2016年05月06日

【シフト−2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来−】マシュー・バロウズ 読書日記654



原題:THE FUTURE,DECLASSIFIED

序 章 分裂する「21世紀」の世界 
第1章 「個人」へのパワーシフト
第2章 台頭する新興国と多極化する世界
第3章 人類は神を越えるのか
第4章 人口爆発と気候変動
第5章 もし中国の「成長」が止まったら
第6章 テクノロジーの進歩が人類の制御を越える
第7章 第3次世界大戦を誘発するいくつかの不安要因
第8章 さまようアメリカ
第9章 「核」の未来
第10章 生物兵器テロの恐怖
第11章 シリコンバレーを占拠しろ
終 章 新たな世界は目前に迫っている

著者は、アメリカの国家情報会議(NIC)に10年間にわたって関わり、時の政権に多くの報告書を提出してきた実績の持ち主であるらしい。本書は、4年に一度大統領に提出する長期予測「グローバル・トレンド」を基にしているといい、将来を考えるという意味でも素人にも役立ちそうに感じて手に取った一冊である。

まず語られるのが、「個人へのパワーシフト」。経済的な豊かさとテクノロジーの進展により、これから個人にパワーシフトしていくとする。その中心は「中間層」の台頭で、今10億人の中間層が2030年には20億人、あるいは予測によっては世界人口の半分という説もあるらしい。この中間層の増加は、厳しいチェックの目で政府に対するプレッシャーにもなるが、先進国でも途上国でも不安定化要因にもなるという。

そしてアメリカの力が衰える世界は、新興国が台頭し、多極化する。気候変動やテロ、戦争の脅威があり、グローバル化した世界は一国の危機が世界に波及する。2030年までにアジアが世界のパワーの中心になり、インドが台頭し日本は過去の国になる。日本についての描写は少ないが、「大規模な構造改革を実行すれば」という条件付きで、「中の上」程度のパワーを維持できるとする。わかるような部分もあり、だからこそ不安になるところである。

テクノロジーの進化は、甲乙両材である。高齢者の生活の質が改善されるのは好ましいが、遺伝子技術の進化により、親は子供に欲しい遺伝子を選んで体外受精させるようになるという部分は、SFパニック映画のネタになりそうな不安がある。そして合成生物学は、バイオテロのリスクもはらんでいる。

異常気象はもっと増え、2100年には世界人口は110億に達し、大規模な食糧不足は必至だとする。食糧供給のインフラが整う前に人口爆発が起こるとされ、自分が生きている時代ではないとはいえ、心配なところである。それ以外に、大きな波乱要因として次の点が挙げられている。
1. 中国経済が新たな成長段階に移れない
2. 戦争の可能性が高まる
3. テクノロジーの暴走が起こる
4. アメリカが複雑化した世界のトップから転落する

中国については、日本に比べはるかに多くのページが割かれている。しかし、「金持ちになる前に老いる」、「中国からiPhoneは生まれない」との厳しい指摘をする。経済成長が民主化を迫り、共産党も人民の要求は抑えきれないとし、強い中国は軍事予算も増やすだろうが政治改革がスムーズに進むため、好ましいとする。この考え方は新鮮である。

興味深いのは、「アメリカの世界の警察官としての役割」である。著者は、「アメリカが世界の警察官の役割を嫌がるかその役割を担う能力が低下すれば世界の安定は揺らぐ」とするが、この部分はどうだろうかと思う。日本人としてみれば、本当に警察官なのか怪しい部分もある。米中2強の新たな世界秩序が生まれるとしたら、日本も相当上手く立ち回らないといけないだろう。

基本的にアメリカから見た未来予想であるが、やはり日本人としては日本に関する部分が気になる。米中関係の中で、「アメリカは日本を守らない」とする。「アメリカは自国の利益と中国の利益との間に折り合いをつけ紛争を回避しようとする可能性が高い」という部分は、やはりと素直に頷ける。問題は我々日本人がそれを想定して今から手を打てるか、であるが、その部分はかなりの不安がある。素人が考えても分かりそうな予測であり、国のリーダーたちにはしっかりやってもらいたいと思うし、国民も目先のことよりこうしたことについて深く考えるべきであろう。

最後の方には、フィクションの物語が挿入されている。そんな未来が本当に来るのかどうかはわからないが、素人でもこれから来るべき未来を想像してみることは大事かもしれない。著者は最後に「今努力すれば今後必ず起きる変化をチャンスとプラスに変えることができる」とする。そう信じて自分も行動したいと、思うのである・・・


posted by HH at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする