2020年01月20日

【目からウロコが落ちる奇跡の経済教室  基礎知識編】中野 剛志 読書日記1113



《目次》
第1部 経済の基礎知識をマスターしよう
 第1章 日本経済が成長しなくなった単純な理由
 第2章 デフレの中心で、インフレ対策を叫ぶ
 第3章 経済政策をビジネス・センスで語るな
 第4章 仮想通貨とは、何なのか
 第5章 お金について正しく理解する
 第6章 金融と財政をめぐる勘違い
 第7章 税金は、何のためにある?
 第8章 日本の財政委破綻シナリオ
 第9章 日本の財政再建シナリオ
第2部 経済学者たちはなぜ間違うのか?
 第10章 オオカミ少年を自称する経済学者
 第11章 自分の理論を自分で否定した経済学者
 第12章 変節を繰り返す経済学者
 第13章 間違いを直せない経済学者
 第14章 よく分からない理由で、消費増税を叫ぶ経済学者
 第15章 主流派経済学は、宗教である

「目からウロコが落ちる」という使い古された表現がされているが、まさにその通りのちょっと変わった経済書である。何が目からウロコなのかと言えば、現在低迷する日本経済に対する処方箋においてである。まず、現在の日本経済は、「デフレ」に苦しんでいる。アベノミクスがそこからの脱却を目指している通りである。そしてこのデフレとは、「需要不足/供給過剰」の状況を指す。日本が成長しなくなった最大の原因がこのデフレだとする。

 デフレで不況下にあると、個人も企業も消費や投資を控えて貯蓄に励む。これ自体、正しい行動ではあるが、この結果が国家に及ぼす影響は経済の停滞となる。「合成の誤謬」と呼ばれる現象で、ミクロの視点では正しくてもマクロの世界では反対の結果をもたらしてしまう。これを正すのは政府の役割であり、デフレ対策として必要なのは、「財政拡大」、「大きな政府」、「減税」であるとする。つまり、これまで政府がやってきていることはデフレ対策ではない。

 「金融緩和」、「生産性の向上」は「供給過剰」を招いてしまうとする。平成不況の原因は、構造改革を始めとして本来インフレ対策であることをやってきたからだとする。無駄な公共投資すら必要なのだと著者は主張する。にわかには信じがたいことである。GDPの240%を超える国家債務を前にして「減税」を説くなんて、と思わなくもない。どうやって返すのだと思うが、著者は永久に借り換えればいいと断じる。

 国家は通貨発行権を持っているから債務など関係ないのだという主張は、無謀に思えてならない。ただ、貨幣とは負債であり、政府の赤字は民間の貯蓄を増やすと著者は明確に主張する。多額の債務も、アルゼンチンなどは外貨建て債務であったから破綻したのであって、国内であれば、通貨を発行すればいいのだとする。そんなことをすれば通貨が溢れてハイパーインフレになりそうなものだというが、それでこそインフレになるのであり、その手前でやめればいいのだとする。なるほど、それも一理である。

 税金とは物価調整の手段であって財源確保の手段ではないと税金の性格を論じる。「国内民間部門の収支+国内政府部門の収支+海外部門の収支=0」というマクロ経済の構造があり、国内政府部門が黒字になればその他の部門が黒字になる。となれば政府部門は赤字で良いという説明も目からウロコである。自由貿易も経済成長を阻害するもので、アメリカを見ても保護主義を続けた結果、経済成長を実現したと論じる。

 従来、常識とされていた理論を信じていると、「本当か」と思うが、著者の説明を読む限り否定するのは(少なくとも素人には)難しい。現実を見ればその通りと言えなくもない。「生産性の向上は不要」なんて聞いたら、デービッド・アトキンソンさんはなんて言うだろうかと思ってもみる。素人の立場で著者の意見を否定することはできない。であれば1つの意見として頭にとどめておきたい。いろいろな意見を聞き、その中から自分なりの意見を形成させていきたいと思う。

 「経済教室」と言う謳い文句に偽りはない。続編もあるようだから、合わせて読んでみたいと思う一冊である・・・






posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする