2017年05月31日

【経済がわかる論点50 2017】みずほ総合研究所



I チーフエコノミスト高田創の視点
II 2017年の経済がわかる50の論点
第1章 日本経済がわかる10の論点
第2章 海外経済がわかる10の論点
第3章 金融・マーケティングがわかる10の論点
第4章 制度・政策がわかる10の論点
第5章 ビジネス・社会がわかる10の論点

 この本は、どうやらみずほ総合研究所が毎年出しているシリーズらしい。しかし、過去に読んだことはなく、店頭で見かけたこともない(たぶん・・・)。「過去の常識にとらわれず、これまでの教科書にない世界を50の項目で読み解こうとする野心的な試み」なのだそうである。今日の世界経済を象徴するキーワードは「3つのL」(低成長、低インフレ、低金利)だと言う。こう言うポイントを終えたまとめはわかりやすくていい。

 まずは、「逆風にさらされるアベノミクス」。もうあちこちで主張されていることである。世界で繰り広げられる通貨戦争では、最大の敗者は日本だという。こういう指摘は、なかなか新聞等ではお目にかかれない。
「日本経済がわかる10の論点」としては、国内景気、企業収益、設備投資、雇用・賃金、個人消費、住宅、公共事業、輸出、物価、生産性がテーマに取り上げられる。中でも「雇用者報酬がリーマンショック以前を超える水準まで回復した一方で、直接税・社会保険料の負担が増え、可処分所得が伸び悩み、個人消費の抑制要因になった」という説明が印象的。なんとなく皮膚感覚で感じていたことを的確に説明されるのは心地よい気がする。

 それ以外にも、
・長期的には空き家問題が深刻化する可能性大
・インバウンド消費の持続的拡大にはサービス消費の取り込みが必要
・生産性向上は日本経済再生の道
・労働生産性の低迷には、相対的に生産性の低いサービス業(医療・福祉・宿泊・飲食)を中心に雇用が拡大しているため
等々の解説が興味を引く。

 「制度・政策がわかる10の論点」では、一億総活躍社会、少子化対策、ローカルアベノミクス、PPP/PFI、消費税先送りと財政健全化、ポートフォリオ・リバランス、メガFTA、外国人労働者と移民政策、気候変動政策、農政新時代がテーマとなる。新聞等で目にしてはいるものの、では何かと説明を求められると答えに窮するようなものである。それが簡単に解説されているので、改めて理解するのに役にたつ。特にパリ協定については、「発行されれば歴史的な転換点になる」と評されているが、これによって先日トランプ大統領が離脱を表明した重みが伝わってくる。

 50の項目は、それぞれなるほどと思うものであるが、深く解説されているわけではない。それぞれがダイジェスト的ではあるが、それゆえにコンパクトにまとまっているとも言える。世の中のニュースを広く浅く理解するのに役立つものと言える。こういう簡易版的な経済書もこれはこれでいいものだと思う。来年2018年版が出るなら、また読むことにしたい。
現代の経済の問題をコンパクトに知るには、実に適切な一冊である・・・


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2017年05月22日

【ニュースで学べない日本経済】大前研一



序 章 今求められる教養は「本質を見抜く力」
第1章 世界と日本経済の「3大リスク」
第2章 校長経済国家・地域に注目せよ
第3章 染色体が異なる21世紀の企業たち
第4章 日本経済「低欲望社会」をどう生きるか?
第5章 迫りくる危機にどう立ち向かうか?

 定期的に読んでいる大前研一本である。今回は、まさにタイトルにある通り、ニュースを見ているだけではわからない物事の裏側を大前研一が語った一冊。
まずは、「過去の経済原理が通用しなくなった今、どうすべきか」と問われる。アベノミクスのアドバイスをしている人たちが根拠としている経済原理はすでに過去のもの。「低欲望社会」の日本には当てはまらない。金利がつかなくてもひたすら貯金をする我々日本人の姿は、世界の7不思議の一つと言い切る。中原圭介氏も同じようなことを言っているが、そんなことはニュースを読んでいてもわからないとする。確かにその通り。

 なぜかと言えば、ニュース記者も物の見方が非常に局所的で、問題がどこにあるのかを理解していないからだとする。
ならどうすればいいのであろう?
著者は、「疑問を持ち、調べ、質問する能力を身につけよ」と答える。
「自分で世界を見て、自分で解決策を考える。」
言うほど簡単ではないが、意識はしたいと思う。

 今、世界経済が抱えるリスクは3つ。
1. 中国経済の減速
2. アメリカの利上げ
3. 地政学リスク
中国の第13次五カ年計画はすべて絵に描いた餅という。こういうことは、なかなか素人的には難しい。話題となったAIIBであるが、日本は参加すべきではないとする。それは、「儲からない」「リスクが高い」「国内事情が優先する」と言った理由らしい。

 こうした経済ニュースが、著者によって諸々語られる。
1. 還流マネーが世界の金融市場を荒しまわる
2. 独裁的指導者の時代
3. オリンピックは景気回復に結びつかない
4. グローバル企業のM&Aと節税の実態
このあたりは、なんとなくわかっていることも多い。

 「法人税は90%にすべき」という考えには仰天する。だが、その理由として、法人税率を下げて投資と賃金に回った国はないと聞くと、そうなのかと思う。90%にすれば、「国に持っていかれるくらいなら」と設備と人件費に回すと言う。理屈から言えばその通りかもしれない。
「日経を読むと世界が見えなくなる」という指摘もドキリとさせられる。日本のトップ企業と言っても、世界市場では「その他」のレベルであるというのがその理由。なるほどである。

 ただし、すべて同意というわけではない。「日本の持ち家率は世界でも類を見ない」と言うが、「持ち家派」の自分としては、それが悪いとも思えない。「日本人の染色体に宿る病魔」と言うのはいかがかと思う。
新卒一括採用の日本企業では、例えばIIT(インド工科大学)の優秀な生徒は取れないと言う。みんな40,000〜160,000ドルくらい取るらしいからで、難しい問題だが、このあたりは考えないといけないのかもしれない気がする。

 地方創生の3つのモデルは、
1. 自給自足経済=「地産地消」
2. 道州制
3. 都市国家モデル
とする。特に「イタリアには大企業がない」と言う指摘に驚かされるとともに、中小企業でも卑屈になる必要はないのだと思わされる。

 最後は著者らしく、「若者よ、好きな場所で好きな仕事をしろ!」と檄を飛ばす。著者らしいと言えば、著者らしい。
相変わらず、読めば刺激が得られる。こう言う刺激は受け続けないといけないと思う。考える力を養い続けるためにも、著者の言動にはこれからも注目していきたいと思わされる一冊である・・・



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2017年05月18日

【怪談】小池真理子



岬へ
座敷
幸福の家
同居人
カーディガン
ぬばたまの
還る

好きな作家の作品は、見落とさずに網羅しているつもりであったが、不覚ながらこの一冊は漏らしてしまっていた。恋愛小説家である小池真理子の、ちょっと珍しい、タイトルにある通りの「怪談」話の短編集である。

「岬へ」はある地方にあるおそらく自殺の名所と思われる岬に女が向かう話。女ひとりが岬に向かうとあって、タクシーの運転手が戸惑う。「自殺では」と疑っている様子が伝わって来て、このあたりの描写はうまいなぁと思う。実は女の行き先は、岬近くにあるペンション。そこはかつて、女が振った男が岬から身を投げる前に最後に泊まったところ。その夜、女は別の宿泊客である男と夜中にキッチンで会う・・・

「座敷」は久しぶりに友人を訪ねた女性の話。豪邸に暮らしているも、事故で夫と子を同時に失うと言う悲劇を経験している。その後、夫の弟と再婚したその友人は、家の中に亡き夫がいるのだと語る・・・
「幸福の家」は、医者の娘である少女が公園で老人に会う話。寂しげな老人と話をするようになり、連日その公園に通う。話を聞いてくれる老人に、自分と家族がいかに幸せかを語って聞かせるのだが、ある時家に招待すると、老人に断られてしまう・・・

「同居人」は、長野県と山梨県の県境の別荘地に暮らす老婆の話。夫に先立たれて一人暮らしをしている。生前、夫は「家に座敷わらしがいる」と語り妻を混乱させたが、その妻は今は「ひろくん」と呼ぶその子との生活を楽しんでいる・・・
「カーディガン」は、飲み会で誰かが忘れていったカーディガンを届けようとした女性の話。一緒に参加した仲間に心当たりのある者はなく、店に確認したところ、当日貸切だったはずのその飲み会にもう1人の参加者がいたことがわかる・・・

「ぬばたまの」は、病死した妻がそばに現れる大学教授の話。きっかけは、世話になった恩師の葬儀の帰りに寄った飲食店であった・・・
「還る」は、病院で同室になった老女が語る1人語り。息子の結婚式である男を見かけたが、その後なぜかその男と何度も遭遇するのだという。そして話は幼い頃に死んだ弟に及ぶ・・・

恋愛小説を読み慣れた小池真理子だが、この短編集はちょっと異色。ただし、「怪談」といってもどれも恐怖におののくというものではない。例えば幽霊に遭遇したとして、それが身内の親しい者だとしたら、果たして人は恐怖を感じるだろうかと考えてみる。個人的にはNOである。喩えて言えば、そんな雰囲気なのである。もちろん、そうでないのもある。

個人的には、「幸福の家」が良かった。オチ的には、二コール・キッドマンの映画『アザーズ』を連想してしまったが、なんとも物悲しいお話である。
一言で言えば、「怖くない怪談」。
小池真理子らしいと言えばらしい「怪談」である・・・



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2017年05月17日

【レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い? 特許・知財の最新常識】新井信昭



はじめに 「知財」は本当に、あなたに関係ないものですか?
第1章 特許出願は「アイデアを盗んでください」と、全世界に宣言すること
第2章 アイデアは、「見せない、出さない、話さない」
第3章 知財の法廷に、大岡越前はいない
第4章 アイデアの「現場」に魔の手が迫る
第5章 「知財コミュニケーション力」と言う武器
第6章 アイデアの「絶対領域」で勝利をつかめ!

 著者は知財コミュニケーション研究所の代表を務め、自ら「知財コミュニケーター」と称する知財の専門家。そんな著者が、意外に知られていない特許の現実と特許との付き合い方を伝授した一冊である。普段、なんとなくのイメージで捉えている特許であるが、実情を知っておくのも何かの役に立つと思って手にした一冊である。

 まず「知的財産とは」という解説から入る。それは、「お金を儲けるために人間が考えたアイデア」とする。そして特許は、それを保護する手法であるが、そこに大いなる誤解があると言うのがその主張。タイトルには、サントリーの伊右衛門とコカ・コーラという二つのブランド飲料が採り上げられているが、これはその特許戦略の違いの代表例としてである。すなわち、伊右衛門は特許を取得していて、コカ・コーラは特許を取得していないのである。

 特許とは、「知財に着せた透明な防護服」と著者は言う。それはすなわち、特許を申請すれば、特許公報に掲載されその内容は全世界に公表されることを表 している。「アイデアに国境はないが、特許には国境がある」と言う言葉は衝撃的である。「技術は外から手に入れてくる」が国際ルールで、事実、ハイアールなどは日米欧の特許公報を調べ上げ、それが自国で特許申請されていないことを良いことに、自社技術として取り入れているのだと言う。

 自国内で特許を取ったとしても、中国ではそれが自由に使えると言うことで、それで自社の金型技術が流出し、注文もすべて中国に持っていかれたメーカーの事例が採り上げられている。特許は、申請するのに30〜50万円の費用がかかり、さらに維持するのに5〜10万円の費用がかかるというのも、知られざる事実。その上、世界中で申請しておかないと本当の意味で、知財防衛にはならないと言うのは、ショッキングな事実である。

 コカ・コーラはそれゆえに特許を取らず、厳格に秘密保持をしているとのことである。
では、特許は取らない方が良いのか?
それについて、著者は出願を見極めるポイントを挙げる。
1. その特許が現在または将来の自分のビジネスに役立つかどうか
2. 自分のアイデアをもとに作られた製品を見ただけで他者がそのアイデアを真似できるかどうか
3. 自分のアイデアをパクった者が現れた時、裁判で戦う覚悟と勇気と費用があるかどうか

 さらに最も大事なことは、「特許を取りたい理由」だと言う。そうなのだろうと思う。著者は、アイデアを守るための原則は、「見せない、出さない、話さない」ことだとする。言われてみればごもっとも。そして、技術を有する会社の社長なら自ら、あるいは社員に知財検定3級の取得を勧める。特許を取れば良いと盲目的に考えるのではなく、公開してでも特許を取るか、特許を取らずに秘匿するかの「オープンクローズ戦略」の重要性を説く。

 具体的な事例も取り上げられていて、実にわかりやすい。残念ながら私の勤める中小企業は技術とは無関係。特許など無縁の世界ではあるが、こうした事実を知っておくのも何かの肥やしだと思う。知っておいて損はないところである。世の中、こうした事例は他にもあるかもしれない。盲目的にイメージで捉えるのではなく、関係あるものならしっかりと認識したいと思う。雑学にしておくのは、ちょっと勿体無い。技術系の仕事の人なら、一読しておくべき一冊である・・・




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2017年05月16日

【海と毒薬】遠藤周作



 この本は、その昔映画化されたものを観ている。モノクロ画面の映画で、手術室のシーンが印象に残っている映画である。もうほとんど筋は忘れてしまっているが、「いつか原作を読んでみたいと思っていたもの。ちょうど『侍』を読んだ時にチェックしていたものである。

 物語は戦後しばらくした夏の日から始まる。1人の男が妻とともに越してきて、持病の相談に行く医者を探す。そうして紹介されたのが、勝呂(すぐろ)という個人医院。愛想はないものの、腕はいい。気胸の手当の見事な腕前から、男はこの勝呂という医者に興味を抱く。そして義妹の結婚式に訪れた北九州で、偶然勝呂医師の過去にまつわる話を聞く。それは終戦間際、勝呂らがアメリカ人捕虜に人体実験を行ったというものであった・・・

 そして物語は、終戦直後の北九州へと時を戻し、今度は若き日の勝呂の視点から日常が語られる。『侍』もそうであったが、遠藤周作の作品は、この視点変換がよく行われる。冒頭の男、主人公ともいうべき勝呂、勝呂の同僚の戸田、そして同じ病院の看護婦(当時はまだ看護「婦」である)の上田。それぞれの視点で語られる時は、当然その人物の視点になるのだが、視点が変わればその人物は周りにいる人の1人になる。意識してのものかわからないが、最近の作家にないスタイルのような気がする。

 物語の中心は、あくまで米兵捕虜になされる人体実験。冒頭の男の視点も、勝呂という医師を登場させるイントロであるし、その勝呂の視点を通して人体実験の様子が描かれて行く。ただし、勝呂はまだこの時点で研修医でしかなく、そして人体実験を主導するのは勝呂の上司ともいうべき医師たち。視点を変えるといっても、肝心の人体実験は勝呂の視点から描かれる。実験を行った医師の視点からだったらどんな様子だっただろうと、ふと思う。なぜそうならなかったのかは知る由もないが、研修医だったからこそどこか客観的になったのかもしれない。

 考えてみれば、勝呂の同僚の研修医戸田は、少年時代からどこか冷めていて冷酷なところがある。それは小学生の頃に、先生の貴重な蝶の標本を盗んで友達が濡れ衣を着せられるのを眺めていたり、自分で孕ませてしまったお手伝いを自ら堕胎するところなどからも察せられる。実験を執刀した医師たちも、もしかしたらそうした冷酷な人たちだったのかもしれないと思わされる。それゆえに戸田の視点を登場させたのかもしれない。

 もっとも肝心な人体実験よりも、大学病院内での権力争いや、そのために手術される患者の様子などが個人的に不気味だったと思う。印象に残っている映画の手術シーンも、人体実験ではなくこの手術のシーンであり、それはやっぱり映画も本も感じるところは同じということなのかもしれない。もっとも、映画の方はちょっと患者の手術の描き方が違っていたのは確かであるが・・・

過去に読んだ本にも通じる独特の暗い雰囲気が、この本でも流れている。これが遠藤周作の世界なのかもしれない。次については、今のところ考えているのはないが、少しアマゾンでも眺めてみて、良さそうなのがあればとも思う。昭和の雰囲気をよく感じられる一冊である・・・


海と毒薬.jpg



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2017年05月15日

【東大が考える100歳までの人生設計−ヘルシーエイジング−】東京大学高齢社会総合研究機構監修



基礎理論編 ヘルシーエイジングのための基本原則
戦略編 
第1章 健康編 食事・運動・休養
第2章 生活環境編 住まいと身の回りの環境を整える
第3章 生きがい編 あそび・たのしみ・しごと・居場所
第4章 制度活用編 いざという時に備える

 なんとなくあまり深く考えずにいたことであるが、最近、『自分の時間を取り戻そう−ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方−』とか『LIFE SHIFT−100年時代の人生戦略−』など「人生100年時代」を主張する本を読んでみると、必然的にそれに対する備えにも目を向けたくなるというもの。この本はそんなタイミングで目にした一冊である。

 著者は個人名ではなく、東京大学の高齢社会総合研究機構と称するところ。どうやらそこでの研究成果をまとめたのが本書ということらしい。そして最初に出て来るのが、「ヘルシーエイジング」という言葉。これは「ほどほどに健やかな歳のとり方を目指す考え方」ということらしい。「要するに要介護にならないよう自分の生活をデザインすること」と言い換えられてもいるが、確かに重要な概念だと思う。

 寝たきりにならない老後のために必要なことはなんであろうか。定年後には「きょうよう」と「きょういく」、すなわち「今日する用事があること」と「今日行くところがあること」が大切だという。なるほど、わかりやすくていい。多少心身が弱ってきても、できるだけ自立的に生活できるような生活環境を整えることが大事だという主張もその通りである。

 要介護になる3大要因は、「運動機能障害」「脳血管障害」「認知症」だという。気になるのは、やはり認知症だろう。その認知症を防ぐには、脳の血行を良くすることが必要で、運動しながら頭を使うことが良いとする。それは例えば歩きながら頭の中で引き算をすることだというが、老いた我が母にやれと想像してみると、3歩も歩かぬうちに転びそうな気がする。

 基本原則は、食う・寝る・遊ぶ/働くだとか。減量するならタンパク質を十分に摂り運動をする。食べたい時に食べたい良質なものを適量食べる。栄養バランスは30品目より一汁一菜。カロリーよりも脂質の量とタイプに注意。野菜は火を通す食べ方を工夫。歯は命。認知症予防にも効果的。高齢になってもできる筋力回復運動は以下のとおり。
1. ストレッチ
2. 筋トレ
3. バランス運動(開眼片脚起立運動)
4. 有酸素運動(ウォーキング)
なるほど、どれも当たり前と言えば当たり前かもしれないが、一度整理するには役に立つ。

 話は老眼鏡から補聴器(補聴器は自分の症状にあったものを病院を通じて補聴器メーカーにオーダーメイドで作ってもらう)、そして住環境(夫婦の寝室は別にするのが良いという意見は意外)へと広がる。男も家事をすべきだし、ショッピングはウォーキング。電動アシスト自転車もあり、新しい友人を作るには「人の話を聞くのが良い」。離婚で男は10年寿命が縮まるという話は穏やかではない。異性と付き合い、トキメク時を持つというのも面白い。

 言われてみれば、なるほどである。まだまだ実感はないものの、自分もいずれは年老いて体の自由も効かなくなる。その時に備えて考え方やら何やらを整理しておくのもいいだろう。さしづめ自分の年老いた親に適用できるものは教えてあげたいと思う。大いに参考にしたい一冊である・・・



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2017年05月09日

【西武信用金庫はお客さまを絶対的に支援する】碓氷悟史



第1章 西武信用金庫のお客様のすごさ
第2章 プロ経営者としての落合寛司誕生の原点
第3章 「年齢による定年制度の廃止」がもつ意味を考える
第4章 人事考課の快
第5章 西武信用金庫お客様支援センター(総合コンサルバンク)への道
第6章 落合寛司の経営哲学

 不動産業界に身を置いていると、そして特に「資金調達」という課題を抱えていると、西武信金の名前は少なからず耳にするはずである。最近、不動産融資を伸ばしていると評判だからである。そんな評判にプラスして、「定年制度を廃止した」「100人の求人に20,000人が殺到」など聞くと、嫌が上にも興味を持つというもの。そんな時に目にしたのがこの本である。

 著者は公認会計士、亜細亜大学教授という肩書きのあるコンサルタントで、西武信金の落合理事長とは亜細亜大学繋がりから執筆に至ったのだと思う。この手の本は、ともすれば「太鼓持ち」的になりがちであるが、そこのところは割り引いて読みたいものである。

 最初に西武信金の営業成績が掲載されているが、確かに現理事長になってからの成長は著しい。落合理事長就任前後の各指数は以下の通り。
1. 当期純利益5年合計:(就任前) 207億円 ⇨ (就任後) 274億円
2. 貸倒関係損失5年合計:(就任前) 7,269億円 ⇨ (就任後) 738億円
3. 貸出金:(就任前) 443億円 ⇨ (就任後) 2,104億円
4. 預金残増加額:(就任前) 778億円 ⇨ (就任後) 2,143億円
数字は嘘をつかないので、これは素晴らしいと思う。

 注目の定年制度廃止だが、これは正確に言えば廃止ではなく下記の選択制。
1. 定年のない現役コース
2. 嘱託で再雇用される嘱託コース
3. 60歳退職コース
 
 それぞれの事情に応じて選べるようなことが書いてあるが、よく読めば肝心の現役コースは条件がついている。それは「西武信金から選抜され、本人が同意すれば」というもので、「主として支店長などを対象」となっている。つまり、「できる人だけ」のようである。当たり前と言えば当たり前だが、全員が3コースの中から好きに選べるような書き方をしているのが気になる。

 そして、働くことや定年に対する考え方など、著者が絶賛する中村天風の引用がやたら多いのが気になる。西武信金に関係のない記述がダラダラと多い。薄い本なのにそれでページを稼いでいるので、西武信金についての記述は意外に薄い。年間一人当たり人件費が平均912万円から836万円に下がったと褒め称えるが、よくよく考えれば給料を下げたという意味であり、立場によっては不満を招くところである。

 ただ、人件費にしても20代で1,000万円とか、32歳で1,300万円という解説もあり、実力主義が徹底されているのかもしれない。下がったとは言え、836万円は高いと思うので、他と比べれば待遇は良いのかもしれない。本当はこういうところをもっと深く切り込んで欲しかったが、著者には無理だったのかもしれない。上っ面の記述に終始している。

 とは言え、西武信金に対する興味が薄れるというものではない。一読して疑問に思うところが多いも、それは著者の力量に問題があるのであって、西武信金自体に問題があるというわけではない。もう少しよく知りたいと思うところである。落合理事長の講演は一度聞いたことがあるが、今度はご本人の著述をそのうち読んでみたいと思うのである・・・



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2017年05月08日

【住友銀行秘史】國重惇史



プロローグ 前史
第1章 問題のスタート
第2章 なすすべもなく
第3章 行内の暗闘
第4章 共犯あるいは運命共同体
第5章 焦燥
第6章 攻勢
第7章 惨憺
第8章 兆し
第9章 9合目
第10章 停滞
第11章 磯田退任
第12章 追求か救済か
第13章 苛立ち
第14章 Zデー
第15章 解任!
第16章 虚脱
第17章 幕切れ
エピローグ あれから四半世紀が過ぎて

 「イトマン事件」と聞けば、その昔のバブル時代を象徴するかのような事件としての印象が残っている。当時駆け出しの銀行員であった私だが、実はあまり詳しいことは知らないできた。それを元住友銀行取締役の著者が当時を振り返って記したのがこの本。著者のことは、楽天の副会長になったニュースを記憶していたので、事件の当事者だったのかと改めて意外に思った次第である。

 まず初めに語られるのが、著者の簡単な略歴。なんとMOF担だったという。MOF担というのは今はほとんど死語であるが、銀行の「大蔵省担当者」のこと。当時の銀行にとって、主官庁の大蔵省は重要な存在。そこから様々な情報を取るべく、専門の担当者を置いていたのである。当時この仕事につくことは、「エリート街道に乗った」とも言われたものである。そして著者もその通りのエリート街道を歩んだようである。

 特に最初の支店長時代のエピソードは興味深い。なかなかのアイデアマンだったようである。その中で、当時の優秀な営業マンの仕事振りが紹介されているが、家に帰って奥さんに仕事を手伝ってもらっていたりして、その猛烈振りがすごい。でもよく考えてみると、当時はこんなことがあちこちで語られていたものである。著者のエピソードからしても、仕事のできる人だったことは間違いない。

 そして唐突に事件は始まる。この本は、当時著者が克明につけていたメモを元にしているという。そのせいか要所要所にメモ形式の記述が入る。時に1990年3月。商社であったイトマンの社長は住銀から行った河村氏。この人が伊藤寿永光なる人物を重用し、不動産投資にのめり込んで行く。そして許永中なる人物も絡み、美術品など住銀から出たお金がイトマンを通じて闇社会に消えて行く。このあたり著者の記述だけではどうも良くわからない。

 著者の主観で書かれているのはいいのだが、逆に客観性がないというか、事件の全体像がどうも分かりにくい。住銀の役員も多数出てくるが、人物関係がどうもしっくりしないまま読み進むことになり(いちいち確認するのも億劫)、ストレスが生じる。当時の住銀会長は、天皇と呼ばれた磯田一郎氏。私も名前くらいは聞いたことがある。そうした役員達と身近にいた著者による記述は、一般人にはうかがい知ることのないトップの様子であって、それはそれで興味深い。

 著者は、イトマンの深刻さを早くから掴み、愛行精神から行動する。されど保身や思惑にまみれた役員達の動きにイライラさせられる。日経新聞の記者に情報を流し、「従業員一同」の名前で大蔵省の銀行局長宛に内部告発文書を出す。これはこの本で著者が初めて暴露する事実だったようである。

 当時、住友銀行には大勢の行員が働いていただろう。その大半がこんな事実を知らないでいたわけで、トップに近いごく一部の人たちの世界のやり取りが実に興味深い。「メガバンクは守りの組織、徹底した減点主義で一回でもバツがついたらもうおしまい」と著者は語るが、自分は早々にバツがついた1人として、なるほどと思う。事件と合わせてそんな銀行の裏事情も興味深い。

 事件の全体像がイマイチ分かりにくいという難点はあるものの、銀行トップのリアルなやり取りは面白く、元銀行員として興味深く読めた。元銀行員でなくても面白いのではないかと思う。改めてバブルの時代は、異常な時代だったと思わされる一冊である・・・


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2017年05月02日

【ハードワーク−勝つためのマインド・セッティング−】エディー・ジョーンズ



第1章 日本人独自のやり方で勝つ
第2章 どう戦略を立てるか
第3章 何が勝敗を分けるか
第4章 成功は準備がすべて

 著者は、2015年のラグビーW杯で日本代表ヘッドコーチを務めた人物。すでにW杯前に出版された本(『コーチングとは「信じること」−ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話−』)を読んでいるが、この本は著者自らがW杯後に執筆した一冊。

 「自分はどうせダメだ」というマイナス思考が成功を阻んでいるといきなり著者は語る。著者が日本代表監督に就任した時点での代表選手のスタンスだったそうである。「それを取り除きさえすれば、誰でも成功を手に入れることができる」と続く。そしてメッセージはシンプルにが鉄則。今本当に伝えたいことを一つに絞るのだという。これらは、ビジネスの世界でも通じる考え方である。

・課題を一つ一つ明確にする
・言葉をたくさん使い、口うるさく指導するより潜在意識に働きかける
・全ての選手や部下は公平に扱わなければならない
・コミュニケーションは一対一で弱いマインドセットを変えるには褒めることが一番
・同じメッセージを繰り返すと人はそれに即した行動をとるようになる
・教わる立場で教える:自分が部下だった時にどう教えて欲しかったか、
 どう扱って欲しかったかを思い出す
・口うるさく指摘したり命令したりするのではなく、自身を変える機会を与えてあげる
さすがコーチらしい言葉は、ビジネスの現場でも部下に対する態度として参考にすべきものと思える。

 一方、自分自身が実践するのに良い言葉もある。
・向上心のない努力は無意味
・正しい想定と十分な準備
・与えられたものをこなすだけでは本当の力は生まれない。
 自分で考えたり決断したりすることから大きな力が生まれる
・ミスは必ず起きる。ミスをしないのではなくどうカバーするか
・すべてを考え尽くして勝負に臨め
・感情で人を評価するな
・勇気とは慣れ親しんだ自分を捨てること
・成功は十分な準備がもたらす自分が呼び込む
・言い訳が成功を阻む
・何かを良くしようと思えば、まず自分を客観的に見つめることが大事
・心配ほど無意味なものはない。心配が何かを変えることはない

 一つ一つメモをしていると、気がつけばそれが膨れ上がっていく。日本代表が南アフリカに勝利したのは、決してフロッグではないと改めて思う。と同時に、これだけの人物をイングランドに取られてしまったのは、日本にとって大いなる損失ではないかとも思う。ラグビー好きにはもちろんのこと、ビジネスでも広く応用できる考え方に満ち溢れている。
 部下を持つ人ならば、是非とも一読すべき一冊だと思うのである・・・


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