2017年07月31日

【隷属なき道−AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働−】ルトガー・ブレグマン



原題: UTOPIA FOR REALISTS And How We Can Get There

第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?
第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい
第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる
第4章 ニクソンの大いなる撤退
第5章 GDPの大いなる詐術
第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
第8章 AIとの競争には勝てない
第9章 国境を開くことで富は増大する
第10章 真実を見抜く一人の声が、集団の幻想を覚ます
終 章 「負け犬の社会主義者」が忘れていること

著者はオランダ出身の歴史家、ジャーナリスト。本国オランダでベストセラーになり、英語版は自費出版で火がついたというこの本。それほど深い興味を持っていたわけではなく手に取ったのだが、その内容に驚かされることになった一冊である。

現代は、人類史上最も豊かな社会であるという。1820年には世界人口の80%が極めて貧しい生活を送っていたが、現代ではそれは10%。オランダにおいては、公的補助を受けているホームレスの生活費は1950年の平均的なオランダ人より多いのだとか。世界的には、空腹に悩む人より肥満に悩む人の方が多いという指摘は、確かにその通りなのだろう。一方で、うつ病が10代の若者の最大問題で、2030年には世界の病気の第一位になるという指摘には愕然とさせられる。

そんな現代社会において、著者はこの世界を救う方法として、
1. ベーシックインカム
2. 1日3時間労働(週15時間労働)
3. 国境線の解放
を提案している。

ベーシックインカムとは、基本的な給付金のこと。わかりやすい事例として、イギリスでホームレスに3,000ポンドの現金を支給する実験をしたことを例示する。その実験の結果、対象の13人のうち9人が一年後には屋根のある生活を送り、あるいはその見込みが立つようになり、全員が生活改善へと向かったという。ホームレス対策にお金をかけるより、現金を渡す方が少なく、かつ効果的だという。なかなか我々の常識ではすぐに納得できそうもない内容である。

しかし、同様の実験はケニアやウガンダなど各地で行われてそれぞれ効果を見せているという。それらの実験では、フリーマネーをもらった人たちが買わなかった一群の商品は、なんとアルコールとタバコだったという。日本で言えば、生活保護の代わりに現金を渡せということになるのだろうが、本当に上手くいくのだろうかと疑問を禁じ得ない。

また、日本でもカジノの議論があるが、これもアメリカのノースカロライナ州でチェロキー族の土地に作られた例が紹介されていて興味深い。日本と同様、カジノを建設すれば犯罪の温床になったりギャンブルで身を持ち崩したりということが危惧されていたが、オープンしてみればカジノ効果で学校、病院、消防署が新設され、チェロキー族の人々も収入が4倍になったという。日本の共産党の人はこの事実に対し何ていうだろう。

また「ハウジングファースト」というホームレスに住宅を供給する試みも興味深い。ヨーロッパでは空き家がホームレスの2倍、アメリカでは5倍あるといい、ユタ州ではこれでホームレスが74%減り、オランダでもホームレス対策費の2〜3倍の効果があったという。自分の先入観を一旦クリアしないといけないのかもしれない。

「1日3時間労働」は、夢のような話だと思ったが、実は労働時間が増えて経済成長がもたらされても、一定限度を超えるとそれは借金をベースとした消費に向かい、その結果それを賄うために働かなければならなくなっているという悪循環が説明される。つまり、働く時間を減らしても今の生活は維持できるのだという。これもにわかには信じ難い。

さらに国境線の解放は労働者の自由な移動をもたらし、その結果、全世界で65兆ドルの富が増えるという。移民に対し保守的なわが国では、気を失う人が大勢出そうな意見である。しかし、移民は仕事を奪うことなく、逆に増やすものであり(イスを持ってイス取りゲームに参加してくるという言い回しがなされる)、安い労働力のせいで賃金が下がるという意見には、そうしなくても結局企業は製造拠点を安い海外に移すことで国内の賃金を下げてしまっていると説明する。

その他、銀行員や会計士など、「富を移転する」だけで有形の形を生み出さない人が高給を得ている現状を批判する。銀行が1ドル儲けてるとどこかで60セントの損失が発生するが、研究者が1ドル儲けるとそれは5ドル以上の経済効果を世にもたらすといる。アイルランドでは半年間銀行がストライキをしても影響はなかったが、NYでは清掃員が10日間ストライキをしたら大混乱になったとし、「富を生み出す」人を重視せよと説く。

目から鱗の意見の連続で、大いなる刺激を受けた。この内容の是非はともかくとして、自分の常識に凝り固まってはダメだと思うし、ここに書かれていることがわが国でも当てはまるのかどうか大いに興味をそそられた。是非ともトライしてみてはと思うところである。
手にした時は、特に期待もしていなかったが、久々に刺激を受けた一冊。こういう本は読んでおきたいと素直に思わされる一冊である・・・



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2017年07月28日

【ダメなときほど「言葉」を磨こう】萩本欽一



第1章 どんな逆境も言葉の力で切り抜けられる
第2章 子育てこそ言葉が命
第3章 辛い経験が優しい言葉を育む
第4章 仕事がうまくいくかは言葉次第!
第5章 言葉を大切にしない社会には大きな災いがやって来る
第6章 言葉の選び方で人生の終着点は大きく変わる

欽ちゃんの本はすでに2冊読んでいる(『負けるが勝ち、勝ち、勝ち! 「運のいい人」になる絶対法則』『ダメなやつほどダメじゃない』萩本欽一))。いずれも読んで共感できる部分が多く、また今まで知らなかった欽ちゃんの人柄に触れるところもあり、そのテイストが気に入っていたため、改めてもう一冊と手を出した次第。

前2冊が、「運」を1つのキーワードとしていたのに対し、この本は欽ちゃんが「運」だけでなくもうひとつ大切にしてきたものとしての「言葉」にスポットライトを当てている。「良い言葉には幸運を手繰り寄せたり人生を好転させる力がある」とするが、自分自身、小学生の頃から名言の類をメモってきた経緯もあって、素直に頷ける部分である。そして冒頭から良い言葉が並ぶ。

「人を説得したいときはあえて一歩引く言葉を」
会社で議論することの多い私としては、「はっ」とさせられる言葉である。力づくで説得しようと言葉を尽くしても、人はなかなか説得できないものである。
「迷ったら『遠い』と『辛い』を選ぶ」
物理的な距離や心理的なハードルがあったり、ちょっと大変かなという方を選ぶとするが、これはなかなか大変であるが、その通りなのだろうことは間違いないと思う。

「苦労は工労と思え」
これはモノは考えようの良い例だと思う。
「オンリーワンより少ない中でナンバーワンになる」
大企業から中小企業に転身した自分としては、痛いくらいに共感できる言葉である。

「不幸な出来事を不幸な言葉で語らない」
「喜びは短く、悲しみも短く」
「決められたことをより少しだけ多くやるのが『努力』」
「交渉事は自分の利益より相手の気分が良くなる言葉を」
短いながらも、実に含蓄のある言葉が続く。

一言ではないが、オリンピックについての意見には考えさせられるものがあった。
「オリンピックで大事なことって、そもそも競技を楽しむこと。それを経済効果とか復興アピールとかいろいろなものと関連付けて本来の精神を忘れている気がする」
言われてみればその通り。こういう感覚というのは自分自身もしっかり持ちたいと思う。

「みんなが右を向いていたら左を向こう。だってみんなが集まっているところには運がない」
アマノジャッキーな私としては、当然左を向くが、それを「運」という考え方を理由にしているのは欽ちゃんらしい。
「思考が言葉を変えるように、言葉もまた思考や行動を変えて行く」
まさにその通りだと思う。

過去読んだ2冊と同様、この本にも欽ちゃんならではの優しさが溢れている。読んでいて勇気付けられること、しばしばである。やはり言葉って大事だと改めて思う。
そう認識するとともに、「欽ちゃん本」にますます惹かれて行くところがある。まだまだ読んでいない本もあるし、次のを早く手にしたいと思わされる一冊である・・・



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2017年07月22日

【テクノロジー4.0「つながり」から生まれる新しいビジネスモデル】大前研一



第1章 「テクノロジー4.0」とは何か
第2章 「FinTech」で信用の概念が変わる
第3章 「位置情報ビジネス」が60兆円市場になる理由
第4章 「IoT」で生き残る企業、滅びゆく企業

定期的に手に取っている大前研一の本をまた一冊。「テクノロジー4.0」というのは耳慣れない言葉だが、避けていてはビジネス界でついていけなくなるというもの。興味深くページをめくる。「テクノロジー4.0」とは、産業革命から現代に至る経済界の大変動を表した言葉。その流れは以下の通り。

テクノロジー1.0 産業革命
テクノロジー2.0 大量生産
テクノロジー3.0 通信・インターネット時代の幕開け
そしてテクノロジー4.0とは、インターネットの次に来るテクノロジーの革命だそうである。

テクノロジー4.0が生まれた背景にある要素は以下の4つ。
1. リアル(実体)経済
2. ボーダレス経済
3. インターネットによる見えない大陸
4. マルチプル経済の理論がイノベーションを加速
そして、「スマートフォン・セントリック」と呼ばれるスマホがあらゆるテクノロジーの媒介役として機能する流れが起こっているとする。

今の政府は、「デフレは悪」としているが、中原圭介氏と同様、大前研一氏も「デフレは世界最適化のブロセス」と肯定的に捉える。これからのビジネスマンにとって必要なのは、「ビッグデータ」「ドローン」「FinTech」「AI」「Uber」等々、それぞれのテクノロジーのつながりを俯瞰する視点だとする。ボォーとしていてはいけないのは、言われるまでもない。

テクノロジーは、先進国より途上国の方が浸透しやすいという。固定電話が行き渡る前にスマホが普及してしまった例を採り上げた説明にはなるほどと思わされる。ブロックチェーンに代表されるFinTechが今や国家や金融機関に変わって信用を提供するという意見は、いろいろ見聞きしている通りである。

資産運用も、高い手数料を取られる人間によるよりも、手数料の安いAIに取って代わられるとする。すでに2016年にはこれで770億ドルが運用されていて、2020年には1.6兆ドルになると予測されているのので、絵空事ではない。「今ここにいるあなた」を狙った「ポイントキャスティング」を始めとする位置情報ビジネスの加速も興味深い。それらは建機の車両管理サービス、Amazonの倉庫を走るロボット、ゴルフ場の芝刈りロボット等々拡大している。

一方、そうしたテクノロジーの進歩に対し、「個人情報」「ロケハラ」「プライバシー」の3つの問題も起こって来るリスクがあるとする。IoTで全てがインターネットにつながる時代は、そうしたリスクを孕みつつも期待が持てると思う。特にアメリカのサクラメントで行われたという試みに興味を持った。それは原発に反対した住民に対し、それなら原子炉なしで電力を賄うべく、街全体で30%の省エネを実現するために協力せよとして行われたものだという。この取り組みにおいて、全家庭と連携してこれを実現してしまったというもの。そのまま日本に当てはめられるかどうかはわからないが、IoTにより日本でも実現できる可能性は十分にあると思う。原発ありきではないのである。

世の中は目まぐるしく変化しており、現役世代としてはこの動きを理解し遅れずについていきたいと思う。この本を読むと、そうした変化の一例に溢れており、知らないものもかなりあった。世の中の変化のアップデートという意味では、一読の価値ある一冊。これからも大前研一氏の本には目を通していきたいと改めて思わされる一冊である・・・


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2017年07月21日

【いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則】秀島史香



第1章 「話すとなぜか気持ちいい」人たちが心がけていること
第2章 「明日あの人に会う」ときに私がしていること
第3章 どんな想定外でも大丈夫!緊急事態にも揺るがない「切り返し」の方法
第4章 「また会いたい」と言われる人に共通すること
第5章 もう困らない!一生使える話題の拾い方・見つけ方

著者はラジオDJ。もうキャリア20年以上の大ベテランであるらしいが、私はこれまでまったく知らなかった方である。その道で苦労を重ねてきた人の言葉には重みを感じるが、もともと「人見知りで、人と会うのが不安でしょうがなくて、アガリ症」とおよそDJにはふさわしくないような著者が、それでも20年以上キャリアを続けられてきたのは、それこそ本一冊書けるくらいの苦労があったのであろう。そんなところに何かを探して手にした一冊。

まず、人といい関係を作るには、「いかに相手と自分にとって『いい空気を作るか』」だとする。
「初対面の相手にも受け入れてもらえる空気の整え方」
「心の距離を縮める空気の温め方」
「緊張する自分を落ち着かせるための空気の緩め方」
「苦手な相手にも対応できる空気のまとい方」
そんな空気を作る方法を42の法則にまとめてある。

まず相手といい空気を作るのに大切なのは、アイコンタクト。やわらかい気持ちで目と目を合わせるのは、お互いに「よろしく」の意思表示。最も効果的なアイスブレイクは視線・笑顔と語るが、確かにそうだと思う。著者は、写真で見る限り美人だからそれもあるかもしれないが、男でもある程度は通用することではないかと思う。

「顔を合わせたら、一番に相手の『いいね!』を探す」とし、例えば「髪切った?」と言うことでもいいとしている。だが、職場だとセクハラの懸念もあり、このあたりは男としては難しい。
「共通点が見つからない相手には、全面的に教えてもらう」としているが、これはなかなか参考になる。自分としてもしばし経験することだからであるが、今度使ってみたいと思う。

セールストークでは、「自分が持っている専門知識の中から相手が喜びそうなものを探す。相手にとって有益な情報はなんだろうかと考える」とする。これは仕事で使えそうである。と言うか、無意識のうちにできているかもしれないと思ってみたりする。
「会話の中で相手の名前を呼ぶ」は、あちこちで語られているテクニックだが、やはり有効だと言うことだろう。

「ギクシャクしたらまずは相手のペースに時間感覚を合わせてみる」
「悪意を向けてくる相手には無理せず心に『防水加工』」
「失言をしてしまった時は、逃げないで言葉を尽くす」
相手との関係がうまくいかなさそうな時の対応も書かれていて、これはこれで参考になる。

「人と人の関係において重要なのはフェアであること」は、相手が子供であっても真摯に質問に答えていた宇宙飛行士の毛利さんを例に挙げて説明。確かにその通りだと思う。「誰が言ったか、ではなく何を言ったか」ここも自分としてはこだわりたい。
「話題は大皿料理、取り分け上手は愛される」は、まさにその通りだと思うが、自分にはなかなか難しい。

「雑談力を上げるには、トホホ体験」
やはり自分をネタにするのは、1番害のない話題提供だろう。
「好奇心があれば日常生活は話題満載のドラマ」
これは本当にそうなのだろう。要は、「そう言う目で世界を見ているか」なのだろう。とても参考になる。

やはり苦労して得てきたものというのは、迫力があると思う。みんなさらりと書かれてはいるが、自分には向いていないと思いつつも、DJになりたいからと頑張った著者の汗と涙の結晶がこの本には詰まっている。やはり人見知りで他人が苦手な自分としては、少しでも身に付けたいと思うことがたくさん出てくる。いくつかは、早速実践してみたいと思う。

今度、このかたのDJを聞いてみたいと密かに思う。
似たような性格の人には、一読の価値ある一冊である・・・



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2017年07月19日

【数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学】大栗博司



第1話 不確実な情報から判断する
第2話 基本原理に立ち戻ってみる
第3話 大きな数だって怖くない
第4話 素数は不思議
第5話 無限世界と不完全性定理
第6話 宇宙のかたちを測る
第7話 微分は積分から
第8話 本当にあった「空想の数」
第9話 「難しさ」「美しさ」を測る

著者は、いろいろと肩書きのある方のようだが、一言でいうなれば数学者ということだろうか。そんな数学の専門家が、世の中のことを数学に関連づけてやさしく解説しようというのが本書である(たぶん)。ただ、あまりやさしくはない。

最初は確率の話。アメリカの予防医学作業部会が、40代の女性には乳がんの定期検診を推奨しないとして話題になった例を取り上げる。そこでこの問題に対し、確率の考え方から考えていく。乳がんに罹っていた場合に検査で陽性の結果が出る確率からはじめ、ベイズの定理を使うと、なんと「乳がん検診で陽性の結果が出た時に乳がんに罹っている確率は9%」という結果がでる。乳がん検診の有効性がどうのというよりこの数学的な考え方が面白い。

確率の話としては、原発の重大事故が起こる確率は、やっぱり「100年に1度」だとか、OJシンプソン事件で相手の弁護士の無罪主張には確率の話でこう切り返せば良かったとか、日常的に数学の考え方は潜んでいるものだと思う。基本原理の話では、「(-1)×(-1)はなぜ1になるのか」という解説が面白かった。学校で習ったのかもしれないが、今は自動的に「1」と覚えてしまっているが、「毎日100円ずつ使っている場合を例にとり、3日前(-3)には300円多かった「(-3)×(-100)=300」という解説には改めてなるほどと思わされる。

天文学の話となると、大きな数が登場する。「対数」はその昔学校で確かに習ったが、やはり日常生活で縁がないせいか忘却の彼方だ。「log」が出てくるとちんぷんかんぷんになるが、それでもケプラーの第三法則「惑星の公転周期の2乗は軌道の長半径の3乗に比例する」の解説は面白く読める。改めて勉強してみたくなる。

素数の原理を利用したインターネットの公開鍵暗号の原理だとか、「アキレウスは亀に追いつけない」パラドックスの解説などは、改めて数学の凄さがわかる。特に紀元前275年に地球は丸いと考え、その円周を46,500キロと実際の40,000キロと遜色ない誤差で推定したエラトステネスの話は興味深い。夏至の正午にアスワンとアレキサンドリアと離れた場所で太陽が落とす影の角度から推定するというもので、実に驚異的だと思う。

話はピタゴラスの定理のような馴染み深いものからデカルト座標や虚数など多岐にわたる。中には難しくて目眩がしてくるものもあるが、基本的に数学は奥が深く、そして面白いと心から思う。できればもう一度高校あたりから学び直してみたい気になってくる。著者の狙いももしかしたらそんな数学の面白さを伝えたいというところにあるのかもしれない。

サブタイトルには「娘に贈る数学」とあるが、私の場合は「自分に贈られた」と感じられた一冊である・・・

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2017年07月18日

【反哲学入門】木田元



第1章 哲学は欧米人だけの思考法である
第2章 古代ギリシアで起こったこと
第3章 哲学とキリスト教の深い関係
第4章 近代哲学の展開
第5章 「反哲学」の誕生
第6章 ハイデガーの二十世紀

著者は中央大学の名誉教授。哲学をずっとやってきた方のようである。そんな著者が、「反哲学」と言う聞きなれない言葉を西洋の哲学の流れとともに語った一冊。
著者は、「哲学を勉強し、大学でも哲学を教えてきたが、自分のやっている思考作業は『西洋』と言う文化圏で伝統的に哲学と呼ばれてきたものの考え方とは決定的に違うところがある」とし、「哲学を批判しそうしたものの考え方を乗り越えようとする作業」を「反哲学」と呼ぶとする。正直言ってよくわからない。

そもそもであるが、哲学とは「人間を含む生物やモノなど地球上にあるありとしあらゆるものが『ある』と言うのはどういうことか」、それを全体として研究しようとする学問だとする。もう既に難しい。哲学は好きなのであるが、どうもこの難解さが気になる。日常では、難しいことを簡単に言うことが大事という価値観で動いているが、哲学は逆で簡単なことを難しく言う世界だと言える。

ハイデガーは、「哲学するとは、なぜ一般に存在者が存在するのであって、むしろなにもないのではないのかを問うこと」とする。この本では、特に「存在するとは何か」が問われる。
「存在」すなわち「ある」と言う状態だが、同じ「ある」でも「つくる」「うむ」「なる」という3つの状態があるとする。「つくる」とは、「つくられてある」状態、「うむ」は「産み出されてある」状態、「なる」は生成されてある状態だとするが、こういう一般人が気にもしないことを哲学者は問うている。そしてソクラテス、プラトン、アリストテレスから解説が始まる。

意外なことに、西洋の哲学はいまだにソクラテス、プラトン、アリストテレスの影響下にある。単に歴史順で出てくるのではなく、源流として今も無視できないから出てくるのである。そしてカントやヘーゲルらの有名哲学者が出てくるが、例えばカントの前後から文体が変わるが、それは哲学者が大学にポストを持つことができるようになったからなどという背景の話が興味深い。同様に、ヘーゲルはフランス革命、テルミドールの反動、ナポレオンの登場などの時代背景があり、考えてみれば各哲学者の思想について学ぶ際、その時代背景まで意識した方がいいのは当然かもしれない。

そして著者は、ニーチェを西洋哲学の分岐点としている。「ニーチェ以前と以後とを同じ哲学史に一線に並べるのはおかしい」とする。それは、ニーチェの目指したことは、これまで哲学と呼ばれてきたものをすべて批判して乗り越えようということだかららしい。このあたりは、正直言ってよくわからない。ただ、「力への意志」「永劫回帰」「神は死せり」といったニーチェ哲学のキーワードの解説がわかりやすい。「そうだったのか」と改めて思わされた。

はっきり言って、部分部分の理解は比較的できたとは思うが、著者が反哲学と名づけたものの正体はイマイチわからなかった。本文でカントがわからなくて70回以上繰り返し読んでいる学者さんの話が出てくるが、平易な解説書である本書であっても、1回で理解するのは難しいのかもしれない。ただ、個人的には改めてニーチェやデカルトの思想には興味を持ったところである。『デカルト方法序説を読む』をもう一度読んでみたいし、哲学に対する好奇心が大いに刺激されたところである。

難しいのではあるが、知的好奇心を大いに刺激される一冊である・・・



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2017年07月12日

【野村證券第2事業法人部】横尾宣政



第1章 ノルマとの闘い
第2章 「コミッション亡者」と呼ばれて
第3章 「主幹事」を奪え
第4章 ブラックマンデーと損失補填問題
第5章 大タブチ、子タブチ-「ノムラな人々」
第6章 やりすぎる男
第7章 さらば、野村證券
第8章 オリンパス会長の依頼
第9章 事件の真相
第10章 国税との攻防
第11章 逮捕-私は闘う

 著者は、元野村證券の社員で、独立後オリンパスの巨額粉飾決算事件で指南役として逮捕された人物。しかし、ご本人は無実を訴えられており、この本は自身の野村證券での日々を回顧しながら事件の真相を語った一冊である。

オリンパスの巨額粉飾決算事件については、以前事件が発覚する経緯となったジャーナリストの本(『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』)を読んでいたが、その本の中で、「奇妙なコンサルティング会社」として描かれていたのが著者が独立後に設立した会社であると思う。1つの事件を角度を変えて見るというのも面白いことである。

著者は77年に京都大学を卒業して野村證券に就職する。しかし、当時の学生によくありがちで、あまり実態はよくわかっていなかったようである。多少厳しい方が自分のためにもなると考えたようだが、入社して早々に「ここまで厳しかったのか」と焦るも後の祭り。最初の配属店である金沢支店に行くと、上司が成績の悪い課長代理を奥さんもろとも怒鳴りつけているところを目撃する。かなり衝撃的である。

オリンパス事件の真相よりも、はっきり言って著者の経験談の方がはるかに面白い。「ノルマ證券」と揶揄され、入社した社員の半分が辞めて行く環境の中で、著者は実績を上げて行く。売れない=客が損をする投資商品を売るわけであるが、買った瞬間に損をしてあとは基本的に下がるだけという商品に厳しいノルマを果たして売らせる野村證券のスタンスがすごい。

客に損をさせることに耐えられない者は辞めていき、平気なものが実績を上げて出世して行く。著者もその1人であるが、それでも「20億出してやるから君の名前で株を買え、損は全部被ってやるし、利益は全部取っていい」とまで取引先に言わしめるのだから、単なる金の亡者(野村證券ではコミッションの亡者と言われたらしい)ではなかったのだろう。転勤の時、損をさせた取引先の社長に「オレの数億、無駄にするな。立派になれよ」と声をかけられたと語るが、そこまで信頼関係を築いていたわけである。

そしてタイトルにある第2事業法人部へ転勤となる。いろいろと事情はあったようであるが、異例の出世とも言えるわけであるが、ここでも著者は創意工夫を繰り返して行く。時に世はプラザ合意の金融混乱期。創意工夫といっても、勉強と研究のベースがなければできないはずで、詳しくは書かれていないものの、影なる努力はかなりあったのであろう。

そして独立する。残っていても役員には慣れたのかもしれないが、実績のためには社内を敵に回すことも厭わなかったようなので、軋轢もあったのかもしれない。ついて来た部下とともにコンサルティング会社を立ち上げる。問題となったオリンパスとは、野村證券時代からの付き合いだったが、粉飾の中心人物である山田秀雄氏とのやり取りも詳細に語られて行く。

事件の真相は、当事者にしかわからない。ただ、著者の言葉を信じれば、うまくオリンパスの山田氏に利用されただけであり、著者を悪人と決めつけた検察側がシナリオを創作して有罪にされたとなるのである。その前に国税が著者が関わった節税スキームを「シロ」と断定しながら、膨大な調査費がかかっていることもあり、「お土産」として200億ほど納税しろと言ってくるシーンがある。これを拒否した野村證券は、国税に損失補填で訴えられてしまう。官がすべて正しいと盲信するのも控えた方がいいかもしれない。

著者によれば、オリンパスの粉飾決算事件は、山田氏が中心となった投資で損失が発生し、それを糊塗しようと長年画策し、ついには暴露されてしまったのが真相。一度はオリンパスの損失穴埋めを得意の創意工夫で利益を上げてやってのけた著者は、山田氏に頼られそしていいように利用されたということらしい。入社以来の著者の経歴、考え方、国税や検察の考え方・行動等を読んで行くと、そこに嘘はないように思える。

ただ、正直いってあまり真相には興味はない。ただ、今とは比べものにならない労働環境下で、実績を上げて来た1人のビジネスマンとしてのスタンスには学ぶべきところがあると、個人的には思う。そういう部分で刺激を受けたという意味では、一読の価値ある一冊である・・・



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2017年07月11日

【国のために死ねるか−自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動−】伊藤祐靖



第1章 海上警備行動発令
第2章 特殊部隊創設
第3章 戦いの本質
第4章 この国のかたち

著者は、元海上自衛隊2等海佐。能登半島不審船事件を現場で体験し、それが元となって創設されることになった「特別警備隊(SBU)」、つまり「特殊部隊」の創設に携わることになった方。そんな著者が、特殊部隊創設の経緯を含め自らの体験談、考えを語ったのが本書である。

冒頭では、その能登半島不審船事件の様子が語られる。著者は、イージス艦「みょうこう」の航海長として不審船を追う。日本の腰抜け政治家に発令できるわけがないとタカをくくっていた「海上警備行動」。自衛隊発足以来一度も発令されたことがないこの「海上警備行動」が発令される。この緊迫した追撃戦の迫力がすごい。自衛隊始まって以来の出来事が、まるで眼前で行われているようである。

結果として不審船を停船させたものの、今度は立入検査の問題が出てくる。高度な軍事訓練を受けていると考えられる北朝鮮工作員が待ち構えている中に入って行くということは、かなりの確率で死を意味する。隊員たちが防弾チョッキがわりに少年マガジンを体に巻いて「お世話になりました、言って参ります」と挨拶する。この緊迫感はすごいと思う。

そしてこの経験の反省から特殊部隊の創設となる。と言っても手順が決まっているわけではなく、手探りで進めて行く。普通に考えると、米軍に教えてもらうとなるのだろうが、米軍には断られてしまう。しかし、実は特殊戦の世界では米軍の評価は低いのだという。装備品は高価で最新のものであるが、個人の技量は信じられないくらい低いのだとか。映画の世界とは大違いのようである。

また、以前から個人的に気になっていたのが、「自衛隊は強いのか」ということ。これに関しての説明が興味深い。曰く、日本人はトップのレベルに傑出したものはないが、ボトムのレベルが他国に比べて非常に高いのだそうである。そして軍隊はその国のボトムの集まりであり、従って自衛隊の隊員のレベルは他国の軍隊と共同訓練をするとその優秀さに驚かれるレベルなのだとか。「最強の軍隊はアメリカの将軍、ドイツの将校、日本の下士官」というジョークが紹介されるが、さもありなんと思う。

そして著者は、自衛隊を退官すると、フィリピンのミンダナオ島に行く。目的は戦闘行動について、必要な技術、知識を習得しそれを必要とする後輩に伝えること。治安の悪いその地で著者が得た死生観は、普通の日本人には触れることのできないものだろう。「戦いの本質」と著者は表現しているが、今の平和な日本では忘れ去られているもの。その内容には言葉も出ない。

一方、防衛大学内での訓練での「想定外」の話も面白い。非常事態を想定し、学生を伝令に向かわせるが、走って行く。伝令の任務はと問われ、学生は「早く正確に」と答える。だが、早くならバイクを使う方が走るより早い。なのに学生の頭の中には「防衛大生はバイクに乗るのは禁止」というルールで固まっている。非常時ならルールから逸脱することもありだが、平時と非常時の意識、常識を捨てられない問題として説明されているが、似たような問題は身の回りでもあると思う。

そして最後に出てくる自然の生物の摂理。
・殺し殺されながら共存している
・そのためのルールがある
・全部を生き残らせようとしたら全滅する
・必要以上に殺してしまえば自分が飢える
日本人がバブルを契機に、経済力の勢いを衰えさせたことと絡めた哲学は、深く考えさせられるものがある。

憲法9条死守を叫ぶ人たちには、絶対に受け入れられることのない本だと思うが、人間の本質のところで理解しておかないといけないことが書かれている。軽い気持ちで手に取ったが、実に重みのある内容であった。信条的にどうとかいうことでなく、是非とも読んでおくべき価値ある一冊である・・・


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2017年07月06日

【やり抜く力−人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける−】アンジェラ・ダックワース



原題: GRIT The Power of Passion and Perseverance
PART1 「やり抜く力」とは何か?なぜそれが重要なのか?
第1章 「やり抜く力」の秘密
第2章 「才能」では成功できない
第3章 努力と才能の「達成の方程式」
第4章 あなたには「やり抜く力」がどれだけあるか?
第5章 「やり抜く力」は伸ばせる
PART2 「やり抜く力」を内側から伸ばす
第6章 「興味」を結びつける
第7章 成功する「練習」の法則
第8章 「目的」を見出す
第9章 この「希望」が背中を押す
PART3 「やり抜く力」を外側から伸ばす
第10章 「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法
第11章 「課外活動」を絶対にすべし
第12章 まわりに「やり抜く力」を伸ばしてもらう
第13章 最後に

 原題にある「GRIT」とは、ここでは「やり抜く力」と訳されているが、元々の意味は「(困難にあってもくじけない)勇気,気概,闘志」ということであるらしい。そしてこの本の主張を一言でまとめるのなら、「成功に必要なのは才能ではなく、やり抜く力」ということ。本書は、そんな「グリット」研究の第一人者による解説である。

 米国陸軍士官学校は通称ウエストポイントと称される米国陸軍の最高峰の士官学校であるが、その狭き門は毎年全国の優秀な生徒14,000人が目指し、わずか1,200名が入学できるレベルなのだという。にもかかわらず、その過酷な訓練で5人に1人は中退するのだという。肉体的・精神的に最も過酷な環境に最後まで耐え抜けるのはどんな人か。調査によれば、それは「ネバー・ギブ・アップ」という態度であったという。

 「やり抜く力」に必要なのは、「情熱」と「粘り強さ」。才能があっても関係ない。しかし、世の中のほとんどの人は、努力よりも才能を上と見てしまう。言われてみれば確かにその通りである。紹介されているニーチェの言葉が興味深い。
 「芸術家の素晴らしい作品を見ても、それがどれほどの努力と鍛錬に裏打ちされているかを見抜ける人はいない。その方が好都合と言っていい。気の遠くなるような努力のたまものだと知ったら感動が薄れるかもしれないから」
なるほどである。

そして示される公式。
「才能」✖︎「努力」=「スキル」
「スキル」✖︎「努力」=「達成」
どちらにも「努力」が入っていることに注目したい。別の言葉では、「情熱とは1つのことに専念すること」と説明されている。いい言葉である。また、とにかくやり抜けばいいというものでもない。目的は重要度を考え、低いものは諦めてもいいが、高いものは安易に妥協すべきではないとする。

 そんなやり抜く力は、ある程度は遺伝の影響らしいが、大事なのは関係する遺伝子は1つではないこと。諦める必要はなさそうである。そして環境。1人が賢くなると、まわりも賢くなっていく。バスケが上手くなるコツは、自分よりややスキルの高い仲間と一緒にプレーすることだという。環境が変われば変わるし、また必要に迫られても変わる。

 やり抜く力の4つの特徴は、「興味」「練習」「目的」「希望」。やり抜く力の強い者は、他の者より練習時間が長い。時間だけでなく、「高い目標設定」「集中と努力」「改善と反復」も重要なファクターだとする。そんなやり抜く力を自分が身につけるのも大事だが、子供のやり抜く力はどう育てればいいのだろうか。そんな疑問が親としては当然思うが、それにも答えは用意されている。

・最後までやる習慣をつけさせる
・厳しくしつつも温かく支える
・自分で決められる感覚を持たせる
・親が愛情深くどっしりと構えている
それぞれ具体的に説明されているので大変参考になる。しかし、最も大事なのは次の考え方。
「自分が人生の目標に対してどれくらいの情熱と粘り強さを持って取り組んでいるか。子供が自分を手本にしたくなるような育て方をしていると思うか」
思わず考えさせられてしまう。

 何事も大事なのは才能ではなく、「やり抜く力」だとする考え方は、自分が凡人だと思っている身には救いとなる。同時に言い訳もできなくなる。「やれるかやれないか」ではなく、「やるかやらないか」。希望を持って物事に取り組みたいと思う。
 実に勇気の湧いてくる一冊である・・・

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2017年07月05日

【1984年のUWF】柳澤健



序 章 北海道の少年
第1章 リアルワン
第2章 佐山聡
第3章 タイガーマスク
第4章 ユニバーサル
第5章 無限大記念日
第6章 シューティング
第7章 訣別
第8章 新・格闘王
第9章 新生UWF
第10章 分裂
終 章 バーリ・トゥード

タイトルを見た瞬間、読むことを決めてしまった一冊。かつてプロレスにのめり込んだ身としては、当然の反応だったと思う。何事も当事者にしか知ることのできない世界を知ることは興味深いもの。それがもともと興味を持っていたプロレスの世界であればなおさらであるというものである。

UWFの源流はやはりカール・ゴッチ。実力的には優れていたものの、ショービジネスであったプロレスには溶け込めず、不遇の身に甘んじる。嘘が嫌いなカール・ゴッチは、「(八百長をやる)プロレスラーなんでしょう?」と問われ、「アイム・リアルワン」と答える。プロレスラーとは答えられず、しかし己の実力に誇りを持っていたのである。

一方、日本のリングで革命を起こしたのは、タイガーマスクとして一世を風靡した佐山聡。プロレスこそ最強の格闘技と信じて新日本プロレスに入門するも、試合はあらかじめ決着の決められたものだと知ってショックを受ける。レスラーを志す者は、皆そのパターンで真実を知ってショックを受けるそうである。

著者曰く、「身体能力の化け物」である佐山聡は、メキシコ、イギリスと遠征してたちまち人気を博す。そこに白羽の矢が立てられ、タイガーマスクとして帰国。日本で大ブームを巻き起こす。この頃、毎週金曜日が待ち遠しくてたまらなかったものである。しかし、すでにアントニオ猪木には、打撃と関節技を組み合わせた新しい格闘技を作りたいと打ち明けていたという。そして衝撃の1983年8月。タイガーマスクが突然引退を表明する。あの時のショックは今だに忘れられない。そしてそこに至る経緯。いろいろなメディアでだいぶ真相は明らかにされているが、改めて詳しい経緯が述べられる。

それから新間寿氏が暗躍してUWFが旗揚げする。当時の事情もまた新鮮。新間氏は早々に失敗と見切りをつけようとしたが、前田日明やフロントが反発。そのまま継続することになる。そして藤原と高田が参加。このあたりの経緯はお馴染みだ。しかし、UWFはまだプロレスの範疇。何とかリアルファイトに近づけるべく、佐山は前田、高田、藤原らとともに無限大記念日大会の前日リハーサルを行うも、関節技中心のグラウンドはとてもファンの支持を得られそうもないとわかる。まだ、UWFはプロレスを離れられない。

その後の展開、新日へのUターン、第二次UWF、三分裂という経緯は記憶にしっかりと残っている。その時何が行われていたのか、改めて知る事実は興味深い。特にリングスの試合については、前田はフィクストマッチ(決着が決められている試合)を行い、それ以外ではリアルファイトが増えていったという。これは個人的に知りたかった事実なので、満足である。そしてリアルファイトは、パンクラスにてついに実現する。

著者の最後の言葉が印象的である。
「1984年に誕生したUWFはプロレスと総合格闘技の架け橋となり、役目を終えて消滅した」
カール・ゴッチの目指したものを日本で佐山聡が受け継ぎ火を灯す。今更ながら、佐山聡は大きな役割を果たしたのだとわかる。
読み終えて大いなる満足感を得る。かつてプロレスとUWFとに夢中になった人なら、読んでみてもいい一冊である・・・



posted by HH at 20:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする