2020年02月03日

【逆説の世界史 3】井沢元彦 読書日記1118



《目次》
序章 多神教社会に生きる日本人―無宗教ではなく、「日本教」を信じる民族
第1章 インダス文明の滅亡とヒンドゥー教の誕生―古代インド思想における「輪廻転生」と「永遠の死」
第2章 ブッダの生涯と仏教の変容―なぜインドではなく中国と日本で発展したのか
 第1話 ブッダが追求した「完全なる死」の境地
 第2話 禅宗がもたらした日本型資本主義
 第3話 仏教はなぜ発祥の地印度では衰退したのか
第3章 オリュンポスの神々とギリシア文明の遺産―ポリス(都市国家)の連合体が確立した平和
 第1話 キリスト教に敗北したギリシア神話の世界
 第2話 民主主義のルーツとしてのポリス
 第3話 アレクサンドロス大王の偉業とマケドニア帝国の興亡
 第4話 ギリシア・ヘレニズム文明の賢者たち

著者の『逆説の日本史』シリーズは全巻読破中であるが、満を持して始まった「世界史」シリーズの第三弾。今回も宗教が前面に出てくる。それは多神教と一神教の対立関係。日本は神道でありながら、クリスマスはすでに日本の祭りとして定着し、葬式は仏教で行う。こういう例は一神教の世界ではありえない。著者はこの力を芥川龍之介の言葉を使い、「造り変える力」と紹介する。

そして今回は、インダス文明から始まる。「世界最古の看板」に刻まれた「インダス文字」は、実は現代に至るまで解読されていないのだという。そして多神教のバラモン教が生まれ、ヒンドゥー教へと発展する。しかし、実は「バラモン教」「ヒンドゥー教」という呼び名は、欧米の学者が便宜的につけたもので、本来は呼び名がないのだとか。それぞれの内容が語られ、このあたりは宗教講座と言える内容である。

やがてブッダが登場する。ブッダの目的は「解脱」=「輪廻転生」のサイクルからの脱出。「輪廻転生」はいい事のように思われるが、実はそうではないらしい。やがて仏教は「根本分裂」によって上座部仏教と大乗仏教に分裂。シルクロードを経て日本に大乗仏教が伝わるが、その進化形はそれまでの仏教者をして「これが仏教か」と言わしめるものになる。それはそうだろう、修行をして輪廻転生からの解脱を目指すものが、いつの間にか大衆の救済に変わっているのである。しかも、親鸞に至っては妻帯まで可としている。

さらに本願寺を拠点とする教団は武装戦闘集団と化す。僧兵であるが、殺傷まで認めてしまっては、流石にいかがかと思うが、屁理屈はいくらでもつけられるのはキリスト教もイスラム教も同じである。やがてキリスト教なき資本主義が日本において発展する。大阪が「値切りの文化」であるのに対し、江戸が「正札文化」である理由がなるほどである。商人は騙す悪いやつで、だから値切るのが当然であったが、それを三井の越後屋が「現金取引掛け値なし」の正直商売を初めて大成功したのだとか。東京人として値切れないのに引け目を感じることはないのだということである。

後半は西洋に移り、ギリシア文明の話となる。こちらでは多神教のギリシア神話は一神教のキリスト教に敗れてしまう。現在のインドにおいてはヒンドゥー教が中心だが、実は仏教は敗れたのではなく、「取り込まれた(ブッダはヒンドゥー教の神々の1人)」のだとか。なぜギリシア神話は敗れたのか。政治や軍事への市民参加は神聖な義務だが、生きるために畑を耕すのは卑しい行為であり、だから奴隷がそれを担ったとか。興味深い説明が続く。

アレクサンドロス大王の遠征、ソクラテス、プラトン、アリストテレスの哲学、この時代のギリシア文化はやっぱり面白い。日本神話とギリシア神話には共通点が多いという話も興味深い。パンドラの箱の神話に至っては、最後に箱の中に希望が残ったというエピソードについて、(他のが飛び出て世界に広まったのに対し)残ったのなら人類には渡らなかったのではないかと疑問符がつけられる。言われてみればその通りである。常々何となく疑問に思ってきたことが明確に語られると、思わず膝を打ってしまう。

宗教を背景とした各文明の発展。表面上の事実の羅列だけではわからない底流のようなものを感じる。この視点はやっぱり面白い。「逆説の視点」は世界史でも健在である。日本史と比べて世界史は範囲がはるかに広い。これからどんな話を読ませてくれるのか。大いに期待したい一冊である・・・


【逆説の世界史シリーズ】
『逆説の世界史』
『逆説の世界史2』



posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする