2019年11月18日

【1秒でつかむ−「見たことないおもしろさ」で最後まで飽きさせない32の技術−】高橋 弘樹 読書日記1093



《目次》
はじめに「1秒たりとも、飽きないで見てもらいたい」
第1章 1秒でつかむ「見たことないおもしろさ」の作り方
第2章 コンテンツの魅力を引き出すために
第3章 「不快」を排除して見えない魅力を伝える技術
第4章 1秒も離さず常に興味を持ってもらう12の技術
持続編 「裏切り」「笑い」「伏線」「疑問」「振り幅」1秒も飽きさせない「5つの神器」
ラスト編 1秒も「ムダではなかった」と思ってもらうために
第5章 人の心に突き刺さる「深さ」の作り方
おわりに

 著者はテレビ東京のディレクター。毎週水曜日に放送されている『家、ついて行ってイイですか?』の生みの親だと言う。本のタイトルはともかくとして、テレビ東京という大手のテレビ局からすると、資金力で劣る立場からどう戦っているのか。中小企業に努める身としてはなかなか参考になる一冊である。

 その『家、ついて行ってイイですか?』だが、実は「平均視聴時間割合が高い」、「番組録画率が高い」、「番組視聴質が高い(真剣に凝視している)」という特徴があるらしい。そして2018年1-3月には視聴質で堂々の3位に入ったという。著者によれば同番組は「企画術」と「伝える技術」から構成されているという。「おもしろい!」と思ってもらうためにはいろいろな手法があって、それをここでは様々解説してくれる。

 そのもっともシンプルで価値の高い方法は、「いままでにないものを作ること」だという。当たり前すぎるが、よくよく考えてみればテレビ業界もそのほかの業界でも「二番煎じ」「二匹目のドジョウ」がうようよしている。これは「言うがやすし」でなかなか簡単にはいかないことによる。『家、ついて行ってイイですか?』では、それまでのドキュメンタリーの常識をすべて覆したのだという。その内容は以下の通り。

1. 長期密着取材 → 短期密着取材
2. 事前に取材のアポを取る → その場で交渉する
3. 雰囲気のあるナレーションと音楽 → ノーナレーション、ノーミュージック
4. 主人公を意図的に選ぶ → 街を歩いている人の中からその場で選ぶ
ゴールデンタイムの番組でナレーションを外すなんて普通は論外だそうであるが、考えてみれば挑戦的な試みだと思う。

 著者は普段から現実社会を観察し、「おもしろい!」と思う一瞬を自分の脳みその中に切り取ってストックしておくという。一瞬ネガティブなものでも「組み合わせ方次第」、「切り取り方次第」、「ストーリー次第」、「機能次第」でポジティブな魅力を発見することができるという。いま成功している商品やサービスとの差別化は常に新商品開発の最大の課題だとするが、これは普遍的に当てはまることである。

 著者はしばしば「バランスを崩す」という表現を使う。たとえば『家、ついて行ってイイですか?』は予算のバランスを崩壊させたという。というのも、悲しいかな各局に比べて予算の圧倒的に少ないテレビ東京では、番組作りでも同じ戦いはできず、『家、ついて行ってイイですか?』では、その予算のほとんどをロケに振り向けたという。

 たとえば、全体の予算が他局では3,000万円だとするとテレビ東京は1,000万円であり、これを「タレント出演料」「スタジオ予算」「ロケ予算」「編集費用」「ナレーション等」に均等に割り振ると当然予算総額の多い相手には勝てない。そこで「ロケ予算」にたとえば8割をつぎ込めば、少なくとも「ロケ予算」では圧勝できる。選択と集中とも言えるが、、予算のバランスを崩すことによって勝てるという理屈らしい。同番組では、通常5〜10人のディレクターが70人配置しているのだとか。

 「良いものを作るために努力で差別化する」という言葉は、胸に刺さって来る。さらに強調しているのは「ストーリー化」。この「ストーリー化」もいろいろなところで語られているが、「事実を解釈して魅力を最大限に引き出す」ことで結果を劇的に変えることになる。著者が就活を行なっていた彼女にこれを使い、獨協大学で初めて電通に内定をもらうことになったという話は興味深い。
 
 結局、気がついてみると、「1秒でつかむ」というタイトルはよくわからなかったが、自分のビジネスに色々とヒントになりそうなことはあちこちに散りばめられていた。改めて『家、ついて行ってイイですか?』を観てみたが、なるほどみんながチャンネルを合わせるのがよくわかる。これから毎週観てみようと思わされる。野村監督ではないが、「弱者の兵法」の参考になる一冊である・・・








posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする