2020年07月22日

【「無為」の技法 エフォートレスな行動で、能力を最大化する】ダイアナ・レナー/スティーブン・デスーザ 読書日記1172



原題: NOT DOING The art of effortless action
《目次》
1 「しない(Not Doing)」という選択
2 やみくもな行動の機能障害
3 「ない」を受容する力―ネガティブ・ケイパビリティ

 「無為」とはなんだろうと思いつつ、手にした一冊であるが、「無為」とは、原題にある通り、「NOT DOING」すなわち「しない」こと。現代人は、「リーダーの仕事は何らかのアクションを『する』こと」だと理解しがちであり、「ランニングシューズを履きっぱなしで生きている」という。そんな中で、あえて「しない」を選択するのだというのが、この本の大まかな主張。

 「しない」と言っても、「不安や無気力、決断力のなさから生じる行動の欠如ではない」とする。また、「放棄や逃避という意味で人任せにすることとも違う」という。このあたりは当然であろう。そうではなくて、「しない」というのは、「物事をやりこなす方法を狭い視野で見ないための防御手段」なのだという。「逆らわずに委ねて、共に歩いてみる」ことで力みが取れ自分が関わっている状況に対して意識が開くとする。

 「しないよりする方がいい」というのは、普段自分でも何となく取っている考え方である。しかし、身構えず、無理に押し通そうとせず、エフォートレスに受け入れて行くことと説く。「流れに任せる」ということでもある。冒険家、合気道の師範、河川保全員、大企業の CEO、コンサルタントと様々な人々の事例が説明される。「大きい方がいい」「多い方がいい」という現代の神話、ステイタスの不安、無価値な存在になることへの不安が人々の心にある。FOMO(fear of missing out)という「何かを逃したくない一心でしがみついてしまう性癖」があり、その根底には選ぶことへの不安がある。

 「しない」と言っても、その具体的範囲は広い。「待つ」「耐える」「観察する」「耳を傾ける」という行為も含まれる。こうした能力をネガティブ・ケイパビリティといい、これとポジティブ・ケイパビリティとの組み合わせがクリエイティブ・ケイパビリティ(確実と不確実の境目で働くための創造的度量)を生む。能動的に何かをしようとせず、受け身で周囲の環境に意識を向けると、むしろポジティブで全体を包み込む空間が生まれることもある。欲求を手放し、答えに飛びつかず、問いと向き合ってみることも「しない」ことになるという。

 「スローの哲学」という考え方も紹介されている。これはあらゆることをカタツムリの速度でやることではなく、それぞれにふさわしい速度で行おうとするものだが、なるほどと思う。「泥が鎮まるのを待つ」というたとえもわかりやすい。本文中には様々な挿絵があって、何かを意味していそうであったが、特に説明もなくわからなかったのがちょっと気になったところである。

 総じて主張しているところはよくわかる。こういう考え方も必要だろうと思う。ポジティブとネガティブのケイパビリティを適度にバランスよく使いこなせれば最良ではないかと思える。難しい判断を迫られた時には、是非心がけてみたい考え方である。そうした点を意識させてくれる一冊である・・・




posted by HH at 00:00| 東京 ☔| Comment(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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