2016年05月22日

【官賊と幕臣たち−列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート−】原田伊織 読書日記660



其の一 鎖国とは何であったか
其の二 オランダの対日貿易独占
其の三 幕府の対外協調路線
其の四 幕末日米通貨交渉
其の五 官と賊

よく知らなかったのであるが、この本は『明治維新という過ち―日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト』という本の続編であったらしい。知らないうちに、順序を違えて読んでしまったことになる。一見、幕末を舞台とした小説家と思いきや、実は真面目に歴史を研究した本であった。

まずは鎖国について説明される。実は鎖国というのはそういう政策があったわけではなく、貿易管理を目的として時間をかけて事実として出来上がったものだという説明がされる。
そもそも戦国時代、戦場では略奪が当然で、その対象は人間にも及んだという事実がある。捕らえられた人々は、奴隷として売買され、そうした奴隷の一部はポルトガル商船などによりアジアに売られたりしていたらしい。

そんなポルトガルなどの人身売買を防止するため、幕府はポルトガルを追放し、オランダとは海外の情報収集を目的として交易を認めたのだという。そして幕末の黒船騒動についても、オランダから事前に情報はもたらされていたらしい。それに対し、幕府は老中首座阿部正弘を中心に対応する。同じ日本史を扱う『逆説の日本史18』はでは、幕府の無能ぶりが説かれていたが、この著者はどちらかといえば幕府擁護のスタンスである。

逆にタウンゼント・ハリスらのアメリカ側の要人に対しては、私服を肥やす目的であったと手厳しい。有名な国富の流出についても、悪逆なハリスらの交換レート交渉に対し、水野忠徳が防戦し、「1ドル=1分と1ドル=3分」とで争ったとする。結局、したたかな米英によってうまくやられ、金の流出=「コバング漁り」を招いてしまう。『逆説の日本史18』でも「ハリスの主張は誤り」としている点では同じであるが、ハリスを「善人」と見ている点で、この本の主張とは大きく異なる。

そして倒幕の動きについては、幕府=善、長州=テロ集団というスタンスが貫かれている。坂本龍馬の活躍も後講釈であり、薩長同盟も「同盟と呼べるものではない」という主張は『逆説の日本史21』と同じであるが、それは坂本龍馬の功績などではなく、坂本龍馬はただグラバー商会の手先になって薩摩と長州貿易を行っていただけとする。
「実態はグラバー商会の意向に沿って動く、薩摩・長州の密貿易システムに組み込まれた徒党の集団に過ぎない」との表現は、坂本龍馬ファンには厳しいだろう。

事実はもちろん一つであり、不変であるが、その解釈が大きく違っている。両者とも自分なりに調べて研究しているわけで、どちらの解釈が正しいかということは私には判別できない。当事者がいない歴史の「真実」が一体何なのかは興味深いところである。
歴史的真実はともかくとして、様々な見方があるという意味で、この本は興味深いところである。
次は『明治維新という過ち―日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト』を読んで、また『逆説の日本史』と比較して読んでみたいと思うのである・・・

posted by HH at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする