2018年11月30日

【寝ながら学べる構造主義】内田 樹 読書日記978



《目次》
先人はこうして「地ならし」した―構造主義前史
始祖登場―ソシュールと『一般言語学講義』
「四銃士」活躍す(フーコーと系譜学的思考)
バルトと「零度の記号」
レヴィ=ストロースと終わりなき贈与
ラカンと分析的対話

 最近は哲学に興味を持っていて、目につくものを次々に手にしている。哲学の中でも「構造主義」については、よくわからないこともあって一度入門書に手を出してみようと思っていたもの。タイトルからして初心者に優しそうに感じた次第である。著者も冒頭で、この本は「入門者のための平易に書かれた構造主義の解説書である」とするから狙い通りである。

 入門書と言っても決してレベルが低いと言うものではなく、逆に専門書よりも「根源的な問い」に会う確率が高いとする。大事なのは「答えを出すこと」ではなく、「大事な問いにアンダーラインを引くこと」とする。さらに「無知というのは単なる知識の欠如ではなく、知らずにいたいというひたむきな努力の成果」という言葉は、なかなか面白い意見だと思う。

 解説は構造主義の前史から始まる。と言っても、こちらも知識など乏しいから思想史の流れすらよくわからない。その前史では、直前でもっとも影響を与えたのはニーチェであるらしい。そして『史上最強の哲学入門』で個人的に最も印象に残ったソシュールがなんと「構造主義の父」であるとされる。言葉とは「モノの名前」ではないといった解説は、しかし『史上最強の哲学入門』の方がわかりやすい。

 改めて、「羊について『ムートン』という語だけを持つ言語共同体の中で育った者と、『シープ/マトン』という2つの語を持つ言語共同体の中で育った者とでは、『羊』の見え方が違う」という考え方はわかりやすい。そして解説はソシュールから「四銃士」と著者が名付けるフーコー、バルト、レヴィ=ストロース、ラカンの4人について語っていく。

 しかし、簡単に解説してくれているのかもしれないが、それぞれ何となくわかりにくい。フーコーについてはその人間主義について、バルトは記号論、ストロースはサルトルの実存主義を論破し、ラカンは分析的対話についてであるが、イマイチ理解力が届かない。隔靴掻痒感が否めない。それでもストロースについては、「人間が社会構造を作り出すのではなく、社会構造が人間を作り出す」という話などはよく理解できたところ。それがなんとなく構造主義的な匂いのした部分である。

 簡単に言ってしまえば、レヴィ=ストロースは「みんな仲良くしようね」と言っているのであり、バルトは「言葉遣いで人は決まる」と、ラカンは「大人になれよ」、フーコーは「私はバカが嫌いだ」と言っているのだという大胆なダイジェストを提示してくれるが、やっぱりもっと深く説明されないと理解は苦しいと個人的に感じる。

 そもそもであるが、「実存主義って何?」という根本的すぎる疑問を持っているのがいけないのかもしれない。そこが理解できていたらもう少し理解できたのかもしれないと思う。とは言え、諦めたわけではなく、もう少しいろいろと勉強してみたいと改めて思うところ。これはこれで良かったと思うが、他の入門書も手にしていきたいと思う一冊である・・・


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2018年11月21日

【大山健太郎 アイリスオーヤマの経営理念】大山健太郎 読書日記977



《目次》
第1部 私の履歴書
 第1章 震災から復興へ
 第2章 プロダクトアウト経営が生まれるまで
 第3章 メーカーベンダーの仕組み
 第4章 ユーザーインのネットビジネス
 第5章 地域貢献 ジャパンソリューション
 第6章 社員にとって良い会社
第2部 私の経営理念
第3部 社員へのメッセージ
 第1章 本質業務と全体最適
 第2章 仕組み改善と人材育成
 第3章 脳を活性化させ創造力を高めよう
 第4章 変化対応とイノベーション

 著者はアイリスオーヤマの創業者。本書は、日経新聞の「私の履歴書」に掲載していたものに加筆してまとめられたものである。全体は3部構成になっていて、第1部は「私の履歴書」であり、第2部「私の経営理念」、第3部「社員へのメッセージ」となっている。
 
 面白いのは、やはり第1部。創業者の創業話ほど面白いものはないと個人的には考えているが、この著者についてもそれが言える。話のスタートは、しかし出生の話ではなく震災の話。宮城県に拠点を構えるアイリスオーヤマは、震災の直撃を受ける。まず当時の状況を語るところから始めているところを考えると、やはり印象深い出来事であったのであろうと思う。当日、千葉に出張していた著者は、被災者へ灯油等を無償提供するなど社員と一体になって震災を乗り越える。こういう経験は会社としても大きなものだと思う。

 そんな著者の経歴は大阪で始まる。父が自宅の敷地内で初めは金属の仕事をスタートするが、たまたまプラスチック技術者が裏のアパートに越してきたことから、当時新素材であったプラスチック工場へと切り替える。しかし、著者が19歳の時に父が亡くなり、否応無く著者は跡を継ぐ。「営業はすべてイエス」をモットーに受注を取るが、下請けの哀しさで商売は薄利であり、生活のために著者は工員が帰った後も朝まで機械を動かしたという。

 やがて、脱下請を決意し、真珠の養殖で使用されていたガラス製の漁業用ブイをプラスチックで製作し、自ら売り歩く。そしてこれが大ヒット。オイルショックでこれに陰りが出ると、今度は農業に目を向け、苗を育てる木箱をプラスチックで作る。それから次々と挑戦を繰り返す。植木鉢やプランター、さらには「ペットは家族」というコンセプトを創造してペット用品に参入。身近な不便に目を向け透明なクリア収納を創る。我が家にも類似品があるが、元は当社だと知って驚く。

 問屋との関係に悩んだ末、自社で問屋機能を代行するメーカーベンダーというビジネスモデルに挑戦して、これをものにする。オイルショックで、創業の地大阪の工場を閉め宮城県の工場に機能を集約。泣く泣く従業員の首を切った経験から、「好不況にかかわらず利益を出す会社にする」という理念を描き、それが「販路は自分で確保する」と決意させメーカーベンダーへと歩ませたのであるが、このあたりの経緯に経営者としての著者の思いが伝わってくる。

 模倣品とは競わず新天地を探すというスタンスは、いわゆるブルー・オーシャン戦略であるが、なかなかできるものではないと思う。私も自分たちの仕事においてはかくありたいと思う。そうしてアイリスオーヤマは、今や家電メーカーという顔が強くなってきている。「生活提案企業として市場を創造する」という理念はその原動力であろう。

 一方、そんな事業を支えるのは社員であるが、社内では「360度評価」を取り入れているという。上司も部下に評価されるという仕組みはとてもいいと思う。かつての職場では、「(ダメな)評価」をしたい上司が多々いたものである。そして「リーダーシップの鍵はコミュニケーション力」というのもその通りだと思う。後半部分もそれを求めている人にとっては参考になるところ大だと思う。

 経営者、それも創業経営者の話には随所に参考になる苦労話が多い。そうしたエッセンスを少しでもわが身に取り入れたい。これからもそういう本をどんどん読んでいきたいと思わせてくれる一冊である・・・

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2018年11月20日

【日日平安】山本周五郎 読書日記976



城中の霜
水戸梅譜
嘘アつかねえ
日日平安
しじみ河岸
ほたる放生
末っ子
屏風はたたまれた
橋の下
若き日の摂津守
失蝶記

 著者の名前は知っていたが、これまで一度もその作品を読んだことがなく、今回ひょんな事から父親が読んでいたのを借りて手にした次第。
内容は時代劇短編集。藤沢周平以来、時代劇には抵抗感がなくなっているが、どんな内容なのかと興味深くページをめくる。

 『城中の霜』は、安政の大獄で1人の武士が死罪を命じられる。その武士橋本左内は、切腹に際し涙を流す。武士としてのあるまじき行為であったが、町奉行は訪ねてきた香苗に「立派な最後」だと伝えるが、香苗はどこか釈然としない思いが残る・・・
 『水戸梅譜』は、徳川光圀の館に仕官を求めてきたある武士が、断られて庭先で腹を切る。仕官に当たっては普通己の芸能を言い立てるところ、子供のことを告げたと聞き、光圀は家族を探させるが、見つからない。やがて時が流れ、奇妙な若者が出没するようになる・・・

 『嘘アつかねえ』は、酒を飲んではくだを巻く男の話。信吉は、よく行く酒場で「女房は殴ってナンボ」と勇ましく語る男と出会う。しかし、ある日酔った男を送る時、男の真の姿を見てしまう・・・
 
 『日日平安』は、井坂十郎太が道を歩いていて、切腹をしようとしている男に呼び止められるところから始まる。男は金に困った浪人者。十郎太の藩でお家騒動の話があると知り、なんとか食いつなぐため知恵を絞ることにする・・・
 『しじみ河岸』は、奉行所に勤める花房律之助が、殺しを自供する女の供述に不信を抱くところから始まる。安易に考えろという忠告を無視して調べ始めるが、なぜか女の近所に住む住民たちは口が重い。律之助はますます不信感を強めていく・・・

 『ほたる放生』は、遊郭で働きながら村次という男に貢ぐお秋の話。お秋にはその身分を知ってなお言い寄ってくる藤吉がいる。しかしお秋はその想いに応えられない。そうこうするうちに、お秋は村次からくら替えを説かれる。それは金のためというよりも、厄介払いと思われるものであった・・・
 『末っ子』は、旗本の末っ子に生まれた平五の話。平五は、武士の割には商才に長け、道具を見る目を身につける。武士らしからぬ振る舞いにとうとう勘当されてしまう平五だが、「末っ子は甘やかされる」ということを見事に逆手に取った言い分が清々しい。

 『屏風はたたまれた』は、縁談がまとまった吉村弥十郎に対し、さる女から会いたいとの手紙をもらい、迷った末に茶屋へ会いに行く話。いつの間にかその女、千夜に心を奪われてしまう弥十郎だが、ある日千夜は忽然と姿を消してしまう・・・
 『橋の下』は、どうやら決闘へ向かうらしき1人の若侍が、橋の下で乞食夫婦に会う話。乞食は、かつて親友と1人の女を巡って争い、友を斬って放浪に出たという身の上を語る・・・

 『若き日の摂津守』は、藩主でありながら知恵遅れで、いつもよだれを垂らしている摂津守光辰と彼に仕える側用人の浅利重太夫の話。しかし、実は光辰には人知れぬ顔があったのである・・・
 『失蝶記』は、親友を斬って逃げていた谷川主計の話。谷川は聴力を失っている。そして逃げた谷川を親友の許嫁が仇と追う。そして谷川はとうとう追っ手に囲まれる・・・

 どの話も読み終えて何かいい得ぬ人情の味わいが残る。どれも短い物語ながら、それぞれの登場人物の心に気持ちが軽く揺すられる。独自の味わいのある時代劇である。今まで知らずに読まずにきたのを残念に思うとともに、遅ればせながら読んで良かったと思う。既に故人となって久しいが、こういう作家がこれからも現れるのだろうかとふと思う。

 幸いにしてまだまだ著者は数多あるので、これから折に触れて読んでいきたいと思わされる一冊である・・・


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2018年11月19日

【日本一小さな航空会社の大きな奇跡の物語 業界の常識を破った天草エアラインの「復活」】奥島透 読書日記975



《目次》
プロローグ
第1章 どん底からの挑戦
第2章 経営を苦しめた事情と理由
第3章 試行錯誤の1年目
第4章 苦難と逆風の2年目
第5章 予想を超えた3年目からの飛躍
第6章 会社再建で学んだこと
あとがきにかえて――天草への誘い

「保有する機材一機」
「社員数54名という日本一小さな航空会社天草エアライン」
「航空業界の常識では成り立たないと見られ、経営危機に陥いり、その再建を託され陣頭指揮を取り、崩壊寸前の会社を復活させた」
そんな華々しい謳い文句に迷わず手に取った一冊。企業の再建モノはそれだけで今の自分の仕事にも参考になる部分が多く、積極的に読むようにしている。

 著者はもともと日本航空で整備関連の畑を歩み、熊本支店長まで歴任した方だとか。天草エアラインは、第三セクターとして設立されたものの、著者が就任する直前の2009年3月期決算では、9,500万円の赤字を計上し、累積赤字は4億8,000万円に及ぶ惨状だったという。この本を手に取るまでその存在すら正直言って知らなかった地域航空会社である。そんな弱小地域航空会社をどうやって再生させたのか。大いに興味を惹かれるところである。

 着任してまず社長室の壁を取り払ったという。これによって社員を見渡す形で執務ができるようになったようで、パイロットや客室乗務員の健康状態も自ら席でチェックできるようになったのだとか。さらに砂浜でバーベキュー大会を催すなど、社員間のコミュニケーションを積極的に取ったようである。

 さらには人材育成に力を入れ、それまで株主である大手航空会社からのOBや出向者が占めていた管理職のポストにプロパー社員を大胆に登用するなどしたようである。また、採算の厳しい神戸〜熊本路線から撤退し、代わりに需要の見込める熊本〜大阪路線に参入。非常勤取締役として招いた小山薫堂氏とパラダイス山元氏などの協力により、新デザインの新機体を導入するなどしたという。

 これらのことを著者は、5年間の社長在籍期間中に行ったとのこと。なるほどであるが、どうも何となくしっくりこない。何がどれだけ貢献したかという具体的な数字が開示されていないのでよくわからないが、こうした内容で業績のV字回復ができるものだろうか(2010年3月期に一気に1億5,000万円近い黒字)と疑問に思う。しかし、よく読んでいくと何となくそのあたりのヒントは書かれている。
 1. 熊本県が天草エアラインの支援を積極的に開始
 2. 固定資産税の減免
 3. 航空援助施設利用料減額
 4. 1億円の補助金で新予約システムの導入と営業強化

 著者の尽力も当然あると思うが、こうした行政による底支えがあったからこそである事は否めないであろう。だからダメだと言うつもりはないが、当初期待したほど参考になる部分がなかったのは事実である。
 とりあえず、一度くらいは天草エアラインに乗ってみたいなと思わせてはくれる一冊である・・・



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2018年11月15日

【史上最強の哲学入門】飲茶 読書日記974



第1ラウンド 真理の『真理』――絶対的な真理なんてホントウにあるの?
 プロタゴラス ソクラテス デカルト ヒューム カント ヘーゲル キルケゴール サルトル レヴィ=ストロース デューイ デリダ レヴィナス
第2ラウンド 国家の『真理』――僕たちはなんで働かなきゃいけないの?
 プラトン アリストテレス ホッブス ルソー アダム・スミス マルクス
第3ラウンド 神様の『真理』――神は死んだってどういうこと?
 エピクロス イエス・キリスト アウグスティヌス トマス・アクィナス ニーチェ
第4ラウンド 存在の『真理』――存在するってどういうこと?
 ヘラクレイトス パルメニデス デモクリトス ニュートン バークリー フッサール ハイデガー ソシュール

 著者は、『飲茶の「最強!」のニーチェ−幸福になる哲学−』で初めてその存在を知った哲学作家。『飲茶の「最強!」のニーチェ−幸福になる哲学−』も非常にわかりやすかったが、そのわかりやすさが気に入り、ニーチェに限らずもっと広くと思い手にした一冊。

 「入門書」とある通り、様々な名だたる哲学者が登場する。しかし、ただ時系列に並べているのではなく、「真理」「国家」「神様」「存在」とテーマを分けて解説。これが非常に分かりやすい。「真理」では、「絶対的な真理はない」としたプロタゴラスを先頭に、「無知の知(を自覚することが真理への第一歩)」のソクラテス、そして「我思うゆえに我あり」のデカルトと続く。高校の倫理社会では、ソクラテスの後はプラトンだが、プラトンは「国家」で登場する。ここが本書の特徴。

 ソクラテスの「無知の知」も、「知っていると思ったら『知りたい』と思うわけがない。『知らない』と思うからこそ『知りたい』と願う。だからまず自分が何も知らないと認めるところから始めよう」という主張なのだと解説してくれる。これまでの理解より、より理解が深まる。その後、デカルトまで飛ぶのは、実はキリスト教支配の悪影響。「人間は理性だけでは真理に到達できない。到達するためには神への信仰が必要」という主張は、人に考えることをやめさせたのだという。こう説明されると、「ルネッサンス」の意味もより深く理解できる。

 「真理」については、デカルト以降、カント、ヘーゲル、キルケゴール、サルトル、レヴィ・ストロース、デューイ、デリダと続く。プラトンの「国家論」は代表作だから「国家」で取り上げられるのも頷ける。続くアリストテレスがいかに偉大であったかは、意外である。「君主制は独裁になりやすく、貴族制は寡頭性になりやすく、民主制は衆愚性になりやすい」という指摘は、歴史が証明している。

 この流れからだと、ホッブスの「社会契約論」(国家とは個人の自由を放棄して手に入れる安全システム)も理解しやすく、「すべての国家が他国を攻撃する自由を放棄(してリヴァイアサンに渡す)するとき、真の平和が訪れる」という主張も納得である。それが当然のごとくルソーに続き、アダム・スミス、マルクスとつながるのもよくわかる。

 「神様」ではやはりニーチェの思想が興味深い。ただ、それは単なる無神論ではなく、「信仰や道徳は弱者救済システム(弱者のルサンチマン)であり、人は『強くなりたい、真理を知りたい』という人間本来の意思(=力への意思)を自覚し、そこから目をそむけない」という主張なのだというのがわかる。

 最後の「存在論」はまさしく哲学という感じの議論。しかしすでにデモクリトスが「原子論」を唱えたところからニュートンの「万有引力」などへの繋がりは、物理の世界とも相通じていて面白い。さらに最後に登場して来たソシュールは初めて知ったが、「言語とは区別のシステム」という主張は、個人的に衝撃的であった。この人は哲学者ではなく、言語学の方であるらしいが、その境目も曖昧になる意見である。

 「区別する価値があるからその区別に対応する対応する言語が発生する」
日本語では蛾と蝶を区別するが、フランス語ではどちらもpapillon。日本語では姉、妹だが、英語ではsister。牛もox、cowである。そこから「存在とは、存在に価値を見出す存在がいて初めて存在する」となる。目から鱗とはこのことかもしれない。これが哲学の魅力であると感じる。

 ますます哲学の世界に深く関わりたくなる。まさに入門書と言える一冊である・・・


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2018年11月14日

【逃げる力】百田尚樹 読書日記973



第1章 積極的逃走のすすめ
第2章 人生の勝利者は「逃げる達人」
第3章 会社や仕事から逃げる
第4章 人間関係から逃げる
第5章 逃げてはいけないとき
第6章 突発的危機から逃げる
第7章 国の危機から逃れる
第8章 守るべきものがあれば、逃げられる

 最近は、小説よりも趣味や主義主張の本が多い百田尚樹であるが、この本は「逃げる」をテーマに著者がその考えを語ったもの。残念ながら「小説」分野ではなく、「主義主張」分野の一冊である。とは言え、これはこれで興味深く思い手に取った次第である。

 特に男から見ると、「逃げる」ことは「よくないこと」「恥ずかしいこと」というイメージがある。しかし、著者はそれは消極的な態度ではなく、むしろ戦うことと同じくらい積極的な行動だとする。孫子の兵法三十六計にも最後に「走為上(=走るを上と為す)」と記されていて、逃げるが最善の策とされている。「三十六計、逃げるにしかず」の語源であるが、理不尽な環境の中に置かれている人に、人生で最終的な勝利を得るための積極的逃走を著者は勧める。

 最近、ドラマで『逃げるは恥だが役に立つ』というのがあったが、これはハンガリーの諺だとか。逃げる力を持つことは、成功へと近づくことだと著者は語る。負けることにおいて最も大切なことは、「負けを素直に認めること」。「負けの原因と真正面から向き合って反省しなければ次も負ける」というのは、その通りだと思う。戦国武将や華僑、ユダヤ人の例が列挙され、わかりやすい。

 サラリーマンでは、よく左遷出向などというのがある(特に金融機関)が、そこを人生の墓場のように感じるかもしれないが、そこで元から働く人にとっては普通の職場という考え方は、言われてみればその通りである。
 1. 人生は電車ではなくオフロード車、いろんな道を走っていい
 2. 孤独や退屈を恐れるな
 3. 仲間外れになっても大丈夫
 4. 人間関係の悩みは本当は些細なこと
 5. 人間は悩み事がなくなったら、新たに悩み事を作ってしまう
「逃げる」というテーマから少し外れるが、悩める人には悩みが軽くなる考え方が列挙される。これはこれで大事な考え方だと思う。

 終盤は悩める個人から国家へと及ぶ。このあたりは、著者の真骨頂か。日本をブラック企業のサラリーマンにたとえ、「滅茶苦茶な要求をする得意先中国」、「やっかいな同僚朝鮮半島」とし、「力の均衡なくして話し合いはあり得ない」と続く。そこから逃げるとは、「親しい付き合いをやめること」とする。韓国に対しては大いに賛成したい意見である。

 最後に何よりも「幸せの絶対基準」を持つことを著者は勧める。自分にとって大切なものを守るために戦うのか逃げるのかを決めるときに、それは必要になるのだと。
「この仕事は家族の幸せを犠牲にしてまで取り組むべきものなのか」
「替えがきかないのは家族と自分」と著者は語る。最近は、仕事で鬱になったり、挙句に過労死だとか自殺だとかというニュースを耳にするが、そんな当たり前の問い掛けを忘れないようにしたいものである。
 一つの考え方として、心したい一冊である・・・



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2018年11月12日

【できる人の人を動かす方法】リチャード・テンプラー 読書日記972



原題:The Rules of People
1章 人間を理解するための31のルール
2章 人を助けるための18のルール
3章 人を味方につけるための30のルール
4章 難しい人に対処するための21のルール

 著者は、幅広い分野で30年以上にわたってマネージャーの経験を持つ方のようである。その経験を踏まえてか“The Rules of 〜”というタイトルのシリーズを出版しており、この本はその一冊ということのようである。「人を動かす」という言葉は聞こえはよくないが、常に意識していることでもあり、興味を持って手にした次第である。

 「他人を動かすことは本当に可能か」と冒頭から問いかけがある。それに対し、「他人に効果的に働きかけることで、自分にとっても相手にとっても利益になる行動を起こさせることは十分に可能」と著者は語る。その通りだと思う。ポイントは、「相手にとっても利益になる」というところだろうか。

 「人は周りの人が幸せな時に自分も幸せを感じるようにできている」と著者は語る。他人にいい人生を送ってもらうほど、自分もいい人生を送れる。そのためのキーは、「(相手に対する)自分の態度を変える」ことだという。それによって相手を動かすということが本書で語られていく。

 最初に語られるのは、「人間を理解するためのルール」。「たとえ相手の行動を変えられなくても理解できれば不快感は減る」のは事実だろうと思う。人の行動を見て、「なんであんなことをするのだろう」と思うことはよくあるが、その理由がわかれば少なくとも不快感は減るだろうと思う。

 1. 自分が気に入らないからといって相手が間違っているわけではない
 2. 人は質問されると考えるようにできているから、今まで目を瞑っていた問題と向き合わざるを得なくなる
 3. 説得で意見を変えることはできない
なるほど、振り返ってみれば思い当たることもある。示唆に富む言葉である。

 自分の意見を通すには態度がカギだと著者は主張する。そのためにまず「人は変わらないことを前提とする」という。「子供の気持ちは誰にもわからない」という言葉にはどきりとする。故に、親は「自分だったらどうするか」ではなく、子供になったつもりで子供の気持ちを考えなければならないとする。これはなかなか参考にしたい考え方である。

 人と付き合うときに、是非とも頭に入れておきたいと思わされることは以下の通り。
 1. 同僚、友人、パートナーとケンカになったら謝罪させて恥をかかせてはいけない
 2. 相談する人は共感を求めている
 3. 相手の感情を否定しない
 4. アドバイスをしない
 5. 相手の決断を100%受け入れる
 6. 相手が話さないことを尊重する

 また、「質問に答えることで相手は頭を整理することができる」ということは、個人的に有益であると感じる。普段、ついつい人を説得しよう、自分の意見に納得してもらおうとして受け入れられず、疑問に思うことが多々ある身としては大いにヒントになる。「小さなことを覚えておく、無理なら記録する」ということも、仕事では活かしたいことである。

 「自分の間違いを認める」「イライラするのは自分のせい」というのは、誰でも傾聴すべきことではないだろうか。さすがに長年の経験のなせる技か、参考になることがいくつもある。人とうまく付き合い、うまく動いてもらおうとするならその根底にあるのは、「相手に対する敬意」と言えそうである。これらを参考にして、人付き合い下手を少しでも改善できたらと思う。
 大いに参考にしたい一冊である・・・


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2018年11月09日

【オリジン】ダン・ブラウン 読書日記971



原題:Origin
 毎回読むたびに、息もつかせぬ展開と「これは本当なのか」と思わせてくれる謎で楽しませてくれるロバート・ラングドン教授の活躍するシリーズ第5弾である。

 プロローグでは、今回中心人物となるエドモンド・カーシュが、万国宗教会議に参加したキリスト教のバルデスピーノ司教、ユダヤ教のラビであるケヴェシュ、そしてイスラム教の法哲学者サイード・アル・ファドルを相手に、あるプレゼンテーションを行うところから始まる。それは「われわれはどこから来たのか、そしてわれわれはどこへ行くのか」というテーマでのもので、その内容は宗教の根幹を揺るがす科学上の新発見である。いきなりの謎と興味を秘めて物語は始まる。

 今回、宗教象徴学者ロバート・ラングドンは、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館に元教え子のカーシュの招きでやってくる。その類を見ない設計で、観光客を激増させたという建築の伝説的美術館を舞台とするとは、と個人的には大いに期待する。迎えるのは、美人のアンブラ・ビダル館長。アンブラは、またスペイン国の王太子フリアンの婚約者(つまり将来のスペイン王妃)でもある。

 未来学者でもあるエドモンド・カーシュが美術館で世紀のプレゼンテーションを行うという触れ込みで、ラングドンも久々の教え子との再会とそのプレゼンに大いに期待して臨む。しかし、なんとそのプレゼンの場で、カーシュは暗殺されてしまう。犯人はルイス・アビラという海軍退役提督。かつて爆弾テロで家族を失うという悲劇に見舞われており、バックにはパルマール教会と宰輔と称する人物がいる。

 大混乱の会場。絶命したカーシュの遺体を前にラングドンは呆然とするが、カーシュと一緒に仕事をしていたアンブラからある事実を聞かされ、ラングドンはアンブラとともに会場を脱出する。アンブラにはスペイン国の未来の王妃として近衛隊員が護衛についていたが、これを撒いての闘争劇。彼らに手を貸すのは、カーシュが製作したAIウィンストン。ヘッドセットを通じての万能の活躍がドラマに面白みをもたらす。

 例によって物語の展開は実にスリリング。AIウィンストンの果たす役割は、『イーグル・アイ』などの映画でも描かれているが、人間のサポートなど到底及ばない完璧なもの。やがてユダヤ教のラビもイスラムの法哲学者も何者かに殺され、事件の裏側にはカーシュの発表を阻止しようとするキリスト教の影が見え隠れする。そして全編にわたって気になって仕方がないのが、カーシュが発表しようとした新発見の内容。

 スペインを舞台に、ガウディのサグラダ・ファミリアやカサ・ミラといった建築物が背景に描かれる。ゴーギャンの絵画やウィリアム・ブレイクの詩や挿絵といったものも合間に重要な意味合いをもって描かれる。よくぞこれだけのストーリーを思いつくものだと、今更ながら感心してしまう。そしてその内容も今回は実に示唆に富む。

 ストーリーに重要な役割を果たすのが、AIのウィンストン。カーシュが敬愛するチャーチルからその名を取って名付けられたのだが、やがてこういうAIが登場したら、われわれの生活はどうなるのだろうかと想像させられる。それはそれでまた楽しい想像でもあるし、疑問に思う想像でもある。本を読みながら、カーシュの投げかけた謎「われわれはどこへ行くのか」を一緒に考えても面白いかもしれない。

 まだまだシリーズは続くのだろうか。これだけのストーリーを捻り出すのは簡単ではないと思うが、是非とも次の作品を期待して待ちたいと思わされる一冊である・・・


【ロバート・ラングドン教授シリーズ】
『天使と悪魔』
『ダ・ヴィンチ・コード』
『ロスト・シンボル』
『インフェルノ』
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2018年11月06日

【日本の国難2020年からの賃金・雇用・企業】中原圭介 読書日記970



《目次》
世界金融危機「再来」の可能性
日本経済を蝕む最大の病
2020年以後の日本の雇用
2020年以後の日本の企業
2020年以後の日本の賃金
生き残る自治体と転げ落ちる自治体

 目につけば必ずといっていいくらい読んでいる中原圭介氏の経済本である。今回は、タイトル通り来たるオリンピックイヤーである2020年以降の日本経済や国民生活がどうなっているのかについて、日本の企業や雇用、賃金にスポットを当てながら冷静に分析したと言う一冊である。
 
 現在、世界の株式市場は上昇基調にあるが、これは「世界経済が堅調に推移している」ことと、「主要国の中央銀行が金融緩和の傾向をなかなか止められないという思惑」からだとする。株価はすでに割高水準であり、もっともリスクの高い局面とのことは、意識しておきたい。

 アメリカの個人消費が伸びているが、これは「原油安による物価の下落」と「史上最低水準の低金利」だという。経済を見る上で大事な視点は物価の下落にも2種類あるということ。これまでの著作でも語られてきたが、生産設備の供給過剰によってもたらされる製品価格の下落とエネルギーの供給過剰によってもたらされる物価下落である。同じ物価の下落でも、前者は企業収益の悪化を通じて賃金の低下につながる一方、後者は物価の下落が進めばその分生活に余裕ができ、消費が拡大する。このあたりは非常にわかりやすい。

「経済成長率の数字そのものよりも大事なのは成長の中身」
「経済指標の中で一番重きをおくべき指標は実質的な所得」
新聞を読んでいてもなかなか理解できない経済の見方がよくわかる。こういうところも著者の魅力である。「財政出動は愚者の考え」なども参考になる。

 日本経済を蝕む最大の病は、何と言っても少子高齢化。しかし、実はこれは30年も前から重大性を認識できていたという。なのにその間、何も手を打って来なかったのだと。今からでも少子化の動きを緩めることはできるとする。こういう認識を日本全体で共有すればと思わずにはいられない。

 世界最大の自動車市場である中国が、ガソリン車・ディーゼル車の製造販売禁止の方針を決定し、時期の検討に入ったという。しかし、ヨーロッパ一強のドイツはディーゼルにこだわっており、トヨタはハイブリッドにこだわっていて、それぞれに不安があるとする。欧州はすでに電気自動車に舵を切っているという話を聞けば、素人でもその未来を予測できる。しかし、電気自動車はガソリン車に比べ、部品点数は1/3で、それは雇用を脅かすというリスクがあるとも指摘する。トヨタもうかうかしていられない。

 これから大きな流れとして国民の所得は減っていかざるを得ないと著者は語る。消費税の増税だけではなく、国民年金、国民健康保険の増額は必至であり、可処分所得は10%減っていくのだとか。労働人口は減少していくが、AIを含むイノベーションの進展によって雇用は悪化していく。我々は、どう生活を守っていくのか。著者は、AIやロボットへの課税を提案する。企業は反対するだろうが、自動化の進展を遅らせられれば、新たな雇用の受け皿を育成する時間稼ぎになるとする。なかなかの意見である。

 著者の話は、「当たるも八卦」の予測と違って、理路整然と理屈が通っているだけにわかりやすいし、当たりそうな気がしてくる。今後を考える上で、是非とも知っておきたい内容であることは間違いない。聞きたくない話が多いが、それが現実。これからを考える上でも、引き続き著作をフォローしていきたい方である・・・


posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする