2017年11月17日

【もうひとつの浅草キッド】ビートきよし 読書日記859



序章
出会い
ツービート誕生
浅草修行時代
テレビ下積時代
漫才ブーム
それぞれのツービート
永遠の相方

かつて漫才ブームの時に、時代の先頭を切っていた漫才コンビ「ツービート」。そのうちのビートたけしの活躍ぶりは語るまでもないが、もう1人のビートきよしの方は、「今何をしているのだろう」と言う感じだ。そんなところにたまたま目にしたのがこの本。ノモンハン事件ではないが、色々な角度から見てみると言うのも面白いと思うが、これはもう一つのツービートの物語として興味を抱いた本である。

もともと山形で高校を中退して自動車整備工場で働いていたきよしは、週刊誌に出ていた「タレント募集」の広告に惹かれ、母親に2万円を借りて上京する。「スターになって帰ってきてやる」という昂ぶる思いを胸に秘めていたのだそうであるが、このあたりは若者の無鉄砲かもしれない。しかし、映画出演の話に現場に出かけていくとそこはピンク映画の撮影現場。悶々とした日々を過ごすうちに誘われたのが浅草の演芸場。

浅草の演芸は今は廃れてしまったが、当時はまだ盛ん。と言っても弟子入りした深見師匠には毎日怒られていたという。師匠と組んで舞台上でのコントをするが、それはストリップの前座。時代を感じる話である。肝心のビートたけしとの出会いは、そんな浅草の出入りしていたフランス座という劇場だったとか。たけしはエレベーターボーイをしていたらしい。みんなスタートはそんなものなのかもしれない。

ある時、欠員が出て、急遽たけしが呼ばれて舞台に上がることになり、それが初めてたけしと組んだ経緯だという。当時のコントが再現されているが、くだらなくて面白そうである。当時は「女は芸の肥やし」と言われていて、師匠からは「女遊びしてこい」と言われたそうである。今だととんでもないことになりそうだが、いい時代だったのかもしれない。きよしは割とモテたらしいが、たけしはモテなかったという。何となく想像できてしまう。

一旦はコンビは自然消滅するが、その後きよしはある演芸場での出演チャンスを掴み、相棒としてたけしを口説く。最初は嫌がっていたというから、もしもこの時きよしがしつこく口説かなければツービートも誕生していなかったのだろう。しかし、コンビを再結成してもたけしは素行が悪く、いつも酔っ払ってきたりすっぽかしたりしていたという。面白いエピソードである。

やがてたけしの毒舌漫才が芽吹き、それは芸人仲間も見にくるほどだったという。かつてテレビで見たツービートの漫才が脳裏をよぎる。そんな毒舌漫才は当時は異色だったらしい。せっかく舞い込んだテレビ出演でも、最初は厳しい事前チェックでダメ出しされていたという。華やかなテレビ時代の話も面白いが、やはり下積時代の話も面白い。それは普通の人には窺い知れない世界である。

有名な「コマネチ!」の芸は突然やりだして、本番中なのにきよしも笑ってしまったという。やっぱりたけしは才能があったのだろう。そしてきよしは自分にはないその才能を支えようと独自に工夫していく。それなりに役割を果たしていたのである。改めてツービートは2人でツービートだったのだと思わされる。

最後にはたけしとの対談も載せられている。ここでのやり取りも面白い。漫才コンビでも裏では相方の悪口を言っていたところもあったらしいが、ツービートはそんなことはなかったという。それはきよしの人格によるのかもしれない。
改めて昔のツービートの漫才が見たくなってしまったが、人に歴史ありをつくづくと実感させる一冊である。

posted by HH at 00:00| Comment(0) | 有川浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする