2020年06月09日

【「日本国紀」の天皇論】百田 尚樹/有本 香 読書日記1158



《目次》
序章 日本にとって「天皇」とは何か
第1章 天皇の権威と万世一系
第2章 万世一系のすごさ
第3章 歴代天皇の大御心
第4章 消された絆
第5章 天皇を教えない教科書
第6章 令和の国体論
第7章 聖域と祈り

 百田尚樹も最近は、小説よりもそれ以外の著作が主流になってきている。それはそれで悪くはないが、百田尚樹の小説のファンとしては小説の方をもっと書いてもらいたいところである。とは言え、小説以外も好きなこともあって手にした一冊。これはタイトルにもある通り、前著『日本国記』において天皇に焦点をあてて述べた一冊。ジャーナリストの有本香との対談本である。

 日本という国は、天皇を中心とした家族のような国だったと2人は語る。鎌倉幕府の成立以来、800年間というもの政治的にはまったく無力でありながら、日本の中心に存続。「権力」から「権威」になったが、この「権威」は理屈では説明ができない。そもそもそれだけの長きにわたり政治の実権がないものが残るのは奇跡だとする。それはそうかもしれないが、「宗教の宗家」と考えれば、ローマ・カトリック教会のようなものといえるのではないかと思ってみたりする。

 それはともかく、天皇家は、居宅である御所にしろ、宝物殿である正倉院も警備は手薄で、襲おうと思えばいとも簡単に襲えてしまう。なのに張り紙一枚で被害に遭わない。それこそが天皇家の「権威」なのであるが、言われてみればその通り。我々としてはなんの不思議もないが、世界史を紐解いてみれば、お隣の中国の例を取るまでもなく、易姓革命によって王朝が次々に交代する世界史の常識からは外れている。

 最近は天皇陛下のお子様が女の子であることから、「女性天皇」「女系天皇」の議論が出ている。しかし、「女性天皇」は歴史上も存在しており構わないが、「女系天皇」は「万世一系」の原則が崩れるからダメだという。このあたりわかりにくいが、「サザエさん」一家を例にして、「カツオはいいが、タラちゃんはダメ」という説明はわかりやすい。もっとも、もっとわかりやすいY染色体を使っての説明は有本氏が反対しているのは面白い。

 天皇家の歴史的なことが語られるのかと思いきや、そこは「民のかまど」を話を例に挙げ、常に天皇が国民を大御宝として大事にしてきたという話や、親政が復活した明治以降も「君臨すれども親裁せず」の立場を取ってきたことが語られる。昭和天皇が政治的な決断を下したのは、生涯たった2度だけだったという。それは「2.26事件」と「ご聖断」である。天皇陛下の戦争責任を問う声が未だにあるが、こうした背景をよくわかっているのか疑問である。

 戦後、象徴天皇となり、有名な「人間宣言」を出したが、実はこれは人間宣言などというものではなく、「新日本建設に関する詔書」であり、内容は明治の初めに出された「五箇条の御誓文」を改めて説いたものである。当時の人たちは天皇陛下は現人神などではなく、人間であるのは常識として知っており、教育勅語悪玉論と合わせて「WGIP(War Gilt Information Program)」の一環だとする。

 歴史的事実の部分は素直に読んでいけるが、「天皇陛下とはどういう存在か」という問いに有本氏は「たとえ中国から侵略されて小さな島1つしか残らなくてもそこに天皇陛下がいれば反撃していける存在」と答えている。気持ちはわからなくもないが、それは行き過ぎ感が強い。アメリカは天皇家のような核になるものがないから愛国教育を一生懸命やるとか、日本の官僚は東大法学部の系譜の「天皇ロボット説」に毒されているとか、行き過ぎ感はとにかく強い。

 天皇陛下が靖国神社に訪問しないのは、A級戦犯を合祀しているからというのは間違いで、行幸と同じ意味を持つ勅使を派遣しているとする。このあたりは知らなかったこともあって、なるほどである。メディアの中には故意に日本や天皇を貶めることに嬉々としている勢力がいて、その根は深いというのは同感である。WGIPの影響だろうが、何より正しく理解すればその呪縛は解けると思う。そのためにも一読の価値はある。

 多少の行き過ぎ感はあるが、そのあたりは個人の感覚で調整したいところ。いろいろと新たに学ぶ事実もあり、学び過ぎるということはない。誤った批判は己の無知を曝け出すだけ。正しい理解をして恥をかかないようにしたい。そういう意味で、一読すべき一冊である・・・




posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 日本/日本人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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