2019年09月30日

【ある男】平野 啓一郎 読書日記1078



『マチネの終わりに』もそうであったが、この物語も著者が主人公の弁護士である城戸章良に会うところから始まる。実話を基にしている話なのか、それともそういう「手法」なのだろうかという思いが脳裏をよぎる。事実は定かではないが、物語は城戸弁護士を中心にして進むことになる。

その前提として、宮崎に住む里枝という女性の話から始まる。里枝は東京で結婚し、2人の男の子がいたが、下の子を病気で失う。それを機に夫との関係もうまくいかなくなり、離婚して上の子を連れて宮崎に戻る。そこで知り合った谷口大祐という男と再婚する。やがて女の子が生まれ、幸せに暮らしていたが、その生活は長く続かず、林業に従事していた大祐は倒木事故で死んでしまう。

失意の中、里枝は訪ねてきた大祐の兄から実は死んだ男は実在の谷口大祐ではないと知らされる。遺影の中の人物は全く別人だというのである。夫の死に打ちひしがれる間も無く、夫が別人と聞かされ戸惑う里枝は、離婚の際世話になった城戸に相談する。こうして、城戸が「谷口大祐」と名乗っていた里枝の夫であった男の正体を探し始めるのがこの物語。「谷口大祐」が里枝に語っていた不仲の実家の話は実在のもの。ただ、「谷口大祐」本人だけが別人。なかなか面白いストーリー展開である。

城戸自身、実は在日三世という身の上である。三世と言っても、生まれも育ちも日本であり、もう完全な日本人であるが、それでも城戸には引っ掛かりがある。妻の香織との関係もギクシャクとしており、「崩壊がゆっくり進んでいる」と感じている。調査と言っても、本職は弁護士。雲をつかむような話であったが、あるきっかけから「戸籍交換」という事件に行き当たる。手がかりを感じた城戸は、ブローカーをしていた男を刑務所に訪ねて行く・・・

探偵小説のエッセンスも味わいつつ、「谷口大祐」の正体を追って行く城戸。城戸自身の物語と里枝の物語を横軸に展開されて行くストーリー。在日の問題や戸籍交換の話や、夫婦関係の話が織り成される。「バラはどんな名前で呼んでも同じように甘く香る」というジュリエットのセリフではないが、本名がわからなくても「谷口大祐」として結婚していた男は、里枝にとってはいい夫であり、息子にとっては義理であってもいい父親だったわけである。その男は一体誰であったのか。

平野啓一郎の本はこれが3冊目であるが、いずれも気に入っている。未来の宇宙船の話から、大人の恋愛小説、そしてミステリー風の本作と幅広いのも著者の特徴なのかもしれない。本作では、個人的にラストの里枝と長男の会話に心打たれたところがある。虐待死という嫌なニュースが世間を騒がせる中、心に暖かい風が吹いてくる気がした。これからも平野啓一郎を読んでいきたいと思わせてくれる一冊である・・・



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2019年09月26日

【思わず考えちゃう】ヨシタケ シンスケ 読書日記1077



《目次》
第1章 ついつい考えちゃう
第2章 父だから考えちゃう
第3章 ねむくなるまで考えちゃう

 著者は、イラストや絵本、挿絵などを手がけている方のよう。これまで講演などで時間が余った際、暇を見つけて書き溜めていたスケッチを見せてコメントをするということをしており、それが意外な好評であったという。その「スケッチ解説」を書籍化したのが本書だという。その内容の通り、スケッチをもとにコメントのようなことが書かれていく。

 マツキヨが見かけた「ご自由にお使いください」と書かれた箱。いろんなことを自由に決められるはずなのにと自由について考えさせられたとゆる〜く語る。「富士山の盗み撮り」って絵を描いて、「富士山の盗み撮りとは言わないか」と考える。「利き腕のツメは切りにくい」とか、確かに視点は独特だと思うが、だからなんなんだろうという気もする。

「明日やるよ。すごくやるよ」として寝ている絵。今の自分を楽にするキーワードだとか。「世の中の悪口を言いながらそこそこ幸せに暮らしましたとさ」
「7時って靴下みたい」(7時の時計の形が靴下に見える絵)
「謙虚さを保つクリーム、たっぷり塗ります」
お熱はかり中の息子の絵(体温計が飛び出ている絵)
息子の髪を洗うと、必ず途中でアクビをする

「ボクはあやつり人形、誰かあやつってくれないかな」
「でも、どうすればいいんだろう、好きなことをやればいいんじゃない?」(人生はこの無限ループ)
「若い頃、別にムチャはしなかった。今も特にムチャはしないし、この先もきっとムチャしない」
「相手のできないことによりそうことのむずかしさ。人の悩みはつまりそういうことなのではなかろうか」

 面白いという見方をすればできるのかもしれない。人が気付きそうもないさりげない日常の一コマをきっちり捉えているとでも表現すれば、なんとなく書評的になるかもしれない。でもだからと言って読み終えて何か残るかと言えば、微妙である。つい、「だから?」と言いたくなってしまう。

「読んでどうなるのだろうか?」
思わず考えてしまう一冊である・・・


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2019年09月25日

【アウトルック最速仕事術−年間100時間の時短を実現した32のテクニック−】森 新 読書日記1076



《目次》
1章 一番大切なPCのスキルは「Outlookスキル」
2章 時間のロスになる「画面の切り替え」を減らすテクニック
3章 「脱マウス」に近づくための10の基本ショートカット
4章 仕事にスピードが生まれるメールの整理法
5章 もっと時短したい人のためのスーパーテクニック
6章 もっと時短したい人のためのショートカットキー上級編
7章 よくある質問

 著者はショートカット・Outlook研究家。そんなものがあるのかと思うが、何にせよその道を極めれば自分で名乗れるわけである。元々はサラリーマンであるが、アウトルックスキルの獲得による生産性の大幅向上の余地を発見して独自に研究を重ねたそうである。それを情報発信したところ、個人ばかりか法人まで講演のオファーを受ける大人気講座になったと言う。それが書物化もされているわけで、内容よりもそうした経緯の方が興味深い。

 内容はといえば、もうタイトルにある通りのOutlookのスキルである。これまで仕事でOutlookを使っていたが、「なんとなく」使いこなしているだけであったというのが本書を一読しての結果。著者はこうしたスキルを「時短」に活かすべしとしている。もちろん、仕事の効率化になることは間違いないのであるが、単純に「便利」であるというのが個人的な感想である。

 Outlookの効率的な使い方のポイントは、「キーボードで操作すること」だとする。これはすなわちショートカットキーに他ならない。普段、マウス操作中心の人は戸惑うかもしれないが、私自身はExcelやWordはすでにショートカットキーを使っており、違和感はないし不便もない。それよりも「機能」を覚える方が先だと感じる。ただ、普段使っていることでも「ファィルは先に添付する」なんてことは、メールを送った後うっかり添付し忘れて再送するなんてちょくちょくやっている人にはいい気付きだと思う(自分にもよく当てはまる)。

 個人的にすぐに取り入れたのは、「メールの表示」「タスクの表示」「アーカイブフォルダーに移動」「差出人別検索」「クイック操作」である。使ってみればなかなか便利な機能であり、これを知っただけでもこの本を読んだ価値はあるというもの。メール以外にも会議機能などがあり、これは普段使用していない。個人だけで利用する機能でもないので仕方ないところはあるが、メール機能だけでも十分である。

 薄い本であるので、読むのに時間はかからない。もっとも「読む本」というより、覚えるまでは手元に置いて何度も参照するのに使う本だと言える。そういう意味で、職場のデスクに立て掛けておきたい一冊である・・・






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2019年09月24日

【実験思考 世の中、すべては実験】光本勇介 読書日記1075



《目次》
はじめに すべてのビジネスは「実験」だ
CHAPTER 1 僕はこんな「実験」をしてきた STORES.jp、CASHの誕生
CHAPTER 2 僕の「実験思考」のすべて 狂ったビジネスはこうして作る
CHAPTER 3 こんな「実験」がやりたい ぼくが考える未来予想図
おわりに まだまだお金が足りない

 著者は、株式会社バンクという会社の代表取締役。といっても数々の事業や会社に携わってきており、いわば「起業家」というべき人物のようである。この本は、著者が日頃こだわっているその名の通り「実験思考」について語った一冊である。

 冒頭で著者が立ち上げたCASHというアプリについて語られる。仕組みはメルカリなどと同じ中古品売買なのであるが、なんと売りたいモノを写真に撮ってアプリに載せた途端に現金が振り込まれるのだという。いきなり度肝を抜かれる。「そんなことして大丈夫なのか」と思わざるを得ない。なぜなら、写真をアップしてモノを送らなければいくらでも現金を搾取できてしまう。それで24時間で3.6億円をばら撒いたという。とても普通の感覚ではついて行けない。

 なぜこんなことをやるのか。「1億円をばら撒いたらどうなるのかを知りたかった」と著者は語る(私も知りたいが、その前にそれだけのお金があったら、まず自分で使ってみてどうなるかを知りたい)。「失敗は自分だけの価値」、「マスのサービスを作りたい一方で、実験家みたいな存在でいたい」、「誰がやっても成功するようなビジネスには興味がない」という言葉が続く。なるほど、この人は真に起業家だなと感じさせられる。

 そんな人物は、いったいどんな人生を送ってきたのか。海外生活の経験を生かし(いわゆる帰国子女である)、学生時代から既に翻訳のクラウドソーシング、留学の斡旋等を手掛けていたという。青山学院大学を卒業後、外資系の広告会社に就職。これと選んだその会社では、実は新卒採用がなかったらしい。しかし、著者は社長に直接売り込みをかけ、採用を獲得する。社長に連絡を取るために推測した20通りのアドレスにメールを送ったというから、このあたりからして並みの人物ではない。

 著者はそこでもやっぱり活躍し、やがて自分で起業する。「企業のネタに困ったことはない」というのは、サラリーマンの身からするとやっぱり違うと思わざるを得ない。カーシェアリングも実はいち早く始めたらしいが、これは時代が早すぎて失敗したという。「すべての人を信じるビジネスをやりたい」と言うが、それが冒頭のCASHアプリ事業につながっている。「悪いことをする人はほんの何パーセントだから、その人を警戒するより大多数を信じたい」。普通はそんな発想できないだろう。

1. 社長は暇なほうがいい
2. 違和感をスルーしない
3. 不得意なことは任せて得意なことに集中する
4. クリエイティブなことだけを考える
5. 事業は「タイミング」が命
6. 無駄に見えるものも視点を変えれば売り物になる
著者の語る言葉は、簡単だが実行するのは難しい。

 そんな著者はとどまるところを知らない。今後は、「覗き見市場」に需要があるとする。また、ガン検査をもっとカジュアルにしたり、飲食・小売業界は金融事業化すればさらに儲かるとする。実現したら面白そうだと凡人は思うだけである。「いらないモノは極限まで削る」と言うのは、凡人でも真似できるだろう。

 「自分とは違う」と言ってため息をつくのではなく、エッセンスを少しでも学び取りたいと思う。少し元気が出る一冊である・・・



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2019年09月20日

【妻のトリセツ】黒川 伊保子 読書日記1074



《目次》
第1章 辛い記憶「ネガティブトリガー」を作らない―妻に嫌な思いをさせる発言と行動を知っておこう
第2章 ポジティブトリガーの作り方―笑顔の妻が戻ってくる、意外に簡単な方法

 著者は人工知能研究者にして脳科学コメンテイター、感性アナリストなのだとか。よくわからないが、そんな著者が、脳科学の立場から女性の脳の仕組みを前提に妻の不機嫌や怒りの理由を解説し、夫側からの対策をまとめた「妻の取扱説明書」だとするのがこの本。大いなる期待を込めて手にした一冊。

 実は、「妻が怖い」という夫が増えているという。夫側から申し立てた離婚の動機として、「妻からの精神的虐待」という理由が急増しているらしい。我が身を振り返ってみると痛いほどよくわかる。「夫にはひどく厳しく、子供やペットにはベタ甘い」というのが母性の本能であり、妻の望む夫の対応と夫が提案する解決策が根本からズレているという。「夫という役割をどうこなすかはビジネス戦略」だとし、妻から放たれる弾を10発から5発に減らそうというのが本書の目的だとする。そのあたりは大いに興味をそそられる。

 「女の会話は共感」というのは、『ベスト・パートナーになるために−男は火星から、女は金星からやってきた−』でも説明されていたが、「男性脳は問題解決型」ということからしても噛み合わないのは仕方がない。「大切なのは夫が共感してくれたという記憶」なのだという。女とはつくづく厄介な生き物だと実感する。こんな調子で著者の説明は続く。

1. 意見が違ったらゲイン(メリット)を提示
2. 妻をえこひいきすると、実家ストレスが解消する
3. 妻と子供が対立する原因のほとんどは妻が正論。夫はあくまでも妻の味方をする
4. 「名もなき家事」が妻を追い詰めている。妻が求めているのは夫の労い
5. 一般的に女性は目的の売り場にまっすぐ行かない
こうしたことを知っていると確かに男女関係はうまくいきそうである。

 妻が理不尽なことを言って夫をなじるのは、心の通信線を開通させようとする切ない努力なのだとか。心と裏腹な妻の言葉は、以下のように翻訳するらしい。
1. 「あっちへ行って!」→「あなたのせいでめちゃめちゃ傷ついたの、ちゃんと謝って」
2. 「勝手にすれば」→「勝手になんてしたら許さないよ」
3. 「自分でやるからいい」→「察してやってよ。察する気がないのは愛がないってことだね」
4. 「どうしてそうなの?」→「理由なんて聞いてない。あなたの言動で私は傷ついているの」
英語を学ぶ方がはるかに楽しいし優しい。

 後半は夫に対する指南書になっている。
1. 記念日は記憶を引き出す日
2. 楽しみには予告と反復、サプライズは逆効果
3. 返信に困ったらとりあえずおうむ返しで乗り切る
4. 褒め言葉はマイナスの状況をプラスに変える方法としては使わない
 こういうことを妻が読んだらどう思うのだろうか、とふと思う。自分だったらバカにされているように思うかもしれない。実際、これでは間抜けを相手にしているようなものだと思う。

 「口うるさいのは一緒に暮らす気があるから」だと言うが、こちらとしてはたまったものではない。「理不尽な愛もまた愛」だと言われても素直には頷けない。妻にはストレスの放電が必要であるが、一番近い「避雷針」が夫なのだという。あえて妻の放電の相手となれば家庭の平和が保たれるらしい。それ自体否定しないが、それは避雷針の立場に立ったことがないから言えることでもある。

 この本に書かれていることは実に素晴らしいと思う。思い当たることばかりであり、なんでもっと早く出ていなかったのかと思わざるを得ない。もっと早くこの本に書かれていることを理解できていたならば、動物園の飼育係になったと思ってうまく飼育できたのではないかと思う。でも、個人的にはもう遅い。つくづく、それが残念に思うところであるが、まだ結婚生活の浅い人や、改善努力意向のある人にとっては有意義な一冊である。

 それにしても、これがベストセラーになるのが、いいのか悪いのかとふと考えてしまうのである・・・


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2019年09月19日

【東京大田区・弁当屋のすごい経営 日替わり弁当のみで年商70億円スタンフォード大学MBAの教材に】菅原勇一郎 読書日記1073



《目次》
1章 中小企業の事業承継は先代が元気なうちに
2章 数字で語る玉子屋
3章 嫌いだった弁当屋を継いだ理由
4章 社員の心に火を灯せ
5章 玉子屋の未来

 およそ都内に住んでいれば、黄色い色の「玉子屋」の配達トラックを見たことがないという人はいないかもしれない。ましてや地元の大田区であれば京浜東北線の線路脇の工場を見たことがある人は多いと思う。その姿は、なんと1日最大7万食を供給可能であり、年商は90億円のお弁当屋さんである。12時必着をルール化しており、配達ポイント1万ヶ所に及ぶという。テレビでも取り上げられたことがあり、その実態をもっと知りたくて手にした一冊。

 著者は玉子屋の2代目社長。子供の頃は弁当屋が嫌で、大学を出て銀行に就職。その後マーケティング会社に移り、2代目として入社したという経歴の持ち主。入社した時から経営をすべて任されたという。そんな自身の経験から事業承継については、後継者を決めているならなるべく早く全権を委任した方が良いと語る。いろいろな事業承継の形はあると思うが、先代が身近にいるならこういうパターンもいいかもしれない。

 社長就任後、全社員と個別に飲んで話をしたという。こういう話もよく聞くが、やはり「雲の上」に踏ん反り返るのはよくないであろう。それまで外にいて感じていた女性向けのメニューの開発等の改善点を実施。就任時およそ2万食だった配達数を8年で6万食超に伸ばす。原価率53%、廃棄率0.1%は驚異的ともいえる数字であるが、リターナブル容器に加え、回収時のコミュニケーションを通じての努力で成し遂げているようである。

 そんな会社も順風満帆ではなく、食中毒事件によって廃業の危機に瀕したこともある。こうした危機はどこの会社にもあるかもしれない。この危機を乗り切った社長は、「いいもの美味しい物を食べてもらいたいと心から思うようになったという。元銀行員であった著者は、「いい会社」とは財務内容は当然だが、「三方よし」を満たしている会社こそがいい会社であるとする。その内容は、「健全経営」「従業員が満足して働いている」「提供するサービスにお客様が満足している」というもので、これは我が社も大いに見習いたいことである。

 また、人材に対する考え方も中小企業には大いに参考になる。初めから優秀な社員を採用するのは困難であるがゆえに、「人材は入社してから育てれば良い」とする。採用にあたっては、「(失敗を)他人のせいにするタイプはダメ」だという。「自分レベルでなく他人レベルで頑張る」ということを実践するには、そういう性根の人はダメだというのは頷けることである。社内では、一つの班は一つの会社とみなし、権限と責任を渡す。こうしたやり方が、スタンフォード大学のMBAコースの教材にまで採り上げられる経営にツナ買っているのだろうと思わせられる。

 最後に著者が応接に飾っているという「事業に失敗するこつ」が紹介されていて、これがなかなか参考になる。
1. 旧来の方法が一番良いと信じていること
2. もちはもち屋だと自惚れていること
3. ひまがないといって本を読まぬこと
4. どうにかなると考えていること
5. 稼ぐに追いつく貧乏なしとむやみやたらと骨を折ること
6. 良いものはだまっていても売れると安心していること
7. 高い給料は出せないといって人を安く使うこと
8. 支払いは延ばす方が得だとなるべく支払わぬ工夫をすること
9. 機械は高いといって人を使うこと
10. お客はわがまま過ぎると考えること
11. 商売人は人情は禁物だと考えること
12. そんなことは出来ないと改善せぬこと

 さすがに成功している企業の話は得るものが多い。同業ではないが、大いに参考にしたいと思わせてくれる一冊である・・・



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2019年09月13日

【変革のアイスクリーム 「V字回復」を生んだ13社のブランドストーリーに学ぶ】新井範子 読書日記1072



《目次》
第1章 新しいスタイルとイメージの創出
第2章 日本独特「和風」アイスの確立
第3章 成熟市場で「贅沢さ」を追求
第4章 「面白い!」が広げるアイスへの導線
第5章 BIGサイズでストレートに訴求

 アイスクリームの販売額が年々増えているという。普段、食べないことはないが、取り立てて意識したすることもない。しかし、実は10年前から右肩上がりで伸びているらしい。その理由は何なのか。主要アイスクリーム・メーカー各社が展開した商品開発マーケティング戦略をブランドストーリーで分かりやすく紹介したのが本書。著者は上智大学経済学部経営学科の教授ということで、まさに御専門領域を記した一冊である。

 V時回復の要因としては、まず外部環境から説明される。コンビニが増加し、店と家(の冷蔵庫)が近くなったこと、家庭用冷蔵庫の冷凍庫の大型化、オープンショーケースの技術の進化等によりアイスクリームの保管能力が格段に向上。その上にメーカー各社の製品開発努力が加わる。こうした要因により縮小していた市場から脱却し、拡大路線に乗ってくる。

 まず初めに紹介されるのは、森永乳業のパルム。もう店頭ではお馴染みであるが、考えてみると実は食べたことがない。コモディティ化を打開する必要があり、「大人が満足できるシンプルで上品なアイスクリーム」を目指して開発される。その結果、価格競争を脱して市場の成熟化、コモディティ化を打破する新商品となる。

 アイスクリームという成熟市場で勝負する新商品は、明らかな差別化要素を持つ必要があると著者は語る。それを満たす製品が順を追って説明される。
1. 森永乳業「パルム」:手の届くプレミアム
2. ロッテ「クーリッシュ」:「飲むアイス」による「いつでもどこでも」
3. 井村屋「あずきバー」:小豆へのこだわり
4. 丸永製菓「あいすまんじゅう」:和風アイスクリームではなく、「冷たい和菓子」
5. オハヨー乳業「ジャージー牛乳バー」:ジャージー乳というこだわり
6. 赤城乳業「ガリガリ君」:売り場に人を集める

 個人的にいつも食べている「ジャンボモナカ」も「パリパリ」に対するこだわりとして紹介されている。事実、いつも食べるとチョコレートがパリパリしてバニラとの混じり具合がなんとも言えない味わいである。個人的な好みはあるものの、総じてこの本で採り上げられているアイスクリームはどれも美味しそうである。開発する方もいろいろ考えているのだと改めて思わされる。

 結局のところ、アイスクリームが売れる要因は何と言っても「味」であり、その部分で何にこだわり、どう他の製品と差別化するかである。それを各社の取り組みとして丁寧に解説している。なるほど、成熟市場でも十分開発の可能性はあるのだと思わされる。「成熟市場だから」とこれまでのものにこだわるのではなく、それなりに工夫を重ねてみるべきなのかもしれない。今度はこの本に書かれた開発ストーリーを思い浮かべながら、ジャンボモナカ以外にも試してみたいと思わされる一冊である・・・

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2019年09月12日

【砂の女】 安部公房 読書日記1071



 名前は知っているが、読んだことのない作家というのは何人もいる。読まずに終わらせるのはもったいない。安部公房はそんな読んだことのない作家の1人であり、父の本棚にあったのを良いことに手にした一冊。「20数カ国語に翻訳された名作」という説明も興味をそそられる。

 冒頭、1人の男が行方不明になったことが説明される。一体何があったのか。男は教師であるが、昆虫採集を趣味としており、8月のある日、休暇を利用して昆虫採集に出かける。砂地に住む昆虫の採集のため、男はある砂丘へとやってくる。思うような成果が得られぬまま時間が経ち、男はたまたま出会った村の老人の親切な申し出を受けて、一軒の家に泊めてもらうことになる。その家には三十前後の女が1人住んでいる。

 その家は、砂地の底にあり、男は砂の崖を梯子を伝って降りる。ランプ一つしかなく、風呂もない家。夜になると、外では砂かきが始まる。男も成り行き上、興味もあってかその作業を手伝う。聞けば毎晩の作業だと言う。不思議に思いつつも一夜を過ごす。そうして朝になり、男は外に出る。そこで降りてきた梯子がなくなっていることに気がつく。よじ登ろうとしても砂が崩れてうまくいかない。女を問い詰めても明確な答えが返ってこない・・・

 こうして男は砂の底の家に女と2人取り残された形となる。帰るために上へ行こうにも梯子がない。そうして実は村人たちの企みで、砂の中の暮らしを維持して行くために男を呼び入れたのだと知る。当然、そこに閉じ込める意図でなされたわけである。立派な監禁なのであるが、村を維持して行くためには仕方ないのだとする。

 そんな村の勝手な事情で人生が左右されるのはたまったものではない。女を叱り飛ばしてもラチがあかず、砂地からは脱出できない。村人もグルであるゆえ、助けを叫んでも無駄である。何もできぬまま、1日また1日と時間は経過して行く。自分がいなくなって、家族や職場の同僚はどうしているかと男は考えてみるも、行く先を誰にも告げておらず、誰も男の居場所を知りようがない。

自分だったらどうするだろうとやっぱり考えてみる。ネックは「時間」だろうか。休暇にも限度はあるし、時間が経てば仕事や家庭生活にも支障をきたしてくる。自分に置き換えてみればローンの支払いだってあるし、などと考えてみる。個人の企みならともかく、村ぐるみとなるとなかなか脱出は無難しいかもしれないが、やっぱりとことん諦めずにチャンスを伺うかもしれない。

 突拍子も無い想定の小説はカフカの小説のようでもある。全く日常とはかけ離れた世界の話を想像力を逞しくしながら読むのも面白いものである。ラストの男の心境の変化もなんとなく頷ける。思わずいろいろと想像させられてしまう小説である・・・




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2019年09月11日

【挑む力 桑田真澄の生き方】桑田 真澄 読書日記1070



《目次》
桑田真澄の原点
メジャーリーグへ
早稲田大学大学院へ
野球を愛する皆さんヘ

一読してなんとなく既視感のある本だなと感じたが、野村監督の本もそうであるように著書が多くなるとあちこちで同じような話が出てくるものである。それゆえにこの本もそうかと思っていたら、実は『野球の神様がくれたもの』を改題し、大幅な加筆修正と再編集を行ったものだという。何となく損した気分になるが、それはそれでよしとしたい。

少年野球の頃は、練習では理不尽なイジメのような仕打ちを受け、それが原体験となって野球の指導のあり方を考える。PL学園では良き指導者に恵まれて頭角を現し、1年ながら甲子園のメンバー17人に選ばれる(ここでも妬んだ先輩からイジメを受ける)。この時、短時間のメンバー練習で「長時間練習すればいいというものではない」と合理的な練習に目覚める。

清原は初めから実力があり、上級生からも一目置かれていたという。しかし、桑田は雑用係の日々。こうしたスタートの違いが「謙虚に研究努力する」というその後のスタンスにつながったのかもしれない。人間やはり天狗になってはいけないということだろう。桑田は「学ぶ姿勢が大事」と気付き、「考えること」の重要性を認識する。理不尽な指導も「当時はあれが正しかった」と意に介さない。

読売ジャイアンツを退団し、メジャーに挑戦する。今は普通になっているが、桑田はジャイアンツでは事実上の戦力外扱い。そのまま引退すれば指導者への道もあったのかもしれないが、桑田はメジャー挑戦を選ぶ。読売ジャイアンツを退団して新しい挑戦をするにあたり自分自身に問いかけたのは、「野球が好きなのか、それともレギュラーやエースの座が好きなのか」ということ。これはなににでも当てはまることなのではないかと思う。

「ライバルは誰ですか」と問われると、「自分自身」と答えているという。その理由は「自分に勝てない人間が他人に勝てるはずがないから」だとする。このあたりはいろいろな考え方があるからなんとも言えないが、「気持ちで負けたら終わり」というのは間違いないと思う。「自分らしさが一番大事、自分には自分なりの長所があり、持ち味がある」という言葉には気づかされるものがある。

さらにバランスの大事さも説く。野球においては、「トレーニング・食事・休養」のバランス。若い選手には「野球・勉強・遊び」のバランス。自分に置き換えてみれば「仕事・勉強・趣味」だろうか。一度読んでもその時々で心に引っかかる言葉は違うものなのかもしれない。そういう意味では、二度読んでも損をしたとは思えないところがある。

やはりどんな分野であれ一流になるだけの人の言葉には、学ぶべきことが多いと実感させられる一冊である・・・

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2019年09月09日

【『戦争論』入門 クラウゼヴィッツに学ぶ戦略・戦術・兵站】清水多吉 読書日記1069



《目次》
第1編 クラウゼヴィッツとその時代
第2編 『戦争論』の内容
第3編 クラウゼヴィッツの受容史

 クラウゼヴィッツの『戦争論』と言えば、孫子の『兵法』と並ぶ軍事書の古典であり、機会があれば読んでみたいと思っているのであるが、その前に入門書で概要を学ぶというのもいいだろうと手にした一冊。著者は大学教授であり、学生との討論形式で内容が語られるものである。

 古典とは、「昔はそう考えたが、現代では昔の考え方として一応尊重されているという意味での古典ではなく、現代でもなお生きているという意味」だとする。このあたりは興味深い導入部分である。戦争の性質については、「戦争とは他の手段をもってする政治の継続にほかならない」という有名な言葉で説明される。「政治が主、戦争が従」というのはクラウゼヴィッツの根本的な考え方である。

 そんな導入部分を経て、まずはクラウゼヴィッツ以前の戦争の歴史が説明される。古代ギリシヤ戦いから中世の戦い、絶対王政下の戦い、近代の戦争を経て第一次世界大戦となると、ついにドイツ東部軍参謀ルーデンドルフの唱えた「総力戦論」が登場し、クラウゼヴィッツの「戦争は政治の一手段」という考え方と対峙するようになる。

 そしてそんな背景説明の後、いよいよ『戦争論』に入っていく。
• 戦略とは戦争目的にそって「戦闘」を運用する方策
• 数の優位(兵員数の優位)が勝利の一般的な原理
• いかなる兵力も本軍から切り離してはならない
• 防禦は強く攻撃は弱い
こんな理論から、「主戦」「会戦」「追撃」「退却」等々についての説明がなされるが、このあたりは、原本ではどのように説明されているのかわからないが、表面的すぎる感じがする。

 『戦争論』の功績は、多くの戦史から近代戦における基本的戦略の幾つかを抽出して見せたところにあるとする。しかし、このダイジェスト的解説本ではあまりよくわからない。主に戦史についての解説が多く、なんとなく歴史書といった方がイメージに近い気がする。特に、クラウゼヴィッツ死後の第一次世界大戦以後については、クラウゼヴィッツの理論がどのように活かされたのかよくわからない。

 主としてクラウゼヴィッツの「政治が主、戦争が従」という考え方と「総力戦論」が対立していくが、20世紀に入ってからは「総力戦論」が主流となったわけである。そのあたりの著者の言わんとしていることがよくわからなかったというのが正直なところ。著者自身も言っているように「ぜひ原本を読むべき」なのだろうと思う。日本語での最初の翻訳は、あの森鴎外だったというのも意外なトレビアであるが、いつか原本を読んでみたいと思わずにはいられない一冊である・・・



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