2018年03月31日

【黄色いバスの奇跡 十勝バスの再生物語】吉田理宏 読書日記908



第1章 父と子の決断
第2章 試練のはじまり
第3章 苦悩
第4章 先輩の土下座
第5章 学びの日々
第6章 雪解け
第7章 小さなチャレンジ
第8章 新たな出発

 この本を読みたいと思ったのは、サブタイトル「十勝バスの再生物語」に惹かれたからに他ならない。企業経営、とかく企業再生に関するものには基本的に興味がある。地方では路線バスや鉄道が苦戦している話が多く、そんな中での成功事例となれば特に心惹かれるというものである。

 主人公は十勝バスの社長である野村文吾。十勝バスの四代目の社長である。父は三代目の社長であり、既に業績が悪化していたためであろう、息子である文吾氏に跡を継げとは言わず、文吾氏は大学を卒業するとプリンスホテルに就職していた。物語形式のこの本は、そんな父が突然文吾氏を訪ね、「会社をたたむことになった」と告げるところから始まる。

 文吾氏はその場は話を聞くだけにとどめるも、やがて考えた末、家業でもある十勝バスの経営の跡を継ぐべく入社を決意する。時に1998年4月1日。そんな文吾氏に、父は「経営企画本部長」としての職務を与え、実印と金庫の鍵をも渡し、全ての経営を委ねる。個人的にはこの時、父親がどんな考えだったのかすごく興味がある。

 十勝バスは1969年に最大2,300万人の利用者を有し、ピークとなって以降利用者は文吾氏の就任時にはピーク時の40%にまで落ち込み、赤字を垂れ流し、その赤字を国や地方自治体からの補填金で何とか賄っている状態であった。そんな会社だから社内も停滞し、特に顧客目線は欠如し、「乗せてやっている」という雰囲気であったという。

 文吾氏は、そんな中で何とか経営を立て直そうと奮闘するが、変革を嫌うのは停滞した組織の常でもあり、社員は反発。「笛吹けど踊らず」の状態であったという。それゆえ文吾氏は若手経営者の集いで、愚痴ってばかりいたようである。ところがある日、仲間から逆に叱られる。従業員を敵として見ていてはうまくいかないと。その真剣な苦言に反省した文吾氏は、「従業員を愛する」と決めて、仕事に向かう。

 それからだんだんと社員の態度も変わっていったという。社員から提案が出てくるようになり、それまで「営業しろ」と笛を吹いても踊らなかったのに、社員の方から「営業するしかないですかね」と出てくるようになる。この営業は、社長が想定していた大規模なものではなく、一停留所周辺を対象にした小規模なもので、社長も不満だったが黙って飲み込み、とにかく始める。すると少しずつ乗客が増え、この「小さな成功」が社員のやる気を引き出す。

 こうして様々な全社を挙げての取り組みで、十勝バスは2011年に40年ぶりの運送収入増を果たす。絵に描いたような再生ドラマであり、その過程には企業再生のヒントがにじみ出ている。薄い本であるが、エッセンスの果汁はたっぷりである。物語としても感動的でもあり、経営のヒントも溢れている。現在、同社のホームページを見てみると、この本以降も様々な取り組みがなされていることがわかる。実に楽しそうなホームページである。

 企業再生に興味のある人には、一読の価値ある一冊である。


posted by HH at 00:00| Comment(0) | ビジネス小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする