2017年08月30日

【見上げれば、星は天に満ちて】浅田次郎



百物語 森鴎外
秘密  谷崎潤一郎
疑惑  芥川龍之介
死体紹介人 川端康成
山月記 中島敦
狐憑  中島敦
ひとごろし 山本周五郎
青梅雨 永井龍男
補陀落渡海記 井上靖
西郷札 松本清張
赤い駱駝 梅崎春生
手   立原正秋
耳なし芳一のはなし 小泉八雲

実家を訪れた時、本棚に浅田次郎の名前があるのを見つけて借りてきた一冊。てっきり浅田次郎のまだ読んでいない本かと思ったら、なんと「浅田次郎が選んだ短編小説」というものであった。なかなかややこしい。作家の名前を見て行くと、そこには日本の文壇を代表するような作家の名前が並ぶ。中には名前は知っていても、まだ作品を読んだことがないという作家も入っている。それはそれで興味を惹かれる。

森鴎外は、「舞姫」に何度かチャレンジしたが、読みにくくてその都度ギブアップしている。タイトルから怪談めいたものを想像していたが、ちょっと肩透かしを食ったところがある。谷崎潤一郎は、やっぱり独特の雰囲気がある。「秘密」は、目の前を悠然と通り過ぎて行くようなイメージの作品である。

芥川龍之介は、「藪の中」をはじめとして、この中では一番多くの作品を読んでいる。この「疑惑」は、関東大震災で崩れた家屋の下敷きになった妻を火災が迫る中、殺してしまった男の話。自らの疑念に潰されて行く男の心情がなんとも言えない。

川端康成は実は一冊も読んだことがない。もちろん、有名作品のタイトルくらいは知っているが、読んだことがないという事実には改めて愕然とする。収録されている中では一番長い「死体紹介人」は、バスの中で見かけた女車掌と部屋を交代で使うことになった男の奇妙な話。なんとも言えない後味の作品である。

1人だけ2作品掲載されているのは、中島敦。正直言って知らなかった作家。中国の虎になった男の話と、奇妙な異国の話はこの人の作風なのかと思わなくもない。井上靖は、映画化された『天平の甍』『敦煌』などの名前だけを知っているだけであるが、この「補陀落渡海記」はそんなテイストを残したある僧侶の話である。

変わっていたのは、松本清張だろうか。ミステリー作家というイメージでいたのだが、「西郷札」はそんな雰囲気が微塵もない。西南の役の際に発行された西郷札をめぐる話。『砂の器』『ゼロの焦点』といった作品とはまるで趣が変わっていて、意外であった。

全ての作家の作品を読むのはなかなか難しい。されどこういう形で、浅田次郎が心に深く残った作品をまとめてくれているのは、やはりいい機会になる。正直に言って、「これらの作品のどういう点が心に残ったのか」は、大いに興味のあるところである。これはこれで、やっぱり「浅田次郎の作品」なのだろうと改めて思わされる一冊である・・・



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2017年08月29日

【マジ文章書けないんだけど−朝日新聞ベテラン校閲記者が教える一生モノの文章術−】前田安正



1st.STEP 基本中の基本!主語と述語について考える
2nd.STEP 文章を書く基本!文と文章の構造を考える
3rd.STEP めさせ!伝わる文章 人の思考を意識する
Final STEP 秘策!文章マスターへの道 「WHY」を意識する

日頃、ブログを書いていると、否が応でも文章の書き方を意識する。そんなところら持ってきて、「朝日新聞ベテラン校閲記者が教える一生モノの文章術」というサブタイトルを見たら、読まずにはおけないということになるだろう。内容的には、「大学3〜4年生から社会人になって文章を書くことに戸惑いを感じている方に焦点を絞った」とされているが、50歳を過ぎて読んでもいいではないかと思い、手にした次第である。

文章の書き方指導と言っても、内容はストーリー形式で、まさに就活を控えた女子大生が、エントリーシートの書き方を不思議なおじさんに学ぶというものになっている。形はともかく、興味があるのはその中身である。「文章術」と言っても、ページをめくっていくと難しいことが書いてあるわけではないとわかる。例文も豊富でわかりやすい。

「このバッグはブランドものなので、値段と人気が高く、品質とデザインが美しいブランドだ」という文章は一見何となくギクシャク感があるが、ではどこをどう直すとなると考えてしまう。
それを問題点を解説しながら、
「このバッグはブランドものなので値段が高い。しかし品質がよくデザインが美しいので、若い女性に人気がある」と直されるのを見ると、なるほどと思う。実にわかりやすい。

「文とは一つのまとまった内容を表す基本単位」、「文章とは一つ以上の文が連なったもの」という基本は、何となくわかったつもりでいること。「主語と述語をしっかりと対応させ、一つの文は一つの要素で書く」ということは、改めて教わると今までできているかどうか心もとない。

松田聖子の赤いスイートピーの歌詞を使った解説が面白い。
「なぜあなたが時計をチラッと見るたび、泣きそうな気分になるの?」において、「が」と「は」を入れ替えると文章の意味がガラリと変わる。日本人であれば自然と理解できるが、日本語を学ぶ外国人からしたら、この違いを理解するのは難しいのではないだろうかと思ってしまう。

そのほか、参考になったところは数多い。
・同じような表現を繰り返すと文章が平板になる
・できるだけコンパクトにまとめる
・強調したい部分はその対極と対比させる
・同じ言葉、似たような表現を繰り返さない
ここで、「違和感を感じる(正しくは「違和感を持つ、覚える」)」など普段普通に使っているような気がして焦ってしまう。改めてしっかり確認したいところである。

・「状況」「行動」「変化」で文章を考える
・箇条書きのようにシンプルに書く
・5W1Hで一番大事な「W」は「WHY」、読む人が「なぜ」「どうして」と思うところをきちんと書く
こうした基本は、意識するだけでだいぶ違うと思う。

早速、明日からというかこの文章から意識したいと思う数々。自分には必要ないとバカにしないで読んでよかったと思う。書くことに興味を持っている人は、是非とも一読すべき一冊である・・・



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2017年08月25日

【日本経済入門】野口悠紀雄



第1章 経済活動をどんな指標でとらえるか
第2章 製造業の縮小は不可避
第3章 製造業就業者は全体の6分の1まで減少
第4章 ピケティの仮説では日本の格差問題は説明できない
第5章 物価の下落は望ましい
第6章 異次元金融緩和策は失敗に終わった
第7章 深刻な労働力不足が日本経済を直撃する
第8章 膨張を続ける医療・介護費
第9章 公的年金が人口高齢化で維持不可能になる
第10章 日銀異次元金融緩和は事実上の財政ファイナンス
第11章 新しい技術で生産性を高める

著名な大学教授の日本経済に関する著書となれば、迷いもなく手が出るというもの。自分もよくわかっているようでいてわかっていないところもあり、折に触れてこういう本を読んでおく必要があると感じている。

まず初めに、この本は「日本経済についての入門解説書」であり、目的は「日本経済の現状について説明すること」とされている。従来の日本経済入門書との違いは、「強い問題意識を持って重要なことを重点的に説明」している点だとする。読んでいけばその通りであるし、それゆえに現状の日本経済の問題点に関する認識も確かにしてくれるものだとわかる。

問題は、日本経済は1990年代の中頃をピークに賃金をはじめとする日本経済の様々な指標が減少・低下傾向を示していること。その背景としては、新興国の工業化や情報技術の進展と行った世界経済の大きな構造変化に日本の産業構造が対応できていないことにあるとする。さらに人口構造が高齢化しつつあるにもかかわらず社会保障制度をはじめとする公的な制度が対応していないこともある。確かにその通りなのだろう。

こうしたことが日本経済不調の基本的な原因であり、経済停滞はデフレのためではないとする。中原圭介氏も再三「デフレは悪ではない」「いいデフレと悪いデフレがある」と主張しているが、同じことだろう。有効求人倍率の改善は雇用情勢の好転ではなく、「人手不足」だという。政府が春闘に介入しても、春闘の対象者は労働者の一部であり、賃金は上がらないとする。円安で企業の利益は増加したが、ドル建ての売上高はほとんど変化しておらず、生産量も増えていないので下請けへの発注も増えない。したがって円安は日本の労働者を貧しくするとする。これらの主張も同様である。

入門書だけあって、基本的な理解にも役立つ。
・GDP統計の優れているところは、世界各国で共通の基準に従って作られているので国際比較できる
・日本と中国の産業構造は基本的に同一であり、「日本の中国化」を回避するには産業構造を変えるしかない
・アメリカでは、「経営」「管理」などの高度サービスが統計で別掲されているが、日本にはない

一方、
・日本の消費税は欠陥品
・法人税率引き下げが企業の競争力を向上させることはない
・金融緩和ではなく、技術開発が必要
との指摘は、考えるヒントともなる。例えば、「法人税は利益に課税されコストではないので、法人税を変更しても企業活動には影響しない」とするが、「税引後利益」は減ると思うし、海外との競争を考えるなら、海外企業の進出を促したりする際には税率の安い国との競争に勝てないだろう。この部分は著者の見解を聞いてみたいところである。

キャピタルゲインに対する課税は不十分で、「資産に課税せよ」という意見は、大前研一氏も唱えていたと思う。重なるところはその意見の正しさの裏付けとも言えそうである。「入門書」とあるが、内容はわかりやすく、そして考えるヒント、考え方の参考になるものである。社会人としての教養として、身につけておきたい知識ではないかと思う。
そういう位置付けで、読んでおきたい一冊である・・・


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2017年08月23日

【眠れなくなるほど面白い物理の話】長澤光晴



第1章 生活と物理
第2章 自然と物理
第3章 スポーツと物理
第4章 乗り物と物理
第5章 光と音と物理

高校時代、物理と化学が苦手で迷わず文系を選んだ私だが、最近やたらと数学や物理を学びたいという気持ちが起きている。苦手意識が消えたわけではないのであるが、抑えきれない好奇心とでもいうべきものかもしれない。そしてそんな時に目に留まったのがこの本。難しい数式ではなく、身近なところのものを物理的に考えてみようというものである。

第1章は生活の中での物理の話。最初に出てくるのは、「コップの水はなぜせり上がっているのか?」であり、「味噌汁のお椀がテーブルの上を滑るのはナゼ?」である。正直、これまで物理の話として考えて見たことなどなかったことである。しかし、それをしっかり「物理的」に説明してくれる。

個人的に興味深かったのは、
1. 水洗トイレが流れるのはどんなしくみ?
2. マホービンが熱を逃さないワケは?
3. 電磁調理器(IH調理器)が過熱するしくみは?
4. コピー機はどうしてコピーできるのか?
5. リモコンでチャンネルが切り替わるしくみ、自動ドアの仕組みは?
であった。どれも物理の話として考えたことのないものである。

個々の説明の中では、例えば「トリチェリの定理」だとか「ペルティエ効果」、「コロナ放電」などという言葉も出てくるし、難しい数式も出てくる。まともに理解しようとすると、かなり勉強しないといけないが、自然に流してもなんとなく理解できる。別に試験を受けるわけではないので、それで十分だろうと思うのである。そうすると、気軽に物理の難しい話を聞くことができる。

短距離走者がクラウチングスタートなワケは、それが効果的だと長年の経験で身につけてきたことだろうが、それは「摩擦力」という考え方から理にかなっている。
野球の変化球も、それを発見したのは偶然か創意工夫なのだろうが、マグヌス力という揚力、ベルヌーイの定理という空気の圧力から説明できる。そういう「理屈」も面白いと思う。

この本を読んでも難しい物理の理論はやっぱりわからないが、物理の話として説明できるということは興味深いところである。読み終えて少しだけ物理アレルギーが解消された気がする。
文系人間にも気軽に楽しめる物理の本である・・・


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2017年08月21日

【成功する人は偶然を味方にする−運と成功の経済学−】ロバート・H.フランク



原題:SUCCESS AND LUCK
Good Fortune and the Myth of Meritocracy

第1章 わたしが知るかぎりのことを教えよう
第2章 なぜささいな偶然がきわめて重要なのか
第3章 「ひとり勝ち市場」における偶然
第4章 一番成功する人は、一番有能な人ではない
第5章 努力と才能の誤解は、こうして広がる
第6章 「努力したから成功できた」の罪
第7章 黄金のチャンスをつかめ
第8章 まわりに感謝する


著者は、コーネル大学の経済学教授とのこと。タイトルからすれば、「成功には実力だけではなく運も必要」と言ったことになるのであるが、この本はそこから一歩進めて、そのためには「それを社会に還元することが必要」と言った主張にまでつなげる内容。具体的には累進消費税の導入(によるインフラの改善)を主張するものとなっている。

成功者は、大抵自分の成功は自らの努力と知力の賜物だと考えている。だが、そうではないと著者は主張する。
・些細な偶然が人生を変える
・才能があっても努力しても運なしでは勝てない
とする。そしてウォーレン・バフェットの言葉「今日誰かが木陰で休むことができるのは、遠い昔に誰かが木を植えてくれたから」を紹介し、この国には1人で豊かになった人はいないとする。なるほど、その趣旨はよく理解できる。

そして「誰かが木を植える」ことをたとえを出して説明しているが、これがわかりやすい。曰く、「でこぼこのないよく舗装された高速道路でポルシェターボ(15万ドル)を運転する」のが良いか、「深さ30センチの窪みがあちこちにある道でフェラーリF12ベルリネッタ(33万3千ドル)を運転する」か。金持ちは、公共投資にもっと協力すべきという主張だ。

・就職活動は運次第
・ヒットするかどうかも偶然
・僅かな差が致命的になる
こうした「偶然の力」は、情報革命でますます強まって行く。勝者は勝つべくして勝つが、それでも運が重要。そういえば野村監督も「勝ちに不思議の勝ちあり(負けに不思議の負けなし)」と語っているが、同じような趣旨だろう。しかし、たいていの人は「成功は自分の力、失敗は不運のせい」という「幸せな思い込み」に囚われている。

人は、向かい風には気づいても、追い風には気づかない。自分は有能だと思い込むと公共心は育たない。成功したのは運のおかげだと感謝すれば、人は変わる。そうした感謝を税金という形で社会に還元すれば、自らも恩恵を受けられる。税を渋るのは、自分の首を絞めること。そうした意見の流れで、著者は具体的な方法として累進消費税を主張する。

累進消費税とは、消費額に対して課税される消費税のことで、年間の収入から貯蓄を引き、大幅な基礎控除を引いた後の金額に課税する仕組みらしい。特徴としては、消費額が少なければ税率は低くなり多ければ高くなるという意味で、「累進」消費税ということと説明される。正直言って、どの程度効果的なのかはよくわからないが、かつてフリードマン教授も提唱したことがあるというから、それなりに理論的なのだろうとは思う。

後半は、この累進消費税に対する著者の思いが述べられていて、タイトルとは一見かけ離れるので、意外な展開であった。これだけ著者が力を込めて語る「累進消費税」の効果がいかなるものか、自然と興味が湧いて来る。日本では聞こえてこない議論だが、ちょっと頭の片隅にでも入れておこうと思う。

何れにしても、努力の他に「幸運」というのもやはり必要なのだろうと思う。「運頼み」は良くないが、「すべて自分の力」という慢心も良くないのだろう。日々の努力と、それがうまくいけばそれをもたらした「幸運」への感謝と、それを社会に還元すること。そうした意識をきちんと持っておきたい。

そう思わせてくれる一冊てである・・・



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2017年08月17日

【ノルウェイの森】村上春樹



いつか読んでみようと思っている小説はいろいろあるが、その中でも割と高いランクに位置していたのがこの小説。村上春樹の小説はいずれも人気が高く、つい最近も新作『騎士団長殺し』が発売されたり、ノーヘル賞のたびに受賞が期待されたりしている。しかし、個人的に何冊か読んだが(『1Q84』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』)、どれもピンと来るものがなく、したがって新刊にも食指が動かないでいる。ただ、この作品だけは、映画で観た時から、原作を読もうと決めていたこともあり、今回手にした次第。

物語は、37歳の主人公ワタナベが、ドイツに到着した時に機内に流れていたビートルズの「ノルウェイの森」を聞き、18年前を思い出す形で始まる。その18年前、ワタナベは東京で寮生活を送りながら私大に通っていた。高校時代、親友のキヅキとその恋人直子と楽しく遊んでいたが、ある日キズキが突然自殺してしまう。逃げるようにして出てきた東京で、その時、ワタナベは直子と再会する。

以来、ワタナベは毎週直子と会い、奇妙な散歩を重ねる。そしてある日、ワタナベは直子と寝る。てっきりキズキともそう言う関係であったと思っていたワタナベは、直子が初めてだったことに驚く。そして直子は突然ワタナベの前から姿を消し、京都の療養所に入ってしまう。ストーリーは映画と(当たり前だが)同じ。ただ、小説は描写が細かい。友人も少なく、本を読んで過ごすことが多いワタナベ。寮の同室のちょっと変わった男、突撃隊。ナンパが得意な先輩永沢。途中から登場する奔放な女の子緑。小説ならではか、みんな特徴を持って描かれる。

ワタナベは、よく本を読む。読んでいる本は、「グレイト・ギャツビー(『華麗なるギャツビー』)だったりする。当時流行っていたビートルズも当然、BGMとして流れる。療養所で直子は同室のレイコさんがギターで弾くビートルズが好きで、特に「ノルウェイの森」はお気に入り。それで冒頭、ワタナベは「ノルウェイの森」を聞いて直子を思い出す訳である。よく知っているだけに、読みながら頭の中で「ノルウェイの森」が流れる。

ビートルズの「ノルウェイの森」の歌詞は不思議な内容だ。この本の物語も歌の歌詞の雰囲気を醸し出しているような感じがする。誰もが過去に対して抱いているノスタルジーというものがある。この物語全編にわたって流れているのもそんなノスタルジー感と言える。次第次第にワタナベの経験が己のものになって行くような感じがして来る。なぜ、18年経ってもワタナベの胸に思い出が蘇ってきたのか、読み終えるとそれがよくわかる。

これまで読んだ『1Q84』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』とはまったく別物の物語。これを最初に読んでいたら、間違いなく村上春樹のファンになっていたと思う。映画の方ももう一度見て観たくなったくらいである。本を読む幸せ感を味わえる本であると言える。

深い読後感を得られた一冊である・・・



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2017年08月15日

【世界標準の子育て】船津徹



第1章 「世界標準」の子育て 3つの条件
第2章 海外の子育て、日本の子育て
第3章 日本人の子育て7つの間違い
第4章 「自信」を育てる3つのステージ
第5章 「考える力」を育てる3つのステージ
第6章 「コミュニケーション力」を育てる3つのステージ
第7章 子育ての「壁」への対処法

子育ては、今の自分にとって関心の高い分野の1つ。そそられるタイトルがあれば、自然と手が伸びるというもの。著者はハワイで「TLC for Kids」というスクールを運営している方のようである。長年、子供の教育に携わり、多くの実績を出されているとのことである。様々な国の教育方法を日本人向けにアレンジした「ハイブリッド式」の子育てを紹介するのが本書ということである。

タイトルにある「世界標準の子育て」とは、@「自信」A「考える力」B「コミュニケーション力」という3つの能力を伸ばす子育てだという。AとBはまさに自分が日頃から大事だと思っていることなので、俄然興味をそそられる。まずはその「自信」だが、子育ての90%は「自信」を育てられるかだとする。過干渉は子供から自信を奪い、人前で叱るとプライドを傷つけるのは大人と同じ。なるほどと思う。

「褒める」ことはあちこちで賞賛されているが、よくあるように「我慢できて偉いね」はダメだという。それは単に従順を促すだけで、褒める時は「良い部分を具体的に」が基本。
「人に迷惑をかけるな」というのは、当たり前のように思えるが、自尊心の低い子になるという。周りの目を気にし過ぎる子育ては自尊感情を潰すというが、このあたりはよく考えてみたいところである。

・親のイライラは子供に伝播する
・しつけをする時は結論だけではなく理由を説明する
・急き立て言葉(早くしなさい!)でプレッシャーに弱い子になる
・「兄弟平等」は上の子にとって不平等
・身内への悪口を聞いた子供は人を馬鹿にする
・子育てにおいては「結果主義」ではなく「努力主義」
・継続が大事
・男の子はおだてて育てる、女の子は手本を示して育てる
なかなか唸る言葉が並ぶ。

「自分で考える力」を育てるには、9歳までは多読、10歳からはノンフィクションを増やし、親子で興味を持ちそうな記事について議論するといいという。これは是非とも意識したい。いい親子関係を築くには5つのルールがある。
1. 子供に話をさせようとせず自分から話題を振る
2. 子供が話題に乗って来たら見逃さずに話題を広げる
3. 話を遮ったり、急かしたり、否定したりせずに最後まで聞く
4. 上から目線で話をしない(馬鹿にしない、説教しない)
5. 話をしやすい環境を作る(車の中や食事中などリラックスした雰囲気で話を振る)
これは意識してみたい。

・思春期の犯行は大人へのステップ。放っておくのが一番
・ティーンエイジャーを暇にしてはいけない
・親が子供と一緒のことをする時間を持つ
・指示、命令、小言、説教をやめて人間同士のコミュニケーションを心掛ける
・子供の強みや好きなことを見つけて親が応援する
・選択に迷っている時は、難しい道をアドバイス
さすがに専門家だけあって、一つ一つがなるほどと思わされる。

中身は子供の年齢に応じたものになっていて、我が家の小学校6年と高校生の子供を意識して読み進める。もう過ぎてしまった年齢の部分は、「もっと早く言ってよ〜」と思ったりすることもあるし、「自分はできていた」と得意に思うこともある。そしてまさに我が子の年齢該当部分は自然と身を乗り出すことになる。いろいろと親としての意見はあると思うが、こういう本を一読しておくのも無駄ではない。

まだまだ我が子に当てはまる部分は、大いに参考にしたいと思わされる一冊である・・・



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2017年08月09日

【中原圭介の経済はこう動く2017版】中原圭介



第1章 【米国経済編】世界経済の牽引役の好調は、いつまで続くのか
第2章 【欧州経済編】経済の長期停滞で、EU分裂は進むのか
第3章 【中国経済編】中国経済の減速は、あと何年続くのか
第4章 【日本経済編】円高は続くのか、株安は止まるのか

昨年、『中原圭介の経済はこう動く2016版』を読んだが、当然今年も読まなければならない。こういう本はシリーズとして継続して読んでいきたいと思うところである。冒頭で、著者は世界経済を2000年で一区切りし、これ以前を「プレ・グローバル経済」と呼び、以後の「グローバル経済」と一線を画していると語る。中国の資本主義社会参入のインパクトをそう捉える見方は面白い。

構成は『2016版』と同じ。最初の米国経済では、クリントン大統領誕生を予測していたが、これは見事に外れる。しかし、それ以外は概ね当たっていた。米国経済の低成長を経済学会は批判するが、著者からすれば平均成長率2%は十分評価できるという。ビジネスルールの前提も変わりば、経済の中身も変わるので、20〜30年前と同じ見方をいつまでもするべきでないという。

そんな米国経済は、原油安の恩恵を受けて好調だとする。米国の家計はガソリン価格の影響を大きく受けるため、これが消費を刺激し、旺盛な消費が海外からの輸入を促進し、世界経済を牽引するとする。原油安に加えて低金利が自動車販売の好調に繋がり、これに金融緩和で溢れたマネーが住宅販売を押し上げる。しかし、これも長くは続かず、2018年には景気後退に陥る可能性が高いと指摘する。

欧州は、英国のEU離脱についての説明がわかりやすい。英国自身に一体どんな影響があるのか。移民排斥からEU離脱を選んだ英国だが、実は移民は経済にはプラスなのだという。英国人より真面目に働き、税金・医療費・教育費などは受けた恩恵以上に払っており、「仕事を奪われる」のは幻想らしい。離脱がいかに英国経済にデメリットをもたらすかという解説はわかりやすい。メイ首相は離脱撤回の方向を探るだろうとする。この章は予測よりもむしろこうした解説が勉強になる。

中国の経済成長は、実質のところ3%だとする。経済の牽引役となっている自動車販売は、「エコカー補助金」「小型車減税」「値引き競争」によって作られているもので、特に「エコカー補助金」は生産台数に対して支給されるため、不正の温床になっているとか。「供給過剰」「不動産バブル」「過剰な地方債務問題」「同民間債務問題」を抱え、実に危ういのだとか。このあたりも実に勉強になる。

日本については、アベノミクス批判は一貫していて変わらない。円安による企業収益の増加は、実質賃金が下がっており、国内消費は冷え込むとする。世界経済が減速する中、円安だけでは企業収益は伸びず、中小企業の労働分配率は限界に達していてトリクルダウンも起こらないと断定する。相変わらず素人でもわかりやすい説明で、納得である。

実質賃金の調査に、従業員5人未満の零細企業は含まれておらず、一番大事な部分が抜けていているゆえに指標としての正当性に疑問が残ると指摘する。インフレ期待の政策は、「物価が上がれば景気は上向く」ことを想定するが、物価が上がることによって経済が成長するのではなく、経済が成長するから物価が上がるのだとする。Jカーブ効果も、いかにそれが机上の空論かと説明してくれてわかりやすい。

最近は、有効求人倍率が上昇しており、私もこれは経済が上向いている証拠だと思っていたが、実は生産人口の減少によるものだとキッパリ! 既にアベノミクスの理論的支柱だったクルーグマン教授自身も自身の過ちを認めているという。倒産件数の減少も一方で増加している休廃業件数とセットで考えないと実態を見失うとする。相続税対策と低金利で供給過多の集合住宅の供給がさらに増えるという指摘は、自分の仕事に直結する問題。

ドル円相場については、いくらが適切かはその時々で判断すべきとする。今は95円から105円が適正だと著者は主張する。エコノミストが米国の利上げすなわち円安だとするが、そういう見方ではなく、「購買力平価」で長期的な流れを見ないとダメだとする。著者はそれであえて円高を主張する。こういう意見とその根拠は、非常に勉強になる。

予測が当たるか当たらないかも大事かもしれないが、なぜそう考えるのかも重要。その際、従来の考え方にとらわれることなく、様々な要因を分析しなければダメだとする。素人にはとても無理だが、著者の本を読み、その意見を知ることでカバーしていきたいと思う。これからも著者の書籍等は見逃す事のできないものである。

本書の意見を実体経済でフォローしてみたいと思う一冊である・・・




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2017年08月05日

【宝くじで1億円当たった人の末路】鈴木信行



第1章 やらかした人の末路
第2章 孤独な人の末路
第3章 逃げた人の末路
第4章 変わった人の末路
第5章 怠惰な人の末路
第6章 時代遅れな企業の末路
第7章 仕事人間の末路

「看板に偽りあり」というのは、得てして存在するものであるが、本の世界では記憶にある限りこれほどのものはあっただろうかという酷いもの。タイトルと内容とが全くマッチしない、そういう意味ではお粗末なのではあるが、それでもタイトルに目を瞑れば、なんとか読むに耐えるという一冊。

普通、こういうタイトルを見たら、「宝くじで1億円当たったが、大金に我を忘れて悲惨な末路を迎えた人たちのリポート」というイメージを持つだろう。取材に基づいた様々な人たちが登場し、そういう人たちの末路を見ながら、「当たらなくてよかった」とか「自分はそうならないぞ」とか思ったりするものだろう。ところが、さにあらず。冒頭から見事裏切ってくれる。

「第1章やらかした人の末路」と称し、冒頭から「宝くじで1億円当たった人の末路」が出てくる。ところが登場するのは、「マネーの専門家」と称する方で、この方が「一家離散、貧困化、人生の目的喪失などにならないようにするにはどうしたら良いか」を語っておしまい。
「はぁ???」と思わず本を落としそうになる。そんなことならわざわざ専門家に聞かなくても、ちょっと考えればわかるだろうというもの。そんなものを期待したのではない。

そして「事故物件を借りちゃった人の末路」だとか「キラキラネームの人の末路」とか、題は面白そうなのだが、いずれも専門家が出てきてありきたりのない説明をして終わりというパターンが続く。実在の人物など1人も出てこない。さらに、「友達ゼロの人の末路」では「心配いらない、友達は無理に作るものではない」と結ばれて終わったり、「子供を作らなかった人の末路」では、「子供がいない幸せを楽しめば良い」と誰が答えても答えられるような内容に終始。途中で何度も読むのをやめようと思うほど酷い内容。

それでも、ついでだからもっと粗探ししようと思って読んでいくと、柔軟法の真向法協会とか、武蔵小山商店街のクリーニング店「クリンハウス」とか、ちょっと知って良かったかもという例があって、それが唯一の収穫といえば収穫である(もちろん、それらが何で「末路」なのかはよくわからない)。あとは論ずるに値しない。

「末路」とは、「なれの果て」というマイナスのイメージがある。その言葉をキーワードとして使うのなら、そういう内容にするべきであろう。ただただ、無理やり「末路」にこじつけているだけで、お粗末の一言である。先のイメージでこの本を買った人は、詐欺だと思うだろう。
読むなとは言わないが、「看板に偽りあり」ということを理解した上で、さらに得るものは少ないと覚悟してから読むべき一冊である・・・


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2017年08月04日

【「自分らしさ」はいらない くらしと仕事、成功のレッスン】松浦弥太郎



CHAPTER 1 ようこそ!「心で考える」へ
CHAPTER 2 「心を動かす」のは、仕事のきほん
CHAPTER 3 「心をつかう」のは、くらしのきほん
CHAPTER 4 「心」と「頭」のバランスのとり方

著者は、「くらしのきほん」主宰でエッセイスト。元は「暮らしの手帖」の編集長を務めていた方だという。そんな方が、我々に肩の力を抜いて生きることを語った一冊。

タイトルにある「自分らしさ」であるが、著者はその考え方が既に「美しい呪縛みたいなもので、必要以上に人を力ませる」と説く。それゆえに、「何かを始めたいなら、『自分らしさ』など捨てた方がいい」というのが著者のこの本における主張である。

「自分らしさを捨てる」ことのほかに、著者がこの本でもう1つ強調しているのが、「心で考える」こと。これを頭で考えることとは区別している。
・心には限界がなく、心で考えれば自分の枠を超えられる
・(年齢に関係なく)これから何かやりたいなら、心で考えるスイッチを入れる
・正しい道を選びたいなら、意図的に「心で考えて」意思決定をする
・3つのエンジン「感受性」「想像力」「愛情」で心は働く
等々、「心で考える」ことを説く。

「自分らしさ」については、これを捨てろと著者は説く。それが「自分らしさはいらない」の意味。「自分らしさ」を捨てれば、心が解放されて伸びやかに心で考えられるようになる。「自分らしさ」を捨てると時代とともに変化できる。自分自身に執着しないということなのだろう。「自分の意見を変えることは勇気がいるが、自分をアップデートする近道」という言葉に思わず考えさせられる。

・心の働かせ方を学ぶ最良の道は人とのコミュニケーション
・人は「心で考えてつくられたもの」に時間とお金を使う
・最高のマーケティングとは、自分に関係ないものは何もないという意識で日々を過ごすこと
・心で考え、最高と最悪の結末を想定しておけば、失敗しても心が折れずにいられる
これらは、仕事でのヒントになる。

幸せを感じたいなら次の4つを目指すべきとする。
1. 役に立つこと
2. 褒められること
3. 必要とされること
4. 愛されること
まさにその通りだと思う。

力を抜いて読むといいことが次々と書かれている。まさに「自分らしさ」を捨てて読むということだろうかと思ってもみる。ビジネスでも日常生活でも、周囲と対立することなく、柔らかく生きていくことができそうなヒントの数々である。著者の人柄もなんとなく伝わってくる。

自分にとっては、「自分らしさはいらない」というところよりも、「くらしと仕事、成功のレッスン」というサブタイトルの方がしっくりきた一冊である・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | 人生・哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする