2018年03月05日

【徹底検証「森友・加計事件」 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪】小川榮太郎 読書日記898



第1章 報道犯罪としての森友学園騒動
第2章 籠池劇場-喜劇と悲劇
第3章 森友問題の核心-九億六千万はなぜ一億三千万二なったのか
第4章 加計学園-朝日新聞はいかなる謀略を展開したか
第5章 加計問題の真相に迫る

 著者は文芸評論家にして社団法人日本平和学研究所理事長だという。詳しいプロフィールは知らないが、思想としては安倍政権に同調的な方のようである。だからではないだろうが、昨年来、マスコミを賑わせている森友加計問題について(反マスコミ視点から)真相を語るというのがこの本の趣旨である。サブタイトルには「朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」とあって穏やかではないが、内容を読んでいくとそれもその通りだと思えるものになっている。

 冒頭、昨年半年に渡って「安倍叩き」が行われたが、その間、安倍による不正・権力乱用の物証はただの1つも出なかったと著者は語る。朝日新聞が仕掛け、テレビが横一線でワイドショーに取り上げて、他の新聞が疑問視してもそれらをすべて圧殺して「安倍疑惑」に仕立ていったという。そして何よりも衝撃的なのは、仕掛けた朝日新聞自身がどちらも安倍総理に関与がないことを知りながら疑惑を創作したことだったとする。「本当かいな」と思うも、著者はそれを本文で解説していく。

 まずはじめに森友問題が解説される。そもそもは、国有地を正規価格の1/8で払い下げられたことであるが、払い下げられた相手の森友学園が安倍総理夫人を名誉校長とする右傾化した学校だったことから、癒着があるのではとされたものである。それを著者は事実関係に沿って説明していく。大きな減額の理由は地下に大量のゴミが埋設されているのが発見されたこと。であれば一応の理屈はつく。本当はそこを重点的につくべきだと個人的には思う。

 著者は、森友学園とはどういう法人なのかを丁寧に説明していく。理事長の籠池夫妻の言動もニュースに沿って追っていく。個人的に意外だったのは、安倍政権を追求する野党の議員も、国会での発言では安倍総理に道義的責任は問いながらも土地取引と安倍夫妻とは切り分けていたという事実。これはあまり知られていない気がする。そして実は森友学園の問題となった小学校建設は、資金繰りや経営計画、カリュキュラムなどに多くの問題を抱えていたのだという。

 そういう「事実」を提示し、国の地方機関も府の機関も問題処理が杜撰であり、民間審議会のチェック機能の詰めの甘さこそが問題で、政治の圧力があったとは考えにくいという結論は、十分な根拠があるように思える。事実の羅列に勝るものはない。すっかり有名になった「忖度」も、「安倍夫人の名誉校長就任は決定の4ヶ月後であり、忖度などありようがない」というのもその通りに思える。

 加計学園の問題になるともっとひどい。朝日新聞がスクープした文書は、一部のみ明示しその他はぼかされている。ところがそのぼかされている部分に「国家戦略特区諮問会議決定という形にすれば、総理が議長なので総理からの指示に見えるのではないか」と書かれているという。これを朝日新聞は「総理の意向」と大見出しで報じている。そのまま普通に読めば総理の意向などなかったことが明らかなのに、である。

 さらに前川喜平という前文部科学相次官が登場したことで、舞台は賑やかになっていく。著者は前川前次官が通っていた出会い系バーに足を運び、そこがいかにいかがわしい店であるかを記していく。そして朝日新聞の後押しを受けて安倍政権批判をしていく動機についても示す。加計学園の問題の本質は、獣医学部新設を巡る反対派と推進派の長年の闘いであり、著者はその本質も明らかにする。

 推進派としては証人喚問で、加戸前愛媛県知事などが発言したが、前川前次官の発言と比べると全体の5%にとどまるとしている。ニュースでもこの不均等に対し、朝日新聞が「報道しない自由」と表明していて個人的にもあきれたが、問題の全体像から考えるとやはり故意に捻じ曲げられているのがよくわかる。著者が「報道犯罪」と断じる気持ちもよくわかる。

 この本も1つの見方であって、頭から信じることのないようにしたいという冷静さは自分でもある。ただ、疑いようもない部分だけでも朝日新聞の劣勢は否めないと思う。この本に対し、朝日新聞は名誉毀損で著者を訴えている。だが、個人的には違うなら違うと事実を挙げて反証していけばいいのにと思う。そういう本が出版されたら、ぜひ読んで比べてみたいと思う。朝日新聞に対しては、是非とも反証本を期待したいと思わざるを得ない一冊である・・・



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2018年03月02日

【チェルノブイリの祈り 未来の物語】スベトラーナ・アレクシエービッチ 読書日記897



第1章 死者たちの大地
第2章 万物の霊長
第3章 悲しみを乗り越えて

 「チェルノブイリ」と言えば、1986年4月26日に発生した史上最悪と言われる原発事故の代名詞である。今でこそだいぶ実態はわかってきているが、当時は旧ソ連の鉄のカーテンの向こう側の出来事ということで良くわからなかった記憶が残っている。今でこそ、福島の事故を経験しただけにその恐ろしさも実感としてわかるが、そんな大事故の関係者の声を集めたドキュメンタリーが本書である。

 冒頭から、亡くなった消防士の妻の証言が出てくるが、この内容は実に衝撃的である。消防士の夫は、原発での火災発生を受けて消火活動に出かけていく。しかし、何も警告を受けておらず、通常の家事と同様、家を出る時はシャツ一枚という出で立ち。火災発生は午前1時過ぎ。そして7時に夫が病院にいると連絡を受けて、妻は病院へと向かう。しかし、その時点で消防士の夫は全身が腫れ上がり、むくんで目はほとんどなかったと言う。強烈な放射線をもろに浴びた結果である。

 致死量が400レントゲンであるところ、この消防士は1,600レントゲンを浴びたと言う。病院に運び込まれてもほんの慰め程度の治療しかできない。身体中がひどい状況になってついに息絶える。その間、体から発する放射線を警戒して、妻も近づくのを禁止されるが、妻はそれを振り切って看病する。そして亡くなった後は、亜鉛の棺に入れられハンダ付けをし、上にコンクリート板が載せられたという。

 当時は消火に当たった人もほとんどきちんとした説明を受けていなかったようで、それも恐ろしい。報告を受けた地方幹部が、自らの責任に及ぶことを恐れて中央にきちんと報告をしなかったというのも対応が遅れる原因だったようである。証言は、被災地から避難せざるを得なかった人たちや、避難指示を無視して住み続ける老婆の証言などにも及ぶ。このあたりは比較的冷静に読んでいられる。それにしても、住人が避難して空き家になった家が略奪に遭う話には気が滅入る気がする。

 兵士たちは、命令されれば行かねばならない。事故の処理にはロボットも使われたらしいが、(おそらく強力な放射線の影響で)日本製でも5分でストップしたらしい。故障しないロボットはロシア製(=人間)という自虐的な説明が恐ろしい。兵士たちは、車や報奨金をもらって喜んで危険な仕事に従事する。兵士の1人が、被っていた帽子を2歳の子供が喜ぶのであげたところ、のちにその子が脳腫瘍の診断を下される。絶句、である。

 避難して行った人たちも、避難先で差別に遭う。皆放射能を恐れたのだと思うが、避難して妹の家に行ったところ、中に入れてもらえず子供と2人で野宿したという話もある。自分の家にも子供がいればわからなくもないが、やりきれない。放射能の恐ろしいところは、匂いもなく目にも見えないところだろう。だから人々にも危機感がない。ガイガーカウンターのみがそれを知らせてくれる。そしてその針が振り切れたという話が随所に出てくる。

 原発はそうした人力の作業の結果、石棺で封印されて現在に至る。しかし、まだ恐ろしいのは、その石棺の中では衰えることなく放射能が発せられ続けていること。石棺が老朽化すれば、また同じ悪夢が蘇る。石棺には隙間があり、隙間と亀裂の総面積は200平方メートル以上だという。その隙間から放射性アエロゾルが吹き出ているらしい。そんな事実にただ愕然とするだけである。

 日本の福島はここまでひどくはないが、それが人類の進歩なのかどうかはわからない。ただ、読んでいろいろな人の生の声を聞いて考えてみるのもいいことだと思う。それは決して過去の話ではなく、まだ未解決の現在の問題でもあるからである。
 やっぱり原発は何があっても廃止すべきだと、改めて思わされる一冊である・・・



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