2016年03月27日

【China2049】マイケル・ピルズベリー



原題:The Hundred-year Marathon
序章  希望的観測  
第1章 中国の夢
第2章 争う国々
第3章 アプローチしたのは中国
第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
第5章 アメリカという巨大な悪魔
第6章 中国のメッセージポリス
第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)
第8章 資本主義の欺瞞
第9章 2049年の中国の世界秩序
第10章 威嚇射撃
第11章 戦国としてのアメリカ

著者はアメリカにおける中国の専門家。
もともとは親中派(パンダハガー)で、中国の軍事戦略研究の第一人者だったというが、長年の研究の結果、中国の野望に気づき警鐘を鳴らすようになったらしい。
そしてその主張をまとめたのが本書というから、なかなか興味をそそられる内容である。

ソ連に対しては、第二次大戦直後から冷戦に突入し、警戒感たっぷりだったアメリカだが、中国に対してはその警戒感は薄い。
それどころか中国に対しては以下の希望的観測に支配されている。
@ 中国は民主化への道を進んでいる
A 中国はアメリカのようになることを望み、実際、その道を歩んでいる
B 中国のタカ派は弱い
しかし、実際には、タカ派が北京の指導部を通じてアメリカの政策決定者を操作し、情報や軍事的・技術的・経済的支援を得てきたのだとする。

習近平は、中国共産党書記長就任時、「強中国夢」(強い中国になるという夢)という言葉を使い、それを2049年に実現させようとしているという。
2049年とは、中華人民共和国成立100年の年で、それまでの100年マラソンを行っているというのが著者の主張の骨子である。
(本書の原題もここからきている)

1970年代、中ソの対立もあり、米中の関係改善が進む。
1979年にはケ小平が訪米し、中国人学生の留学が始まる。
以来、結果的にアメリカの化学的・技術的専門知識の「史上最大の流出」が進む。
国内には反米的な動きが出ても、中国の指導部はアメリカの指導者の前ではそれについて何も知らないようなそぶりをする。
アメリカが中国の発展に貢献したという記述は、中国の教科書には全く載らない。
そんな二枚舌を使いこなしていたという。

さすがに中国の専門家であるだけに、普通の人が知りもしない知識がそこかしこに披露される。
「殺手鐗(シャショウジィエン)」というのは、それを持つ者は自分より強い敵に勝てるとされる古の棍棒らしいが、これが100年マラソンの軍事戦略の重要な要素なのだという。
そして中国の軍事力は、今世紀半ばまでにアメリカに勝るか少なくとも同等になると予測される。

様々な例証により、著者の考えが荒唐無稽なものではないということが説明されるが、今の中国の動きを見ていてもそれはなんとなく正しいと感じられる。
そして著者はそんな中国に対する対抗策も提案する。
・国家同士の縦の協力体制を作りあげる
・中国内の政治的反体制派を守る
・対米競争的行為に立ち向かう
・汚染者を突き止め恥じ入らせる
・汚職と検閲を暴露する
・民主化寄りの動きをサポートする
・中国のタカ派と改革派の議論を監視し支配する

日本としてどういう立ち位置でどう振る舞うかはなかなか難しいところ。
アメリカが絶対王者の世界が良いか悪いかを見極めるのも難しい。
名もない一個人に何ができるかという問題はあるものの、自分なりの意見は常に持っていたいと思う。
これは、そんな私の知見を広げてくれた一冊である。

   
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2016年03月24日

【不動心の魂】五郎丸歩



プロローグ 日本代表最多得点記録更新
第1章 福岡から佐賀 少年時代
第2章 早大時代
第3章 ヤマハ時代
第4章 エディー・ジャパン
エピローグ 不動の魂

著者は、ラグビー日本代表のフルバック。
昨年のワールドカップ・イングランド大会で、「五郎丸ポーズ」ですっかり有名人になってしまったのは、今や誰もが知るところ。
ワールドカップ人気で出版かと思いきや、先日読んだエディーさんの本と同様、ワールドカップの前年に出版された本であると知ってちょっと驚く。
よく出したなと出版社の英断を称えたい気分である。

内容は、五郎丸本人による半生記。
3人兄弟の末っ子で、兄の影響もあって3歳の時からラグビースクールに通う。
小学校時代は一時サッカーに行くも、1歳上の次兄の強い引きでラグビーに戻り、ともに地元佐賀工のラグビー部に進む。
そして兄弟で花園に出場する。

その花園で五郎丸は大きなミスをし、結果的にチームは敗北。
次兄にとっては高校最後の試合になってしまう。
ラグビーエリートにもそうした過去はあるものである。
それでも変な癖がつくこともなく、徹底して基礎を鍛えられた佐賀工時代の恩師にはその教えに感謝している。

そして大学は天下の早稲田へ。
次兄は当時早稲田と日本一を争っていた関東学院大学へ行き、兄弟は袂を別つ。
今はすっかり当時の輝きを失ってしまったが、関東学院と早稲田の戦いは観ていて面白かった。
フルバックの五郎丸のことも覚えている。
何せ変わった苗字だったせいであるが、今はすっかり帝京大学の陰に隠れてしまっている早稲田が輝いていたこの頃の印象が、今も強く残っている。

すでに早くも日本代表入りし、19歳で初キャップを獲得する。
元木や大畑、小野澤ら当時のジャパンの主力メンバーの中でのデビュー。
なんだか懐かしい気がする。
本を読んでいるだけで、試合を見ているような気分になる。

早稲田を卒業してヤマハにプロ選手として入社。
大学時代に引き続き、清宮監督と一緒になり、そして日本代表の監督がエディーさんに変わる。
清宮監督は早稲田時代に大きな影響を受け、そのためヤマハに清宮監督がくることになって、五郎丸も喜ぶ。
監督の影響はやはり大きなものなのだと思う。

そしてエディー・ジャパンの猛練習。
最初のエディーさんのプレゼンで、五郎丸はすっかり「世界トップ10入り」という目標に燃え立つ。
最近では、ストレングス&コンディショニング(S&C)という言葉を使うそうであるが、ウェートトレーニングとハードな練習で成果を上げていく。

昨年のワールドカップは、大して期待もせずに観戦していたが、この本を事前に読んでいたら、初戦の南アフリカ戦はかなり期待して観戦していたと思うと、ちょっと残念な気がする。
そして一躍日本中で有名になった「ルーティン」。
そこにもしっかりとページが割かれている。
つくづく、ワールドカップ前にこの本を出版した先見の明を称えたい気分である。

ラグビー好きには大変興味深い内容であるのはもちろん、にわかファンにも十分楽しめる一冊である・・・


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2016年03月22日

【シャーロック・ホームズの思考術】マリア・コニコヴァ



原題:Mastermind how to think like Sherlock Holmes
第1章 科学的思考法
第2章 脳という屋根裏部屋-そこには何があるのか
第3章 脳という屋根裏部屋にしまう-観察のもつ力
第4章 脳という屋根裏部屋の探求-創造性と想像力の価値
第5章 脳という屋根裏部屋を操縦する-事実からの推理
第6章 脳という屋根裏部屋をメンテナンスする-勉強に終わりはない
第7章 活動的な屋根裏部屋-すべてをひとつにする
第8章 私たちはただの人間でしかない

著者は、心理学者でありジャーナリスト。
シャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的なファン)だということで、この本はタイトルにある通り、シャーロック・ホームズのシリーズからどうしたら彼のように考えられるかを語った一冊である。

ホームズの思考法はまず科学的な思考法で、それは「観察」から始まると言う。
「論理家は一滴の水を見ただけで大西洋やナイアガラの滝を実際に見たり聞いたりしたことがなくても、それが実在することを言いあてることができる」とする。
確かに、「観察」は重要なスタートである。

シャーロック・ホームズのような思考方法を著者は「ホームズ・システム」と称し、一般のそれを「ワトスン・システム」として対比させる。
また、「マインドフル」、「マインドレス」という言葉の対比も特徴的である。
「マインドレス」とは、例えばいつも見ている階段の段数のように、いつも見ていたとしても心を向けていないためにわからないという風に説明されている。

著者は、ホームズの思考法について、様々な角度から分析する。
観察から選択的注視、客観性。
「脳の屋根裏部屋」という表現で、観察し選択した情報の保管方法を説明する。
観察力のある心、注意力のある心とは、「現在に集中する心」だという。
確かに、「上の空」では鋭い推理などできないだろう。

仮説の証拠の比較検討において、「肯定的で裏付けになる証拠を過大評価し、否定的な証拠を過小評価しがち」という指摘は、確かにそうだと思う。
「人は自分が探しているものを見る」とするが、それは他人の意見などでもそうであり、いつの間にか客観性が薄れていたりするのだろうと思う。
このあたりは色々なことにあてはまりそうである。

「不在情報の無視」「誤情報効果」など心理学的な説明があるのは、さすが心理学者。
自信過剰についての4パターンは参考になった。
・自信過剰が最もありふれているのは困難に直面した時
・自信過剰は慣れとともにふくらむ
・自信過剰は情報量とともに増大する
・自信過剰は行動とともに増大する
己への戒めとしたいところである。

ホームズの洞察は何にでも応用できるとする。
「態度」「マインドセット」「思考習慣」「自分が発展させる世界へのアプローチ」
ワトスンと初めて会った時、ホームズはワトスンがアフガニスタン帰りの軍医だということをスバリと言い当てる。
それは決してフィクションの世界ではなく、ある程度はできるようになりそうである。

そんな意識を持っていたいと思わせられる一冊である・・・


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2016年03月19日

【臆病な僕でも勇者になれた七つの教え−「自信」が湧きだす不思議な冒険−】旺季志ずか



はじまり
第一の石「赤」
第二の石「オレンジ」
第三の石「黄」
第四の石「緑」
第五の石「青」
第六の石「紺」
第七の石「紫」
老師の教え

この本を何で読もうと思ったのか忘れてしまった。
書評に目を通して、「積ん読リスト」に入れた後、いろいろ読んでいるうちに手に取った時には大概忘れてしまっているのである。
目次の前に登場人物紹介欄があって、主人公は青い髪をした小学校6年生と知って読むのを一瞬ためらってしまった。
その手の子供向け冒険物はどうも気が進まない。
されど手にした以上、やむなく読み進める。

主人公の名前はキラ。
米軍人の父と日本人の母の間に生まれ、生まれ持った青い髪と青い目にコンプレックスを抱き、学校では常に目立たぬよう「普通」でいることに努めている。
しかし、野球大会での失敗からクラスでいじめの対象となってしまう。

そんなキラと対照的なのが、医者の息子でスポーツも万能な同級生リク。
正反対の二人が、ある日偶然地元葉山の山に入り、ヒミツの森に迷い込んでしまう。
そこは「失われた聖櫃(アーク)」が隠されているとされる森。
そして突然カエルの姿をした老師が現れ、アークを探す冒険の旅へと二人を誘う。

愛犬のトンビを連れ、キラはリクとともにアークを探す旅に出る。
アークを探すのは、キラたちだけではなく、悪の代表タマスもそれに加わる。
もともと気弱で運動神経もないキラだが、老師の導きとリクとトンビとに支えられ、アークを開けるのに必要な七つの石を集めていく。

七つの石はそれぞれ、「恐」「寂」「怒」「妬」「哀」「我」「空」を表していて、キラとリクはそれぞれの感情を克服しながらアークに近づいていくというもの。
弱い主人公が冒険の旅を通して成長していくという物語はよくありがちである。
これもその典型的な例である。

著者の名前は初めて見るような気がしたが、やはりこれが処女作だという。
しかし、テレビドラマのシナリオは数々手がけている方のようである。
肝心の内容はというと、やはり小学生の主人公の冒険物は悪くはないと思うのだが、個人的にちょっと守備範囲を外れていたというところ。
ただし、胸が熱くなる部分は多々あり、多分小学生に読ませたらいいのではないかと思えたところは事実である。

真っ白なキャンパスであれば、スムーズに胸踊る冒険物語として楽しめるかもしれない。
小学生の息子に読ませてみようと思わせられる一冊である・・・
   
   
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2016年03月17日

【あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか−論理思考のシンプルな本質−】津田久資




第1章 思考のフィールドで勝つ
第2章 思考の幅を広げる
第3章 論理的に考える
第4章 発想率を高める
第5章 発想の材料を増やす
第6章 発想の質を高める実践知
第7章 〔付論〕結論思考の情報収集術
終章 あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか?

著者は企業内研修などを手がけるコンサルティングをやっている会社の代表者とのこと。
サブタイトルに『論理思考のシンプルな本質』とある通り、この本は「論理思考」について書かれた本である。

「アイデアが出ない時、何が不足しているのか」ということに対し、著者は「論理思考の力」だという。
「競合に打ち勝つアイデアは論理思考から生まれる」というのが、本書を一貫して貫く思考だと初めに説明される。
なかなか興味深いイントロである。

そもそもであるが、「考える」とは、単に何かの公式やフレームワークなどに「あてはめる」ことではなく、「公式そのものを生み出すこと」だという。
アイデアの質を高めたければ、発想を広げ、発想の総量を増やすことが重要だという。
「没アイデアが多い人ほどクリエイティブ」という指摘には、ちょっと俯いてしまうところがある。

一流のクリエーターほど愚直に考えて発想の数をギリギリまで増やしている。
天才ほど多作であり、駄作の山を築いている。
なるほど、凡人の私には、アイデアが乏しいわけである。
発想が広がらない理由は、「バカの壁」があるからだという。
そういう本(『バカの壁』)がベストセラーになったが、壁とは「思考の対象になっている範囲となっていない範囲とを隔てるもの」だとするが、これは誰にでもありそうである。

この「バカの壁」が入らないようにするには、「言葉をはっきりさせて考える」ことだという。
ここで「考える」とは、腕組みして唸ることではなく、「書くこと」だという。
こうして書いた言葉こそが境界線なのだという。
つまり、論理思考とは、「言葉を部品としながら筋道をつけていく発想」であり、論理思考とは発想の力なのだという。
何となくわかる。

論理思考については、「ロジカルシンキング」などという言葉が流行り、随分と本も読んだ。
ロジックツリーを作って発想のモレを防ぐことなどが説明されるが、このあたり説明もわかりやすい。
考える力さえ磨けば、どれだけ勉強が苦手でも、どれだけ知識がなかろうとも下剋上ができてしまうという。

それを「知的下剋上の時代」と呼ぶが、そのネーミングはインパクトがある。
本のタイトルをよく表していると思う。
早く確実に考える力を持つ人が有利になる時代だというのは、その通りだと思う。
もちろん、戦うフィールドを適切に選ぶことも重要である。

日頃から、論理的思考は意識しているところであり、「我が意を得たり」の感がある内容であった。
これ一冊読んだからと言って、すぐに論理的思考が身につくわけではないが、少なくともその重要性とエッセンスは学べる。

ビジネスマンであれば、読んでおきたい一冊である・・・

posted by HH at 20:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月14日

【ホームページで売上があがる会社、あがらない会社、何が違うか】石嶋洋平



第1章 ホームページ「7つ」の大誤解
第2章 「お客様」を絞り込めば、ホームページはうまくいく
第3章 「魅力的な商品」があれば、ホームページはうまくいく
第4章 「売れるパターン」に当てはめれば、ホームページはうまくいく
第5章 実店舗もホームページも、「商売の道理」は変わらない

昨年、会社のホームページをリニューアルした。
「作りっぱなし」は避けるべく、日々改善を心がけているが、「暗中模索」のところがある。
そんな中で、こういうタイトルの本を見つければ、それは当然手に取るだろうというものである。

著者は、自身を「ホームページ屋」と称している通り、ホームページの製作を行っているようであるが、時に「ホームページはやめましょう」というアドバイスをすることもあるらしく、もっと広いコンサルティングをやっている方というのが正解のようである。
冒頭に、「大事なのはホームページを作ることではない」とし、「商売の道理に立ち返ることが大事」と主張している部分は、なるほどその通りだが、それを「ホームページ屋」が言うからこそ信頼度が高まる感じがする。

「みんながやっているからと言ってサイトを作っても失敗するだけ」という主張は、なるほどその通りであろう。
「ホームページを見てもらうには集客が必要」という主張も考えてみればその通り。
だが、実際はみんな「集客のためにホームページを作る」という考えでいるのではないだろうか。

ホームページに対する間違いの指摘にもドキッとさせられる。
・ホームページに英語を使うのは間違い
・会社案内のパンフレットをそのまま載せるのは間違い
・ホームページ製作会社に丸投げするのは間違い
・SEO対策さえすればいいというものではない(検索結果が1位でもアクセス数が伸びるわけではない)
わが社のホームページは、「会社案内の代わりに作った」のだが、それはどうなんだろうとふと思う。
その他は、幸いながらわが社には当てはまっていない。

「キーワードはお客様の言葉から拾う」という指摘はなるほどである。
「パソコンが得意な社員に任せるのは間違い」というのもよくわかるし、実践できている。
「インターネット支店の店長を決めるつもりで、ビジネス全体を俯瞰し舵取りできる人材を担当にする」という主張は、重要なところだろう。

そうした説明以外に、著者が担当した会社の具体例が頻繁に採り上げられていて、それもわかりやすい。
技術という強みがあるのに、それを取り違えて「誰も買わない商品」を作ってしまった会社に対し、商品よりも技術そのものをPRする方向に変えて大成功。
自ら「企業の課題解決を売っている」とするのも、その通りなのだろう。

また、そうした著者の原点が、高校時代のトンカツ屋でのバイトにある話も興味深い。
閑古鳥が泣いていた店を繁盛店にしてしまったところは、高校生ながら非凡である。
「商売の基本は人を集めて良い商品やサービスを売ること」とは、言われるまでもない事実だが、簡単そうでいて難しいと思う。

著者は、PDCAサイクルを3次元の螺旋階段構造と説明しているが、なるほど言い得て妙であり、その螺旋サイクルによって人を集めて良い商品やサービスを売らないといけない。
ホームページの本かと思っていたが、それ以上に実りがあったと言える。
自社のホームページの基本概念として、活かしていきたいと思う学びが得られた一冊である・・・

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2016年03月12日

【最高の答えがひらめく、12の思考ツール−問題解決のためのクリエイティブ思考−】イアン・アトキンソン



原題:THE CREATIVE PROBLEM SOLVER
PART I  インサイト
PART II  イノベーション
PART III インスピレーション


サブタイトルに『問題解決のためのクリエイティブ思考』とある通り、この本は問題解決すべき時に、ヒントとなる考え方を紹介したものである。
著者は、ジャガーやダイソンといった業界大手をクライアントに抱える「クリエイティブ・ディレクター」ということである。

冒頭、「ハンマーしか持っていない人には、すべての問題が釘に見えてくる」というアブラハム・マズローの言葉が紹介されている。
なかなか示唆に富んだ言葉で、気に入ってしまった。
タイトルにある12の思考ツールとは、以下の通り。
(ご丁寧にダウンロードページまで紹介されている➡ http://www.bnn.co.jp/dl/solver/ )

1. 問題を大きくする
2. 他人になる
3. 反逆する
4. 制約を受ける
5. 選択肢を設計する
6. 古い+古い=新しい
7. 逆行分析する
8. 問題を回避する
9. ランダムを挿入する
10. 精査し推定する
11. シンプルな解決をする
12. 組み合わせ、再定義する

「問題を大きくする」というのは、当初の狭い領域から離れ広いレベルへと拡大することで、トヨタの「なぜを5回繰り返す」考え方に等しいものである。
例えば、「どうすればわが社の電池を20%軽くすることができるか」という問いに対し、「なぜ20%軽くしたいのか」から始まり、そもそもの原点に戻り電池を軽くする以外の解決策を探るというもので、これはなかなか参考になる。

「他人になる」というのは、別の視点で捉えてみること。
「反逆する」は、思い切って逆らって考える、あるいはルールを変更したり論理を無視したりすること。
「制約を受ける」は、アップルが「世界一薄いラップトップを作る」という制約を自らに課し、MacBookAirを生み出したことを例示する。

「選択肢を設計する」は、問題を解決するために人々をコントロールするにはどうしたら良いかを考えることで、くじ付きのスピードカメラを設置し、スピード違反の罰金が制限速度を守った人に当たる仕組みを考えたことを例にとる。
「古い+古い=新しい」は、電力の乏しい発展途上国で、電源がないことから先進国では埃をかぶっているゼンマイ仕掛けのラジオを広めたことを例に例える。

「逆行分析」は、後知恵の利点を生かし、自分が望む解決策から考えること。
「問題を回避」するは、その名の通り、トースターが壊れたからといってトースターを買い替えたり修理したりという発想ではなく、「トーストを食べない」という問題回避策を取ること。
これはとても面白い。

「ランダムを挿入する」は水平思考のこと。
「精査し推定する」は問題を精査し、小さな構成要素に分けること。
「シンプルな解決をする」は、絆創膏的答えを見つけるツールで、原因ではなく症状だけを解決するもので、これもなかなか面白い。

そうしたツール以外にも、なるほどと思わされたところは多い。
・リサーチが十分であることを示すこと➡アイデアに対し、どんな批判を浴びてもよく調べた上での反論ができるように準備する
・自分が言いたいことについて考える倍の時間をかけて相手が聞きたいことについて考える
・ヘッドラインをどうするか
・事実と数字
・相手の顔を見る
・類似の例を見つけておく
などは、今後の参考になりそうである。

問題解決には、これといった絶対の方法があるわけではなく、それぞれに応じた個別の解決策を考えないといけない。
それを考える際にとてもヒントになりそうなことが満載で、さすが「クリエイティブ・ディレクター」(といってもあまりよくわからない)と言わざるをえない。

実践で使ってみたいと思わせられる一冊である・・・


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2016年03月11日

【ブロックバスター戦略】アニタ・エルバース



原題:BLOCKBUSTERS

序章  ショービジネス成功のカギはブロックバスター
第1章  ブロックバスターに勝負を賭ける
第2章  ブロックバスターを売り出して管理する
第3章  スーパースターに投資する
第4章  スーパースターは自らの力をどのように行使するか
第5章  デジタル技術はブロックバスターの優位に終焉をもたらすか
第6章  ブロックバスター戦略は広告手法を変える
終章  エンタメ業界の戦略は他のビジネスでも通用するのか

著者は、ハーバードビジネススクールのリンカーン・フィレーン記念講座教授なのだという。
よくわからないが、史上最年少で終身在職権を取得したというから、かなり優秀な方なのだろう。
この本は、そんな著者の人気授業に関したテーマであるようである。

「ブロックバスター」とは、聞きなれない言葉であるが、「街の区画(ブロック)を破壊するほどの強力な爆弾」というのが語源らしく、そこから転じてメガヒット映画を指す俗語であるらしい。
読み進んでいくと、具体的内容が分かってくる。

まずワーナーブラザーズとNBCの例が採り上げられる。
『ハリーポッター』『ダークナイト ライジング』『シャーロック・ホームズ』『ハングオーバー』等のメガヒットを飛ばすワーナーブラザーズに対し、NBCはヒット作を生み出せずに苦戦する。
両者の違いは、戦略の違いそのもの。

NBCは、莫大な投資を控え、多数の作品に少しずつ賭けてコストを厳密に管理し、利鞘を求めていった。
一方、ワーナーブラザーズは、ブロックバスターを狙って大きくつぎ込み、その他大勢につぎ込む費用を大幅に抑えた。
その結果、2010年のワーナーブラザーズの年間余剰金のうち、60%以上が高額をつぎ込んだ上位3作品から生じ、70%が上位4作品から生じたという。
80:20の法則に相通じるものがある。
著者は、「少額を多くの対象に賭ける方が大きなリスクを負う」と語る。

こうした例が、映画だけでなく、音楽業界のレディー・ガガにも当てはまるとして紹介される。
レディー・ガガの場合、限定リリース戦略ではなく、ワイドリリース戦略をとり、長い準備期間を設けて世間の注目を集め、一気に販売することで発売後一週間で110万枚を売り上げたという。

スポーツの世界では、スターに投資する例で説明される。
スペインのサッカークラブ「レアルマドリード」は、大金をかけて一流の選手を集め、そして世界一の高収入を上げるクラブになっているという。
「スーパースター獲得戦略」というべきもので、これが獲得費用の高騰につながっている。

これに対し、アルゼンチンの貧乏チームボカ・ジュニアーズの戦略は、地元で有望な選手を集めて育成し、ヨーロッパの金持ちチームに選手を「販売」することで収益を上げているという。
個人的には、この戦略のほうが賢いと思えてしまう。

こうした「ブロックバスター戦略」が、映画界のトム・クルーズ、ビデオコンテンツのフールー、そしてサービス&ファッション業界と語られる。
これが自分の働く業界でどう応用できるかというと、何となくヒントのようなものが見えた感がある。
そんな身近な例に当てはめて考えてみると、読んだ価値はあるのではないかと思える。

考えてみれば、いろいろとありそうなブロックバスター戦略。
考えるヒントになる一冊である・・・


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2016年03月06日

【ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学】入山章栄



第1章 なぜビジネススクールでは最先端の経営学が学べないのか
第2章 「経営学は役に立たない」についての二つの誤解
第3章 あなたの会社の戦略がうまくいかない、最も根本的な理由
第4章 成功しやすいビジネスモデルの条件とは何か
第5章 イノベーションの絶対条件!「両利きの経営」を進めるには
第6章 なぜ大企業は革新的イノベーションについていけないのか
第7章 「チャラ男」と「根回しオヤジ」こそが、最強のコンビである
第8章 組織の学習力を高めるには、「タバコ部屋」が欠かせない
第9章 「ブレスト」のアイデア出しは、実は効率が悪い!
第10章 「失敗は成功のもと」は、ビジネスでも言えるのか
第11章 真に「グローバル」な企業は、日本に3社しかない
第12章 「世界がグローバル化した」「フラット化した」を疑え
第13章 日本企業に、ダイバーシティー経営は本当に必要か
第14章 男性中心職場での「できる女」の条件
第15章 これからのリーダーシップに向くのは、どのような人か
第16章 成功するリーダーに共通する「話法」とは
第17章 日本最強の後継社長は「婿養子」である
第18章 CSR活動の思わぬ副次効果とは
第19章 日本の起業活性化に必要なこと(1)簡単なキャリア倒産
第20章 日本の起業活性化に必要なこと(2)サラリーマンの副業天国
第21章 成功した起業家に共通する「精神」とは
第22章 「もうかる理由って結局なに?」を突き詰める学者たち
第23章 「リソース・ベースト・ビューが捉えきれないこと」とは何か
第24章 ハーバードを見て、米国のビジネススクールと思うなかれ
第25章 米国の大学の裏事情は、中国人が一番知っている
第26章 来れ!世界最先端の経営学を語る人材よ

自分自身、これまでのキャリアの中で、できれば海外の大学院でMBAを取りたかったと思っている。
そうした経営の勉強というものをしてみたかったからである。
そういう気持ちが今も残っているせいか、あるいは今の仕事で常に会社の事業の方向性を考えているせいか、この本のタイトルには瞬間的に反応してしまった。

著者は経営学者。
経営学は、個人的にはやはり経済学よりも興味深い。
経営学は、いわゆるMBAとは異なり、PhDという学位になるが、実務よりも「研究」に重きを置いた学問であるということがこの本でよくわかった。

その学問の世界であるが、アカデミー・オブ・マネジメントという世界最大の学会では、大半の学者がアメリカ人であることは不思議でないにしても、日本人の2015年の出席者は33人であったという。
中国・香港が517人、シンガポール162人、韓国154人、台湾134人と聞くと、ちょっと日本の行く末が心配になる。

「世界の経営学者が、同じ学会に参加し、同じ経営理論を使い、同じ分析手法で、英語という世界共通の言語を使って経営学を研究し、発表し、議論を戦わせ、その『知』を膨らませている」という著者の危惧はまったく本当で、「大丈夫か我が国の将来は」と思わされる。

さてその経営学であるが、本当にビジネスに役立つのかと疑問に思う。
それはこの本を通じて著者が答えてくれる。
実は経営学者は、「役に立つかどうか」ではなく、自らの知的好奇心から研究をしているのだという。
では役に立たないかというと、そうではなく、「思考の軸」であり羅針盤であるという。
「羅針盤は方向を示すだけで、どうすれば一番早く安全に目的地に着けるかは教えてくれないが、かといって不要ではない」というたとえは、実にわかりやすい。

実際、
・過去のM&Aに関する論文を分析すれば、M&Aとは一般的に失敗する確率の方が高い
・競争の形が違えば、求められる戦略も異なる
・新しい事業に求められるのは、イノベーティブでかつシンプルなビジネスモデル
などの説明は、実際のビジネスの現場でのいいヒントになると思う。

さらに、「知の探索」と「知の深化」とがキーワードとして語られる。
「知の探求」とは、知の範囲を広げることで、自社にある既存の知と自社の範疇からだいぶ外れたところにある知を組み合わせることとされる。
「知の深化」とは、一定分野の知を深めることで、両者をバランス良く使う「両利きの経営」が説かれる。

例えば新規事業では、そのビジネスに必要な機能を新しい組織にすべて持たせ独立性を保たせる一方、トップレベルでは既存の部署との統合と交流を促すことが大事であるとする。
なかなか示唆に富んでいる。

その他、リーダーシップにおける二つのタイプ、「トランザクティブ・リーダーシップ-アメとムチのリーダーシップ」と「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ-啓蒙型のリーダーシップ」の話や、成功するリーダーに共通する話法としては、情景が浮かぶメタファーが特徴の「イメージ型」の方が「コンセプト型」よりも良いという話は、なかなか興味深い。

個人的には、「日本企業の最強の後継社長は婿養子」という話が興味深かった。
同族経営には、「株主と経営者の利害が一致し、企業=一族の長期的な繁栄を目指す」というメリットがある一方、「資質に劣る経営者が創業家から出てしまう」というデメリットを防げるとする。
「金持ちは三代で潰れる」という話にも通じ、納得してしまった。

起業に際しては、「ハイブリッド副業」という形が良いという話も興味深かった。
副業というとイメージは良くないが、要は勤めながら起業のアイデアを進め、行けそうだったら独立するというもので、アメリカではむしろ普通だという。
決して「安月給の補完手段」ではないとするが、それも一つの方法だろう。

様々なケーススタディを分析し、そこから得られたエッセンスをどうまとめ上げて今後の方針とするかがMBAで学ばれることだという。
経営理論を学んだり、それに基づいた分析ツールや思考法を思考の軸として使うことは、確かに経営の意思決定には有用だろう。
学問もそれなりに意味はあるのだとわかる。
そうなると、やっぱり若いうちにそういう勉強をしておきたかったと、改めて思う。

かくなる上は、日々の業務で思考しながら、せめて研究対象になるような実績を上げようと、意識を高めていきたいと思うのである・・・

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2016年03月02日

【イノベーションと企業家精神】P.F.ドラッカー



原題:INNOVATION AND ENTREPRENEURSHIP
第1章 イノベーションと企業家精神
第2章 イノベーションのための七つの機会
第3章 予期せぬ成功と失敗を利用する/第一の機会
第4章 ギャップを探す/第二の機会
第5章 ニーズを見つける/第三の機会
第6章 産業構造の変化を知る/第四の機会
第7章 人口構造の変化に着目する/第五の機会
第8章 認識の変化をとらえる/第六の機会
第9章 新しい知識を活用する/第七の機会
第10章 アイデアによるイノベーション
第11章 イノベーションの原理
第12章 企業家としてのマネジメント
第13章 既存企業における企業家精神
第14章 公的機関における企業家精神
第15章 ベンチャーのマネジメント
第16章 総力戦略
第17章 ゲリラ戦略
第18章 ニッチ戦略
第19章 顧客創造戦略
終 章 企業家社会


ご存知ドラッカーの本が、「エッセンシャル版」という形で出たため、早速手にした一冊。タイトルからして深そうである。
「企業家精神とは気質ではなく行動」と冒頭から説明がある。
その原理とは、「変化を当然のこと、健全なこととすること」と続く。
一方、イノベーションについては、その範囲は広く「技術というより経済や社会に関わる用語」とする。
これだけを聞くとなんのことやらと思うが、例示されていものを読むとその意味がよくわかる。

イノベーションには七つの機会がある。
1. 予期せぬことの存在
2. ギャップの存在
3. ニーズの存在
4. 産業構造の変化
5. 人口構造の変化
6. 認識の変化
7. 新しい知識の出現
である。

いろいろと細かく実例で解説されているが、要は常に何かを求めているかがカギになると思われる。
「昨日と同じ今日を明日も過ごす」というスタンスでは到底イノベーションとはほど遠い。
ニューヨーク最大の百貨店メイシーの会長から、その昔家電の売れ行きを抑えるにはどうしたら良いかと相談された例が印象的である。
メイシーの主力である婦人服の売り上げを家電が大幅に上回り、それに「危機感」を抱いての相談であったが、それを本当に笑えるだろうかと思う。

プロイセン王は、鉄道の出現に際し、「ベルリンからポツダムに乗馬を楽しめるというのに、金を払って1時間しか乗れないものを使うものなどいないであろう」と断じたという。
答えを知っているから笑えるだけと言えなくはないだろうかと思う。

「エッセンシャル版」であるはずだが、その範囲は19章にもわたり幅広い。
よくぞまあこれほど実例を伴ってまとめ上げているものだと思わざるをえない。
ただ、ここに書いてあるのは過去の例であり、将来どんなイノベーションが可能なのかは書かれていない。
この本からそのエッセンスを学び、自ら見出していくほかない。

時代はどう動いていくのか、自分の属している業界にはどんな特徴があって、みんなが当然だと思って疑問にも思っていないこと、そして外から見れば不自然なことはないか、常に意識を持ってアンテナを高く張っていないと、「昨日と同じ今日を明日も無為に過ごす」ことになりかねないし、当然イノベーションなど起こせるわけがない。
一読して終わりという本ではなく、折に触れて手に取ってみたい一冊である・・・


posted by HH at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする