を把握してみよう
2. 地球の「皮」はどれくらい厚いか考えてみよう
3. あらゆる予測に活用してみよう
4. まず迷ったら数値的に考えてみよう
5. 枠の「外」に出て発想の殻を打ち破ってみよう
6. もっと一般化して考えてみよう
7. 集められたデータの本質を見抜いてみよう
8. ざっくり思考の落とし穴:信念体系を分析してみよう

なんでもこの本は、元ネタともいうべき本があって、その発想法にヒントを得て書かれたものだそうである。
その本とは、数学者であるG.ポリアの『いかにして問題をとくか』
もう40年前の本であるが、なぜ今頃、この本にヒントを得た本が出るのかはよくわからないが、著者は、「日常生活や仕事上の問題を解決する方法を提案したい」と述べている。

最初に出てくるのが、「フェルミ推定」の問題。
これは以前、『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』という本を読んだのだが、そこでもベースとなる概念として説明されていた。
「シカゴにはピアノ調律師が何人いるか」という一見、「そんなのわかるかよ!」と言いたくなる問題を解く考え方を解説したもので、個人的には目新しいものではない。

参考になったのは、「スケーリング」の考え方。
蟻の体が100倍になったらどうなるかという問題を考える上での考え方で、SF映画に出てくる巨大蟻を想像してしまうが、実は身長が100倍になると体重は100の三乗倍になり、そうすると皮膚の強度が持たなくなって自重で潰れてしまうのだとか。
人間もコイン上の大きさに小さくなり、ジューサーに放り込まれたとしたら、自力でジャンプして外に出られるという。
正直言って、その理屈にはついていけない。

一方、モンティ・ホール問題は目から鱗であった。
3つの選択肢があって、正解が1つある。
正解を選んだ後、モンティ・ホールが残る2つのうちハズレを1つ開ける。
そしてその時、選んだ選択を変更するかどうか尋ねる。
「ファイナルアンサー?」と囁くあれである。
大概の人は、最初の選択を維持するらしいが、実は変更した方が正解となる数学的な確率は高いそうである。

レーシックが危険という説が広まったが、実はレーシックは米軍でも推奨されているくらい安全で、なのに問題として広まるのは、自然と親和性のない科学技術に対する偏見だという。
そうした科学技術に対しては、「絶対に安全でリスクゼロ」という条件付きでないと人々は受け入れられないのだという。
原発もそうだとする。
確かにそうかもしれないし、自分もその呪縛にどっぷり浸かっていると認識しているが、でも改めたいとは思わない。

「考える」ことの根底には、「信念体系」ともいうべきものがあり、話が通じないのは、論理レベルではなくて、その下にある信念体系が違う場合があるという。
これは全くの同意。
相手の気持ちや立場を推し量ることにより、これまで見えなかったものが見えてくるというところは、素直に同意したい。

書いてあることはわからなくもないが、元ネタを読んでいないせいかどうなのか、正直言ってよく分からない本である。
部分的には面白いが、全体的にはどうも一貫したものがないような気がする。
「で、結局何なの?」
という疑念が残ってしまうのである。

一度元ネタを読んでみる必要がある。
まぁ、それでも部分的に役立つ部分は取り入れたいと思う。

消化不良気分が残ってしまったが、取り入れるべきところは取り入れたいと思う一冊である・・・

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2016年02月18日

【お金持ち入門】土井英司



第1章 あなたもお金持ちになれる!
第2章 まずは300万円をアグレッシブに貯める
第3章 株式・債券でお金を増やすテクニック
第4章 投資信託でお金を増やすテクニック
第5章 社長はこんなにズルをしている
第6章 失敗しない物件の選び方と投資術
第7章 海外投資でしっかり儲けるヒント
第8章 ムリ・ムダのない戦略的な保険のかけ方・使い方
第9章 お金に振り回されない相続

その名もずばり、「お金持ち入門」と名打った一冊。
この世はお金がすべてとは言わないが、やっぱりお金は重要。
誰もが皆お金持ちになりたいと思うであろう。
それゆえ、「こうすればお金持ちになれる」系の本は多い。
もちろん、私もお金持ちになりたいという気持ちは強いが、それと同じくらいに「どんなことを書いているのか」が気になるというもの。
この本もそんな好奇心から手に取った次第である。

さて、そもそもお金持ちになろうと思ったら、「自分で稼ぐ(P/L的発想)」か、「資産で稼ぐ(B/S的発想)」になるかのいずれかである。
このうち「自分で稼ぐ」ことについて、本を書くのは難しいだろう。
「こうすれば簡単に稼げるようになる」というノウハウなどどこにもないからである。
まぁせいぜいが「ネットでモノを売る」系であろう。

一方で、「資産で稼ぐ」のは、(理論的には)極めて簡単。
したがって、この手の本はほとんどが「資産で稼ぐ」ものになっている。
有名な『金持ち父さん』シリーズもそうである。
そうすると、王道は、「まずは収入の一部を貯め」て、種銭を作り「株や不動産などに投資する」といった類になるもので、この本も「入門」とあるからか、この王道通りの内容となっている。

まず最初はやっぱり種銭作り。
「3つの財布」を用意せよとされる。
3つの財布とは、➀使う=生活費、➁貯める=何かあったときに備えた貯金、➂増やす=投資である。
これは基本的な考え方。
若い人には参考になるのではないだろうか。

そして種銭を作った後は、ただひたすら投資商品の紹介となる。株式、債券、投資信託、不動産、海外投資、保険。
いずれもアウトラインだけであり、これを読んですぐ投資したら成功するというものとは程遠い。
「株とはなんぞや」と言うレベルである。
だから、「入門」なのだと言えばそうかもしれないが、なら「お金持ち」とするのは如何なものかと思う。
「普通の運用」の「入門」だろう。

読んでいくと、入門レベルをすでに卒業している身には眠くなるばかり。
ところどころに、副業収入が会社にバレないコツ(確定申告の際、住民税の徴収方法にチェックすれば会社に送られてこない)だとか、「借りられる金額と返済できる金額は違う」といったローンの基本とか、「障害者控除」が利用できる人は利用すべしとか、「最大の相続対策は自分で使い切ること」とか、ちょっと知っておくといいことがあって、これはこれで参考になる。
最後にもっとも重要な資産は、「知恵と友達」と言う指摘があるが、これは何よりの真実であろう。

目をギラギラさせて「お金持ち本」を探す向きには全く役立たないが、タイトルに迷わされることなく、「お金の基本」という認識であれば、若い人などには参考になるであろう一冊である・・・


posted by HH at 20:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月13日

【「ない仕事」の作り方】みうらじゅん



第1章 ゼロから始まる仕事
第2章 「ない仕事」の仕事術
第3章 仕事を作るセンスの育み方
第4章 子供の趣味と大人の仕事

転職して今の会社に入って以降、「何をしたらいいでしょうか?」という質問をしたことがない。
「やれということがあったら言ってほしい」とだけ伝え、あとは「自分に何ができるか」「何をしたらよいか」と自問自答し、探して必要な仕事をして来ている。
そういう意味では、「ない仕事」と相通じるものを感じ、この本を手に取った次第である。

著者は一体何者だろうと疑問に思ったが、この本を読み終えた後もよくわからない。
本人は、自分の仕事を、
「ジャンルとして成立していないものや大きな分類はあるけれど、まだ区分けされていないものに目をつけて、ひとひねりして新しい名前をつけていろいろ仕掛けて世の中に届けること」
としている。
そんな調子で、これまで「マイブーム」という言葉を生み、「ゆるキャラ」を世の中に定着させたという。

ゆるキャラ自体、各地にもともとあったが、それを面白いと目をつけ、ブームにならしめる。
みんなが「なにそれ?」という反応を示す中、ブームにしていった経緯は、なるほど「ない仕事」を作っていると具体的に分からせてくれる。
ネットで検索し、ヒット0だとわかると早速取り掛かるというから、まずはネットで検索し、その内容を調べてから考える「前例踏襲」タイプの仕事に慣れた人はひっくり返るだろう。

その仕事は実に多岐にわたる。
・最悪の自体に実はチャンスが転がっている-田舎でバス便が少ないことを逆手に取った「時刻表」ならぬ「地獄表」
・趣味は突き詰める-チャールズ・ブロンソンを突き詰めた「ブロンソンズ」
・好きな人になりたい-バンド「大島渚」結成
・もらったら絶対嫌なお土産-「いやげ物」
・トンマな祭りを集めた「とんまつり」
・怒られることを逆転した「らくがお帳」
・重い言葉をポップにする「親孝行プレイ」「失恋プレイ」

そこから感じられるのは、「他人の評価を気にしないで徹底的に好きな道を行く」スタイル。
「ない仕事の本質は、『なんだこれは?』と自分で驚くこと」だというが、これは普段の仕事でも応用が利く気がする。
自分も普段、「(業界では)普通やらないね」と言われると、「チャンスかもしれない!」と思ってしまうが、相通じるところがあると思う。

それでも好き勝手やっているかというと、「接待力」の重要性を説いたりする。
自分のやりたいことを実現していくには、一人だけではダメで、雑誌の編集長など自分の企画を売り込む時には、泥臭いこともやるところが賢さを感じさせてくれる。
「そもそも違う目的で作られたものやことを別の角度から見たり、無関係なものを組み合わせたりして、そこに何か新しいものがあるように見せる」ことは、自分の仕事でも大いなるヒントとなる。
言われたことを真面目にやるだけの人には、多分理解はできないだろう。

今までに誰もやっていないプラスαの仕事をしよう、言われたことだけではなく、それ以上の仕事をしようと考えている人には大いなるヒントが詰まっていると思う。
学ぶべき点の多い一冊である・・・

posted by HH at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月07日

【新軍事学入門 平和を望むのなら、戦争の準備をせよ】飯柴智亮/佐藤優/内山進/北村淳/佐藤正久



序章  なぜ、軍事学だけ抜けたままなのか?  
第1章 国家戦略の基本とは
第2章 日本に外交戦略はあるか
第3章 空軍戦略と「基本の7条」 
第4章 海上自衛隊戦略と「防衛三線」
第5章 海自作戦編-米海軍は空母・海兵隊を出さない
第6章 自衛隊戦術編
第7章 陸上自衛隊戦略とトランスフォーメーション
第8章 基本は外交、背後に剣
終章  「普通になれない国」の政治の闇

この本を手に取ったのは、何よりもサブタイトル「平和を望むのなら、戦争の準備をせよ」に惹かれたからに他ならない。
昨年の安保法案をめぐる議論でも、どうにも違和感を禁じえなかったのは、「目をつぶって反対」というスタンスであった。
賛成であろうと反対であろうと、「しっかり見据える」必要があると思うのである。

まずは、基本的な考え方が示される。
「国際関係論で過去の戦争の教訓を学び、国際政治学で戦争を避けるための外交交渉を学び、それでも戦争になった時に備えて軍事学に基づいた勝つ方法を考える」
とあり、「戦争ありき」ではない。
さらに、軍事好きのミリタリーマニアが、兵器のカタログデータに基づいて優劣を比較する「スペック論争」を明確に否定し、ミリオタ向けの本ではないと謳う。

この本は、聞き手が各専門家に意見を伺う形で進んでいく。
登場する専門家は、元米陸軍大尉、元外務省主任分析官、米空軍予備役少佐、米シンクタンク海軍戦略アドバイザー、参議院議員、いずれも日本人である。

元米陸軍大尉は語る。
日本列島は、アメリカと中国の間に位置する。
今や世界を二分する両勢力であるが、「日米同盟とは、日本列島と日本民族は米国民の盾であり、都合が悪くなったら使い捨てられる」ことを認識すべしと。
よくよく考えてみれば当然なのであるが、よく認識しておかないといけない。

日本には国家戦略がないとされる。
国家戦略を形成するのは、DIMEである。
すなわち、Dipromatic、Influence、Military、Economy であるが、日本は憲法の関係でMilitaryに目を背けがちである。

例えば海外に自衛隊を派遣した際、自衛隊員がもしも1名でも殺されれば、すぐ撤退議論が出てくる。
となると、敵はたった1名を殺すだけで一国を撤退に追い込めるわけで、核ミサイルを搭載した原潜を一隻撃沈するのと同じ効果を得られるとする。
素人でも想像できるだけに、言われてみればなるほどである。

さらに日本外務省の外交戦略の問題点も指摘される。
そこにあるのは一人の外務官僚の出世が重視されているということ。
どんな軍隊も政治がしっかりしていないと力を発揮できない。
知らぬが仏ではないが、こうした指摘はどこまで正しいのか、ちょっと怖い気もする。

意外だったのは、自衛隊も米軍に勝るところがあるという指摘。
例えば、アメリカは陸海空で士官学校が分かれているが、日本は防衛大学が1つのみ。
これは統合戦闘のための士官養成機関としては最適なのだそうである。
さらに海自の潜水艦は、ディーゼル艦であるがゆえに低音で敵に探知されにくいとのこと。
米海軍はすべて原潜であり、特に待ち伏せにおいてはこの威力は米軍を上回るとのこと。
さらに一部では有名な掃海力も米海軍を凌駕するとのこと。

一方、米軍では決してやらない島嶼奪還のための上陸作戦を日本は念頭に訓練と兵器調達を行っているとのこと。
理屈を聞けば問題感が残る。
日本防衛の弱点は原発で、通常のミサイルでも核弾頭と同じ効果が得られると聞くと、お隣がお隣だけにちょっと恐ろしくなる。

また、陸上戦力は防衛という意味ではあまり役に立たないという。
戦車が有効なのは北海道だけであり、いざ出番という事態ではもう終わりだという。
だから陸上の兵力を削減し、その分海と空に回すべしという指摘は、専門家でなければわからないところ。
原発攻撃の不安も、空と海さえちゃんと守れば大丈夫らしい。

非核3原則ならぬ5原則には複雑な心境である。
すなわち、「持たず、作らず、持ち込ませず」に加えて「考えない、見たくない」であるが、これなども議論の必要性を感じる。
ここに書かれていることは、「どうやって守るか」ということ。
よく読めば、内容の良し悪しはともかくとして、よく考えないといけないこと。
多分、安保法制に反対した人たちは、タイトルだけ見て批判するだろう。

「戦争の準備」というのは大げさかもしれないが、軍事をすべてタブー視するのも間違っている。
しっかり見て議論する必要はあるだろう。
最悪なのは思考停止。
そうならないためにも、一読しておきたい一冊である。

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2016年02月05日

【負けるが勝ち、勝ち、勝ち! 「運のいい人」になる絶対法則】萩本欽一



第1章 運を呼ぶお金の使い方
第2章 運の神様との賢いつき合い方
第3章 「運」のファミリーツリーを育てる
第4章 「勝ち負け」と「運」の方程式
第5章 運を呼び込む「金言」「名言」「優れ者」
第6章 死んだあとも生き続ける方法

欽ちゃんといえば、かつて一世を風びしたが、最近は大学に通っていると言う話を聞いている。
実は「積ん読リスト」に欽ちゃんの本が入っているのだが、その一冊目を読まないうちに次のが出ていて、遅まきながら手にした一冊。

欽ちゃんの考え方の中心にあるのが「運」。
神様はちょっぴり気まぐれで、必ず人生の最後に「運」と「不運」を釣り合うようにしてくれるという。
何か不運なことがあると、「1つ厄が落ちた」と考える。
運が良いばかりでは、後で必ず不運が訪れる。
逆もまた然り。
お金を稼ぐようになった欽ちゃんは、競走馬を買うがこれが骨折。
恐縮する調教師に、「大丈夫」と言い、直後に『欽ドン!』が初めて視聴率30%超えを達成したという。

その後、『欽ドン!』が30%を越えるたびに「馬の成績が良くないかも」という調教師に、その分番組が良ければ良いとする。
欽ちゃんにとっては、「番組が1番」であるがゆえに、その対価と考えれば、他の不運はむしろ喜ばしい。
こうした考え方は、私自身の考え方にも合っている。
貯めるばかりでは不幸がやってくるからと、一時期毎回300万円分の馬券を買っていたという。

こうした「運」の考え方以外にも、
・貧乏しても言葉だけは貧しくしない
・怒りは3日我慢すれば「運」になる
・「つらい」は「つらい」の向こうにある
などという話は、なるほどと思わせられる。

特に初詣では、最初にお賽銭を投げて願い事をすると、「神様を買収」したことになるという。
昨年の幸を感謝する場が初詣だという。
お賽銭は昨年のお礼というわけで、この考え方は来年から取り入れたい。
そしてあとは様々なエピソードが語られる。

父親は「無理なお願い」を聞くためにいるという次男の頼み事に際しての対応。
各地に訪れたところでのいろいろな人との会話。
思わずポロリと涙が溢れて、電車の中で読んでいたから恥ずかしい思いをしてしまった。
欽ちゃんの人柄が溢れ出たエピソードに、胸が熱くなる。

読み終えて他の本も読んでみたくなった。
「積ん読リスト」から早速選び出して早いうちに読んでみようと思う。
これからより良く生きて行こうと思う人は、是非とも読んでおきたい一冊である・・・

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2016年02月04日

【もっとも新しいラグビーの教科書】土井崇司



第1章 ラグビーは15人対15人で戦うスポーツである 
第2章 いかにグラウンドを効果的に使うか
第3章 ラグビーは確率のスポーツである
第4章 すべてのプレーには意味がなければならない
第5章 理想を追求する理由
第6章 攻撃起点概論
第7章 スクラム
第8章 ラインアウト
第9章 キックレシーブ
第10章 ターンオーバー
第11章 ペナルティキック
第12章 連続攻撃

高校時代にラグビーを始め、大学・社会人と長きにわたってプレーしてきた私も、試合に出なくなって15〜16年。
今やすっかり「TV観戦専門」になってしまったが、ラグビーも時代を経てどんどん進化している。
「ショット」「リップ」「ハンマー」など、新しい用語も出てきたりしていて、「ラグビーをやっていた」というだけでは、いざとなった時に知らない人に教えることもできなくなるかもしれない。
そんな思いもあって、最新の知識を吸収すべく手に取ったのがこの本。

著者は、先日花園で全国制覇した東海大仰星高校の基礎を築き、現在は今年の大学選手権で準優勝した東海大学ラグビー部のテクニカルアドバイザーを務める人物。
読んでみると、なるほど「テクニカルアドバイザー」らしく、理論的な説明に満たされている。

ラグビーは数のゲーム
ディフェンダーひとり当たりの守る範囲が広がればアタック側の攻撃可能なポイントは増える。
面の揃っている相手ディフェンスに対し、
穴を開けに行くのか
スペースを作りに行くのか
スペースを作るためにボールをどのように動かすのか

言われるまでもなく、その通りなのであるが、ではそれを意識してやっているかと言うと、残念ながら自分はやっていなかった。
高校生の時に、こういう指導を受けていたら、だいぶ違っただろうと思う。

「ラグビーは確率のスポーツ、台本が重要」ということが、言い回しを変えて頻繁に語られる。
「セットプレーから数フェーズ先までのボールと人の動きをあらかじめ決めておき、それに沿ってプレーをすること」をシークエンスというが、これが大事だという。
「相手より先に動いて有利な状況を作るためにあらかじめ大枠を決める」=「判断基準と選択肢を作ってあげる」ことが、指導者の役割とする。
こんな考えのもと、例えばアタックエリアのマイボールスクラム(1試合あたり4〜7本程度ある)で150種類のアタックパターンを作っているという。
これが一流チームの姿ということなのだろう。

グラウンドを5つのエリアに分けて考えることは、普通に行われているかもしれない。
(私も現役時代はそうしていた)
・特定のエリアに相手の塊を作れば必ずどこかにスペースが生まれ、ミスマッチも生じる
・陣地戦を優勢に進め、精神的な優位性を長い時間保った方が勝利に近づく
・体力やスピード差に目先や角度を変えることで対抗する
・立ってプレーすると選択肢が増加する、その結果ボールを動かせるようになる
なるほどなるほどと頷くばかりである。

「足の向きを変えて抜くアタック」などは新鮮。
また、1試合のうち、攻撃の起点となるのは、スクラム15%、ラインアウト20%、キックレシーブ25%、ターンオーバー15%、ペナルティ+フリーキック20%など数字に基づいた理論的な説明には、自分たちとの違いを感じさせる。

「教科書」とある通り、ラグビーを知らない人が読んでもわからないかもしれない。
わかっている人が読めば、学ぶところは大きいだろう。
こういう指導を受けてみたかったとつくづく思う。
しかし、これからTV観戦するときには、ちょっと面白みが増すかもしれないと思ったりする。
ラグビー好きにはお勧めしたい一冊である・・・

posted by HH at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする