2017年04月20日

【ブロックチェーン・レボリューション】ドン・タプスコット/アレックス・タプスコット



原題:BLOCKCHAIN REVOLUTION
第1章 信頼のプロトコル
第2章 未来への果敢な挑戦
第3章 金融を再起動する
第4章 企業を再設計する
第5章 ビジネスモデルをハックする
第6章 モノの世界が動きだす
第7章 豊かさのパラドックス
第8章 民主主義はまだ死んでいない
第9章 僕らの音楽を取りもどせ
第10章 革命に立ちはだかる高い壁
第11章 未来を創造するリーダーシップ

最近、ビットコインとかブロックチェーンとかの言葉をよく耳にするようになった。そのままにしておいても良かったのであるが、何となく放置しておくのが嫌で、その内容を知るべく手に取った一冊。

ビットコインとは、暗号通貨のこと。何となく「コイン」と言う言葉にゲームセンターの硬貨を想像してしまうが、立派な通貨である。それが従来の通貨と違うところは、発行にも管理にも国が関与しないというところ。となると何やら怪しげ、不安といったイメージがつきまとうが、その信頼を保証するシステムが「ブロックチェーン」と言うことらしい。

「ブロックチェーン」とは、一連のルールに従った分散型コンピューティングによって信頼された第3者を介することなく、端末間でやりとりされるデータに嘘がないことを保証するものらしい。あらゆる取引が記録された世界規模の取引帳簿のようなものだと言う。一定時間内の取引が1つの塊になったものが「ブロック」で、約10分で次々に追加されていくため、分散され乗っ取りが不可能だと言うことらしい。

はっきり言って言葉で説明されてもよくわからない。それはたぶん、車や冷蔵庫やスマホもモノを見ずに言葉だけで機能を説明されてもよくわからないのと同じことなのかもしれない。ただ、世界中のみんなが監視することで、不正を防ぎ高度なセキュリティもあって、資産を守ったり様々な可能性が広がるものらしい。この本は、そんな「可能性」を論じている。

ブロックチェーンから見えてくる未来には下記のようなものがあるとする。
1. 本物のシェアリングエコリミーの到来
2. 金融業界に競争とイノベーションが生まれる
3. 財産権が確実にデータ化される
4. 送金が安く早く簡単になる
5. 支援金が必要な人に確実に届く
6. クリエイターが作品の対価を受け取れる
7. 会社の形態が変化する
8. モノが自分で動くようになる
9. 小さな企業がどんどん生まれる
10. 政治が人々のものになる

「プルーフ・オブ・ワーク」「ノード」「ハッシュ関数」「ハッシュ値」「ハッシュレート」「プルーフ・オブ・ステーク」など専門的な言葉を説明されてもやっぱりよくわからない。それよりも様々な問題に関して、ブロックチェーンがそれをどう解決し、世の中がどう変わるのかの説明は理解できる。素人はそのレベルでいいように思う。例えば金融業界のイノベーションなどは面白いと思う。

発展途上国の人が海外に出稼ぎに行き、母国に送金する。その手続きのためにわざわざ何時間もかけている様子が紹介され、それがスマホの操作で簡単にできてしまう。金融サービスから取り残されて人たちが現在でも大勢いて、スマホがATMに変わることによって暮らしが変わる。音楽の世界では、クリエイターが自分の音楽を自分で管理し、透明性の高い形で収益を受け取ることができる。

可能性は企業の形すら変える。スマートコントラクトで契約の取引リスクが軽減され、分散ネットワークで仕事を完結できれば、「企業」と言う形で集まって仕事をする意味が薄れていく。にわかに想像し難いが、可能性としてはありうるわけである。IoTが発達し、交通インフラの管理とか、医療ヘルスケア、書類記録の管理、不動産管理、スマートホームなどが格段に便利になる。

一方で、そんなメリットばかりでなく、未成熟な技術、エネルギーの過剰な消費、政府による規制・妨害、人間の雇用を奪い犯罪に利用され、そして何よりも監視社会の可能性などのデメリットも指摘する。中央銀行の役割喪失と言う部分も重要かもしれない。ブロックチェーンを手放しで礼賛するだけの本とは違う。

これから起こる未来がどう言うものなのか。それは誰もわからないが、変化の兆しはあるだろう。そう言う兆しに触れておくのも悪くはないと思う。
そんな意味合いのある一冊である・・・




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2017年04月12日

【恋のゴンドラ】東野圭吾



ゴンドラ
リフト
プロポーズ大作戦
ゲレコン
スキー一家
プロポーズ大作戦 リベンジ
ゴンドラ リプレイ

東野圭吾の「ゲレンデ」シリーズとでも言える一作。というのも、舞台となっているのが『雪煙チェイス』で舞台となった里沢温泉スキー場であり、『白銀ジャック』と合わせて両作品で登場したパトロールの根津が出てくる(といってもこの作品では脇役である)からである。

しかし、両作品とちょっと雰囲気が異なるのは、この作品は東野圭吾得意のミステリーではないのである。「誰も殺されない」のである。その代わりに展開されるのは男女8人の恋模様。今までの東野圭吾とは一味違うものである。

最初の「ゴンドラ」は、里沢温泉スキー場のゴンドラが舞台。広太は美雪と同棲していて、結婚の話も出ているが、知り合った桃実と二人で一泊のスキー旅行に来ている。美雪との付き合いが描かれる一方で、広太の思いは早くもその夜におよぶ。そして2人で乗り込んだゴンドラに女性4人のグループが乗り込んでくる。そして広太は、そのうちの1人に気がつき愕然とする・・・これはなかなか男の心理としては恐ろしいシチュエーションで、読みながら背筋が寒くなった。

「リフト」は、ゲレンデにやって来たホテルの同僚5人の物語。水城直也は密かに木元秋菜と付き合っている。そして日田栄介は、土屋麻穂に好意を抱いている。女性の扱いがうまい水城は下手な日田のためにひと肌脱ごうとするが、肝心の麻穂は・・・水城も日田もこういうタイプいるよなぁと思わせられる。

「プロポーズ大作戦」は、日田がようやく付き合い始めた美雪に、わずか3ヶ月で早くもプロポーズしようとする。それにふさわしいシチュエーションを水城に相談し、水城はゲレンデを舞台に一計を案じるが・・・
「ゲレコン」は、水城と日田が「ゲレンデでの合コン」に参加する。そこで知り合ったのは、高校時代の友人同士である弥生と桃実。4人はゲレコンのイベントの中で知り合い、ゲレンデで楽しいひと時を一緒に過ごすが・・・

「スキー一家」は、結婚した月村春紀と麻穂が、麻穂の両親とスキー旅行に参加する。麻穂の父親は大のボーダー嫌い。自らボーダーであることを隠して春紀は慣れないスキーをする・・・「プロポーズ大作戦リベンジ」は、日田と桃実を「くっつけ」ようと企む水城と弥生。しかし計画は思わぬ展開をみせる・・・

「ゴンドラリプレイ」は、日田と桃実の関係が接近していく様子が描かれ、そして冒頭と同じように広太らと一緒になる。そしてまた同じようなシチュエーションとなっていく・・・どれもこれもがゲレンデを背景に爽やかな若者たちの有様が描かれる。死者は出ないものの、やはり先を読ませず意外な展開を見せてくれるのは、どこか東野圭吾的である。こういうのもいいかもしれない。

それにしても、東野圭吾はスノーボードが好きなんだろうなと感じさせる。それが何より証拠の「ゲレンデ・シリーズ」であり、描写の1つをとってみてもそう感じさせる。こういうのもアリではないかと思う。今後、こういうテイストの作品が増えるのかどうかはわからないが、これはこれで読んでみたいと思う。

いずれにせよ、これからも東野圭吾作品の感想が増えていくことは間違いないと思うところである・・・



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2017年04月11日

【大前研一 アイドルエコノミーで稼げ!】大前研一



第1章 アイドルエコノミーで、新しいビジネスを想像せよ 大前研一
第2章 ネスレ日本のイノベーション 高岡浩三
第3章 日本交通のスマホアプリ戦略 川鍋一朗
第4章 印刷業界を変えるアイドルエコノミー

 大前研一の本となれば、ほぼ無条件で読んでいる。内容はいろいろだったとしても、共通しているのは、どれも読んで損はないからである。そう思って手にした一冊だが、何と内容は4章に分かれていて、肝心の大前研一の担当は第1章のみ。ちょっと騙された感が漂うが、どうも「ATAMIせかいえ」という勉強会をベースにしているようだが、この本のどこにもそんなことは書かれていないのでわからない。実に不親切、不正直な本と言わざるを得ない。

 それはそれとして、タイトルのアイドルエコノミーであるが、近時あちこちで取り上げられていて、ちょっとしたブームになっている。アイドルエコノミーとは、自分ではリソースを持たず空きリソースを見つけ必要としている人とマッチングするビジネスで、AirbnbやUberがその代表として、これもあちこちで紹介されている。

気がつけばその方にもいろいろと登場しているようである。自宅のトイレを貸すAirpnp、自宅をリフォームしたい人と建築士、設計士、業者をマッチングするHouzz、システム開発のUpwork。Airpnpなんて真面目に考えているのだろうか、商売として成り立つのだろうかと思わざるを得ないが、考えるものである。

 こうした空きリソースを利用した新しいシェアリングサービスは確実に拡大して来ていて、現状5つに分けて説明されている。
1. 場所−家、部屋、土地、駐車場、オフィススペース、結婚式場、イベント会場・・・
2. 稼働−倉庫、印刷所、クリーニング、料理教室、トイレ・・・
3. 専門家の空いた時間−フリーランサー、ガイド、医者、子守、ドッグシッター・・・
4. 物−ファッショングッズ、道具、カメラ・・・
5. 乗り物−タクシー、自転車、自動車、プライベートジェット、プレジャーボート・・・
確かにいろいろある。

 個人的に面白いと思ったのは、空いているオフィスの貸し借りであるShareDesk、駐車場の空きを利用したakippa、個人の空き時間を利用したプライベートレッスンの「サイタ」、宅配クリーニングのリネットなどである。第4章で紹介されるラクスルも面白い。そのほかにも高額な工作機械など、購入した後に自社だけでなく近隣の企業にも使ってもらい稼ぐことで、固定費に対する限界利益を上げることなどその発想が参考になる。

 こうしたアイドルエコノミーの台頭をただ礼賛するだけではなく、「その脅威に既存のプレーヤーはどういう対策を講じるべきか」を大前研一は論じる。
1. 自らがアイドルエコノミーの領域に乗り出す
2. アイドルエコノミーのプレーヤーをうまく活用する
3. 圧倒的な製品・サービスの魅力を提供することで顧客に常に選ばれる立場に立つ
(リッツ・カールトン、日本交通、ロイヤルホスト、ライザップetc)
反対の立場からのものの見方も大いに参考になる。

 第2章からは、論者が変わる。ネスレジャパンはネスカフェアンバサダーの成功を中心に語られるが、我が家にもあるそれはあまりコーヒーとしては美味しくなく、「成功」と語られるのには抵抗感がある。日本交通はスマホアプリだが、これはまだ利用したことがないため、便利なら普及してほしいと思う。ラクスルは最近ネット広告が目につくが、これはなかなか面白いアイディアだと思う。

 それなりに悪くはないと思うが、こちらは「大前研一の本」だと思って読んでいるだけにちょっと裏切られ感が強く、素直に読めないところがあった。「羊頭狗肉」と言ったら言い過ぎであろうか。次は事前によく中身を確認しようと思わされた一冊である・・・ 


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2017年04月10日

【伝えることから始めよう】田明



第1章 今を生きる
第2章 どんなこともつながっている
第3章 できる理由を考える
第4章 伝わるコミュニケーション
第5章 自己更新

 もともと何かを成し遂げた人の話は好きである。それもその人ご本人の言葉であればなおさらである。そんなわけで経営者の本は好きなジャンルの本と言える。この本は、ジャパネットたかたの創業者であり、今は引退してしまったがテレビショッピングの名物MCでもあった方の自叙伝でもあり、見た瞬間に読んでみたいと思った一冊。

 はじめに著者の信念でもある「今を生きる」という言葉が紹介される。「過去にとらわれず、未来に翻弄されないで今を生きる」という生き方が、全編を通して流れている。生まれは長崎県の平戸。大阪の大学を出て就職し、それを辞めて故郷に帰り、言われるまま稼業のカメラ店を手伝う。1974年の5月のこと。

 当時は観光地やホテルで、観光に来たお客さんの写真を撮って現像して売っていたという。カラー写真が普及し始めた頃で、著者の実家が平戸で初めてカラー現像所を作ったのだという。平戸のホテルすべてと契約していて、毎晩いくつもの宴会に出かけて行って撮影し、家族総出で現像して販売する。毎日2〜3時間の睡眠時間だったというが、例え手伝えと言われて始めたことでも目の前にあることに夢中になって全力投球できるところが自分のいいところと著者は語る。確かに、何であれこういうスタンスは大事である。

 そうして一生懸命取り組んでいると、課題が見えてくる。ホテルで宴会の翌朝写真を売りにいくが、売れ残りが出る。それを観光地に持って行って売るとまた売れる。朝は買う余裕のない人もいるわけで、課題が出ると不思議なことにそれを達成するためのアイデアが生まれてくると著者は語る。

 どんなことでも一生懸命にやっていれば、その時は何の役に立たなくてもいつか役に立つ時が来る。どんなことでもいつかどこかでつながっていると著者は語る。スティーブ・ジョブズも同じようなことを語っていたが、真実なのだろう。特に著者の生き方から伝わって来るのは「一生懸命」という姿勢。そして失敗してもめげない。「やらなかった失敗はあっても一生懸命にやった失敗はない」と語るが、胸に手を当ててみたくなる。

 結婚して支店を任され、建設現場を回ってフィルムを集め、団体旅行に写真添乗員として参加する。55万円の年商を1年で300万円にできたのは偶然ではないだろう。やがてラジオで宣伝を行い、ラジオショッピングにつながる。これが好評だったが、長崎では放送は年に2回。そこで九州を飛び出て鳥取や岡山でラジオショッピングをやる。佐世保のカメラ店がこんな取り組みをするなど誰も考えなかっただろうし、常識にとらわれず売れるものは何でも売るというスタンスが、今日の成功につながっているわけである。

 何かを人に伝えるときに大切なのは、スキルとマインドとミッションだという。マインドとはパッション(著者の場合は一生懸命だろう)である。大事なことは「伝えること」ではなく「伝わること」。伝えたつもりではダメ、上手くではなく分かりやすく。そして面白く。何を伝えたいのかを明確にし、最初の1分間がとにかく大事。そして伝える相手を意識する。

 ビデオを売る時、テレビにそれを写したという。○○画素だとか性能だとかを説明するよりも、テレビに映った孫の姿を見てみんな買ってくれたという。ボイスレコーダーはビジネスパーソンや学生向けと考えられていたのを、シニアに忘れ物メモと紹介する。ジャパネットたかたのテレビショッピングを見ていても、それは大きく感じるところである。

 逆境にあって守りに入らず、攻めの姿勢で今できる最高の努力をする。自社スタジオの建設など大胆な戦略もその結果なのだろう。社員の満足がなければ顧客満足は得られないと、社員旅行で海外に行ったりしているのは羨ましい限りである。
「夢や目標は途中で変えていい」
「人生何を始めるにも遅すぎることはない」
要所要所で語られる言葉は深い味わいがある。やはり手に取ったのは大正解であった。

 ビジネスパーソンであれば、生き方のヒントになることが大量に詰まっている。読み物としても面白いし、得られるものも多いし、是非とも読むべきだろう。
 ジャパネットたかたで何か買い物がしたくなってしまった一冊である。・・・


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2017年04月07日

【セブン-イレブン1号店繁盛する商い】山本憲司



第1章 十六坪の出発
第2章 日々是発見
第3章 コンビニ商いの鉄則
第4章 接客の心得
第5章 一所懸命

 タイトルにある通り、著者はセブンイレブン1号店の経営者。すでにいろいろなところでこの1号店(日本のコンビニ1号店でもある)の話は取り上げられているが、改めてご本人の書を手に取る。なんでも事あるごとに書き溜めていたメモを元にしたもので、著者なりの商売心得帖が小冊子になり、本書になったという。一読してわかるが、そういうメモをとるところからも商売熱心さが伝わってくる一冊である。

 1号店のオープンは、1974年5月15日。最初の売り上げは、開店前の午前6時半過ぎに来たお客さんで、当時アメリカのセブンイレブンで売れ筋だったサングラスだったという。初日の来客の中にはダイエーの中内社長の姿もあり、ダイエーは翌年大阪にローソン1号店をオープンさせている。そんなエピソードが面白い。

 著者はもともと酒屋の長男で、明治大学経営学部の2年時に父親の健康状態が悪くなり、店を手伝うようになる。そしてそのまま父は帰らぬ人となり、著者は大学を辞めて経営に専念する。しかし、不慣れな若者の経営であり、また事業の将来性に対する不安もあり、様々なセミナーに参加するうちにコンビニの存在を知り興味を持つ。そしてイトーヨーカ堂がセブンイレブンをスタートさせると知ると、手紙を書いてフランチャイズに手をあげる。

 経営学部という素地があったのかも知れないが、こうしてアンテナを張っていた事がその後に繋がった訳で、日々目の前の仕事をただこなしているだけだったら現在はなかっただろう。そしてその熱意が認められフランチャイズ候補となるが、「結婚をしていないとダメ」と言われて親友に頼み急遽相手を探して結婚する。このエピソードにはちょっと驚きを感じる。そして母の後押しを受け、当時大金であった2,200万円の借金を背負ってスタートする。かなりのリスクテイクである。

 最初の研修では、1日3万円の費用を払って研修を受ける。質問責めで2時間も時間オーバーしたというから、その熱意たるや凄いと思う。そしてオープン後は、1日の睡眠時間が3〜4時間だったという。それでも苦痛に感じることはなく、むしろ不安だったのはいくら売り上げ、適正経費はどのくらいで利益はどのくらいがいいのかわからないことだったという。全く手探りな中で、24歳の若者が奮闘努力する様に胸が熱くなる。

 当時は夜開いている店などなかったわけで、それでも風呂の帰りにビールとつまみを買っていく客がいて、それがセブンイレブンのフランチャイズ戦略を変える発見だったり、ロックアイスやプルトップ缶の需要を発見したり、本部と一体になって新しい事業を進めていくが、このあたりは創業物語特有の面白さがある。特に欠品に対する意識は強く、「コンビニ経営の成否は(欠品を出さない)発注にあり」とまで言い切る。「少数だけど売れる商品を買うのは常連、期待を裏切って他店に行かれたら大きな損失」という意見はなるほどと思わされる。

「日々が仮説と検証の繰り返し」という努力の姿勢は志の4原則に現れている。
1. 情熱(この仕事が好きだと感じているか)
2. 努力(店で日々創意工夫をしているか)
3. 継続(お客様にとって良いことだと思ったらたとえコストがかかっても続けることができるか)
4. 勇気

 何事も一番最初というのはリスクがあるものの、うまくいけばずっと語り継がれることになる。これからも「日本のコンビニ1号店」「セブンイレブン1号店」の称号は永久に残るだろう。そしてそれは「たまたま」、「偶然」というものではなく、著者の努力がもたらしたものだということがわかる。それはその後の「日々が仮説と検証の繰り返し」という姿勢にも現れている。何かを成し遂げた人には何かがある。その思いを補強させてくれる。

 立場に関係なく、何かを成し遂げたいと思う人なら、読んでおきたい一冊である。



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2017年04月05日

【ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方−富裕層だけが知っているマネー戦略−】加谷珪一



序 章 アベノミクスとは何だったのか?
第1章 日本経済の新しい常識
第2章 世界経済の新しい常識
第3章 投資戦略の新しい常識
第4章 資産形成の新しい常識
第5章 情報整理の新しい常識
第6章 「働く」「生きる」の新しい常識

著者は、ジャーナリスト、投資ファンドを経てコンサルティング業を行なっている方だという。ご自身でも億単位の資産を運用する投資家であるとのことで、そんな著者がアベノミクス後にお金や経済とどう向き合えば良いのかについて分野ごとにまとめた一冊。

まずそもそもアベノミクスとは、金融政策でデフレからの脱却を試み、財政出動で当面の景気を維持し、その間に痛みを伴う構造改革を実施するという政策である。しかし、日銀が掲げてきた2%という物価目標を実現することは現時点では難しそうであり円安と物価上昇を基本としてきたアベノミクスは逆回転し始めているとする。このあたり、ずっとアベノミクスの効果を疑問視してきた中原圭介氏の指摘(『中原圭介の経済はこう動く 2016年版』など)が現実化してきていると感じる。

アベノミクスは、スタート時点では構造改革が経済成長を実現するための本丸という認識であったが、ほとんど進まず現在はほぼ消滅したという。だらだらとした現状維持の動きが続き、再び財政出動頼みへと逆戻りする可能性があるという。物価上昇がストップし、消費者心理も冷え込む傾向が当分続く可能性が大だとする。

安倍総理は何とか賃金を上げようと躍起になっているが、日本の労働人口はここ10年総数は変わらぬまま25〜35歳の労働人口が2割も減るという状況。現状の人手不足は好景気によるものではなく、若年労働力人口の減少(正社員として働く若者の減少分を低賃金の高齢者が補っている)だとする。

一つ一つ丁寧に解説されていて、なかなかわかりやすい。
1. 諸外国の格差は上方向への格差だが、日本の格差は下方向
2. 日本の消費はさらに引き締まる可能性が高く、節約より不必要な支出をなくすべき
3. 財政再建はほぼ実現不可能であり、金利上昇リスクはかなり高い
4. 英国のEU離脱によりむしろEU側の企業が打撃を受ける
5. 中国は内需中心経済へと転換し、人民元経済圏が出現する
6. アベノミクスの限界が見え、外国人投資家がほぼ撤退、株価下落を止める手立ては残されていない

一般の認識と異なる部分がいろいろとあり、その可否はわからないが、一つの見方として参考になる。我が不動産業界に関しては、「人口減少から優良物件以外の不動産は不利になる」とする。長期的にはインフレであり、住宅ローンは繰上げ返済すべきではなく、マイホームも収益性の高い物件に限り購入すべしとする。このあたりは頭の片隅に置いておきたいと思う。

日本の世論は労働市場改革には消極的で、生産性は今後も上昇しないため残業は無くならないと語る。介護施設は増えず、家族の負担は増えるということはあまり想像したくない。実際にどうなるか、ではなく、あくまでも一つの考え方として覚えておきたいところである。
正直言って、こうした考え方はなかなか自分だけでは困難であり、折に触れて触れていきたいところである。そういう意味で、為になる一冊である・・・


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2017年04月04日

【日輪の遺産】浅田次郎



 かつて映画版を観ており、なんとなく原作も読まねばと思っていた作品。ここに来てようやく手にした次第。やっぱり原作を読んでみると、映画版とは差異があるようである。

 物語は昭和二十年八月にさかのぼる。冒頭、ある女学生たちの姿が描かれる。担任の野口先生は生徒たちに慕われているが、その平和主義的思想から憲兵に連行されてしまう。まもなく野口先生は戻ってくるが、1クラス35名は、軍から重要任務に就くことを命ぜられ、トラックに乗せられてある場所へと向かう・・・

 翻って現代、不動産会社社長の丹羽明人は、商売も傾き半ばどうでもよくなって競馬で一攫千金を狙う。そしてそこで真柴と名乗る老人と出会う。ひょんなことから真柴老人に付き合い飲みに行く丹羽。そこで老人に一冊の手帳を手渡されるが、老人はそこで急に亡くなってしまう。成り行きで病院に付き添った丹羽は、霊安室で真柴老人から預かった手帳を読み始める。そこには、終戦間際に真柴老人が関わった指令のことが書かれていた・・・

 終戦間際、陸軍少佐の真柴司郎は、突如師団長から呼び出される。降伏か徹底抗戦かで不穏な空気が自らが属する近衛師団内に漂う中、真柴少佐は同時に呼び出された小泉主計中尉とともに大臣室へと案内され戸惑う。阿南陸軍大臣、杉山元帥、梅津参謀総長、森師団長、田中軍司令官と並み居る面々から直々に密命を受ける。それはマツカーサーから摂取した900億円分の財宝。敗戦後の祖国復興資金とすべく、国内に秘匿せよというのがその内容。

 物語は、現代と終戦直前とを往復しながら進んでいく。小泉中尉とともに財宝秘匿の任務に就いた真柴少佐は、指令に従ってそれを多摩の火工廠へと運ぶ。それを洞窟に運び込むのに使役されたのが野口先生の引率する女学生35名。何も知らない女学生は、黙々と指示に従って作業にあたる・・・

 過去と現在を往復する物語。終戦間際に隠された日本の復興資金。現代に生きる丹羽は、ボランティアの海老沢と地元の有力者である金原と隠された財宝を密かに手に入れようと考える。しかし、果たして財宝は今だ火工廠跡にあるのか。手帳を読む丹羽も、この本を読む立場からもそれは大いに気になるところ。そして終戦間際の真柴少佐には最後に過酷な命令が下される。

 様々な登場人物たちが、過去と現在とで登場するが、過去と現在は意外な形で結びつく。その結末は、深い味わいとともに円団を迎える。ある程度は読む者も結末を予想すると思うが、この結末はなかなか予想はできないのではないかと思う。そこが浅田次郎らしいところかもしれない。映画版は正直言ってあまり心に響かなかったが、原作小説はさすが浅田次郎と思わされる。この物語は、映画ではなく原作で味わうべきだろう。

 解説によれば、デビュー以来の路線を変更する一作だったとのこと。映画は観たが、原作はまだという作品はまだある。それもぜひ読んでみたいと改めて思う。急がず、折を見てと思わされる一作である・・・



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